芸術経験と作品存在の哲学的解釈学研究

院生代表者

  • 周 鵬

教員責任者

  • 竹中 悠美

企画目的・実施計画

 本プロジェクトの目的は、ガダマー『真理と方法』の講読を通して、芸術経験や作品について論ずる際の解釈学的方法論を理解することであった。ガダマーの解釈学は20世紀ドイツにおける主要な芸術哲学であり、様々な芸術実践を例に作品の存在論を展開している。彼の解釈学的方法を理解することにより、構成員各自がそれぞれ研究対象にしている芸術・文化に応用して、各自の研究を発展させることができると考えた。
本プロジェクトでは、昨年度に引き続き、講師として大阪歯科大学の石黒義昭先生を招聘して、助言を得ながらHans-Georg Gadamer; Wahrheit und Methode: Grundzüge einer philosophischen Hermeneutik, J.C.B. Mohr, 1960(『真理と方法Ⅰ』轡田収他訳、法政大学出版局、1986)を講読し、理論的背景の把握および主要な概念を理解することを目指した。

活動内容

今年度、本研究会では初めて講師を招いた講演会を開催した。これまで、本研究会では、思想に関わる議論はごく僅かであったため、美学者である谷川渥氏を招いた。この講演会は、美学を含む思想と服飾文化の関係を考えていくことが、本研究会に多大な意義があると考え企画した。
昨年度は、ディスカッションが中心だったため、今年度は、研究会メンバーによる発表を中心に行った。発表内容は服飾史をはじめ、マスメディア、ゲームなど各自の研究に関係するものであった。2016年2月には、昨年度同様に、研究会活動の成果を発表する研究発表会を行った。

  • 第1回研究会
  • 日時:2015年11月3日(火)16時30分から20時30分
    場所:衣笠キャンパス究論館プレゼンテーションルームC
    内容:石黒先生を招聘して、邦訳175頁から180頁を輪読し、関連する論点を議論した。

  • 第2回研究会
  • 日時:2015年11月21日(土)14時30分から18時30分
    場所:衣笠キャンパス創思館411号室
    内容:石黒先生を招聘して、邦訳180頁から185頁を輪読し、関連する論点を議論した。

  • 第3回研究会
  • 日時:2015年12月14日(月)16時30分から20時30分
    場所:衣笠キャンパス究論館プレゼンテーションルームB
    内容:石黒先生を招聘して、邦訳185頁から194頁を輪読し、関連する論点を議論した。

  • 第4回研究会
  • 日時:2016年2月13日(土)14時30分から18時30分
    場所:衣笠キャンパス創思館412号室
    内容:石黒先生を招聘して、邦訳195頁から202頁を輪読し、関連する論点を議論した。

  • 第5回研究会(文芸学研究会第60回研究発表会との共催)
  • 日時:2016年2月20日(土)13時30分から17時30分
    場所:大阪梅田キャンパス5階多目的室
    内容:勝又泰洋(京都大学)「プルータルコス『対比列伝』における語り手の自己呈示と読み手の形成」、茂山忠亮(立命館大学)「武智鉄二の目を通した善竹彌五郎、その芸と人」、中村真(大阪大学)「過渡期の産物としての世紀転換期におけるチェコ人の民謡研究――オタカル・ホスチンスキーのボヘミア民謡研究の方法と理念」 の各発表がなされ、質疑を行った。

成果及び今後の課題

 本プロジェクトの成果として、次の点が挙げられる。第一に、ガダマーが解釈学理論の導入として、時間性のみならず芸術経験がなされる空間を重視しているだろうということが確認できた点である。つまり、芸術を体験する者の経験を出発点にして芸術を考えるときに、その者の生における連続する時間と芸術体験における完結する時間という時間意識の二重性に加えて、その芸術体験が引き起こされる空間的側面をも考慮すべきであることが示唆されている。第二に、ガダマーが例として挙げた諸芸術から議論を発展させ、参加者それぞれが専門とする芸術分野を横断して討論を行い、古典的な議論を現代の研究課題と結びつけることができた点である。昨年度と同様、第5回研究会では文芸学研究会と共催で様々な芸術・文化における最前線の研究発表と質疑を行ったこととあわせて、参加者の視野を広げ、各自の研究に発展させていくきっかけとなったと思われる。
丁寧な読解と活発な議論が行われた反面、講読のスピードが遅かった点は、昨年度に引き続き反省すべき点であろう。しかし、参加者の関心が多岐にわたる研究会であることを鑑みれば、活発に議論することによって一つのテキストにさまざまな視点から光を当てることができたことは、意義があった。反省点を次年度に生かしつつ、今後も参加者の関心に合わせて十分な議論を行っていくことは、各自の研究の発展にとって重要であると考える。

構成メンバー

周 鵬(表象領域・2015年度入学・代表者)
向江 駿佑(表象領域・2015年度入学)
焦 岩(表象領域・2014年度入学)
髙見澤 なごみ(表象領域・2014年度入学)
根岸 貴哉(表象領域・2014年度入学)

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