昭和期表象文化研究会

院生代表者

  • 張 憲

教員責任者

  • 竹中 悠美

企画目的・実施計画

 本研究会は昭和期の表象文化に着目し、「昭和」のイメージがどのように表象・継承されているのかを、版画、絵画、文学、祝祭の4つの観点から多角的に明らかにすることを目的とした。2016年は下記のような昭和期を扱った展覧会が充実しており、複数の分野から比較研究をするには絶好の機会であった。本研究会では昭和期の美術を扱った展覧会と重要な出来事に纏わる式典を見学した。これによって、昭和の時代性を示す資料として何が収集されているのか(またはされなかったのか)、そこにどのような特質が見出せるかを、複数の分野から検討し比較することを目指した。活動としては、各メンバーは自分の専門分野にあった展覧会や式典を見学し、資料収集と可能な限り聞き取り調査を試み、報告会にて共有した。張(版画担当)は町田市立国際版画美術館(神奈川県)で開催された「小野忠重コレクション展――近代日本版画」展(2016年7月9日~9月22日)の見学を行った。枝木(文学担当)は弥生美術館(東京都)で開催された「耽美・華麗・悪魔主義 谷崎潤一郎文学の着物を見る」展(3月31日~6月26日)の調査を行った。高見澤(絵画担当)は板橋区立美術館(東京都)で開催中の展覧会、「絵画・時代の窓 1920s-1950s」展(4月9日~6月19日)を見学した。後山(祝祭担当)は8月6日に平和記念公園(広島県)で開催される「平成28年広島市原爆死没者慰霊式並びに平和祈念式」と8月9日に松山町平和公園(長崎県)で開催される「長崎原爆犠牲者慰霊平和祈念式典」へ参加した。

活動内容

  • 第1回報告会 
    日時:2016年12月13日(火)12時00分~13時00分
    場所:衣笠キャンパス究論館公共スペース
    発表者:枝木妙子
    内容:枝木の調査報告と執筆中であった展覧会批評の発表を行い、ディスカッションを行った。
  • 第2回報告会
    日時:2017年2月21日(火)14時30分~16時30分
    場所:衣笠キャンパス究論館公共スペース
    発表者:高見澤なごみ、後山剛毅、張憲
    内容:高見澤と後山の調査報告とディスカッションを行った。張はこの日出席できなかったため、レポートで報告を行った。

成果及び今後の課題

 それぞれの調査で得られた成果は以下である。
張は、昭和期の近代版画を調査し、竹久夢二などの昭和期に制作された版画の表現が後に中国の年画に取り入れられていることを指摘し、昭和期の版画と中国の年画との関連性を指摘した。枝木が担当した弥生美術館の展示では、谷崎潤一郎の文学作品の描写にあわせて当時着用されていた着物が収集・展示されていた。谷崎は濃密な女性描写のために作中であえてシミや汚れを積極的に記述している。古い着物の汚れをそのまま展示していたことで谷崎作品の女性描写を再現することに成功していることを明らかにした。この成果は展覧会批評「谷崎の見た着物と女――『谷崎潤一郎文学の着物を見る』展評」として『コア・エシックス』Vol.13に掲載される予定である。高見澤は1920年代~1950年代の画家たちが、作風を変えながらも一貫して社会への不安や悲惨な現実を題材としていることに昭和期の絵画の傾向を見出した。また表現においても同じような構図やモチーフが複数回登場していることが指摘した。
 後山は広島と長崎の平和祈念式典のプログラムや司会、参加者の様子を比較し、行政主導で行われる広島の式典が厳粛で静かなのに対し、高校生や被爆者が中心となって会を進める長崎の式典は明るい印象を受け、両者の式典には明らかな温度差があることを明らかにした。
 これらの活動内容を共有し議論するなかで、昭和表象の多様性を確認することができただけでなく、各分野での展示方法の違いについても考えるきっかけとなった。また、メンバーが実際に調査を行い報告することでそれぞれの調査の様子を共有でき、調査方法の改善点も指摘された。さらに、本研究会は調査した内容を展覧会批評にまとめ投稿することを目標とし、最終的に1名が『コア・エシックス』にて成果を公開するに至った。しかし、メンバーの各分野への基礎知識や関心にバラつきがあったため、当初目標としていた各分野での昭和期の表象を比較しながら議論を深める作業を十分に行うことが出来ず、今後の課題であると考えている。

構成メンバー

張憲(表象領域 2013年度入学)
枝木妙子(表象領域 2013年度入学)
髙見澤なごみ(表象領域 2014年度入学)
後山剛毅(表象 2015年度入学)

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