incurable研究会(2021年度)

院生代表者

  • 戸田 真里

教員責任者

  • 後藤 基行

概要

 本研究プロジェクトの目的は、希少難病、慢性疲労症候群など医学的な地位が定まっていない「論争中の病」、医学で明確に説明できない病を患う人々が、生活を送る上で必要なサポートを当事者の視点から明らかにすることである。
 希少難病や論争中の病は、医療者にもよく知られておらず、診断までに時間を要することが多い。さらに診断されても治療法はなく、支援制度や可能なサポートについての情報提供も十分になされていない状況にあると考えられる。加えて、検査に異常がないなど、医学で明確に説明できず、診断がつかないために医療機関をさまよい続ける病者も少なくない。
 現在の医療制度は、病名が何らかのかたちで確定されることを前提に設定されており、これらの当事者は、医療や福祉のバックアップを受けられないまま、制度のすき間に追いやられている可能性がある。実際、当事者の置かれた状況については、社会的な認知がほとんどなされていない現状がある。
 当事者や支援者が置かれた状況の一端について、インタビュー調査を通じて明らかにし、当事者らのニーズを丹念に拾い上げていきたい。どのような公的サポート、制度的な改善が必要であるかを考察し、当事者が直面する困難を、診断名や診断の有無に左右されることなくサポートできる仕組みを考えたい。

活動内容

1. 後藤基行先生に指導を受けながら、定期的に勉強会を開催。『診断の社会学』(野島那津子)などを購読しながら、当該病者らに共通する困難について議論が行われ、多くの場面で医師による「診断」が病者と社会を繋ぐ結節点となっていることが確認された。
2. 「診断」が根拠となり動作する各制度について、その制度を規定する法律等に関する調査を各人が進めた。調査に関する報告は1月からに行わた。
3. 2月には野島那津子先生(石巻専修大学)に登壇いただき、『診断の社会学』著者解題及び、ディスカッションを行った(COVID-19の影響でオンライン開催)。メンバーの谷田(毎日新聞記者/生存学研究所客員研究員※院生でないため名簿には不記載)の呼びかけにより病者当事者の方達にも参加いただき、盛況を博した。同催しの様子はテキスト化され、生存学研究所サイト(arsvi.com)に掲載される。

構成メンバー

戸田 真里
中井 良平
西岡 知香
劉 心悦
高橋 初
栗川 治
寺田 准子
嶋津 麻穂

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