アルチュセール勉強会

院生代表者

  • 橋口 昌治

教員責任者

  • 西川 長夫

勉強会発足当初の主旨文(2005年8月21日)

ルイ・アルチュセール(西川長夫ほか訳)『再生産について――イデオロギーと国家のイデオロギー諸装置――』が日本で刊行され、約3ヶ月が過ぎました。とはいえ、この本に収められた草稿には1969年5月~6月という日付が記されています。36年の時を経た現在の日本や世界において、この本のインパクトとはどのようなものなのでしょうか。5800円もの大金を払ってでも読む価値について(?)、次のような言葉がつづられています。

フランス語版の「編者」であるジャック・ビデ、
「この著作は過ぎ去った時代から舞い戻ってきたように見えるかもしれない。たしかにこの著作は一部、今となっては実行不可能な見解を述べている。しかしながら、この著作は、乗り越えられたと考えることは依然として全くできないような次の問いに私たちを直面させる。すなわち、自由と平等の理想を声高に叫ぶ社会のなかで、ある者たちによる他の者たちの支配が絶えず新たに再生産されているのはどのような条件においてであるか?」(『再生産について』pp7)

あるいは訳者の一人、西川長夫、
「本書の読者は、教条主義とも見まがうマルクス-レーニン主義的原則がくりかえされるのを読み、マルクス-レーニン主義の亡霊を見る思いがするに違いない。だが思いかえしていただきたい。われわれが本書を読んでそのように感じたとすれば、それは同時に、われわれがいかに無原則的な保守化の流れに遠く押し流されてきたかを物語ってもいるのである。そしてわれわれが遠く押し流されたあとの知的廃墟にどっと流れこんできたものを一言で要約すればリベラリズムと言ってよいであろう。現在の体制の維持を前提としたリベラリズムは現代社会の部分的な不正や不平等については語るが、そうした不正や不平等を生み出す根本的な構造については口を閉ざす。だが本書においては、そのようなリベラリズムや経済主義あるいはナショナリズムにかんする根底的な批判がすでに前もって明快な言葉で語られているのである。そしてとりわけ『再生産』という観点は現在、おそらく当時アルチュセールが予想した以上の現代性をもっている。」(同上pp442)

この本は、既存秩序や他者との関係性の再生産という観点から、例えば学校制度について、家族について、法や国家、政府、社会運動や抵抗運動、アイデンティティー、主体性、個人、イデオロギー、階級、ネオリベラリズム、グローバリゼーション、宗教、暴力・・・・など多種多様なテーマ・事象を縦横無尽に語りうる論点を散りばめているように思います。また逆にアルチュセールが語りえていない論点を見つけ出すことも議論を深めるためにも必要なことでしょう(例えば、植民地主義についての言明の無さ)。再生産の力学を狂わせ、世界の別のあり方や他者との関係性の別のあり方をいかに切り開くのか、という問いとともに、ぜひ皆さんとアルチュセール『再生産について』の合評会を開きたいと思います。

活動報告

「アルチュセール・再生産論研究会」は昨年度から行ってきた自主的な研究会を引き継いだ上で、合評会を開くことを目標として活動した。合評会は前期の終わりに、立命館大学国際言語文化研究所と先端総合学術研究科との共催のシンポジウムという形で行われることになった。そこで前期はシンポジウムの準備、後期は紀要『立命館言語文化研究』に掲載する報告の編集と執筆を行った。

勉強会レジュメ

シンポジウム

シンポジウムの内容(講演会等のテーマ・報告者・プログラム・参加人数等)は以下のとおりである。

『再生産は長く続く?――アルチュセール・マラソン・セッション――』

◆2006年7月21日(金)16:30-19:30(開場16:00)
セッション1『再生産について』を今読むことの意味はどこにあるのか
○司会:崎山政毅(立命館大学)
○発表: 林淑美(了徳寺大学)、平井玄(音楽評論家)
○コメンテーター:大中一彌(法政大学)、伊吹浩一(専修大学)、山家歩(法政大学/専修大学)

◆2006年7月22日(土) 10:00-19:15(開場9:30)
セッション2『ニート』議論で語られないこと ―なぜ、まだ、シンドイのか―
○司会:橋口昌治(立命館大学先端総合学術研究科)
○発表:紀井早苗(高槻むくげの会)、上山和樹(『「ひきこもり」だった僕から』著者)
○コメンテーター:山田潤(「学校に行かない子と親の会・大阪」世話人、『ハマータウンの野郎ども』共訳者)、今野晃(専修大学)、能勢桂介(立命館大学先端総合学術研究科)

セッション3 継続する暴力・搾取への抗いに向けて ―社会構成体の<周辺>をめぐる呼びかけ―
○司会・問題提起:大野光明(立命館大学先端総合学術研究科)
○発表:小野俊彦(九州大学)、原口剛(大阪市立大学)
○コメンテーター:伊吹浩一(専修大学)、阿部小涼(琉球大学)
総括セッション
○司会:大野光明(立命館大学先端総合学術研究科)
○発表:西川長夫(立命館大学)
○ディスカッション:セッション1~3発表者および会場参加者。

シンポジウム詳細

参加人数は2日間で延べ120名ほど。質疑応答では活発な議論が交わされた。
なおシンポジウムの報告が掲載される紀要は2008年度に公刊される予定である。

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