「音楽と社会」研究会(2019年度)

院生代表者

  • 山口 隆太郎

教員責任者

  • 千葉 雅也

企画目的・実施計画

 本研究会の目的は、音楽と社会の相関に着目し、音楽学のみならず歴史学や社会学、人類学等の知見を参照しながら音楽・文化研究が行えるよう、必要な知識、方法論を多様なバックグラウンドを持つ参加メンバー間の議論から身に付けることであった。音楽研究において、対象となる作曲家や作品を社会とのかかわりの中で考察することは今や当然のこととなり、様々な学問分野を融合する視点をもって研究を進めることが必要となっている。本研究会はこうした近年の研究の動向を踏まえ、参加メンバー各自の研究に対する視野を広げるため、多様な視点から音楽研究の方法論を議論することで、各自の研究にその知見を活かすことを目標とした。さらに本研究会の意義は、研究発表会開催に関わる企画および運営をとおして、研究遂行能力を高めることにもあった。
 上記の目的を達成するため、今年度は以下二点の活動を行った。1)音楽と社会の相関に着目する本研究会の趣旨に基づき、音楽社会学をはじめ、広く文化に関する基礎研究を講読しながら、各自の音楽研究への適用可能性を含めて議論し、様々な方法論を検討した。2)多様な文化研究の一事例として、学内外の研究者の研究発表会を行った。

活動内容

1)基礎となる文献の講読
 春学期に4回、秋学期に2回の研究会を、立命館大学衣笠キャンパスと京都大学吉田南キャンパスで実施し、次の文献をメンバーで議論した。
①2019年4月21日(日)13時~15時(会場:京都大学吉田キャンパス吉田南総合館南棟126)
講読文献:ヴァルター・ベンヤミン「複製技術時代の芸術」
②2019年6月8日(土)13時~15時(会場:立命館大学衣笠キャンパス究論館プレゼンテーションルームA)
講読文献:坂部恵『かたり――物語の文法』
③2019年7月13日(土)15時~17時(会場:京都大学吉田キャンパス吉田南総合館南棟126)
講読文献:ヴァルター・オング『声の文化と文字の文化』(1~3章)
④2019年9月21日(土)14時~16時(会場:立命館大学衣笠キャンパス究論館プレゼンテーションルームA)
講読文献:ヴァルター・オング『声の文化と文字の文化』(4~7章)
⑤2019年11月30日(土)14時~17時(会場:京都大学吉田キャンパス吉田南総合館南棟126)
講読文献:スチュアート・ホール他編『カルチュラル・アイデンティティの諸問題』(1, 2, 6章)
⑥2020年3月22日(日)10時30分~12時(会場:立命館大学衣笠キャンパス究論館プレゼンテーションルームA)
講読文献:スチュアート・ホール他編『カルチュラル・アイデンティティの諸問題』(7, 10章)

2)講演会の開催
 2020年1月15日(水)13時~14時30分に、立命館大学アート・リサーチセンター多目的ルームにおいて、ネバダ大学講師でクラリネット奏者のイワン・イワノフ氏Ivan Ivanov Ph.D.を招いて「Surrealism in Music」と題した講演会を実施した(立命館大学アート・リサーチセンターとの共催)。当日の参加者は10名であった。
 本講演は、サルバドール・ダリのコンセプトを作曲の中で実践したバラダの作品を通じて、シュルレアリスムと音楽とのかかわりを明らかにしたものであった。講演後の質疑の時間では、バラダと同じくアメリカで活躍した作曲家ジョン・ケージとのかかわり、バラダの同時代の作曲家との影響関係、バラダの政治に対する態度など、バラダに関する質問が中心となった。以上を通して本講演会では、作曲家の作品に対する影響が、ある個人との関係のみに帰結させることができるかといった点に関する議論を深めることができた。

3)研究発表会の開催
 2020年2月1日(土)に、キャンパスプラザ京都第一会議室において、「音楽と社会」研究会の研究フォーラムを開催した。当日は約25名の学内外の研究者が来場した。当日のプログラムは以下のとおりである。
【院生発表①】11時~13時
原塁(京都大学大学院)「武満徹の後期創作におけるイメージとかたち」
荒木真歩(神戸大学大学院)「民俗芸能における正統性の獲得――記録映像を用いた習得に着目して」
西澤忠志(立命館大学大学院)「明治30、40年代の音楽鑑賞論の展開と問題意識――小松耕輔の音楽評論から」
【院生発表②】14時~16時55分
中辻柚珠(京都大学大学院)「プラハ・モダニズム研究史――成立期における言説とその特徴」
奥坊由起子(立命館大学大学院)「1920年代イングランドの音楽における国民性とモダニティ」
加納遥香(一橋大学大学院)「社会主義ベトナムにおける革命と音楽――ベトナム・オペラ《コー・サオ》に着目して」
松本理沙(京都大学大学院)「グループ・マテリアル活動初期におけるコミュニティの表象」
【講演】17時10分~18時
田邉健太郎氏(立命館大学)「映画音楽、物語空間、虚構の語り手」
院生発表では、各セクションを緩やかに関連し合うテーマの発表で構成し、すべての発表を行ってからコメンテーターの吉田寛氏(東京大学)によってセクションの議論の整理や各発表に対するコメントがなされた。その後、討論の時間を設け、フロアを含めて活発な議論が行われた。また、田邉氏の講演では、分析美学の文脈から映画音楽についての研究を取り上げ、「語り手」をどのように考えるかが議論された。
本企画を通し、他大学を含めた発表者や講演者、会場との調整を行うことで、研究を遂行する上で必要なコミュニケーション能力を養うとともに、芸術や文化の研究に対する視野を広げることができた。

  • 「音楽と社会」研究会 研究フォーラム
  • 日時:2020年2月1日(土)11:00-18:00
    場所:キャンパスプラザ京都 第一会議室
    アクセス

    【タイムテーブル】

    発表要旨はこちらよりご覧いただけます。

    院生発表 第1部(11:00-13:00)
    ・原塁(京都大学大学院)「武満徹の後期創作におけるイメージとかたち」
    ・荒木真歩(神戸大学大学院)「民俗芸能における正統性の獲得――記録映像を用いた習得に着目して」
    ・西澤忠志(立命館大学大学院)「明治30、40年代の音楽鑑賞論の展開と問題意識――小松耕輔の音楽評論から」

    院生発表 第2部(14:00-16:55)
    ・中辻柚珠(京都大学大学院)「プラハ・モダニズム研究史」
    ・奥坊由起子(立命館大学大学院)「1920年代イングランドの音楽におけるナショナル・アイデンティティとモダニティ」
    ・加納遥香(一橋大学大学院)「社会主義ベトナムにおける革命と音楽――ベトナム・オペラ《コー・サオ》に着目して」
    ・松本理沙(京都大学大学院)「アクティヴィズム・アートにおける表象と行動――1980年代アメリカを例に」

    講演(17:10-18:00)
    ・田邉健太郎(立命館大学)「映画音楽,物語空間,虚構の語り手」

    コメンテーター:吉田寛(東京大学)

    主催:立命館大学先端総合学術研究科

成果及び今後の課題

 今年度はシンポジウムを企画しなかったことで、音楽と社会の相関をより広くとらえ、幅広い文献の講読に取り組むことができた。その結果、さまざまな分野の研究の視点を各自の音楽研究への適用可能性を深く議論することができた。また学内外の研究者と共同して研究会を開催することができ、討論を通してそれぞれの研究を深めるとともに、芸術や文化の研究にとって重要な主題を議論することができた。また、企画・運営を行うことでメンバーの研究遂行能力を高めることにつながった。しかしながら、学外施設を利用するにあたり、より綿密な計画や確認が必要であった。今回の計画を見直し、次年度以降の研究会に生かしていきたい。

構成メンバー

【先端総合学術研究科】
奥坊 由起子(表象領域)、SHIN Juhyung(共生領域)、西澤 忠志(表象領域)、松本 昂也(共生領域)、森 敬洋(表象領域)、山口 隆太郎(表象領域)
【学外参加者】
荒木 真歩(神戸大学大学院)、加納 遥香(一橋大学大学院)、中辻 柚珠(京都大学大学院)、原 塁(京都大学大学院)、牧野 広樹(京都大学大学院)、松本 理沙(京都大学大学院)、吉田 瞳(京都大学大学院/エアランゲン大学)

活動歴

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2017年度の活動はコチラ
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