「音楽と社会」研究会(2017年度)

院生代表者

  • SHIN Juhyung

教員責任者

  • 吉田寛

活動内容

  • シンポジウム:
    「音楽すること」が生み出すもの――記憶からのアプローチ
  • 日時:2018年2月11日(日)13:00~17:00

    場所:立命館大学 衣笠キャンパス諒友館829号室

    アクセス
    キャンパスマップ

    【内容】
    13:00~15:00 基調講演

    登壇者(敬称略)※タイトル等は変更となる可能性があります。

    小泉恭子
    (大妻女子大学/音楽社会学)
    「社会に耳をすます――記憶の音風景」
    要旨:
     デジタル化でアマチュアが音楽データを簡単に複製できるようになり、音楽産業は著作権の管理を厳格化した。半面、インターネットの動画サイトで世界中の音楽に、無料で、容易に接することができるようになった結果、「コト」としての音楽ライブや「モノ」としてのパッケージメディアに新たな価値が生まれた。音楽メディアにおける「コト」「モノ」の変遷は、「ヒト」の音楽の聴き方にどう影響を与えたのか。音楽の聴き方は、今後どう変わっていくのか。     
     登壇者は、団塊世代が大量に定年退職を迎えた2007年を中心に生じた「昭和ノスタルジアブーム」を批判的に検討するため、第二次世界大戦後の大衆音楽を、年長者の懐古趣味としてではなく、戦後70年(2015年)に向けて世界的に盛り上がった「文化と記憶」研究のフレームで考察した(拙著『メモリースケープ―「あの頃」を呼び起こす音楽』、2013年、みすず書房)。本発表では「音楽と記憶」をめぐるこれまでの議論を整理し、「過去」をひもとくことで、「未来」の音楽の聴き方の指針をさぐる。
     音楽は「記憶術」との関連も深い。映画のサウンドトラックなどはまさに物語や場面を記憶させるために働いている。またテレビコマーシャルでは、視聴者を画面に振り向かせるために、音楽の果たす役割は大きい。こうした日常的なメディアにおいて、かつてのヒット曲がどう再利用され、その意味を書き換えられているかについても、記憶の観点から検討したい。

    能登原由美
    「ヒロシマと音楽」委員会/音楽学(西洋音楽史)、
     著書『「ヒロシマ」が鳴り響くとき』
    「『ヒロシマ』を歌うのは誰なのか?――音楽と記憶、その主体」
    要旨:
     広島・長崎への原爆投下から70年余りが経過した。当時を知る人々の数は年々少なくなり、記憶の風化と継承が叫ばれるようになって久しい。その凄惨な記憶と、同じ過ちを二度と繰り返すまいという思いは、時に音楽にのせられ、時間的、地理的隔たりを超えながら記憶を直接持たない人々にまで届けられてきた。
     ただし、原爆投下の記憶は、当事者か非当事者かによって、あるいは当事者であっても各自が直面した状況によって異なり、決して一つではない。また、時とともに鮮明さを失っていく記憶の性質上、時間の経過を挟んで語られる記憶も同じとは言えない。さらに、心身の痛みを他者と共有できないのと同様に、記憶は他者と共有できるものではなく、受けとめる主体によって多様に解釈されていく。つまり、原爆投下の記憶を想起する時、想起する主体の数だけ記憶が生じると言える。だとすれば、その記憶をのせた音楽も一つではなく、歌い手や聴き手を含めてそれに関わる主体の数だけ解釈が生じると言えるであろう。
     一方で、70年という年月は記憶の語りにある種の類型化をもたらしているようにもみえる。同様に、その音楽にも類型化をみることができるが、こうした類型化が逆に主体の記憶そのものを侵食することになってはいないだろうか。
     本発表では、原爆投下の記憶を「ヒロシマ」と称し、「ヒロシマ」を歌った音楽について作品事例を紹介しながら、その多様性と類型化を指摘するとともに、主体との関わりについて論じたい。

    中村美亜
    (九州大学/芸術社会学、著書『音楽をひらく―アート・ケア・文化のトリロジー』など。芸術活動が個人のエンパワメントや社会環境の変容を促すプロセスや仕組みに関する学際的な研究をおこなっている。ジェンダーやセクシュリティに関する著作も多い。九州大学ソーシャルアートラボ副ラボ長。)
    「音楽表現を通じた記憶の再編とエンパワメント」
    要旨:
     一般に記憶は、「過去の体験や出来事を覚えていること」だと考えられています。過去の体験や出来事を箱の中に入れてしまっておき、必要な時にそこから取り出すというイメージです。しかし、20世紀末以降の学際的な記憶研究は、意識と無意識の境界や、体験の記憶と身体知の区分が、従来想定されていたほど明瞭ではないことを明らかにしました。また、体験は箱の中にしまわれるというよりも、箱そのものの機能や形に影響を及ぼすということもわかってきました。つまり、未来の知覚や認識の仕方を方向づけ、自分自身のあり方にも変化を及ぼすということです。記憶をこうした立場から捉えるなら、音楽活動というのは、過去の記憶を総動員しながら、未来の自分をつくっていく活動ということもできるでしょう。 
     本発表では、2017年札幌国際芸術祭で行われた「さっぽろコレクティブ・オーケストラ」を題材に、この活動がどのように子供たちのエンパワメントに貢献したかを理論的に検討していきます。さっぽろコレクティブ・オーケストラは、音楽経験や能力にかかわらず、小学生から18歳までの誰もが参加できる即興楽団です。主催者側が意図したわけではありませんが、学校では居場所を見つけにくい子どもや、発達障害を抱える子どもたちも数多く参加しました。ここでの活動を「記憶が再編される場」と捉えなおすことで、音楽表現とエンパワメントの関係を紐解いていきます。

    15:15~17:00 ディスカッション

構成メンバー

・奥坊 由起子: 
  イングランド音楽文化史  エドワード・エルガー ナショナル・アイデンティティ
・黄 茜: 
  比較文学  村上春樹 華人 ディアスポラ
・焦 岩:
  遊び論  遊び概念分析 ゲーミフィケーション 
・SHIN Juhyung
・堤 万里子: 
  文化政策学  公立文化施設(音楽堂、劇場)
・西澤 忠志: 
  近代日本音楽史  明治期の批評
・山口 隆太郎: 
  音楽哲学  演奏論 アルフレッド・シュッツの音楽論

研究会メンバー
・中辻 柚珠(京都大学大学院):
  近現代チェコ史  ナショナリズム チェコ美術 ナショナル・インディファレンス
・原 塁(京都大学大学院):
  20世紀の音楽/美学思想
・藤原 征生(京都大学大学院):
  日本映画史/日本映画音楽史  芥川也寸志研究
牧野 広樹(京都大学大学院): 
  ドイツ文化史  青年音楽運動

活動歴

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