2020年のイベント
メディアからの発信 2020年度
  • 本研究科の岸政彦教授のコメントが下記新聞で紹介されました。
    〈関西タイムライン 関西のミカタ〉「「ごちゃごちゃ」こそが大阪 社会学者・作家 岸政彦さん」(日経電子版 2021年3月17日
    「「おもろい大阪」にあらがって 岸政彦、柴崎友香が対談」(朝日新聞デジタル 2021年3月18日好書好日 3月24日
  • 本研究科の美馬達哉教授の記事が、立命館大学広報課のオウンドメディアshiRUtoに掲載されました。
    「ニュージーランドも安楽死合法化へ 世界では安楽死が認められつつあるのか?」(shiRUto 2021年3月16日
  • 本研究科の山本貴光講師が登壇したイベントの開催報告が、立命館大学NEWS & TOPICSに掲載されました。
    SERIESリベラルアーツ第4弾「その相談、あの本なら、こう言うね。F/哲学の劇場」を開催(NEWS & TOPICS 2021年3月16日
  • 本研究科の岸政彦教授の共著『大阪』が下記新聞・雑誌の書評欄で紹介されました。
    日経電子版 2021年2月11日(評者:中野稔)
    ダ・ヴィンチニュース 2021年2月11日(評者:土佐有明)
    婦人公論 2021年5月11日号(評者:豊崎由美)
    産経新聞 2021年5月15日(評者:田中佐和)
  • 本研究科の小川さやか教授のコメントが読売新聞で紹介されました。
    〈コロナの時代を読む〉「ルールの厳格化より信頼」(読売新聞オンライン 2021年2月7日
  • 本研究科修了生の天畠大輔さんの研究活動等が、下記番組で紹介されました。
    NHK「文字の獲得は光の獲得でした:作家 柳田邦男が読む いのちの手記」 2021年1月24日(日)[Eテレ]14:30-15:19
  • 本研究科の小川さやか教授のコメントが朝日新聞で紹介されました。
    〈耕論〉「ほどよい距離感って?」(朝日新聞デジタル 2021年1月8日
  • 本研究科院生の栗川治さんのインタビュー記事が毎日新聞社の点字週刊誌『点字毎日』(2021年1月3日・10日合併号)に掲載されました。
    「新春特集 インタビュー 先人の歩みを振り返る 栗川さんに聞く/上(その1)」(デジタル毎日 2021年1月10日
    「新春特集 インタビュー 先人の歩みを振り返る 栗川さんに聞く/下(その1)」(デジタル毎日 2021年1月24日
  • 本研究科の岸政彦教授が、下記番組に出演しました。
    NHK「100分de名著」 2020年12月7日・14日・21日・28日(月)[Eテレ]22:25-22:50
  • 本研究科の岸政彦教授の著書『100分de名著 ブルデュー ディスタンクシオン 2020年12月』が下記雑誌の書評欄で紹介されました。
    エコノミストOnline 2020年12月11日(評者:荻上チキ)
  • 本研究科の西成彦教授のコメントが京都新聞で紹介されました。
    「昨年国交樹立100年 ポーランド研究の現在」(京都新聞 2020年12月9日朝刊10面)
  • 本研究科の小川さやか教授と美馬達哉教授のトークセッションの映像が、「Ritsumeikan Channel」で公開されました。
    SERIESリベラルアーツ第二弾「なぜ人はあいまいさを嫌うのか〜コントロールしたい欲望を解き放つ〜」(10月18日開催)

  • 本研究科の千葉雅也教授が、下記番組に出演しました。
    NHK「おはよう関西」 2020年12月4日(金)[総合]7:45-8:00
  • 本研究科の松原洋子教授のコメントが毎日新聞で紹介されました。
    「旧優生保護法 強制不妊訴訟 除斥適用「納得できぬ」 原告夫婦、手話で怒り」(デジタル毎日 2020年12月1日
  • 本研究科の山本貴光講師の著書『記憶のデザイン』が下記新聞の書評欄で紹介されました。
    デジタル毎日 2020年11月28日(評者:渡邊十絲子)
  • 本研究科の美馬達哉教授の論文「方法としての反ワクチン」(『現代思想』2020年11月号掲載)が朝日新聞の論評欄で紹介されました。
    朝日新聞デジタル 2020年11月26日(評者:内田麻理香)
  • 本研究科修了生の吉野靫さんの単著『誰かの理想を生きられはしない:とり残された者のためのトランスジェンダー史』が朝日新聞の書評欄で紹介されました。
    朝日新聞デジタル 2020年11月14日(評者:温又柔)→好書好日 2020年11月14日
  • 本研究科の山本貴光講師の対談記事が、週刊読書人に掲載されました。
    「『日本学術会議任命拒否』問題を考える」(吉川浩満氏との対談)(読書人WEB 2020年11月13日
  • 本研究科の岸政彦教授の共著『地元を生きる:沖縄的共同性の社会学』が下記新聞の書評欄で紹介されました。
    沖縄タイムス+プラス 2020年10月24日(評者:糸数温子)
    琉球新報デジタル 2020年11月1日(評者:山田哲也)
    デジタル毎日 2020年11月14日
    北海道新聞電子版 2020年11月22日(評者:水原涼)
    読売新聞オンライン 2020年12月13日(評者:橋本倫史)
  • 本研究科の小川さやか教授と美馬達哉教授の対話の開催報告が、立命館大学NEWS & TOPICSに掲載されました。
    SERIESリベラルアーツ第二弾「なぜ人はあいまいさを嫌うのか〜コントロールしたい欲望を解き放つ〜」開催(NEWS & TOPICS 2020年10月21日
  • 本研究科の小川さやか教授のコメントが立命館大学のインタビュー特集に掲載されました。
    「ピンチを楽しむ心意気。アフリカ社会から学ぶ、人と共に生きるネットワーク」(New Streams 2020年10月13日
  • 本研究科の美馬達哉教授のコメントが読売新聞で紹介されました。
    〈あすへの考〉「「自由」の制限 受け入れた人々 医療社会学者 美馬達哉氏」(読売新聞オンライン 2020年10月11日
  • 本研究科の小川さやか教授の研究が朝日新聞で紹介されました。
    〈フロントランナー〉「文化人類学者・立命館大教授、小川さやかさん 人間社会の混沌、密着する新世代」(週刊be 2020年9月19日 1面 →朝日新聞デジタル 2020年9月24日
    〈フロントランナー〉「小川さやかさん 「研究が進むときは、いつも偶然の出会いが」」(週刊be 2020年9月19日 3面
  • 本研究科の小川さやか教授の寄稿文が読売新聞に掲載されました。
    〈空想書店〉「贈与経済 値段から解放」(読売新聞オンライン 2020年9月13日
  • 本研究科の美馬達哉教授の著書『感染症社会:アフターコロナの政治学』の出版に関連したコメントが、下記新聞・ウェブサイトで紹介されました。
    「コロナ問題は「ウイルスvs人間」ではない 今私たちに必要な視点とは?」(shiRUto 2020年9月11日
    〈京の人今日の人〉「立命館大大学院先端総合学術研究科 美馬達哉教授 行動で社会は変わる」(デジタル毎日 2020年9月13日
  • 本研究科の美馬達哉教授の著書『感染症社会:アフターコロナの政治学』の書評が読書人WEBに掲載されました。
    週刊読書人2020年9月11日号(評者:粥川準二)
  • 本研究科の山本貴光講師の著書『マルジナリアでつかまえて:書かずば読めぬの巻』が下記新聞の書評欄で紹介されました。
    デジタル毎日 2020年9月1日
    デジタル毎日 2020年9月5日(評者:仲俣暁生)
    山形新聞オンライン 2020年10月2日(評者:片岡義博)
    中日新聞 2020年10月3日
    読売新聞オンライン 2020年10月4日(評者:尾崎真理子)
    京都新聞 2020年11月29日朝刊11面(評者:頭木弘樹)
  • 本研究科の千葉雅也教授のコメントが、朝日新聞で紹介されました。
    「大人の議論、消えた7年8カ月 哲学者・千葉雅也さんに聞く」(朝日新聞デジタル 2020年9月1日
  • 本研究科の立岩真也教授のコメントが、京都新聞で紹介されました。
    「ALS患者嘱託殺人を受けて (上)「安楽死」をどう考える」(京都新聞 2020年8月20日朝刊20面 →京都新聞デジタル版 2020年8月23日
    「ALS患者嘱託殺人を受けて (下)「支援の現場」から」(京都新聞 2020年8月21日朝刊14面)
  • 本研究科の小川さやか教授の著書『チョンキンマンションのボスは知っている:アングラ経済の人類学』の河合隼雄学芸賞・大宅壮一ノンフィクション賞受賞に関連したコメントが、毎日新聞の書評欄で紹介されました。
    デジタル毎日 2020年8月9日
  • 本研究科の立岩真也教授が、下記番組に出演しました。
    J-WAVE「JAM THE WORLD」 2020年8月3日 20:10-20:40(音声記録はこちら
  • 本研究科の岸政彦教授のコメントが、下記ウェブサイトで紹介されました。
    「僕らの人生は個性的か?東京を「ずっと忘れて生きていた」、岸政彦が描くもの」(Buzzfeed News 2020年7月26日
    「150人のロングインタビューで「誰も最後まで読み通せない本」を作る」(文春オンライン 2020年9月4日
  • 本研究科の美馬達哉教授の著書『感染症社会:アフターコロナの政治学』、および共著書『未完のオリンピック』の出版に関連したインタビュー記事が、下記ウェブサイトに掲載されました。
    「研究室訪問 Vol. 3-美馬達哉会員」(日本生命倫理学会 2020年7月16日取材
  • 本研究科の小川さやか教授、立岩真也教授、西成彦教授の単著の書評が、『立命館アジア・日本研究学術年報』創刊号に掲載されました。
  • 本研究科の千葉雅也教授の寄稿文が下記新聞に掲載されました。
    〈哲学者が考えていること〉「ネットは哲学 千葉雅也が見た「接続過剰」社会」(日経電子版 2020年6月28日
  • 本研究科の松原洋子教授のコメントが、下記新聞に掲載されました。
    「強制不妊「深い反省とおわびを」 医学界の責任認める報告 医学会連合の検討会」(朝日新聞デジタル 2020年6月26日
  • 本研究科の立岩真也教授のコメントが、下記新聞に掲載されました。
    「新型コロナ 障害者は問う、「命の選別」起きはしないか」(朝日新聞デジタル 2020年6月24日
  • 本研究科の松原洋子教授の編・解説による『優生保護法関係資料集成 編集復刻版』(六花出版、2019-2020年)が、下記新聞で紹介されました。
    「強制不妊手術 過程示す公文書編集/人権侵害半世紀 痛み刻む」(京都新聞 2020年6月11日夕刊1面)
  • 本研究科の小川さやか教授のコメントが、下記新聞に掲載されました。
    「不確実性な社会を生きる、小川さやか立命館大学教授」(日経電子版 2020年6月9日
    〈ひと〉「小川さやかさん=河合隼雄学芸賞、大宅壮一ノンフィクション賞を受賞」(デジタル毎日 2020年6月19日
    〈キーパーソン〉「立命館大教授 小川さやかさん おおらかに 異文化探究」(読売新聞 2020年7月2日大阪版夕刊)
  • 本研究科の松原洋子教授の対談記事が、立命館大学男女共同参画推進リサーチライフサポート室のウェブサイトに掲載されました。
    研究者インタビュー #19「家庭・育児と研究を両立する女性研究者の活躍」(長谷川准氏との対談)
    研究者インタビュー #20「研究者であるより臨床家として網膜再生医療研究の世界トップを走る」(髙橋政代氏との対談)
  • 本研究科修了生の鍾宜錚さんの研究が、下記ウェブサイトで紹介されました。
    「研究室訪問 Vol. 2-鍾宜錚会員」(日本生命倫理学会 2020年6月3日取材
  • 本研究科の千葉雅也教授の著書『デッドライン』に関連したインタビュー記事が、下記ウェブサイトに掲載されました。
    〈不確実な未来を生きる言葉〉「人間はそもそも不要不急を本質にしている動物」(Business Network Lab 2020年6月1日
  • 本研究科修了生の石田智恵さんの単著『同定の政治、転覆する声:アルゼンチンの「失踪者」と日系人』が朝日新聞の書評欄で紹介されました。
    朝日新聞デジタル 2020年5月2日(評者:戸邉秀明)→好書好日 2020年5月2日
  • 本研究科の小川さやか教授が参加する企画「日本人の忘れもの知恵会議」の記事が、下記新聞に掲載されました。
    〈未来へ受け継ぐ Things to inherit to the future〉「造園業、人と自然仲介」(佐野友亮氏との対談、京都新聞 2020年4月28日朝刊6面
    〈ポストコロナを生き抜く知恵〉「回復力としての迂回路」(京都新聞 2020年5月14日朝刊14-15面
    〈未来へ受け継ぐ Things to inherit to the future〉「心の支え、宗教の役割の一つ」(鷲尾龍華氏との対談、京都新聞 2020年6月29日朝刊10面
    〈未来へ受け継ぐ Things to inherit to the future〉「文化人類学とDMOに共通点」(西山徳明氏との対談、京都新聞 2020年8月25日朝刊8面
    〈未来へ受け継ぐ Things to inherit to the future〉「コロナ禍の向こうに見える暮らし」(上野千鶴子氏との対談、京都新聞 2020年10月
  • 本研究科の千葉雅也教授の著書『勉強の哲学:来たるべきバカのために 増補版』の出版に関連したインタビュー記事が、下記ウェブサイトに掲載されました。
    「千葉雅也が語る、自己破壊としての勉強と痛みとの共存 「生きることは、プリミティブな刺激を快楽に変換すること」」(Real Sound 2020年4月25日
  • 本研究科の千葉雅也教授、岸政彦教授と西成彦教授の鼎談の記録が、新潮社Webマガジンに掲載されました。
    「千葉雅也×岸政彦「書くってどういうこと?――学問と文学の間で」」(考える人 2020年4月17日・18日・19日
  • 本研究科の山本貴光講師の共著『その悩み、エピクテトスなら、こう言うね。:古代ローマの大賢人の教え』が下記新聞・雑誌の書評欄で紹介されました。
    デジタル毎日 2020年4月11日(評者:加藤陽子)
    『Hanako』1185号(評者:斎藤哲也・宮崎智之)
    『クロワッサン』2020年06月10日号(評者:小川公代)
    図書新聞 2020年06月13日・第3451号(評者:永田希)
  • 本研究科の立岩真也教授の連載「だいじょうぶ、あまっている」が、講談社現代新書に掲載されました。
  • 本研究科の小川さやか教授の記事が、下記新聞に掲載されました。
    〈にじいろの議〉「最新テクノロジーと社会 望ましい形、問う好機 立命館大学教授・小川さやか」(朝日新聞デジタル 2020年4月8日
  • 本研究科の美馬達哉教授の寄稿文が、講談社現代ビジネスに掲載されました。
  • 本研究科の立岩真也教授のインタビュー記事が、下記新聞に掲載されました。
    「相模原殺傷 『内なる優生』で済ますな 障害者運動に詳しい立命館大教授・立岩真也氏に聞く」(産経新聞 2020年4月2日
  • 本研究科の美馬達哉教授のコメントが、下記新聞に掲載されました。
    「大学生の新型コロナ集団感染『道徳的非難の対象にすべきでない』 立ち寄り先公表『違和感ある』と研究者」(京都新聞 2020年4月2日朝刊26面 →4月3日配信
    「新型コロナ緊急事態宣言の課題は 識者『同調圧力強まる懸念』『知事要請の監視を』」(京都新聞 2020年4月8日朝刊5面 →4月9日配信
    「第2波前提に医療整備を」(京都新聞 2020年5月15日朝刊5面)
映像人類学先端研究会—人類学とポエティクス—(2020年度)

院生代表者

  • 福田 浩久

教員責任者

  • 小川 さやか

概要

 多様化する複合的なメディア状況のなかで人類学を考えてきた本研究会も三年目になる。「制作」をテーマにすえた昨年度の問題意識を引き継ぎ、今年度は「人類学とポエティクス」について思考する。人類学はその草創より、狭義の科学から逸脱するポエティックな制作に手を染めてきた。「不可量部分」の記述に格闘したマリノフスキーしかり、文学的な「第二の本」の執筆が所与とされていたフランス人類学しかり。この傾向はメディアが複合的になった 21世紀において一層拡張している。そうしたなか、本研究会では、人類学とポエティクスの理論に焦点を当てる。古層から掘り起こし、「文化を書く」や現象学的人類学の理論、芸術的な人類学への批判、最新のマルチモーダル人類学までおさえることで、科学と芸術、人類学を再定義し、研究会員各自がより先鋭な人類学制作を達成できるようになることを目的とする。
参考文献:クリフォード、マーカス(編)、1996、「文化を書く」、紀伊國屋書店. マリノフスキ、2010、「西太平洋の遠洋航海者 : メラネシアのニュー・ギニア諸島における、住民たちの事業と冒険の報告」、講談社. Debaene. 2014. Far Afield: French Anthropology between Science and Literature. The University of Chicago Press.

活動内容

 講師は当初の予定通り濱口竜介氏を招聘した。「手について」と題した3日間にわたるワークショップでは、はじめに濱口氏による手(身体)と映像についてのレクチャーを行い、その後、参加者それぞれのフィールド経験・研究内容に基づいて、発表を行ってもらい、議論をした。定期的な輪読会ではSansi, 2015, Art Anthropology and the Gift、Debaene, 2014, Far Afield: French Anthropology between Science and Literature、クリフォードとマーカス編, 1996,『文化を書く』の三冊を丁寧に読み込んだ 。

成果及び今後の課題

 濱口氏によるワークショップは大変実りの大きいものとなった。撮る撮られるというカメラが創造する関係に人一倍鋭敏な濱口氏ならではの考察を受けて、参加者それぞれが自身の専門領域から発表した映像も非常に多角的で、映像と身体というテーマを深めて考察するのにこれ以上適したものはなかった。月々の輪読会では上記のように三冊の本を時間をかけて読み、4月にはAmerican Anthropologist誌のMultimodal Anthropology宣言の論文を読む。人類学とポエティクスに関する理論という当研究会のテーマに即していえば、参考文献は膨大にあるので、着実にじっくりとしかし、歩を早く読み進めて、早々に自身の研究に反映していけるようにしたい。

構成メンバー

福田浩久
木田真理子
柴田惇朗

活動歴

2019年度の活動はコチラ
2018年度の活動はコチラ

難病と地域生活(2020年度)

院生代表者

  • ユ・ジンギョン

教員責任者

  • 立岩 真也

概要

 <目的>
 本研究プロジェクトの目的は、難病を持つ人たちの地域生活について、何が必要で何が足りていないのかを難病当事者の視点から明らかにすることである。京都では約10年前に、制度や体制が十分とはいえない中、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の人たちの地域移行、地域生活が有志によって取り組まれ、実現した。本研究プロジェクトでは、制度や体制が整備されてきた中で、何が変わって何が変わっていないのか、何が必要なのかを実践的な取り組みと、他の難病との視点を織り交ぜながら、明らかにしていく。
<内容>
 京都では、最重度の難病とされるALS(筋萎縮性側索硬化症)である甲谷匡賛さんが、2007年に地域で独居生活を実現した。そのあと2008年に杉江眞人さんが地域での一人暮らしを実現している。彼らは、家族がいない中での地域移行、地域生活であり「家族がいない」ことが、大きな壁となり、家族に求められる役割――家族がすべきかどうかは別として――が浮き彫りにされる形でそれらが実現していった。
 一方で、増田英明さんは家族と一緒に暮らしながらの地域生活を2006年に実現した。そこでは、「家族がいる」ことがサービス利用の壁となって立ちはだかった。こうした京都での取り組みは、家族がいる/いないにかかわらず、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)や難病の患者に対する医療等に関する法律(難病法)の成立の前に実行、実現されたことである。
 制度や体制が整備されてから、軽症者とされてしまう難病も含めて、様々な難病を持つ人たちの問題や課題がみえるようになってきた。難病であることは同じであるにもかかわらず病名や症状によって利用できる制度が限られ、さらには同じ病名であっても環境や資源、関係性によって分けられてしまっている。たとえば、ALSの人たちは、家族がいないために地域で生活することが選択肢として示されなかったり、家族がいることで利用できるサービスが限られてしまったりしている。とくに家族の存在をめぐっては、24時間の他人介助を可能とする仕組みが用意されていない諸外国では、家族が多大な介助の負担を担うか、自費で介助者を雇うしかない。韓国では、わずかな公的サービスしか受けられない仕組みの中、医療的ケアの担い手が家族以外に認められていないために、実質的に家族がいなければ人工呼吸器を装着するという選択ができない。このように、難病の人たちの生活は、常に環境や資源に左右されている。本プロジェクトではこうした難病の人たちが、病名や症状によって分けられることなく安心して暮らせる仕組みを難病の人たちの視点から考えたい。
 そこで、これまで京都でALSの地域移行や地域生活に取り組んできた人たち、実際に地域で生活している人たち、これから地域移行をして地域で生活をしようとしている人たち、本人や家族、支援者たちの実践やインタビューから得られた実証データを見合わせながら、何が変わって何が変わっていないのか、何が必要なのかを分析し、明らかにする。このとき、本人がどのように主体性を獲得していくか、獲得してきたかにも注目する。障害者運動では介助者や家族との関係において主体性が求められ、家族に頼らず生活する仕組みを作ってきた。家族がいる/いないにかかわらず、また他人の介助を受けながら家族と一緒に暮らすという生活も含めて、多様な生活を認めるためには、24時間の他人介助を可能とする仕組みがない韓国などアジアを中心に事例を集積していく必要がある。そうしたアジアの事例との比較、検討から生活の多様性の在り様を探っていくのは、本研究プロジェクトの独創的な点である。
<方法>
 具体的には、①実際にこれから地域移行、地域生活をしようとしているALSのFさん、Hさんの事例の記録、②本人や家族、支援者たちへのインタビュー調査とデータの収集、③国内外の学会での研究発表や活動を通じた情報の集積とデータ取集、を行なう。①と②で得られたデータや資料は、随時、生存学のホームページに掲載していく。③については、とくにアジアを中心とした事例の集積には、生存学研究所の研究活動への積極的な参画と障害学国際セミナーでの研究報告、アジアの患者会の活動の同行と交流、ALS国際セミナーへの参加を通じて進めていく。研究成果は報告書にまとめて配布する。実際の生活に密接したプロジェクトであるため、年度内に情報収集や交流を目的とした研究会を当事者の講師を招いて開催し、年度末には当事者たちを集めた報告会を開催する。
<意義>
 本研究プロジェクトは、難病の本人やその家族、支援者たちとかかわり、実際の生活場面で生じる問題や課題を解明し、得られた知見を生活の場に還元して難病をとりまく政策や支援体制に抜本的な見直しを迫るものである。すなわち、現状の医学モデル・個人モデルに基づく政策や支援体制から多様な生活や障害の特性を基軸とした政策や支援体制への転換につなげることを目的とした研究である。本研究プロジェクトの最大の意義は、難病の本人やその家族、支援者たちとかかわり、実際の生活場面から知見や情報を得ながら研究を進めながらも、当事者性や現場性に同一化することなく、難病をめぐる問題を理論的かつ経験的に検討していくことである。このことは、障害を福祉の対象として議論を展開していく従来の社会福祉学では捉えることができなかった現象や社会関係を明らかにする点で、学術的な意義がある。さらに、すでに京都での取り組みがあることによって比較検討が可能であり、より具体的な議論の枠組みを提示することが可能である。

活動内容

 本年度は、コロナ状況下において変更を迫られながらも、①実際にこれから地域移行、地域生活をしようとしているALSのFさん、Hさんの事例の記録、②本人や家族、支援者たちへのインタビュー調査とデータの収集、③国内外の学会での研究発表や活動を通じた情報の集積とデータ取集に取り組んだ。

成果及び今後の課題

 事例やインタビューからは、24時間の他人介助を可能とする仕組み――重度訪問介護があったにもかかわらず、その利用の可能性を専門職が狭めていた。そこには、ひとつには、40歳以上のALSは介護保険制度の対象となり障害者福祉制度が優先されないことがある。介護保険をマネジメントする介護支援専門員(ケアマネージャー)は、役割として障害者福祉制度に詳しくない。もうひとつには、介護を担う存在として「家族」が前提とされていることである。とくにALSのように医療的ケアを要する場合は、それを家族や医療者以外の者が担うことが想定されていなかった。そうした状況を支援者たちは一つひとつ乗り越えてきた。
そうした取り組みによって重度訪問介護を利用しながらの地域生活の可能性は開かれてきたが、一方でその利用の方法には課題があることがわかった。重度訪問介護は8時間の長時間連続した介助を想定した――介助者が連続して8時間働くことを想定して報酬が設定されている――制度である。つまり24時間を3人の介助者で担えるように、制度が設計されている。しかし実際には、入れ代わり立ち代わりの介助体制が組まれている。たしかに、重度訪問介護を担う介護派遣事業所が少ないことは事実としてある。一日に6ヵ所の事業所が入っていることも少なくはない。しかし、たとえば8時間の長時間を一つの介護派遣事業所が担っていたとしても、介助者が2時間交代で体制が組まれていることも多い。本来は切れ目ない日常生活を支援――生活で生じる様々な事態や見守り、食事やトイレ、コミュニケーションなどの日常の支援――を可能にするためのものであるのに、本人の生活が細切れになってしまっている。   
 さらに明らかになったのは、そうした支援の決定――重度訪問介護の支給決定時間数の判定やその根拠が医療をどれだけ必要とするのか、医療の必要の有無によるところが多く、とくにALSなどの難病の場合には医師の意見書に影響を受けることである。言い換えれば、今の仕組みでは、症状が進行している段階や人工呼吸器を装着していない場合は、十分な支援が得られない。障害施策において、医学モデルから社会モデルへの転換が掲げられているにも関わらず、医療の必要の有無や医師が知り得る病気や障害について書類に書かれたことだけで、介護の必要性やその時間数が判断されることは、医療が欠かせない難病の人たちにとっては大きな問題である。
 そして、やはり、ALSやSMAなど医療的ケアを要する人たちの地域移行は、家族の存在や医療者によって影響を受ける。Fさんは家族に頼らない地域生活を目指し、そうすることで家族との生活を維持しようとした。それは、勝手に周囲が社会が家族を「介護者」と位置付けてしまうことへの抵抗でもあった。ところが、コロナウィルスの感染拡大防止のために家族以外の面会ができずに、Fさんの意思決定も含めて家族に委ねられることになってしまった。SMAの当事者もそうであったが、SMAや筋ジストロフィーの人たちは、幼い頃から国立病院機構(旧国立療養所)で生活をしている人たちが多く、そこから出て地域生活をすることには、家族や医療者の理解が必要になる。とくに家族の位置づけは常に安定して、常に不安定である。今なお、本人が家族の負担を慮って、あるいは家族がいない/介護を担えないという理由で、病院や施設で暮らしている人たちがいる。言い換えれば、コロナ渦で面会ができなくても、家族が本人の地域生活に積極に取り組めばその可能性が開けるが、反対に家族が躊躇えばその可能性は引き戻されることになるし、それだけの理由を家族は背負わされている。
こうした問題はこれまでにも気づかれていたことではあったが、本研究に取り組む中で、そしてコロナ渦での事例を経験する中で、より浮き彫りになった。面会の問題、家族との関係、医療者側の考え方、意思決定のあり方など、これから取り組むべき課題が示された。

構成メンバー

ユ・ジンギョン
西田美紀
坂野久美
戸田真里
中井良平

東亜メディア・デザイン研究会/Study Group of Media Design in East Asia /东亚媒体设计研究会(2020年度)

院生代表者

  • 張 憲

教員責任者

  • 竹中 悠美

概要

 前年度に引き続き、本プロジェクトは日本、中国、台湾、韓国を中心とした東アジア地域における多様な美術、工芸、ファション、デザイン、サブカルチャーを各々メディアでありかつデザインとしての観点から学際的・包括的に研究することを目的としている。研究内容は前年度の研究内容である、ジャンルを越えて現在の情報化社会と深刻な経済の国際化と伴い、欧米との連関から見る当代の東アジアのメディア表象がどのように伝統的な視覚文化と融合あるいは断絶しているのかに加え、中国から講師を招き中国における伝統的な媒体と新媒体デザインについて交流し、理論と実践を交互に補完した研究を行う。方法として、中国、台湾の研究者を招き、オンライン国際的ワークショップを開催する。東亜の最先端なメデイア・デザイン活動について情報を共有し、そしてそれアジアの伝統とどう関わっているのかについて明らかにしていく。
 このような国際的なワークショップを行うことによって、国際交流・情報交換ができ、東アジアといった地域を越境した総合的な視野と理論を提示し、各分野・地域の研究連携が促進されることが本研究プロジェクトの意義である。

活動内容

 2021年2月23日(火)に中国から講師3人を招き、ハルピン師範大学メディア学院と共催し、「時空を超越したメディアデザイン」をテーマとした国際的オープンワークショップをZoomで開催した。本研究会の代表者の張憲が司会および翻訳を勤め、指導教員の竹中悠美教授が挨拶をした後、ハルピン師範大学メディア学院の王絵教授により「東清鉄道による融合−20世紀前半のハルピンにおける東洋芸術と西洋芸術の流布とその影響」、四川農業大学の楊清髪准教授により「Cover Girl: The Most Beautiful Consumer Goods」、浙江万里学院 Sino-German Institute of Design and Communicationの張宜平副院長により「 Emancipation of Creativity in A.I. Age: How Artificial and Data Intelligence Empowers Digital Media Design」の順番でそれぞれ1時間〜1時間半ほどの講演を行い、講演後参加者たちによる意見交換と討論を行なった。ハルピン師範大学メディア学院の院生たちも参加し、参加人数が20人余人だった。

成果及び今後の課題

 3名の講師がそれぞれの領域からメディア・デザインについて講演を行い、国際的交流・情報交換ができ、総合的な視野と理論を提示し、各分野・地域の研究連携が促進され、新たな研究交流の開拓を進めるためのプラットフォームとなった。
 このプラットフォームをベースにさらに交流を深め、研究のネットワークを築く、東亜の最先端なメデイア・デザイン活動について情報を共有し、そしてそれアジアの伝統とどう関わっているのかについて明らかにしていく。

構成メンバー

張憲
枝木妙子
XU TING
李怡君
浦野智佳
張芸馨

活動歴

2019年度の活動はコチラ
2018年度の活動はコチラ

思想の思想研究会(2020年度)

院生代表者

  • 西澤 忠志

教員責任者

  • 立岩 真也

概要

 本研究会の目的は、思想と実践をめぐる問題を取り上げ、思想的観点から検討することを目的としている。院生プロジェクトの申請は初年度になるものの、研究会活動自体ははじめて今年で4年目に入る。2017年度は、思想書を多角的な視点から議論を行うことを目的とし、2018年度は博士課程在籍もしくは、若手研究者の論文を輪読し、実際に論文の著者を研究会に招いて議論を行なった。2019年度には、大阪大学と大阪府立大学に所属する若手研究者たちで合同研究会を不定期に開催し、参加者は学内では得ることができなかった見識を深め、各々の研究の深化・発展に繋げていった。今年度は外部から研究者を招致して企画を開催し、さらなる研究の深化・発展となるための拠点とするために、院生プロジェクトへの申請を決めた。また通常時の研究会では、一ケ月半程度に一度のペースで行われており、学会発表の原稿やジャーナルへの投稿論文だけでなく、批評や実践報告といった、各々の関心や見識を深めるための活動をしている。

活動内容

〇文献講読
今年度は5回に分けてデヴィッド・グレーバー『民主主義の非西洋起源について:「あいだ」の空間の民主主義』を講読し、議論を行った。
日時:7月21日(火)、8月10日(月)、9月14日(月)、10月4日(日)、10月30日(金)
場所:Zoom(オンライン)

〇思想の思想研究会 合同研究会
日時:2020年8月8日(土)13時
場所:Zoom(オンライン)
13:00~13:15 開会・自己紹介
13:15~14:45 「ジャン=リュック・ナンシー「ヘーゲル的君主の司法権」について」
・安藤歴(大阪大学)
14:45~15:00 休憩
15:00~15:45 「ユク・ホイ『再帰性と偶然性』を読む――三木清を補助線に」
・中村徳仁(京都大学)
15:45~16:00 休憩
16:00~17:30 「スンバ島の変容する人と家畜の交換ゲーム」
・酒向渓一郎(立命館大学)

〇立命館大学大学院先端総合学術研究科・院生プロジェクト企画
「思想の思想研究会」公開企画
「ポスト世俗化の時代からみた社会のありよう:デイヴィッド・ライアン『ジーザス・イン・ディズニーランド』刊行企画」
日時:2021年3月4日(木)14:00-16:45
場所:Zoom(オンライン)
プログラム:
●第一部
14:00~14:10 オープニング
・安田智博(立命館大学大学院先端総合学術研究科)
14:10~14:45 訳者一同による『ジーザス・イン・ディズニーランド』に関する報告
・大畑凛(大阪府立大学)
・小泉空(大阪大学)
・芳賀達彦(大阪府立大学)
・渡辺翔平(大阪府立大学)
14:45~15:10報告へのコメント
・箱田徹(天理大学)
小休憩
●第二部
15:20~15:45 報告へのコメント
・清水知子(筑波大学)
15:45~16:10 質疑応答
16:10~16:45 全体討議
クロージング
司会
・安田智博(立命館大学)

成果及び今後の課題

 今年度は計8回の研究会を行なった。その内容はデヴィッド・グレーバーの文献講読からグレーバーの思想の源泉を検討したものと、他大学との合同研究会の開催、そして院生プロジェクト企画の三点である。
今年度は、これらの活動を通じて、研究会メンバーに執筆に有用な視座が与えられた。来年度も引き続き参加者が相互に刺激の与え合う場を生み出し、各々の研究に有用な拠点として当研究会を位置づけていきたい。

構成メンバー

加藤広康
酒向渓一郎
今井浩登
西澤忠志

「障害者と労働」研究会(2020年度)

院生代表者

  • 栗川 治

教員責任者

  • 立岩 真也

概要

 本プロジェクトは、次の2つを目的とする。
①「障害者と労働」に関わる研究をおこなっている院生が、共同研究を通じて、各自の研究力を向上させる。
②各院生が「障害者と労働」に関する最先端の国内・国際的な研究動向を把握し、実態を調査し、その成果を集積・発信していくことを通じて、学術研究の発展に寄与できる実践力を培う。
◆方法・内容
 上記の目的を達成するための方法として、次の内容の活動をおこなう。
①定例研究会の開催(月1回程度): 各院生の研究経過、研究成果を持ち寄り、相互の批判・討論を通じて、各自および共同の研究の課題を明らかにしていく。但し、新型コロナウイルス対策のため、当面(すくなくとも2020年度春学期)は、対面での研究会はおこなわず、電子会議システム等を活用してweb上でおこなう。
②研究成果報告会の実子(年度末): 公開の研究成果報告会をおこない、1年間の本プロジェクトの実績を報告するとともに、国内外の最先端の研究者を招聘してシンポジウム(講演かい)を併せて開催し、今後のさらなる研究の進展を図る。
③生存学研究への参画: 立命館大学生存学研究所の研究活動に積極的に参画し、障害学国際セミナー(東アジア障害学フォーラム)での研究発表・海外の研究者との交流を深めるとともに、日常的には生存学HPの「障害者と労働」のサイト(http://www.arsvi.com/d/w0105.htm)での資料集積・内容拡充を、本プロジェクトの課題に位置付けておこなっていく。
④学会・研究会、調査への派遣: 「障害者と労働」に関する各種学会・研究会に参加する院生、およびインタビュー調査等に出張する院生に対して、旅費等を補助して、各自の研究活動を支援する。
⑤プロジェクト成果報告の発信: 上記①~④の活動成果を随時報告書にまとめ、生存学hpに掲載し、
関係者から指導・助言を得る。(印刷物での報告書=年報頒布は2021年度に入ってからの予定)
◆意義
 本プロジェクトは、現代の日本と世界において重要なテーマである「障害者と労働」に関して、最先端の学際的・国際的な知見・情報を得つつ、個々の院生が独創的な研究を進めるとともに、その成果を先端総合学術研究科および生存学研究所の活動・媒体を通じて世界に発信し、この分野の学術研究の進展に寄与していく経験を積めるという意義をもつ。これは、「障害者と労働」に関する研究を志す大学院生が多数在学する本研究科(おもに公共領域)の特色を生かし、また、日本と東アジア、そして国際的な障害学研究の拠点
である生存学研究所が本研究科ときわめて密接な関係にあるという条件に恵まれていることによって可能となっていることである。

活動内容

新型コロナ対策のため、すべての活動をオンライン(Zoom、メール等)でおこなった。
 具体的な月例会等は、以下のとおりである。その他、メンバーのメーリングリストをつくり、日常的な情報交換、相互の研究相談をおこなった。

 ①定例研究会の開催(毎回13時~14時30分、Zoomで)
 5月28日(木);9名参加。自己紹介、申請書に基づき研究会の目的、活動、予算などを代表者が説明。今後の運営について協議。
 6月25日(木);9名参加。青木千帆子,2012,「障害者の就労場面から見える労働観」『解放社会学研究』25: 9-25.の論文購読と意見交換。「労働と賃金の等価交換」に「軽減労働同一賃金」の関連。理論としくみ、身分と能力、計測可能性など議論。
 7月31日(金);8名参加。日本の障害者雇用・就労の制度(報告者 駒澤真由美)。社会的企業、ソーシャルファーム、就労支援A型、賃金補てんなどについて議論。
 8月27日(木);7名参加。中村雅也,2020,『障害教師論──インクルーシブ教育と教師支援の新たな射程』学文社.の「第9章 障害者労働の業務支援理論」に関して、著者の中村雅也氏(東京大学先端科学研究センター研究員)が解説、参加者と意見交換。ゲストとして大谷泉氏(立命館大学産業社会学部教授、生存学研究所副所長)も参加し、障害教員当事者としての体験等を語った。
 9月30日(水);3名参加。障害学会第17回大会の報告をめぐり討論。中井報告(障害学国際セミナーオンライン事務局の経過)、阿智地報告(農福連携、農業は障害者にとってのリーセントワークか)、栗川報告(軽減労働同一賃金は「障害者の低賃金は当然」を崩していきたいという試み)、市場での労働と、ベーシックインカムや年金等の社会保障(政府、税金)からの支出との関係をどうみるか、能力主義(能力はあるのだからちゃんと認めろ)と反能力主義(能力はなくとも賃金を払え)との関係について議論。
 10月30日(金);4名参加。伊藤綾香,2020,「障害者との共生をめぐる運動──障害者と「共に働く」場をつくる運動に着目して」長谷川公一編『社会運動の現在──市民社会の声』有斐閣;300-22.の論文購読と意見交換。
 11月20日(金);5名参加。澤岡友輝「高次脳機能障害を意識するとき――中途障害に着目して」(学術誌投稿予定原稿)の検討。
 12月14日(月)~27日(日);指定HP閲覧とメールによる意見交換。(1)張万洪教授(武漢大学ロースクール)の先端研集中講義と、そこに絡めて開催予定の当研究会の国際シンポジウムの事前学習。(2)生存学HP(arsvi.com)の「障害者と労働」ページの点検。

 ②国際シンポジウムの実施
 当初計画の「研究成果報告会」に当たるものとして、生存学研究所に共催いただき、先端研集中講義特設イベントの公開シンポジウムを当院生プロジェクト主催で開催した。25名参加。
 1月13日(水)13時~17時
 シンポジウム 「障害者権利条約と労働・雇用をめぐる日本、アジア、世界の状況」  司会: 立岩真也(立命館大学大学院先端総合学術研究科教授、生存学研究所長)
 session1 13:00~14:10 日本語・英語通訳(長瀬修)
報告1(45分): 日本の障害者雇用の課題① ~ 日本障害フォーラム(JDF)の障害者権利条約初回審査パラレルレポート・労働及び雇用(27条)をめぐって  長瀬修(立命館大学生存学研究所教授)
報告2(15分): 日本の障害者雇用の課題② ~ 障害学国際セミナー2019武漢での議論をめぐって 駒澤真由美
(立命館大学大学院先端総合学術研究科院生、「障害者と労働」研究会)
休憩
 session2 14:10~15:15 日本語・中国語通訳(高雅郁)
報告3(講義、75分): 障害者権利条約と労働 張万洪(武漢大学教授)
休憩
 session3 15:30~16:50 日本語・中国語通訳(高雅郁、欧陽珊珊)
報告4(15分): 「障害者と労働」、その理論と実践① ~ 障害教員の雇用における「異別処遇・同等待遇」をめぐって 栗川治(立命館大学大学院先端総合学術研究科院生、「障害者と労働」研究会)
報告5(20分): 「障害者と労働」、その理論と実践② 立岩真也
質疑応答(40分) 中井良平、駒澤真由美、立岩真也、張万洪、長瀬修。

 ③生存学研究への参画
 立命館大学生存学研究所主催の2つのシンポジウムに研究会メンバーが参画した。
 7月18日(土)障害学国際セミナー 2020「東アジアにおける新型コロナウイルス感染症と障害者」
 2月27日(土)障害学国際セミナーオンライン特別セミナー「新型コロナウイルス感染症と東アジアの障害者」
 また、生存学HPに、研究会メンバーが各自の研究成果、文献等を掲載していった。但し、「障害者と労働」のカテゴリーでの整理はできなかった。

 ④学会・研究会、調査への派遣
 ほとんどの学会、研究会が新型コロナの影響でオンライン開催となり、また院生プロジェクト予算の個人研究支援への支出が認められなかったため、参加補助はできなかったが、研究会メンバーが、学会等に参加し、研究成果を発表するとともに、その経験をふまえて「障害者と労働」研究会例会等での議論に還元させた。
 とくに、9月にオンライン(HP、メール、Zoom)で開催された障害学会第17回大会では、当研究会メンバー3名が学会で発表するなどした。

 ⑤プロジェクト成果報告の発信
 2020年度の報告書については、2021年度においてまとめる予定である。当研究会の活動状況等については、随時、生存学MLやHP等で報告、発信してきた。

成果及び今後の課題

 「障害者と労働」を研究テーマとする院生が集まり、議論する定期的な場を持つことができたことが、まず大きな成果である。
 また、生存学研究所の先生方(立岩所長、大谷副所長、長瀬教授)や、武漢大学の張教授、東京大学の中村氏など、この分野の先達である研究者との交流、協議の機会を得て、多くの指導、助言、刺激を受けることができたことも、研究会メンバーにとって貴重な経験であった。
 この共同研究を経て、研究会メンバー各自が学会発表、学術雑誌への論文投稿、博士論文執筆などに取り組み、研究成果を上げていった。
 反省点、今後の課題としては、シンポジウムの準備が遅れてしまい、日本語・中国語・英語の通訳の配置をすることがやっとで、手話通訳等の情報保障ができなかったことは重大な問題であると反省している。
 また、生存学HPの「障害者と労働」ページの拡充、整理も、ほとんどできなかった。データそのものは集積しつつあるので、来年度以降、HP掲載等を計画的におこなっていきたい。

構成メンバー

渥美つとむ
岸田典子
栗川治
駒澤真由美
澤岡友輝
中井秀昭
中井良平
兵頭 卓磨

SOGI研究会(2020年度)

院生代表者

  • OUYANG Shanshan

教員責任者

  • 立岩 真也

概要

【目的】SOGI(Sexual Orientation and Gender Identity)とは、性的指向とジェンダー・アイデンティティのことを意味する。本研究会はSOGIの視点で幅広い課題を検討することを目指している。2020年度研究会の目的は、ジェンダー、性愛規範と健常主義を批判する焦点を置き、フェミニズム、クィア理論とディサビリティ・スタディーズの交差する理論的な検討を行う。先行研究(英文献を中心に)を学習した上で、日本の社会問題を着目し、これからの研究課題を検討することである。
【内容と方法】本研究会の内容および方法は3つの活動で構成される。
①読書会を開催し、フェミニズム、クィア理論、ディサビリティ・スタディーズの交差に関する文献・論文の輪読を行うことを活動の基本とする。その場、担当メンバーがレジュメを作って発表する。
②外部講演会や外部の研究会に参加し、その場で得た知識と自分なりの感想などを研究会で検討する。
③読書会で検討したテキストの著者を招きして公開研究会を行う。
【意義】本プロジェクトは、多様な専門領域とSOGIの接点を探ることによって、性的マイノリティ研究に関心を持つメンバーは各自の研究を進捗させると考える。また、プロジェクトを通じて、英語力の向上、学年・専門領域・国を超えた交流が国際的な研究視野の形成に促進する。

活動内容

1)文献の講読
春学期に4回、秋学期5回に分けて、毎回メンバー2名を担当し、以下の論文または文献を章ごとで議論を行った。
① 井芹真紀子,2013,「フレキシブルな身体–クィア・ネガティヴィティと強制的な健常的身体性」『論叢クィア』6:37-57.
② McRuer,Robert,2006,“Introduction,”Crip Theory: Cultural Signs of Queerness and Disability, New York University Press,1-31.
③ Kafer,Alison,2013,“Introduction,”Feminist,Queer,Crip, Indiana University Press,1-24.
④ 竹田恵子,2020,『生きられる「アート」』ナカニシヤ出版.

2)学習会と公開研究会の開催
①2021年2月13日に、「「性・アート・リレーションシップ」」と題して、公開研究会を開催した。講演は竹田恵子氏「生アート《S/N》・アイデンティティ・コミュニティ」である。院生発表は、メンバーである長島詩織「DSM-5における性機能不全批判序論――アセクシュアルを通じて正常な性を問い」、OUYANG Shanshan「残酷児(Disabled Queer)であるアクティビストの活動に関する考察――ラジオ・コミュニケーションを中心に」であり、その後、来場者を含めた総合討論を行った。
②2019年2月25日に、「SOGIと宗教を考える」と題して、公開研究会を開催した。講演は朝香知己氏「クィアとキリスト教神学」である. 院生発表は、メンバーであるOUYANG Shanshan「台湾における性的マイノリティ運動と宗教団体の諸関係に関する考察」であり、その後、堀江有里氏のコメントと総合ディスカッションを行った。

成果及び今後の課題

 今年度は、SOGIとディサビリティ・スタディーズ、クィア研究に関連する議論ができた。公開研究会を通じて、アート、または宗教という視点を考察することによって幅広い勉強ができた。今後、コロナで従来の研究会と異なる運営の試みを見直し、次年度はより良い研究会活動を継続していくことを望んでいる。

構成メンバー

OUYANG Shanshan
SHEN CHIN
長島 史織
QU Honglin
LIU Xinyue
LIU Ke
岸本 玲奈
岡本 亜矢子
飯島 万裕

活動歴

2019年度の活動はコチラ

「音楽と社会」研究会(2020年度)

院生代表者

  • 西澤 忠志

教員責任者

  • 千葉 雅也

概要

 本研究会の目的は、音楽と社会の相関に着目し、音楽学、美学や社会学、人類学等の知見を参照しながら音楽・文化研究が行えるよう、様々な分野で前提となる知識、概念、そして方法論を多様なバックグラウンドを持つ参加メンバー間の議論から身に付けることである。音楽研究において、対象となる作曲家や作品を社会とのかかわりの中で考察することは今や当然のこととなり、様々な学問分野を融合する視点をもって研究することが必要となっている。こうした研究の動向を踏まえ、参加メンバー各自の研究における視野を広げることに主眼をおいている。
上記の目的を達成するため、本研究会は音楽と社会の相関に着目する本研究会の趣旨に基づき、広く文化に関する研究の文献講読を行う。特定の学問分野に限定することなく文献を講読するためには、概念の基本的な理解だけではなく、学問分野による用語の使われ方の差異にも留意し、理解することが不可欠である。古典的文献と近年の研究書を講読することで、既存の方法論や近年の研究手法についての知見を深め、そうした様々な方法を音楽研究へ適用しうる可能性を考慮に入れて議論する。そのことによって各自の研究課題を深め、音楽を含めた文化研究への視野を広げられることが本研究会の意義である。

活動内容

 次の6冊の基礎的な文献を講読し、メンバー間で議論した。春学期に4回、秋学期に5回の研究会を、オンライン上で実施した。

①テオドール・アドルノ『模範像なしに』
研究会 1:2020年5月5日(火)14時00分~17時00分(オンライン上で実施)
講読箇所:「好ましからざるもののすすめ」、「今日の機能主義」、「悪用されたバロック」、「芸術と諸芸術」
総括  :現代芸術に対するアドルノの態度、現代芸術のマネージメント、そして芸術と諸芸術の境界線についてのみならず、アドルノ哲学におけるイデオロギーや思想的背景についての知見が得られた。

②粟谷佳司,太田健二編『表現文化の社会学入門』
研究会 2:2020年6月21日(日)14時00分~17時00分(オンライン上で実施)
講読箇所:第2章「「ホンモノ」らしさをめぐる議論――ベンヤミン、アドルノ、ボードリヤール」、第5章「メディア、テクノロジーと文化――マクルーハンから文化研究の諸相」
研究会 3:2020年7月12日(日)14時00分~17時00分(前半)(オンライン上で実施)
講読箇所:第6章「戦後日本の文化研究――鶴見俊輔と吉本隆明の文化論」、第12章「大阪万博をめぐる表現文化」
総括  :芸術や大衆文化を含む様々な表現文化を社会学的理論に基づいて研究する手法について学び、理論を応用して研究を深める方法とその限界や問題点について議論した。

③ジョナサン・クレーリー『観察者の系譜』
研究会 3:2020年7月12日(日)14時00分~17時00分(後半)(オンライン上で実施)
講読箇所:第1章「近代と観察者の問題」
研究会 4:2020年8月15日(土)14時00分~17時00分(オンライン上で実施)
講読箇所:第2章「カメラ・オブスキュラとその主体」、第3章「主観的視覚と五感の分離」
研究会 5:2020年9月27日(日)14時00分~17時00分(オンライン上で実施)
講読箇所:第4章「観察者の技法」、第5章「視覚的=幻想的(ヴィジョナリー)抽象化」
総括  :歴史的な系譜を辿りながら観察者とその身体にフォーカスをあてた視覚の近代化と、その歴史研究における身体の扱い方について学んだ。聴覚をめぐる歴史的議論の現状について確認した。

④マルク・オジェ『非‐場所:スーパーモダニティの人類学に向けて』
研究会 6:2020年11月1日(日)14時00分~17時00分(オンライン上で実施)
講読箇所:「プロローグ」、「場所から非‐場所へ」
総括  :「場」と「空間」の概念の整理し、オジェのいう「非-場所」概念を確認した。そのうえで、現代のアイデンティティの諸相をオジェの主張をもとに議論した。

⑤原克『騒音の文明史:ノイズ都市論』
研究会 7:2020年12月12日(土)14時00分~17時00分(オンライン上で実施)
講読箇所:第7章「騒音と静寂の権力論」、第8章「都市の交響楽」
総括  :明治期における音楽、雑音、静寂、騒音を含む「音」の秩序や、「音」の扱われ方を中心に議論し、明治期においても音に関する立場は江戸時代を踏襲していたことを確認した。その上で、日本とイギリスなどの諸外国との「騒音」めぐる反応の違いを通じ、音に関する国ごとの感性的な違いを議論した。

⑥ジェイムズ・クリフォード『文化の窮状:20世紀の民族誌学、文学、芸術』
研究会 8:2021年2月7日(日)14時00分~17時00分(オンライン上で実施)
講読箇所:第1章「民族誌的権威について」、第3章「民族誌的自己成型」
研究会 9:2021年3月14日(日)14時00分~17時00分(オンライン上で実施)
講読箇所:10章「芸術と文化の収集について」
総括  :芸術=文化システムという従来の西洋中心主義的な姿勢から脱却し、ある文化を現在における別のコンテクストに置き換えることで、文化的な混淆性をとらえるという、人類学の新たな取り組みや手法について学んだ。

成果及び今後の課題

 今年度は、コロナ禍の中でオンラインでの開催になったが、学外に所属する参加者でも参加しやすいという利点があり、構成メンバーを越えて他大学の院生等も含め多くの参加があった。過年度の活動でも研究フォーラムなどを企画することで他大学の院生等も交えて議論する機会を創出してきたが、継続的な参加が難しいという課題があった。オンラインでの研究会の設定によって幅広い議論に発展したことから、今後の研究会の運営にオンラインを継続して取り入れていくことも検討したい。
今年度は文献講読のみの活動であったが、人文科学の幅広い分野の文献を講読することができ、音楽への応用可能性を含めて議論することができた。本研究会の議論を、メンバー各自の研究課題を広い視野で研究するための素地として、今後の研究に生かしていきたい。

構成メンバー

西澤 忠志
SHIN Juhyung
松本 昂也
森 敬洋
Wang Qionghai

活動歴

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