ヨーロッパ文化研究会(2012年度)

院生代表者

  • 川崎 寧生

教員責任者

  • 竹中 悠美

企画目的・実施計画

今年度の「ヨーロッパ文化研究会」は、昨年度のヨーロッパ文化研究会を継承・発展させるべく企画された。昨年度は、フッサールやヴェーバーの著作を参照しながら、西欧近代の根本にある問題を見極め、考察することを目的としていた。そこで今年度は、さらに美学・芸術学について理解を深めるために石黒義昭先生を講師としてお招きしマルティン・ハイデガーの『芸術作品の根源』の講読を行ない、ハイデガー独自の術語に秘められた意図を理解し、西欧思想における芸術の位置をより深く考察することを目指した。
 研究会ではMartin Heidegger; Der Ursprung des Kunstwerkes (Vittorio Klostermann)と、その翻訳『芸術作品の根源』(関口浩訳、平凡社ライブラリー、2008)を基礎文献として用いた。一ヵ月に数度院生が集まって輪読し、基本的な知識を確認する。そのうえで、石黒先生を中心に、各自が用意したレジュメを用いて議論を行った。議論では、ハイデガーの著書『「ヒューマニズム」について』『美と永遠回帰』『形而上学入門』『ニーチェ〈1〉美と永遠回帰』などにも目を向け、理解を深めた。また、研究会に参加できなかった学生に対してインターネット等によるフォローを行ない、全員が研究会に参加できるようなシステムをつくることを目指した。

活動内容

・第1回研究会 
日時:2012年7月7日(土)15時00分~19時00分
  場所:創思館409号室
  内容: 事前学習として『芸術作品の根源』の「1 物と作品」までを学生のみで輪読し、哲学史の流れや用語等の確認を行った。内容を序章、三つの物概念、道具的なものと作品的なものとに便宜的に分け、それぞれを担当者が要約し、研究会へと臨んだ。研究会では、石黒先生より、当時の時代背景、『存在と時間』やその他の著作との連関、カントやヘーゲル、ニーチェとの関係について説明していただきながら、一文一文精読していった。

・第2回研究会 
日時:2012年11月27日(火)14時00分~16時10分
  場所:創思館409号室
  内容:事前学習では、前回の研究会を振り返ったのち、「2作品と真理」「3真理と芸術」を輪読し、「<大地>とは何か」「<世界>、<闘争>は何か」について生徒間で議論を行い、理解が及ばない箇所を確認した。研究会では『芸術作品の根源』に頻出する言語の確認をしつつ、前回の続きを行った。著者ハイデガーがどのような考えを持ち、当時の社会状況がどのようなものであったのかを石黒先生に教授していただきながら、事前学習では不明瞭におわった箇所に重点を置き議論を深めた。また、『芸術作品の根源』のもととなるニーチェの論についても触れることにより、ハイデガーの論について考える基礎的知識の構築を図ることができた。

・第3回研究会 
日時:2013年2月19日(火)14時00分~16時00分
  場所:創思館409号室
  内容:事前学習では、研究会を欠席した院生へのフォローをしつつ、これまでの研究会で行ってきた『芸術作品の根源』について振り返り、総まとめを行った。研究会では、河合大介「芸術作品における闘争――ハイデガー『芸術作品の根源』より」(『成城文藝』182号、2003年)を輪読し、これまでの内容を踏まえた議論を行った。次に、本書に登場する後期印象派画家Vincent Van Gogh(1853-90)の《靴》(アムステルダム ファン・ゴッホ美術館所蔵)を見ながらハイデガーが本書で述べた見方と一般的に行われる見方の相違を確認した後、ハイデガーが問う「芸術作品とは何か」について議論を交わした。

成果及び今後の課題

本研究会では内容把握とともに、一つひとつの語句を洗い出し、曖昧な個所を残さないように基本文献を読むことを重要視した。そして、二十世紀における芸術哲学の根本問題を考えてゆくとともに、美学に対する批判的視点を検討することを目指した。
 当初は計4回の研究会を行うことを予定していたが、うまく予定を組み立てることができず、当初予定していたほど研究会を開催することができなかった。そのため、3回分の研究会を踏まえた各自の研究課題に沿った発表を行い議論する場が持てなかったことが反省点としてあげられる。しかし、3回分の研究会と院生同士の事前学習においては、参加人数が少人数であったこと、また昨年度までの研究会の参加者であったことにより、講師と学生間での昨年度の研究会を踏まえた活発な議論が行えた。このことは本研究会の成果であると同時にこれまで続けて行ってきた研究会の成果であると考える。
 今後もこのような研究会を行い、近代哲学・文化形成について論じる場を作ることを考えている。また開催頻度を増やし院生各自の研究発表をより多く行うことで、それぞれの学会発表あるいは論文作成に活かしていく方向性を考えていきたい。

構成メンバー

  • 川崎寧生(研究会代表者・表象領域2008年度入学)
  • 小出治都子(表象領域2006年度入学)
  • 鹿島萌子(表象領域2008年度入学)
  • ダニエル・サストレ(表象領域2008年度入学)
  • 角田あさな(表象領域2009年度入学)
  • 平田剛志(表象領域2010年度入学)
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