公共―21世紀における公共性

公共

21世紀における公共性
国民国家の法的擬制である公/私の境界の変容過程をたどり、分配的正義および経済システムの問題を視野に入れながら、国民国家に変わるシステムの可能性を探ります。

社会/社会的なものの原理的解明――天田城介(社会学)

天田城介写真
社会学を基礎として天田が中心となって、〈社会〉あるいは〈社会的なもの〉の原理的・理論的な解明を試みる。19 世紀における〈社会〉ないしは〈社会的なもの〉が迫り出していく歴史的・時代的ダイナミズムとその政治経済的な存立条件を探求することを通じて、戦前・戦 後の日本社会における〈社会〉ないしは〈社会的なもの〉を解読していく。特に、近代日本社会における社会政策とりわけ高齢者関連政策に照準した上で、現代 における福祉国家の批判的検討とその理論的考究を行うものとする。換言すれば、「なにゆえに、いかにして、脆弱な人びとを我々は生かそうとするのか/生か そうとしないのか」という最も大きな問いに対して何らかの回答を与えることこそが、ここでの最大の目的となる。

超高齢化社会における福祉とジェンダー――上野千鶴子(社会学)


少子高齢化社会は歴史上かつてない段階に入り、日本は人口減少社会に突入した。そこでますます必要となるケアのコストを、いかなる負担と給付の配分のもとに社会が担うかは喫緊の課題である。しかもケアはこれまで助成の不払い労働としていちじるしくジェンダー化されてきた。その現実を踏まえながら、ケアのニーズと提供をその両面から、現場と実態に即して検討していきたい。日本の経験は世界が注目するモデルとなるはずである。

福祉と正義と経済と:3つの視点が結ぶ未来――後藤玲子(経済学)

後藤玲子の写真
経済学を基礎として後藤を中心に、民主主義の経済的前提を明らかにする。価値の多元性を特質とする現代社会は、諸個人を政策の意思決定主体として扱う仕組 みを民主主義システムとして用意している。だが、そのことは人々の私的利益に基づく選好をそのまま尊重することを意味するものではない。諸個人が主体的 に、政策評価に相応しい公共的・不偏的な判断を形成するためには、多様な個別的状況にある人々に及ぼされる影響を考慮し、道理ある複数の価値判断の両立可 能性を探ることが必要となる。私的な利益や個人的な価値判断を相対化するような機会(公共的討議の場)と情報の、制度的および主体的条件を探求する。

平等と自由/自由の平等――立岩真也(社会学)

立岩真也の写真
社会学を基礎として立岩が中心となって、公共性の基礎としての分配あるいは自由等、原理的なレベルから理論構築をこころみる。「分配的正義」については、 厚生経済学とその批判的な展開、政治哲学における論争、アナリティカル・マルキシズムと呼ばれる陣営に属する人たちの主張等を読解していく。その上で、い かなる財の配置のあり方が望ましく、また可能なのかを考える。そして、分配的正義の問題における自由、帰属、承認について考察する。

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