「日中社会の生と死」研究会(2022年度)

院生代表者

  • 岳 培栄

教員責任者

  • 立岩 真也

概要

 近年、日中両国とも多死社会を迎えている。本研究プロジェクトは、異なる専門領域の研究メンバーを集め、日本と中国の社会を中心に生と死にまつわる問題群を扱う代表的な文献を精読したり、自らの研究テーマと関わらせながら議論を行ったりすることによって、基礎知識を深める場であり、新たな視点を生み出すコモンズの創出を目的としている。メンバーの研究関心は、死別のグリーフや、宗教による終末期ケア、献血など多岐にわたっており、加えて構成は多国籍であり、互いに馴染みのある社会の状況を分かち合うことが可能となる。このように、研究分野および日中社会の共通性と相違性の交錯を通し、各自の研究の遂行に大きな役割を果たすことが期待できる。
 内容と方法は以下のように想定する。①研究メンバーのみを対象とする勉強会、読書会を月に一回程度で行う。勉強会は、担当者から自らが進めている研究を発表してもらい、メンバーたちがコメントするという形で進行する。読書会は、古典あるいは最先端の文献を選定し、メンバーたちが精読して討論する形で進める。②日本と中国で活躍している研究者を招いて、講演会を企画する。現時点では、2回の講演会を行う予定である。講演会では、事前に設定した話題に関して、講師が2時間程度の講義を行い、その後メンバーとの交流時間を設ける。

活動内容

①勉強会
 7月10日(日)13:00―16:00 会場:究論館プレゼンテーションルームA
 現時点で取り組んでいる研究テーマおよび関心のある死生に関わることを主題として発表し、議論を交わした。
②先端研院生プロジェクトスタートアップ報告会
 7月23日(土)―7月25日(月) 会場:創思館303
 ブースを出し、活動内容や今後の予定について報告した。
②読書会
 8月6日(土)14:00―17:00 会場:究論館プレゼンテーションルームA
 講読文献:『現代社会を宗教文化で読み解く 比較と歴史からの接近』櫻井義秀・平藤喜久子編著,2022,ミルネヴァ書房.
 指定した講読文献を事前に精読したうえで、読書会で各章の内容のまとめを分担のかたちで発表した。そして、論点を立て、議論を行った。
③オンラインによる文献紹介
 講演会準備の一環として、招く予定の講師の著書を紹介した。SNSを通じて、随時コメントし、心得を分かち合った。
 紹介した文献:
 『これからの仏教 葬儀レス社会 −―人生百年の生老病死』櫻井義秀著,2020,興山舎.
 『東アジア宗教のかたち 比較宗教社会学への招待』櫻井義秀著,2022,法蔵館.
 『統一教会 ――日本宣教の戦略と韓日祝福』櫻井義秀・中西尋子著,2010,北海道大学出版会.
④講演会
 テーマ:現代日本の葬送とグリーフ
講師:櫻井義秀(北海道大学文学院教授)
開催形態:現地(立命館大学衣笠キャンパス)+ZOOMによるオンライン配信
開催日時:2022年11月12日(土曜日)14:00ー16:30
 予定プログラム
14:00―14:05      挨拶、講師紹介
14:05―16:05      櫻井先生の講演
16:05―16:30      質疑応答
16:30          終了予定
 講演は対面+Zoomによるオンライン配信のハイブリッドで開催した。当日の参加者は43名(対面7名、オンライン36名)であった。講演会には、本研究会のメンバーをはじめ、立命館大学の他研究科の学生、他大学の学生、医療関係者、宗教団体関係者など幅広い方々にご参加いただいた。14時〜16時に、講師の櫻井氏は講演を行った。まず、現代日本社会の高齢者のライフスタイルの変化の説明を通じて、高齢社会におけるグリーフケアの重要性を明らかにした。次に、日本における葬送の歴史を踏まえながら、寺院仏教と葬送儀礼の未来について論じた。16時〜16時30分の質疑応答では、コロナ禍における葬送の変遷とこれからのあり方を中心に議論を深めた。

成果及び今後の課題

 今年度は、勉強会と読書会を2回、講演会を1回実施した。勉強会では、それぞれ4領域に所属しているメンバーたちが自ら取り組んでいる研究を分かち合い、視野を広げることができた。特に死生にまつわる議論を通じて、社会学や文化人類学や哲学など、さまざまな分野が死生の研究をどのアプローチでどのように展開しているのかを概観することができた。読書会では、メンバー10名の分担発表により、効率的に大量の文献が講読することができた。講演会の開催により、読書会で講読の際に議論したものを、招聘した講師と直接に交流することができて、知識を深めることが実現できた。
 しかし、当初予定していた「月一回」の勉強会・読書会が、構成メンバーのさまざまな事情により、2回しか実施することができなかった。これから構成メンバーが主体的に読書会に参加できるような環境づくりを行うことは、今後の課題としたい。

構成メンバー

岳培栄
談拉成(TAN Lacheng)
陳可為(CHEN Kewei)
楊雅琳(YANG Yalin)
王裕森(WANG Yusen)
黄楚杉(HUANG Chushan)
範宸宇(FAN Chenyu)
何錦雲(HE Jinyun)
岳恒萱(YUE Hengxuan)
馮雲龍(FENG Yunlong)

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