「音楽と社会」研究会(2020年度)

院生代表者

  • 西澤 忠志

教員責任者

  • 千葉 雅也

概要

 本研究会の目的は、音楽と社会の相関に着目し、音楽学、美学や社会学、人類学等の知見を参照しながら音楽・文化研究が行えるよう、様々な分野で前提となる知識、概念、そして方法論を多様なバックグラウンドを持つ参加メンバー間の議論から身に付けることである。音楽研究において、対象となる作曲家や作品を社会とのかかわりの中で考察することは今や当然のこととなり、様々な学問分野を融合する視点をもって研究することが必要となっている。こうした研究の動向を踏まえ、参加メンバー各自の研究における視野を広げることに主眼をおいている。
上記の目的を達成するため、本研究会は音楽と社会の相関に着目する本研究会の趣旨に基づき、広く文化に関する研究の文献講読を行う。特定の学問分野に限定することなく文献を講読するためには、概念の基本的な理解だけではなく、学問分野による用語の使われ方の差異にも留意し、理解することが不可欠である。古典的文献と近年の研究書を講読することで、既存の方法論や近年の研究手法についての知見を深め、そうした様々な方法を音楽研究へ適用しうる可能性を考慮に入れて議論する。そのことによって各自の研究課題を深め、音楽を含めた文化研究への視野を広げられることが本研究会の意義である。

活動内容

 次の6冊の基礎的な文献を講読し、メンバー間で議論した。春学期に4回、秋学期に5回の研究会を、オンライン上で実施した。

①テオドール・アドルノ『模範像なしに』
研究会 1:2020年5月5日(火)14時00分~17時00分(オンライン上で実施)
講読箇所:「好ましからざるもののすすめ」、「今日の機能主義」、「悪用されたバロック」、「芸術と諸芸術」
総括  :現代芸術に対するアドルノの態度、現代芸術のマネージメント、そして芸術と諸芸術の境界線についてのみならず、アドルノ哲学におけるイデオロギーや思想的背景についての知見が得られた。

②粟谷佳司,太田健二編『表現文化の社会学入門』
研究会 2:2020年6月21日(日)14時00分~17時00分(オンライン上で実施)
講読箇所:第2章「「ホンモノ」らしさをめぐる議論――ベンヤミン、アドルノ、ボードリヤール」、第5章「メディア、テクノロジーと文化――マクルーハンから文化研究の諸相」
研究会 3:2020年7月12日(日)14時00分~17時00分(前半)(オンライン上で実施)
講読箇所:第6章「戦後日本の文化研究――鶴見俊輔と吉本隆明の文化論」、第12章「大阪万博をめぐる表現文化」
総括  :芸術や大衆文化を含む様々な表現文化を社会学的理論に基づいて研究する手法について学び、理論を応用して研究を深める方法とその限界や問題点について議論した。

③ジョナサン・クレーリー『観察者の系譜』
研究会 3:2020年7月12日(日)14時00分~17時00分(後半)(オンライン上で実施)
講読箇所:第1章「近代と観察者の問題」
研究会 4:2020年8月15日(土)14時00分~17時00分(オンライン上で実施)
講読箇所:第2章「カメラ・オブスキュラとその主体」、第3章「主観的視覚と五感の分離」
研究会 5:2020年9月27日(日)14時00分~17時00分(オンライン上で実施)
講読箇所:第4章「観察者の技法」、第5章「視覚的=幻想的(ヴィジョナリー)抽象化」
総括  :歴史的な系譜を辿りながら観察者とその身体にフォーカスをあてた視覚の近代化と、その歴史研究における身体の扱い方について学んだ。聴覚をめぐる歴史的議論の現状について確認した。

④マルク・オジェ『非‐場所:スーパーモダニティの人類学に向けて』
研究会 6:2020年11月1日(日)14時00分~17時00分(オンライン上で実施)
講読箇所:「プロローグ」、「場所から非‐場所へ」
総括  :「場」と「空間」の概念の整理し、オジェのいう「非-場所」概念を確認した。そのうえで、現代のアイデンティティの諸相をオジェの主張をもとに議論した。

⑤原克『騒音の文明史:ノイズ都市論』
研究会 7:2020年12月12日(土)14時00分~17時00分(オンライン上で実施)
講読箇所:第7章「騒音と静寂の権力論」、第8章「都市の交響楽」
総括  :明治期における音楽、雑音、静寂、騒音を含む「音」の秩序や、「音」の扱われ方を中心に議論し、明治期においても音に関する立場は江戸時代を踏襲していたことを確認した。その上で、日本とイギリスなどの諸外国との「騒音」めぐる反応の違いを通じ、音に関する国ごとの感性的な違いを議論した。

⑥ジェイムズ・クリフォード『文化の窮状:20世紀の民族誌学、文学、芸術』
研究会 8:2021年2月7日(日)14時00分~17時00分(オンライン上で実施)
講読箇所:第1章「民族誌的権威について」、第3章「民族誌的自己成型」
研究会 9:2021年3月14日(日)14時00分~17時00分(オンライン上で実施)
講読箇所:10章「芸術と文化の収集について」
総括  :芸術=文化システムという従来の西洋中心主義的な姿勢から脱却し、ある文化を現在における別のコンテクストに置き換えることで、文化的な混淆性をとらえるという、人類学の新たな取り組みや手法について学んだ。

成果及び今後の課題

 今年度は、コロナ禍の中でオンラインでの開催になったが、学外に所属する参加者でも参加しやすいという利点があり、構成メンバーを越えて他大学の院生等も含め多くの参加があった。過年度の活動でも研究フォーラムなどを企画することで他大学の院生等も交えて議論する機会を創出してきたが、継続的な参加が難しいという課題があった。オンラインでの研究会の設定によって幅広い議論に発展したことから、今後の研究会の運営にオンラインを継続して取り入れていくことも検討したい。
今年度は文献講読のみの活動であったが、人文科学の幅広い分野の文献を講読することができ、音楽への応用可能性を含めて議論することができた。本研究会の議論を、メンバー各自の研究課題を広い視野で研究するための素地として、今後の研究に生かしていきたい。

構成メンバー

西澤 忠志
SHIN Juhyung
松本 昂也
森 敬洋
Wang Qionghai

活動歴

2014年度の活動はコチラ
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2016年度の活動はコチラ
2017年度の活動はコチラ
2018年度の活動はコチラ
2019年度の活動はコチラ

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