存在論的美学研究会(2017年度)

院生代表者

  • 根岸貴哉

教員責任者

  • 竹中悠美

企画目的・実施計画

 本プロジェクトは、昨年度の「芸術経験と作品存在の哲学的解釈学研究」研究会から継続している研究会である。本研究会の目的は、哲学的・美学的なテクストの読解を通して、哲学史や芸術学への知識を深めることにある。そのために、上倉庸敬先生を招聘し、議論と講読を進める。

活動内容

・第1回研究会
2017年 11月 22日(水)18時30分~21時00分
場所:衣笠キャンパス究論館プレゼンテーションルームB
内容:ジルソン『絵画と現実』における「1-3 現存と現前」(pp.43〜65)について、講読をすすめた。当該箇所では、おもに絵画作品と音楽作品を区別し、比較しながら芸術作品の現前性と現存性についての議論が中心であった。

・第2回研究会
日時:2017年 12月5日(水)18時00分 ~ 21時00分
場所:衣笠キャンパス究論館プレゼンテーションルームA
内容:前回に引き続き、上倉先生を招聘して、エチエンヌ・ジルソン『絵画と現実』における現存(existence)「現存と現前」についての議論を、フォルマとマテリアという二つの側面から検討した。

・第3回研究会
日時:2017年 1月 24日(水)  18時 00分 ~  20時 30分
場所:衣笠キャンパス究論館プレゼンテーションルームC
内容:上倉先生を招聘して、エチエンヌ・ジルソン『絵画と現実』における「2 個体性」および「2-1質料因」(pp.68〜85)について、講読と議論をすすめた。

・第4回研究会
日時:2018年 1月 31日(水)  17時 00分 ~  19時 30分
場所:衣笠キャンパス究論館コミュニケーションルームC
内容:上倉先生を招聘して、『絵画と現実』における「質料因」について、英語版とフランス語版を確認しつつ、議論を行った。また、これまでの絵画と現実性の問題の具体例として、ルーヴル美術館が所有するヤン・ファン・エイク《宰相ロランの聖母》の解説映像を鑑賞した。

・第5回研究会
日時:2018年 2月 23日(土)  18時 00分 ~  20時 30分
場所:衣笠キャンパス創思館404・403教室
内容:上倉先生を招聘して、これまで見てきた絵画作品の様態の具体例として、「ダ・ヴィンチ ミステリアスな生涯」というレオナルド・ダ・ヴィンチの作品を具体例とした映像を鑑賞し、理解を深めた。

成果及び今後の課題

 今年度の本研究会では、昨年度に引き続き、エチエンヌ・ジルソン『絵画と現実』の講読を進めた。本書は、哲学の手法を用い、絵画を考察するためのものであり、芸術経験を哲学的に考察することを目的とする本研究会の趣旨に合致していた。また、絵画と音楽の比較や、絵画における運動性の問題などを取り上げている同書は、各参加メンバーの興味、関心や専門に近しい。つまり、本書を通じ、哲学的な論点を背景にしながら、各メンバーの専門分野を議論することにより各自の研究を発展が期待できる点において適していたからである。議論を通じて、ディスカッション能力の向上や各メンバーの専門分野への応用だけではなく、テクストの読解自体や、正しいとされる読解を通して理解を深めることができた。とくに、邦訳だけではなく、英語、フランス語などの原典にあたり、言及されている書物についても検討したことなどは、テクストへ対して深く考究できたと言えるだろう。
 しかし、講読の速度が遅かったことは、昨年度から引き続く課題である。

構成メンバー

根岸 貴哉
向井 駿佑
焦 岩
忠岡 経子
西澤 忠志
森 敬洋

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