高等教育における障害者研究会

院生代表者

  • 高雅郁

教員責任者

  • 立岩真也

企画目的・実施計画

【目的】本研究会の目的は、大学における障害者(障害学生)の実態および支援体制を明らかにすることである。特に外見からはわからず、申告しなければ支援を得にくい障害(発達障害、吃音、精神疾患など)に注目する。

【内容と方法】本研究会の内容および方法は3つの活動で構成される。
①先行研究と現状に関するサーベイ:障害学生の支援に関する先行研究と現状についてサーベイを行う。具体的には、国内外の大学(その他高等教育機関)での障害学生支援や、教育現場における合理的配慮に関する研究・資料を収集し輪読(必要に応じて翻訳作業など)を行う。

②全国高等教育障害学生支援協議会(AHEAD JAPAN)の大会への参加:AHEAD JAPANは2014年に設立された、日本における大学に進学した障害学生支援に関する研究などを牽引する拠点的な組織である。2018年6月28-30日に行われるAHEAD JAPANの第四回大会に参加し、高等教育機関における学生支援について情報収集を行う。

③報告会の開催:サーベイ・大会参加で得た情報をまとめ報告会を行う。その際、立命館大学の障害学生支援室のスタッフの方や障害学生支援に興味のある方をお招きして、情報交換・交流する。

活動内容

①研究会開催:先行研究のサーベイと検討を目的とした研究会を4回行った。

  • 第1回:2018年6月12日(火)15:00-16:00
        創思館3階ラウンジ
  • 第2回:2018年7月23日(月)10:00-12:00
        究論館1階
  • 第3回:2018年8月20日(月)13:00-15:30
        究論館1階プレゼンテーションルームC
  • 第4回:2018年9月25日(火)15:00-17:30
        究論館1階プレゼンテーションルームC

②学会参加:

  • 学会名:全国高等教育障害学生支援協議会(AHEAD JAPAN)第4回大会
  • 日程:2018年6月28日―30日(木‐土)
  • 会場:国立オリンピック記念青少年総合センター カルチャー棟・センター棟
  • 内容:各テーマの講演会(教育や法律など)と分科会(地域支援との連携、科技技術の運用、コーディネーターの役割、発達障害の学生に対する就労移行支援など)に参加して、現在の障害のある学生に支援の動向や悩み・問題に関する理解を深めた。会場で配布された資料の収集にも成功し、一部はPDFファイル化した。また、会場では、実際に各大学で障害学生を支援する方々から現場の話を伺い、交流を行った。

③障害学生支援室へ訪問:

  • 日程:2018年7月3日(火)17:00-17:45
  • 会場:立命館大学障害学生支援室
  • 内容:立命館大学障害学生支援室の職員を訪問し、支援室のシステムや役割について伺った。

④研修会に参加:

  • 会名:避難において困難が予想される学生などの災害時対応における研修会
  • 日程:2018年7月19日(木)17:00-19:00
  • 会場:立命館大学衣笠キャンパス至徳館102会議室
  • 内容:立命館大学総務部及び障害学生支援室共催して、特定非営利活動法人ヒューマンネットワーク熊本の研究員である吉村千恵先生を招待し、講演会を行い、討論した。吉村先生には、2016年4月に熊本地震発生以来、熊本学園大学にて健常者と障害者のインクルーシブ避難所の開設を支援したことや、障害のある学生の個別避難計画の作成と練習、学内での避難所シミュレーションの訓練の実施などについて講演いただいた。

⑤国際ワークショップ参加:

  • 会名:「立命館大学における障害学生支援の研究と実践――情報アクセシビリティを中心に」
  • 日程:2019年3月14日(木)
  • 会場:立命館大学衣笠キャンパス、平井嘉一郎記念図書館1Fぴあら
  • 内容:立命館大学人間科学研究所プロジェクトが主催、ダスキンアジア太平洋障害者リーダー育成事業のブータンからのヨンテン・ジャムソンさんの研修の一環として、植村要さん(立命館大学人間科学研究所客員研究員)が「プリント・ディスアビリティと図書館のアクセシビリティ」について、また、小中啓司さん(立命館大学図書館利用支援課)が「立命館大学のテキストデータ提供サービス」について話した。ヨンテンさんもブータンの視覚障害者の情報アクセシビリティについて話した。本研究会からも2名が参加し、情報アクセシビリティについて議論を行った。

成果及び今後の課題

 本研究会は、1年を通じて、精力的に障害学生支援の現状について情報収集を行った。その結果、高等教育にいる様々なニーズや障害のある学生に対する、基本的な支援の体制や現在実施可能な支援方法を学ぶことができた。小規模校と大規模校の支援体制の差異、文系と理系の学生に対する支援方法の差異、支援者の専門性や資格、及び学校と他機関の連携などの要素を念頭に入れ、今後も支援方法に関する研究を進めていなければならない。そして、災害時に、障害者を始めとする避難が困難な学生に向けた支援や準備、特定の障害特徴がある学生(例:視覚障害者)向けの情報アクセシビリティについても理解してきた。
 本研究会は概ね計画にそって活動を進め、予算を執行した。しかし、2018年11月頃から構成メンバー各人の研究や就労の都合のために、研究会の日程を調整することが著しく困難になるという問題が発生した。2019年度の活動について話し合った結果、当初予定していた報告会等の実施が現実的ではないという認識を共有し、2018年度で高等教育における障害者研究会としての活動を終了するという合意に至った。今後は各人のペースや研究課題に沿う形で研究を継続していく。

構成メンバー

・高 雅郁 
・橋本 雄太 
・高木 美歩

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