出生をめぐる倫理研究会(2012年度)

院生代表者

  • 西沢 いづみ

教員責任者

  • 松原 洋子

企画目的・実施計画

 本研究会は出生をめぐる倫理をテーマとし、文献講読や講師を招いた研究会を通して、参加者がテーマへの理解や議論を深め、各自の研究を刺激することを目的とする。人工妊娠中絶・出生前診断・新生児医療・捨て子・養子縁組など、出生前や出生時の子どもの問題だけでなく、子どもが出生した後の問題にも視野を広げる。これまでの公開研究会では、生殖に関する研究を行う社会学者、歴史学者、哲学者を講師に招き、学際的な議論を積極的に試みている。そこで今年度は、男女の不妊をめぐる種々の問題や子どもの出生をめぐる法的な問題について、子の視点・立場をキーワードに考察を試みることを目標に掲げ、法学者の二宮周平氏を招いた公開研究会を企画した。

活動内容

1) 2012年9月2日 於:立命館大学
報告者:由井秀樹
テーマ:「学校衛生と石原色覚検査表:小学校身体検査における色神検査に関する歴史的検討」
2) 公開研究会にむけての事前勉強会
2012年10月31日 於:立命館大学
使用テキスト
・ 二宮周平『家族と法――個人化と多様化の中で』岩波新書,2007年.
・ 二宮周平「家族法と戸籍を考える(28)子の出自を知る権利(3完)―法的構成とその内容『戸籍時報』(643):37-55,2009年.
・ 二宮周平「家族法と戸籍を考える(15)認知制度を誰のためにあるのか(4)―人工生殖と親子関係」『戸籍時報』(607):11-34,2006年.
2012年12月9日 於:立命館大学
使用テキスト
・ 二宮周平「子の出自を知る権利」日本学術会議事務局編『学術会議叢書19 生殖補助医療と法』日本学術協力財団,2012年.
・ 二宮周平「親子関係とジェンダー」ジェンダー法学会編『講座 ジェンダーと法 第2巻 固定された性役割からの解放』日本加除出版,2012年.
2) 2013年2月6日(水)14:00~17:00 於:立命館大学
  公開研究会「生殖と法――二宮周平先生をお迎えして」
  招聘講師:二宮周平(立命館大学教授・家族法)
企画のテーマは「生殖と法」であり、法学者の二宮氏に「生殖補助医療と法――家族形成の希望と子の利益」と題したご講演をいただいた。日本の生殖補助医療規制の現状を批判的に検討し、子の出自を知る権利の確保を行い、提供者、代理母と子、養育親がオープンに交流できる関係性の構築を技術利用の調整点とすることが提案された。
指定質問では、生殖における胎児・新生児の生命保護と法律上の母子関係に関する分娩主義・戸籍制度の限界、第三者生殖技術の利用における子の出自を知る権利の複層性などが討論され、またフロアからは、代理懐胎の依頼者による出生児の引き取り拒否への対策の必要性等、意見が出された。今回は法学的な視点から、第三者生殖技術の利用、親子関係の成立等に関する問題について、多くの参加者と活発な議論を行うことができ、実り多い企画となった。

成果及び今後の課題

 本研究会の活動を通して学際的な議論の方向性を新たに開き、メンバーが各々の研究活動においてその成果を発信することができている。今後は、院生の研究発表と外国語文献の講読に力を入れたい。

構成メンバー

  • 西沢いづみ(代表者・生命領域)
  • 山本由美子(生命領域)
  • 吉田一史美(生命領域)
  • 由井英樹(生命領域)
  • 坂井めぐみ(生命領域)
  • 小栗悠子(社会学研究科)
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