ディアスポラの文化経済的実践としてのグローバルシネマ研究会

院生代表者

  • 権藤千恵

教員責任者

  • 岸政彦

企画目的・実施計画

1. 研究の目的
 本研究の目的は、ディアスポラ(華僑、越僑等移民)の受入国における文化経済活動について1)映画を事例に議論2)越境する人々と文化経済活動 3)さらに活動から生み出された「モノ」のグローバル展開について明らかにすることである。
2. 本研究の内容
 本プロジェクトではケーススタディとしてベトナムにおける帰国越僑の映画製作活動を取り扱う。現代ベトナム映画を牽引する帰国越僑のメディア実践(映画制作)を通じて、1)越僑の文化活動はどのように行われてきたのか2)越僑たちはなぜ祖国への移動とメディア実践を選んだのか 3)共にメディア実践を行う人々のネットワークはどのように形成されたのかについて明らかにし、ディアスポラが生み出すモノの移動としての映画=グローバルシネマについて地域研究、移民研究、人類学、社会学等、様々な専門分野から読み解くことである。
3. 本研究の意義
 本研究の意義は、移住から同化へと変容するこれまでの移民研究が提示してきた理論だけでは語り切ることができない、ディアスポラが生んだ移動と実践について多様な専門分野から議論されることの必要性を、実践された「モノ」としての映画と彼らの「語り」を通じて提示することにある。また、院生プロジェクトとしては異なる専門分野から学際的研究者としての研究活動を行う先端研の院生が中心となって、それぞれの専門分野から本研究のリサーチクエスチョンである移民の送出先における文化活動・経済活動をさまざまな視点から読み解くことでプロジェクト参加者同士がお互いの博士課程における研究手法を客観的に捉え、各院生のさらなる研究に生かす意義がある。
4. 研究対象(事例)とその背景
 本研究で事例として取り上げるベトナムにおけるディアスポラ(越僑・帰国越僑)は、ベトナム戦争による政治難民と第三次インドシナ戦争・中越戦争からの貧困によって国を逃れた難民たちである(Duong 2016)。べトナムでは1980年台後半に「貧しさを分かち合う社会主義」という旧来の社会主義モデルからの脱却からドイモイ(刷新)政策が生まれた。このことは難民たちが受入国から送出国へ仕送りをするモノとカネの移動を生み出すきっかけを与えることになった(古田 1993)。
 ベトナムの映画産業は、ドイモイ政策による市場開放と経済改革をきっかけに発展した文化産業のひとつである。さらに、2000年台に他国へ逃れた越僑及びその子供たちにあたる1.5世たちの帰国と市民権を認めたことは、ベトナム映画産業からハリウッドスタイルのブロックバスター映画が生まれる大きなきっかけとなった(Duong 2016)。
 加えて、近年改正された映画法(62/2006/QH11及び31/2009/QH12)によって外国企業のベトナム映画産業への進出が認められてからは、韓国のロッテやCJ CGVが中心となってホーチミン・シティやハノイなどの都市部でのシネコン開業や映画制作事業を加速させている (Korean Film News 2016)。
5. 研究の方法
 今年度は研究会(例会)と小規模な国際シンポジウム(国際共同研究会)を実施する予定である。研究会においては主に「移民・国際移動」「東南アジア映画」を題材に議論を勧めていく。ディアスポラや移民、国際移動については、近接するテーマを研究対象とする研究会メンバーが中心となり近年の移民に関する先行研究事例紹介を行う。
東南アジアの映画と帰国越僑については特に北米のベトナム系アメリカ人の事例を中心に研究代表者及び1回生を中心に作品紹介や事例紹介を行う。研究会の内容の詳細については、院生メンバーそれぞれの研究テーマと紐づけながらそれぞれの専門分野に紐づけて調査ができるよう研究会の中で議論を進める。
 シンポジウムに関しては米国ロスアンジェルスを拠点とするVisual Communications(https://www.vconline.org/)等アジア系アメリカ人の映画製作支援を行っている機関を通じて、または現地ベトナムの映画関係者との直接交渉によって、米国からベトナムに活動の拠点を移した越僑(帰国越僑)の映画関係者を招くことを検討している。
 尚、当該分野における海外研究者及び国内研究者については現在調査中である。シンポジウムに関して、最終的な内容やゲストは研究会で議論し決定する。また、本研究では当該研究が継続的に実施できるようVisual CommunicationsやUCLAのAsian American Studies、ハワイ大学(イーストウエストセンター)との共同研究推進を試み、その方向性を模索する。また今後はアジアの他地域についても取り上げることができるよう、研究会で議論を進めていく。

(参考資料)
古田元夫「ドイモイ路線誕生時の党内論争 -1984~86年の論争の歴史的分析-」白石昌也・竹内郁雄(編)『ベトナムのドイモイの新展開』日本貿易振興会アジア経済研究所・アジア経済出版会,3-6頁, 1993年3月.
Lan Duong “Diasporic Returns and the Making of Vietnamese American Ghost Films in Vietnam”, MELUS: Multi-Ethnic Literature of the U.S. Volume 41, Number 3, Fall 2016, pp. 153-170.
CJ CGV acquires Vietnam’s leading cinema chain, Korean Film News, July 11, 2011. Retrieved on May 30, 2018 from http://www.koreanfilm.or.kr/jsp/news/news.jsp?mode=VIEW&seq=1568

活動内容

  • 公開研究会「かわいいはベトナム!──かわいいから探るベトナムのこれまでとこれから」
  • 日時:2018年12月5日(水) 18:30開場 19:00開始
    場所:MTRL京都(マテリアル京都)
    【スピーカー】
    ジェニー・チャン・レ(映画「The Rebel 反逆者」「ホイにおまかせ」プロデューサー)
    トミザワ ユキ(料理研究家)
    西澤智子(写真家)

    *詳細はこちら

構成メンバー

・権藤 千恵 
・浅山 太一 
・今里 基
・OUYANG Shanshan
・酒向 渓一郎
・長島 史織
・Lu Zhihao

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