国際シンポジウム「共有できない平和/争いが移動する」International Symposium “Unshareable Peace(s) / Conflicts in Motion”

国際シンポジウム「共有できない平和/争いが移動する」
International Symposium “Unshareable Peace(s) / Conflicts in Motion”

日時

2019年11月9日(土) 

会場

立命館大学衣笠キャンパス 創思館カンファレンスルーム
立命館大学衣笠キャンパスマップ(30番の建物)

主催:

同シンポジウム実行委員会

共催:

立命館大学大学院先端総合学術研究科

後援:

立命館大学生存学研究所

参加

・無料
・準備の都合上、参加される方は事前に下記メールアドレスにお名前と人数をご一報ください。
立命館大学先端総合学術研究科「共有できない平和/争いが移動する」窓口
 sentan01@st.ritsumei.ac.jp

・情報アクセス保障(PCテイク、手話通訳など)については、10月25日までに、下記までご連絡ください。
・参加にあたり託児所のご利用を希望される方は、10月25日までに、下記までご連絡ください。
・イベントに関連して、立命館大学大学院先端総合学術研究科集中講義「特殊講義Ⅰ(C)」(講師:孫歌)が、11月7・9・11・12・13日に創思館401・402で行われます。聴講される方はお問い合わせ下さい

企画趣旨

 歴史における人間という問い、すなわち歴史・社会的プロセスと生きられた経験をつなぐことへの挑戦は、人文社会学の根本問題の一つだ。
それを可能とするには、大文字の歴史や社会から説き起こすのではなく、現実の最小の細胞を凝視し、散乱した断片にこだわり、拡大鏡を使って正統性や総体性に潜む小さな傷を見いだすことから出発するやり方が必要だと考え、私たちはこのシンポジウムを企画した。
平和は一つではない。戦争、とりわけ総力戦、の傷跡は戦争それ自身よりはるかに長生きで、人間の心であれ、社会体制であれ、建築や事物であれ、平和な日常のなかにしばしば現前し、あるいは「平和」を切り裂く。たとえ集合的忘却を強いられたとしても、個人の経験の次元での傷はつねに苦痛と結びついているため、完全に沈黙させられることはない。だが、同時に完全に伝達可能になるわけでもない。私があなたの痛みを経験することはできない以上、「苦痛が生み出すものは何であれ、苦痛の共有不可能性(unsharability)にその一部を負っており、その共有不可能性は、苦痛が言語に抵抗することに由来する」からだ(Elaine Scarry (1985)“The Body in Pain”)。
苦痛が言語に抵抗するとき、言語もまた苦痛に抵抗する。なぜなら、苦痛は共有不可能性の中で自足するのではなく、共有の切断を逆説的に共有しつつ、つねに他者と他者の応答責任へと向けられているからだ。その結果、ときに共有不可能性は、伝達言語とは別のメディウム(媒体)を通じて表象される。
私たちは戦争の傷の共有不可能性がさまざまな争いを生み出す事態を目撃しつつある。そこでは、生きられた経験、歴史社会的な集合的記憶と忘却、それらの文化的表象、法による制度的対応が重層的に絡まり合い、問題を込み入ったものとしている。この傷の複合が争いへと上昇するとき、しばしばそれらはずらされて、紋切り型で排他的に構築された共有不可能性――「民族」、「国益」、「移民」など――へと節合される。
傷の複数性と転移する争点が状況を見通すことを困難にしている中、友敵の二分法という共有不可能性に抗して未来を構想するため、国境の壁も学問の壁も越えた討論をしたい。

プログラム

開場 10:00-
第1部
10:30- 番匠健一(同志社大学<奄美・沖縄・琉球>研究センター嘱託研究員)
「入植と離散と文学サークル運動――境界地域としての北海道東部」

11:00- 近藤有希子(日本福祉大学国際福祉開発学部)
「沈黙する発話、情動する身体―ルワンダに生き残る暴力の記憶と痛みへの想像力―」

11:30- 小山仁美(立命館大学グローバル教養学部
「傷とキズナと国家と:宙づり主体の戦後について」

12:00- コメント(天野尚樹(山形大学人文社会学部))・質疑応答

12:30-1:20
ランチと討論(創思館3階303・304)

第2部
1:50- 藤井光 映像作品提示と講演「『無情』―戦時下における国策宣伝映画『国民道場』を再演する―」(『無情』(2019)のシングルチャンネル版(23分)上映)

3:10- ブレット・ド・バリー(コーネル大学)
「多和田葉子と方法としての翻訳:脱構築と「ポスト人種」の問い」

3:40- 孫歌(中国社会科学院)
「移動している辺境」

4:10- コメント(原祐介(立命館大学先端総合学術研究科 授業担当講師))・全体討論

6:00- 情報交換会