ビデオゲーム文化研究会

院生代表者

  • 梁 宇熹

教員責任者

  • 千葉 雅也

企画目的・実施計画

本研究会の目的は、ビデオゲームをはじめとするコンテンツ分野に関する歴史・変遷・現状を巡って、特にグローバルな視点から、既存のゲームスタディーズや視覚文化に対する理解を深めながら、将来性を検討することである。本研究会においては、個々分野の分析だけではなく、多数のコンテンツを横断的に概括し、今後のビデオゲームや視覚文化に関する研究の方向と課題の提出を試みる。また、申請者共はこの研究会を媒介として、各分野に関心を持つメンバーの交流・支援のためのネットワークの基礎を構築する。また、構成メンバーは各自の研究を深め、日本におけるゲーム文化の発展史を調査するため、『ニッポンのマンガ*アニメ*ゲーム』展覧会に参加し、展覧会の意義や今後の課題についても分析、考察を行った。

活動内容

  • 第1回研究会
    日時:2015年6月25日(木) 17時00分~18時30分
    場所:究論館 プレゼンテーションルームA
    内容: 第一回では、前年度とは異なり、本研究科に新入生として周鵬、向江駿佑が新たにゲーム研究を行う院生として、研究会の中核メンバーに参入したため、本研究会を前年度とは違う形で行うことを中心に、今後の予定と方向性を確定するべく相談の機会を設けた。結果的に今年度の研究会は、専門が大きく異なるメンバーが多いことから、基礎文献の輪読を主とするのではなく、それぞれが進めている研究や、読み進めている文献の報告、及びそれを中心とした議論を行う事に変更することとなった。また、同時に大きな発表会以外には隔週の木曜日17時~19時の間に、究論館の1Fにてメンバーを集める日、時間を作り、個々人の研究成果を確認し、議論しあう機会を設けることにした。隔週の定例集会では、例えばそれぞれが発表を控えている学会研究大会の発表を、より大会内での議論を深めるために先行して行う場合や、各々が読み進めた文献の紹介を行う、純粋に現状の進捗を報告する場合など多様であり、それぞれの状況に応じた形での議論が行われた。この定例の集会では、現状のゲーム研究における今後の課題の提示や議論も多々行われ、各人の専門とする研究領域の共有に大いに役立つものとなった。
  • 第2回研究会
    日時:2015年8月02日(日) 10時00分~12時00分
    場所:東京・国立新美術館
    内容: 第二回例会では、特別企画として、6月24日から8月31日までの間、東京、六本木の国立新美術館で行われていた『日本のマンガ・アニメ・ゲーム展』の見学を行った。メンバー全員が同時に参加することは各人の所用や遠方で開催されている点の問題があり難しかったが、最終的に全員が鑑賞を行った。同時に参加した面々はおのおの同展覧会の展示物、展示の手法、章の構成など、さまざまなことについて議論しながら鑑賞していた。後述する第三回例会では、これらの議論や展覧会の内容を中心に、この展覧会の構成、意義について発表している。
  • 第3回研究会
    日時:2014年10月08日(木) 17時00分~19時00分
    場所:プレゼンテーションルームB
    内容: 第三回例会では、辛 注衡、焦 岩、川﨑寧生により、『日本のアニメ・マンガ・ゲーム展』の内容の整理、及び今後の課題と意義に関する発表、そして周 鵬による、デジタルゲームにおける行動の変遷に関する発表が行われた。まず辛ら3名はそれぞれ異なる観点から同展覧会の内容の整理、及び成果と今後の課題を提示しており、結果的にアニメと漫画、ゲームという現代日本を代表し、またそれぞれが密接に絡みあった三種の文化の、初の同時展覧会という意義を確認した。その一方で今後の課題として、展示作品や展覧会自体の構成、展示の仕方など、全体的に3つの文化をまとめて展示するにあたって、同時展示した意義がうまく表せていなかったことや、カタログ内で提示していた現代日本史との関わりなど、本来提示したかったことがうまく表現できていない問題なども確認した。全体として、課題の多い展覧会であったということは確認しつつも、今後の日本ポップ・カルチャー史を俯瞰する上で重要な展覧会であることを、発表と議論で確認出来た。
    続いて周の発表では『何よりも、行動を』という題名で、1970年代から現在に至るデジタルゲームの歴史の中でゲームにおける『行動』というワードに着目して分析を行っていた。発表内ではゲーム内のコントロールデバイスに着目、ゲーム史の中でデバイスが複雑化、或いは身体化することで、より繊細な行動をゲーム内で行うことが可能になったこと、ゲーム世界への没入感の高まりと、同時にゲーム側もより「らしい」世界を構築しやすくなったことを、各ゲーム、特にレースゲームと音楽ゲームの変遷を通じて分析していた。最終的に、これらの変遷を通じて、ゲームはプレイヤーがキャラクターへコントローラーを通じて指示するものから、プレイヤーが動作することで自発的にゲームに働きかけるものに変化しているのではないかと考察し、この方向性をより先鋭化させているオープンワールドタイプのRPGの重要性を提示していた。本発表では特に、ゲームの変化、進化と言われているものは実際どのようなものなのか、それは今後ゲーム研究でどのように考えていくべきかなどを中心に、おおいに議論を重ねることができた。

成果及び今後の課題

 本研究会では特に隔週の定例集会を中心に現行専門化しつつある各ゲーム研究領域の共有化に努め、各々が進めた研究テーマを主軸に発表を行うことで、参加者がより研究を進めながら活発に議論が行う場を作ることが出来た。その一方で、隔週の定例集会を中心とした議論が主体となってしまったため、普段の研究会の活動が比較的クローズドなものになってしまったことは大きな反省点である。
 また、節目で行った各研究会では、特に今年度、埼玉のスキップCITYで行われた『あそぶ!ゲーム展』(10月3日~2月28日)や彙報提出時現在進行形で行われている『GAME ON~ゲームってなんでおもしろい?~』(3月2日~5月30日)など、デジタルゲームに関する史学的展覧会が大いに行われ、日本においてデジタルゲームが文化として歴史上に位置され始めた中で、ゲームを展示するということの難しさや、いかなる形で展示していくべきか、何を展示すべきかなど、他のメディアと比べてゲームを展示することが如何に特殊で、かつ課題が多いものかを、早い段階で活発に議論出来たことは、研究会の成果であると考えられる。
 今後もこのような研究会を行い、参加者間におけるゲーム研究に関する理解を深めつつ、今後より活発になると思われるゲーム研究について、より議論を行う場を作る事を考えている。また、議論を進めるだけではなく、今後もさらに研究会での内容を踏まえた発表や、論文作成へと発展させていきたい。

構成メンバー

梁 宇熹(表象領域・2012年度入学・代表者)
焦 岩(表象領域・2014年度入学・研究分担者)
川崎 寧生(表象領域・2008年度入学)
辛 注衡(表象領域・2014年度入学)
周 鵬(表象領域・2015年度入学)
向江 駿佑(表象領域・2015年度入学)

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