エスノグラフィー研究会(2022年度)

院生代表者

  • 酒向 渓一郎

教員責任者

  • 阿部 朋恒

概要

本研究会の目的は、エスノグラフィーの批判的読解、および実地での訓練調査を通じて、研究会参加者のフィールド調査力を向上することにある。エスノグラフィーとは、フィールドワークという経験的な調査手法を通じて、人びとの社会生活について具体的に書かれた記述のことを指す。近年、人類学・社会学を問わず、さまざまな分野において研究手法としてエスノグラフィーが導入されている。本研究会に参加する院生のフィールドもさまざまであるが、全員が参与観察や生活史の聞き取りに取り組んでいるという共通点をもち、収集したデータからエスノグラフィーを書くことになる。これまでに描かれてきたさまざまなエスノグラフィーの読解と訓練調査を通じて、参加者のフィールド調査力を向上する機会としたい。そこで本研究会では以下の2つの目標を設定する。
➀様々な分野で描かれたエスノグラフィーの中から課題図書を選び、月1~2回の読書会を開催する。
➁研究会顧問である阿部の引率の下、京都市北区の里山において合宿を行い、フィールドワークの訓練を目的とした簡易的な調査を行う。そこで得たデータについては、検討会を開催し、調査内容やインタビュー方法について参加者の間で相互検討を行う。

活動内容

おおよそ月2回、レジュメ担当者を決めて課題図書を輪読した。
参考のためこれまで輪読した書籍の一部を下記に記す(順不同)。
ブロニスラウ・マリノフスキー(2010)『西太平洋の遠洋航海者』(増田義郎訳)講談社学術文庫
 アリス・ゴフマン(2021)『逃亡者の社会学』(二文字屋脩他訳)亜紀書房
 宮前良平(2020)『復興のための記憶論』大阪大学出版会
 ロイック・ヴァカン(2013)『ボディ&ソウル』(田中 研之輔他訳)新曜社

成果及び今後の課題

本研究の成果としては、分野横断的にエスノグラフィーを輪読することができたことがあげられる。たとえば人類学を志す院生が社会学者やその他の分野の研究者が描いたエスノグラフィーを読む機会を得ることができた。このように普段はあまり馴染みのない分野にて描かれたエスノグラフィーの内容を、時間をかけて検討、批判的に読み込むことができたのは、将来的に本研研究会の参加者がエスノグラフィーを描く際の参考となったといえる。他方、今後の課題としては当初予定していたフィールドワークの訓練合宿が行えなかったことである。このことは、コロナ禍が比較的落ち着いたことで本研究会参加者の多くが自身のフィールドに戻ったため、合宿参加者の予定を合わせることが困難であったことが大きい。しかし、合宿の意義はあるという意見は参加者のなかで一致しているため、今後研究会を継続する場合訓練合宿を行いたい。

構成メンバー

酒向 渓一郎
柴田 惇朗
坂本 唯
孔 文浩
李 思航
曹 旭東
清水 美春
片平 美雪
吉川 由貴
西本 春奈

「障害者と労働」研究会(2022年度)

院生代表者

  • 栗川 治

教員責任者

  • 立岩 真也

概要

◆目的
 本プロジェクトは、次の2つを目的とする。
 ①「障害者と労働」に関わる研究をおこなっている院生が、共同研究を通じて、各自の研究力を向上させる。
 ②各院生が「障害者と労働」に関する最先端の国内・国際的な研究動向を把握し、実態を調査し、その成果を集積・発信していくことを通じて、学術研究の発展に寄与できる実践力を培う。
◆方法・内容
 上記の目的を達成するための方法として、次の内容の活動をおこなう。
 ①定例研究会の開催(月1回程度): 各院生の研究経過、研究成果を持ち寄り、相互の批判・討論を通じて、各自および共同の研究の課題を明らかにしていく。
 ②研究成果報告会の実施(年度末): 公開の研究成果報告会をおこない、1年間の本プロジェクトの実績を報告するとともに、国内外の最先端の研究者を招聘してシンポジウム(講演かい)を併せて開催し、今後のさらなる研究の進展を図る。
 ③生存学研究への参画: 立命館大学生存学研究所の研究活動に積極的に参画し、障害学国際セミナー(東アジア障害学フォーラム)での研究発表・海外の研究者との交流を深めるとともに、日常的には生存学hpの「障害者と労働」のサイト(http://www.arsvi.com/d/w0105.htm)での資料集積・内容拡充を、本プロジェクトの課題に位置付けておこなっていく。
 ④学会・研究会、調査への派遣: 「障害者と労働」に関する各種学会・研究会に参加する院生、およびインタビュー調査等に出張する院生に対して、旅費等を補助して、各自の研究活動を支援する。
 ⑤プロジェクト成果報告の発信: 上記①~④の活動成果を随時報告書にまとめ、生存学hpに掲載し、関係者から指導・助言を得る。
◆意義
 本プロジェクトは、現代の日本と世界において重要なテーマである「障害者と労働」に関して、最先端の学際的・国際的な知見・情報を得つつ、個々の院生が独創的な研究を進めるとともに、その成果を先端総合学術研究科および生存学研究所の活動・媒体を通じて世界に発信し、この分野の学術研究の進展に寄与していく経験を積めるという意義をもつ。これは、「障害者と労働」に関する研究を志す大学院生が多数在学する本研究科(おもに公共領域)の特色を生かし、また、日本と東アジア、そして国際的な障害学研究の拠点である生存学研究所が本研究科ときわめて密接な関係にあるという条件に恵まれていることによって可能となっていることである。

活動内容

  • New!
  • 2022年度立命館大学先端総合学術研究科院生プロジェクト「障害者と労働」研究会 2022年度公開セミナー

    テーマ:障害のある人もない人も共に働く場とは
    『精神障害を生きる──就労を通して見た当事者の「生の実践」』出版記念

    日時:2022年12月19日(月)19:00~21:00
    開催形態:ZOOMによるオンライン配信 
         ※情報保障あり(日本語音声を文字通訳します)

    参加方式:事前申し込み制
    申し込みはこちら
    申し込み締め切り:2022年12月17日(土)21:00まで
     ※申込フォームからの参加申し込みが難しい場合には、
      下記の問い合わせ先にメールをしてください。

      問い合わせ先 山口和紀 
      mail: gr0530ev[at]ed.ritsumei.ac.jp(※atを@に変更)

    詳細についてはこちらをご覧ください。

    構成メンバー

    渥美 勉
    有松 玲
    大木 えりか
    宇津木 三徳
    岸田 典子
    國近 歩
    栗川 治
    小井戸 恵子
    竹村 文子
    種村 光太郎
    中井 秀昭
    中井 良平
    西本 春菜
    宮本 敬太
    山口 和紀

    活動歴

    2021年度の活動はコチラ
    2020年度の活動はコチラ

    「アート/クラフト」研究会(2022年度)

    院生代表者

    • 柴田 惇朗

    教員責任者

    • 小川 さやか

    概要

     本研究会の目的は「アート/クラフト」の境界的事例の質的研究を用いて、制度の枠を超えた社会における創造性のあり方について研究し、その成果を学術論文として発表することである。
    具体的な内容および実施方法は以下の通りである。昨年度の成果である「おかんアート」に関する調査、および第38回民族藝術学会大会における発表「研究対象としての「おかんアート」 ——美学、社会学、人類学からの検討」(2022.04.17)に基づき、本年度は追加調査及び査読論文の執筆・投稿を行う。月1回程度のペースで月例研究会を開催し、そこでは参考資料の購読、調査の計画、執筆の計画及び進捗報告、論文投稿準備などを行う。なお、調査は「おかんアート」に関する活動が盛んな神戸市長田区を便宜的な予定地としているが、変更の可能性もある。
    本研究会の意義は学際的な研究領域の院生が集まり、社会人文科学において広く重要性が指摘されている創造性に関する共同研究を行う点である。各学問領域の理論や方法論に関する知見の共有を通じた各人の研究者としてのスキルアップは各自の研究の充実に寄与すると考えられる。また、共著論文の執筆はそれ自体が貴重な研究経験となることに加え、それが各自の業績となることも大きな意義である。

    【参考】Howard S. Becker, 1984, Art Worlds, University of California Press.(後藤将之訳,2016,『アート・ワールド』慶應義塾大学出版会.)

    活動内容

    本年度、当研究会は11回の例会、2度のフィールドワーク、学会発表を行った。例会ではフィールドワークの準備やふりかえり、学会発表・論文提出に向けた準備を行った。

    成果及び今後の課題

    成果:学会発表およびフィールドワークを通じて共同研究を前にすすめることができたこと。
    今後の課題:会発足時から目標としている論文投稿は2023年度に持ち越された。提出を行うことを今後のマイルストーンとして設定した上で、その後の展開についても議論を重ねたい。

    構成メンバー

    柴田 惇朗
    藤本 流位
    坂本 唯
    西本 春菜

    活動歴

    2021年度の活動はコチラ

    デジタルメディア空間と情動研究会(2022年度)

    院生代表者

    • 浦野 智佳

    教員責任者

    • MARTIN ROTH

    概要

     本研究プロジェクトは、デジタルメディア空間で発生する人々の情動的な営みについてあつかう。ソーシャル化したデジタルメディアの場で、人々はどのような情動のやりとりをおこなうのかについて、参加メンバー各自の研究に引き寄せながら検討する。これらはデジタルメディア空間におけるメタ的な位相での情動の取りあつかいからメディア作品の受容論を中心として、いずれも人々の情動が緒メディアに触れることでどのように誘起されるかについて検討するという点で共通する。理論面では主にメディア論と情動論を軸として、各自の研究であつかう事例を検討していく。具体的な活動方法としては、講師を招聘しての講演会もしくは勉強会と、活動メンバー内での読書会及びディスカッションを予定している。
     本研究プロジェクトの活動は、個別具体的な複数の事例に共通の切り口を与えより抽象的なレベルでの議論を可能にする点で、メンバー各自の研究の進展に対して不可欠なものである。また、デジタルメディアにおける情動という、未だ検討の余地が大きく残る分野において、事例に裏打ちされたフィードバックによる理論面での前進が期待できる。

    活動内容

    2022年
    10月 読書会(伊藤守(2017)『情動の社会学』青土社)
    11月 読書会(伊藤守(2017)『情動の社会学』青土社)
    12月 講師を招聘しての勉強会 詳細は以下に記載
    2023年
    2月 読書会(White, Daniel. (2022)Administering AFFECT:POP CULTURE JAPAN AND THE POLITICS OF ANXIETY, Stanford Univ Press.)

    勉強会タイトル:伊藤守先生 特別勉強会「情動とメディア研究の課題」
    日時:2022年12月2日(金)14:00~16:00
    場所:立命館大学衣笠キャンパス 創思館4階so401.402教室
    対象:学生・院生・教職員(申込不要)
    概要:早稲田大学教育・総合科学学術院教授、日本メディア学会会長の伊藤守先生をお呼びしての勉強会。
    伊藤先生から「情動とメディア研究の課題」についてご講演いただいた後、参加者とのディスカッションをおこなった。

    なお勉強会に関する参考文献として、次の資料を使用した。
    伊藤守(2013)『情動の権力―メディアと共振する身体』せりか書房
    伊藤守(2014)『アフター・テレビジョン・スタディーズ』せりか書房
    伊藤守編(2015)『よくわかるメディア・スタディーズ[第2版]』ミネルヴァ書房
    西垣通・伊藤守編著(2015)『よくわかる社会情報学』
    伊藤守(2017)『情動の社会学』青土社
    伊藤守編(2019)『コミュニケーション資本主義と〈コモン〉の探求: ポスト・ヒューマン時代のメディア論』東京大学出版会
    伊藤守編(2021)『ポストメディア・セオリーズ:メディア研究の新展開』ミネルヴァ書房

    成果及び今後の課題

     12月におこなった勉強会とそれに向けた読書会では、伊藤守先生の論じるデジタルメディア研究における情動の理論を検討した。また先生に直接お話を伺うことで、今後の情動論を切り口としたデジタルメディア研究への見通しを得た。
     今後の課題としては、今年度の活動でたびたび疑問としてあがった、情動論のバックグラウンドおよび情動論として成立する以前の議論について広く学ぶ必要をあらためて認識した。

    構成メンバー

    浦野 智佳
    向江 駿佑
    田中 俊太朗
    PERNG Shinwen
    ZHANG Yixin

    Public & Inclusion Research Project(2022年度)

    院生代表者

    • 新山 大河

    教員責任者

    • 岸 政彦

    概要

    〈背景〉
    COVID-19の感染拡大が著しくなって以降、差別や貧困などの社会問題が浮き彫りとなった。自己責任論と社会的排除が横行し、公共圏は驚くべき速度で縮小している。
     公共圏と包摂に関する知見がこれまでになく求められる一方で、社会問題の構造的要因を明らかとするための一手法であるインタビュー調査の実施が困難となった。また、感染流行下においては研究会や勉強会の開催といった学生の主体的な学びと議論を展開するための場の形成が阻まれ、分断が進んでいる。大学院生には学修と研究、そして社会に向けた成果の発信といった学術的意義および社会的意義への円環的な姿勢が求められている。
    これらに対して、「社会的排除」をテーマに研究会を院生間で共同的に進めたい。

    〈目的〉
    本プロジェクトの目的は以下の3点である。
    ①「社会的排除」に関連したテーマで、質的社会調査を用いた研究を行なっている院生を主体に、輪読会・データセッションなどの研究会を通じて各自の研究力を向上させる。
    ②社会調査実習を通して、フィールドワークを体系的/総体的に学び、質的社会調査法に関するノウハウを習得する。
    ③各々の研究から、データセッション会によって導き出された知見を、学会報告や論文投稿などを通じて学術研究の発展に寄与する。

    〈方法・内容〉
     上記の目的を達成するために、本活動では次の活動を実施する。
    1【輪読会】
    主に質的社会調査の古典と位置付けられる著作を課題図書として設定する。各々が設定した図書を輪読会までに購読し、担当パートのレジュメをもとに報告を行う。報告を受け、各々の研究関心やテーマに引き付けた議論を行う。
    2【インタビュー調査】
    メンバーが各々の活動しているフィールドの調査協力者へと生活史調査を行う。
    3【データセッション会】
    調査で得られたデータを文字起こしし、データをもとに議論を行う。社会的排除の実態から、各自の研究の課題を議論から導き出す。導き出された知見をもとに、いかにして成果を社会へ発信、還元していくのかを議論する。
    4【講師招聘】
    社会的排除に関わる研究へ取り組む講師を招聘し、公共圏と社会的排除について学ぶ。そののちに講演をふまえて、各々の活動しているフィールドにおける社会問題や構造的要因について議論する。
    5 【社会調査実習】
    「沖縄戦の生活史と戦後沖縄社会の構造変容」(岸政彦/科研費研究課題19K02056) における調査へ、研究会コアメンバーが同行して調査の補助、聞き取りを行う。調査に同席し、現地での調査対象者との信頼の築き方や、研究者として望まれる立ち振る舞いなど、明文化できないような事柄も含めた社会調査の方法を取得し、フィールドワークを総体的、体系的に学ぶ。

    <意義>
    ①研究会を通じた研究活動によって得られた知見を、学会報告や論文投稿などの形で社会に発信する
    ②アフターコロナの学修における学び方を模索し、引き継ぐことでピア学習のモデルを提示する

    活動内容

    活動内容
    ①マックス・ウェーバー『理解社会学のカテゴリー』輪読会
    開催日: 2022年6月18日
    会場:Zoom開催

    ②アーヴィング・ゴッフマン『スティグマの社会学』輪読会
    開催日: 2022年7月20日
    会場:Zoom開催

    ③ハワード・ベッカー『アウトサイダーズ』輪読会
    開催日: 2022年8月13日
    会場:Zoom開催

    ④社会調査実習
    開催日:2022年9月12~16日
    会場:沖縄県 那覇市・座間味村
    講師招聘研究会:「沖縄の階層とジェンダー」(於:琉球大学) 上間陽子先生(琉球大学)

    ⑤ピエール・ブルデュー『芸術の規則I』輪読会
    開催日: 2022年11月2日
    会場:Zoom開催

    ⑥ピエール・ブルデュー『芸術の規則II』輪読会
    開催日: 2022年12月7日
    会場:Zoom開催

    ⑦ハワード・ベッカー『アート・ワールド』輪読会
    開催日: 2023年1月18日
    会場:Zoom開催

    成果及び今後の課題

     本プロジェクトの研究成果は以下の通りである。いずれの活動も構成メンバーに加えて他大学の大学院生や学部生の参加もあり、活発な研究会活動を行うことができた。

    【古典輪読会】
     古典輪読会では、マックス・ウェーバー『理解社会学のカテゴリー』、アーヴィング・ゴッフマン『スティグマの社会学』、ハワード・ベッカー『アウトサイダーズ』『アート•ワールド』、ピエール・ブルデュー『芸術の規則I・II』を取り上げた。いずれも社会学の重要文献として位置付けられているもので、本研究会のテーマである社会化的排除や公共圏といった観点から検討を行うことができた。

    【社会調査実習・講師招聘】
     社会調査実習では、岸政彦先生の「沖縄戦の生活史と戦後沖縄社会の構造変容」(科研研究課題/領域番号19K02056)に同行する形で行なった。「沖縄社会の戦後の継時的な構造変容」をテーマに、戦争体験者がその後どう人生を形作っていったのかについて調査を行なった。実習では実査に加え、琉球大学教授の上間陽子先生を招聘し、「沖縄の階層とジェンダー」をテーマにご講演をいただいた。
     研究成果としては、取り組みが琉球新報で報じられた他に、得られたデータをまとめた報告書が立命館大学国際言語文化研究所より発行された。報告書は座間味村役場や、座間見小中学校、語り手の方々へお配りすることを予定している。各々の研究活動の基礎力を底上げすることを目的として、インフォーマントとの信頼関係の築き方や、立ち振る舞いなど、明文化できない社会調査のノウハウを取得し、フィールドワークを総体的、体系的に学ぶことができた。

    【成果物】
    [調査報告書]岸政彦・山本和(編), 2023, 『調査報告書 座間味の人生』 立命館大学国際言語文化研究所.
    [メディア報道]琉球新報DIGITAL, 2022, 「火薬で遊ぶ子どもに『戦争は終わった後も続いてる』大学院生らが座間味島の
    生活史を聞き取り」(最終閲覧日2023年2月21日 https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1588703.html).

    構成メンバー

    新山 大河
    西本 春菜
    玉置 ふくら
    玉木 敦之(社会学研究科)
    林 綾乃(社会学研究科)

    家庭内・親族間等における人権問題研究会(2022年度)

    院生代表者

    • 中井 良平

    教員責任者

    • 立岩 真也

    概要

     十分な対策が行われているかは別として、学校や職場といった場所におけるいじめ等の人権侵害に対しては、厳しい目が向けられるようになっている。他方、家庭などにおいて近しい関係にある者同士の間に起こった人権侵害では、外部の第三者による評価が困難なこと、職場や学校といった公共にも開かれている場所と異なり、閉鎖性が高いことなどから、被害にあった者がより声をあげづらく、声をあげても適切に受け取られない、といった事態が起こっていることが考えられる。また、法によっても規定され残存する家長制の影響も受け、家族・親族間においては序列が存在し、その上位にいる者から下位の者に対しての権力の行使が可能となっている。これらの事情が組み合わさることで、公共の場においては人権侵害と捉えられる問題が、ひとたび家庭内や親族間の問題となると、「不適切な(行いをする)成員」に対する「正当な力の行使」などとして容認されるという事態がうまれ得る。家族・親族は、多くの者が生まれながらに最も身近に、永続的に所属する集団であり、その集団においての被害・疎外それ自体が、その者への大きな人権侵害となり得る。またそのような強固な基盤を持つ集団において少数派になった場合、他の成員に体制の転換を訴え、実現させることは極めて困難である。外部への被害の訴えが困難であることと上記事情が組み合わさり、被害にあった者は孤立することになる。本プロジェクトでは、インタビュー調査を主軸に据え、家族や親族間での人権侵害やそこから立ち直ろうとする営み、それを阻害する要因などに着目することで、「家」において権力がどのように作動し、弱い立場の成員へ影響していくのかを考察する。

    活動内容

    ・インタビュー調査(2022年度は1名)
    ・定期的な文献講読(2022年度は『結婚差別の社会学』)

    成果及び今後の課題

     インタビュー調査では、婚外子を産むことに対する国・社会・家族・親族からの差別的な扱いについて、Aさんにお話を伺うことができた。Aさんは長く差別に反対する運動を行ってこられ、お話を伺いながら、過去から現在に至る差別のあり方や、それに屈しまいとした人々の行動の、重要な一端を見ることができた。また、プロジェクトの問題意識を自身のものとして強く有するメンバーの経験と、Aさんの経験を照らし合わせたとき、家父長制などを拠り所とし、「家」内の成員を正統/非正統な者に隔てようとする人々のあり方が、浮かび上がってきた。『結婚差別の社会学』(齋藤 直子)の講読及び意見交換からも、同書における語り(人々の経験)と自身らの経験を対照させ、同様の気付きが得られた。
     課題としては、今後プロジェクトにおける成果を、どのように発表・報告していくか、という点がある。メンバーの多くは、プロジェクトにおける問題意識に関わりのある研究を行っているものの、プロジェクトでの成果を直接研究に用いることは、昨年度はなかった。得られた気付きをその時だけのものとしないよう、プロジェクトとして、成果報告の方法・場などについて考えていきたい。

    2022年度購入書籍: 『結婚差別の社会学』 齋藤 直子

    構成メンバー

    中井 良平
    平安名 萌恵
    戸田 真里

    incurable研究会(2022年度)

    院生代表者

    • 中井 良平

    教員責任者

    • 後藤 基行

    概要

     本研究プロジェクトの目的は、希少難病、慢性疲労症候群など医学的な地位が定まっていない「論争中の病」、医学で明確に説明できない病を患う人々が、生活を送る上で必要なサポートを当事者の視点から明らかにすることである。
     希少難病や論争中の病は、医療者にもよく知られておらず、診断までに時間を要することが多い。さらに診断されても治療法はなく、支援制度や可能なサポートについての情報提供も十分になされていない状況にあると考えられる。加えて、検査に異常がないなど、医学で明確に説明できず、診断がつかないために医療機関をさまよい続ける病者も少なくない。
     現在の医療制度は、病名が何らかのかたちで確定されることを前提に設定されており、これらの当事者は、医療や福祉のバックアップを受けられないまま、制度のすき間に追いやられている可能性がある。実際、当事者の置かれた状況については、社会的な認知がほとんどなされていない現状がある。
     当事者や支援者が置かれた状況の一端について、インタビュー調査を通じて明らかにし、当事者らのニーズを丹念に拾い上げていきたい。どのような公的サポート、制度的な改善が必要であるかを考察し、当事者が直面する困難を、診断名や診断の有無に左右されることなくサポートできる仕組みを考えたい。

    活動内容

    ・インタビュー調査(2022年度は3名)
    ・行政の支援担当者・メディア関係者などを交えた意見交換会の実施
    ・定期的な勉強会での文献講読

    成果及び今後の課題

     インタビュー調査に応じていただいたのは、診断や制度の利用までに時間を要した病者当事者・そのご家族の方で、その困難や、医療者・社会などから向けられる偏見の目などについてのお話を伺うことができた。その貴重な記録は、今後話し手の方との協議の後、研究・考察に用いさせていただく。その一部は、生存学研究所サイト「arsvi.com」で公開が予定されている。
     また、昨年度は行政の支援担当者の方を交え、複数回の意見交換会を行い、既存の制度の「使えなさ」について、支援を行う側からの声を聞くことができた。
     今後の課題としては、調査の規模を広げていき、質的・量的どちらの点からも、「制度の谷間」に置かれた病者らの困難を構成する要素を抽出可能とするような、データを集めていくことである。

    2022年度購入書籍: 『〔新版〕現代医療の社会学 :日本の現状と課題』 中川 輝彦 ・黒田 浩一郎 編

    構成メンバー

    中井 良平
    戸田 真里
    西岡 知香
    劉 心悦
    高橋 初
    栗川 治
    寺田 准子

    活動歴

    2021年度の活動はコチラ

    映像と現代音楽研究会(2022年度)

    院生代表者

    • WANG Qionghai

    教員責任者

    • 千葉 雅也

    概要

     本研究会は、現代音楽が映画、アニメーションなどの大衆文化の中で使用され、その構造的な特徴から離れ、イメージ的に聞かされることに焦点を当てる。現代音楽が映像産業に転用される歴史や受容、とりわけその転用の理論的根拠を中心に、現代音楽及び映像音楽の関係性を探究し、映像および音楽研究の分析、研究能力を向上させることを目的とする。
    具体的な内容については、映画音楽および現代音楽についての文献講読およびその発表を通じて議論を行う。月1回のスパンで研究会を実施し、映像音楽および現代音楽の概観を習得するとともに、院生メンバーそれぞれの研究テーマに応じた知識を獲得する。また、ゲスト講師をお招きし、講演会と質疑応答を行い、専門的な知見をいただくことで、メンバーのさらなる研究能力の向上を図る。
     本研究会の意義は、音楽学、美学、表象文化論といった学際的な視点をもとに「映像」及び「現代音楽」をメディアと音楽の関係性という視点で議論することにある。また、レジュメ制作・報告による発表能力の向上、研究会運営のプロジェクト企画能力の養成、そして第一線の研究者と交流を通して、研究力を全般的に向上するという意義がある。

    活動内容

    文献購読
     今年度では日本映画の中で現代音楽を使用する代表的な人物である武満徹の著作『映像から音を削る』を中心に文献購読し、武満の映画音楽の手法を議論しました。
     日期:7月7日、10月29日 場所:ZOOM

    研究発表会
     各メンバーが各々研究テーマについて研究発表をし、その内容を議論しました。

    高畑和輝 「1970-80年代の武満の創作論にみる「武満トーン」の研究」8月3日 ZOOM
    WANG qionghai 「アニメーション特有の音響について」12月10日 ZOOM
    WU zewei 「中国映画における映像音響について」1月7日 ZOOM

    講師講演会
     映画音響及び武満徹研究を専門とするゲスト講師柴田康太郎を招いて講演会を開き、武満徹を中心とする戦後日本映画の音響的特徴について講演をしていただき、その内容を議論しました。
    日期 9月5日 場所:究論館 プレゼンテーションルームA (ZOOM併用)

    成果及び今後の課題

    <成果>
     戦後日本の映画音楽において、現代音楽的な要素を取り入れることで代表的である武満徹の仕事を映像鑑賞、文献購読、講師講演会を通して議論した結果、映像音楽における雑音などの効果音の使用、またそれを分析する現代音楽におけるミュージック・コンクレートの視点の重要性を深く理解した。
     また、各メンバーの研究発表を通して、このような雑音や効果音を音楽にする流れは、戦後日本の映画音楽だけではなく、戦前のアニメーションでも文脈が蓄積しており、2つの領域の背後に共通するのは、音を聞き取る大衆が置かれるメディア環境の変遷があることを理解した。
     以上の二点を踏まえて、映像音響と現代音楽について、その歴史的な経緯及びそれを形成させたメディア環境について、今後さらなる研究を展開するための見識を得ることができた。

    <今後の課題>
     本研究会は本来講師講演会を2回計画していたが、講演料や移動経費の予測が甘かったため実現できなかった。資金計画の面を見直し、さらなる研究会運営能力の向上が今後の課題である。

    構成メンバー

    高畑和輝
    WANG Qionghai
    西川秀伸

    「日中社会の生と死」研究会(2022年度)

    院生代表者

    • 岳 培栄

    教員責任者

    • 立岩 真也

    概要

     近年、日中両国とも多死社会を迎えている。本研究プロジェクトは、異なる専門領域の研究メンバーを集め、日本と中国の社会を中心に生と死にまつわる問題群を扱う代表的な文献を精読したり、自らの研究テーマと関わらせながら議論を行ったりすることによって、基礎知識を深める場であり、新たな視点を生み出すコモンズの創出を目的としている。メンバーの研究関心は、死別のグリーフや、宗教による終末期ケア、献血など多岐にわたっており、加えて構成は多国籍であり、互いに馴染みのある社会の状況を分かち合うことが可能となる。このように、研究分野および日中社会の共通性と相違性の交錯を通し、各自の研究の遂行に大きな役割を果たすことが期待できる。
     内容と方法は以下のように想定する。①研究メンバーのみを対象とする勉強会、読書会を月に一回程度で行う。勉強会は、担当者から自らが進めている研究を発表してもらい、メンバーたちがコメントするという形で進行する。読書会は、古典あるいは最先端の文献を選定し、メンバーたちが精読して討論する形で進める。②日本と中国で活躍している研究者を招いて、講演会を企画する。現時点では、2回の講演会を行う予定である。講演会では、事前に設定した話題に関して、講師が2時間程度の講義を行い、その後メンバーとの交流時間を設ける。

    活動内容

    ①勉強会
     7月10日(日)13:00―16:00 会場:究論館プレゼンテーションルームA
     現時点で取り組んでいる研究テーマおよび関心のある死生に関わることを主題として発表し、議論を交わした。
    ②先端研院生プロジェクトスタートアップ報告会
     7月23日(土)―7月25日(月) 会場:創思館303
     ブースを出し、活動内容や今後の予定について報告した。
    ②読書会
     8月6日(土)14:00―17:00 会場:究論館プレゼンテーションルームA
     講読文献:『現代社会を宗教文化で読み解く 比較と歴史からの接近』櫻井義秀・平藤喜久子編著,2022,ミルネヴァ書房.
     指定した講読文献を事前に精読したうえで、読書会で各章の内容のまとめを分担のかたちで発表した。そして、論点を立て、議論を行った。
    ③オンラインによる文献紹介
     講演会準備の一環として、招く予定の講師の著書を紹介した。SNSを通じて、随時コメントし、心得を分かち合った。
     紹介した文献:
     『これからの仏教 葬儀レス社会 −―人生百年の生老病死』櫻井義秀著,2020,興山舎.
     『東アジア宗教のかたち 比較宗教社会学への招待』櫻井義秀著,2022,法蔵館.
     『統一教会 ――日本宣教の戦略と韓日祝福』櫻井義秀・中西尋子著,2010,北海道大学出版会.
    ④講演会
     テーマ:現代日本の葬送とグリーフ
    講師:櫻井義秀(北海道大学文学院教授)
    開催形態:現地(立命館大学衣笠キャンパス)+ZOOMによるオンライン配信
    開催日時:2022年11月12日(土曜日)14:00ー16:30
     予定プログラム
    14:00―14:05      挨拶、講師紹介
    14:05―16:05      櫻井先生の講演
    16:05―16:30      質疑応答
    16:30          終了予定
     講演は対面+Zoomによるオンライン配信のハイブリッドで開催した。当日の参加者は43名(対面7名、オンライン36名)であった。講演会には、本研究会のメンバーをはじめ、立命館大学の他研究科の学生、他大学の学生、医療関係者、宗教団体関係者など幅広い方々にご参加いただいた。14時〜16時に、講師の櫻井氏は講演を行った。まず、現代日本社会の高齢者のライフスタイルの変化の説明を通じて、高齢社会におけるグリーフケアの重要性を明らかにした。次に、日本における葬送の歴史を踏まえながら、寺院仏教と葬送儀礼の未来について論じた。16時〜16時30分の質疑応答では、コロナ禍における葬送の変遷とこれからのあり方を中心に議論を深めた。

    成果及び今後の課題

     今年度は、勉強会と読書会を2回、講演会を1回実施した。勉強会では、それぞれ4領域に所属しているメンバーたちが自ら取り組んでいる研究を分かち合い、視野を広げることができた。特に死生にまつわる議論を通じて、社会学や文化人類学や哲学など、さまざまな分野が死生の研究をどのアプローチでどのように展開しているのかを概観することができた。読書会では、メンバー10名の分担発表により、効率的に大量の文献が講読することができた。講演会の開催により、読書会で講読の際に議論したものを、招聘した講師と直接に交流することができて、知識を深めることが実現できた。
     しかし、当初予定していた「月一回」の勉強会・読書会が、構成メンバーのさまざまな事情により、2回しか実施することができなかった。これから構成メンバーが主体的に読書会に参加できるような環境づくりを行うことは、今後の課題としたい。

    構成メンバー

    岳培栄
    談拉成(TAN Lacheng)
    陳可為(CHEN Kewei)
    楊雅琳(YANG Yalin)
    王裕森(WANG Yusen)
    黄楚杉(HUANG Chushan)
    範宸宇(FAN Chenyu)
    何錦雲(HE Jinyun)
    岳恒萱(YUE Hengxuan)
    馮雲龍(FENG Yunlong)

    ソーシャル・プラクティスとアート研究会(2022年度)

    院生代表者

    • 藤本 流位

    教員責任者

    • 竹中 悠美

    概要

     本研究の目的は、現代アートあるいは社会学の文献を用いた講読会を行うことによって、近年にはより社会的な実践として問われる現代アートのあり方についての知見を深めることである。
     具体的な内容については以下の通りである。2022年6月から2023年2月にかけて美術分野に関連した研究を行なうメンバーによる月例の研究会を実施する。研究会では文献の講読に加えて、レジメの制作を行ない、発表形式によって講読会を進めていく。また、秋学期以降からは文献講読に加え、関西圏の美術館・芸術祭を対象としたフィールドワークを実施し、その調査報告を行なっていく。
     本研究の意義は、表象および公共領域からなる学際的な院生メンバーによって、21世紀以降の現代美術において注目されている「ソーシャル・プラクティス」としての現代アート作品とその理論についての議論を行なう点にある。そこでは、各領域のなかで前提とされる理論や事例を共有することによって、専門分野だけにとどまることのない幅広い知見の獲得を狙っていく。また、研究会におけるレジメ制作・調査報告など、研究発表において必須となる実務的な演習を通して、研究者としてのスキルアップを目指すことも意義の一つである。

    活動内容

    第一回研究会
    日時:2022年6月25日(土)
    場所:究論館プレゼンテーションルームC
    内容:研究会の指針と今後の調整事項の相談。本研究会が問題とする「ソーシャル・プラクティス」としての現代美術の実践についての事例とその理論を共有し、そのさらなる具体的な先行研究として2022年に邦訳刊行されたニコラ・ブリオーの『ラディカント』の講読を行なっていくことを説明した。
    第二回研究会
    日時:2022年7月13日(水)
    場所:究論館プレゼンテーションルームC
    内容:『職業は専業画家』の著者であり、ギャラリーに所属することなく専業画家として日本画を制作する福井安紀さんをお招きし、実践者としての立場から作品制作や経済活動に関するお話をしていただいた。日本画の歴史的な変遷のなかで自身の作品がどのように制作されているのかといった方法論のほか、実際に作品を購入していただくための戦略などをお聞きした。
    先端総合学術研究科院生プロジェクトスタートアップ報告会
    日時:2022年7月23日(土)~25日(月)
    場所:創思館303、304教室
    第三回研究会
    日時:2022年8月4日(木)
    場所:Zoom
    内容:ニコラ・ブリオー『ラディカント』序論〜第一部までの講読。1990年代以降のグローバリゼーションの到来による現代美術の変化のなかで、問題視される西洋主体の「多文化主義」的なイデオロギーによる特異性の還元に対して、ブリオーによって主張された「オルターモダニティ」の概念を中心とする議論を行なった。ここでブリオーは対象の特異性を「翻訳」することの重要性を説くが、講読会のなかでは、キュレーターのブリオー自らによる「翻訳」の事例が記述されていないことへの批判がなされた。
    第四回研究会
    日時:2022年8月30日(火)
    場所:Zoom
    内容:ニコラ・ブリオー『ラディカント』第二部〜訳者解説までの講読。文化的特異性の還元に抵抗する事例として、トーマス・ヒルシュホーンやティノ・セーガルといったアーティストが参照され、素材の乱雑な扱われ方、行為そのものの作品としての提示など、21世紀の現代美術に特有の実践が論じられている。これに対して講読会では、研究会メンバーそれぞれの見地から、この論旨に沿った具体的なアーティストを事例として議論の俎上に乗せながら、検討を進めていった。そのなかでは昨年度に東京にて展覧会が開催されていたクリストなどが上げられた。
    第五回研究会
    日時:2022年9月30日(金)
    場所:プレゼンテーションルームA + Zoom
    内容:研究会メンバーであるKim Kyoが制作に参加した映像作品《Sol in the Dark》(監督=Mawena Yehouessi)の視聴、検討会を実施した。同作品では、フランス国内を中心に波及するマイノリティのアイデンティティ、若い移民者世代の問題意識をテーマに、デジタル文化と、「LASCAR」と呼ばれるフランスのスラムを拠点に活動する若者に焦点が当てられている。検討会では、意図的に情報過剰な映像といった制作の手付きに対する見解や、映像内容を踏まえて、マイノリティの人々によってコミュニティが形成される場合、それ以外の人々が意図的に排除されるような傾向にあるといった指摘がなされた。
    第六回研究会
    日時:2022年11月18日(金)
    場所:国立京都国際会館
    内容:アートフェア「Art Collaboration Kyoto」へのフィールド調査。
    第七回研究会
    日時:2022年12月11日(日)
    場所:究論館プレゼンテーションルームA + Zoom
    内容:前回のフィールド調査内容の報告、および検討会。それぞれの調査者がフェアにて展示されていた作品をピックアップするというかたちで報告を行なった。また、全体を踏まえた検討会のなかでは、日本国内のギャラリーが親交のある海外のギャラリーを招聘し、コラボレーションというかたちでそれぞれのブースを展開するアートフェアとしての特性、海外のアートフェアの傾向との対比などから、アートフェアとして作品を見ることへの理解を深めた。

    成果及び今後の課題

     本研究会にて実施した講読会によって、『ラディカント』を各領域、各参加者の視点から、検討し、内容の理解を深めることができた。さらに、映像作品の視聴やフィールドワークなど、より実践的な事例を扱った検討によって、批評的な作品の鑑賞と議論の経験を積むことができた。しかし、フィールド調査に関しては一度の実施に留まってしまったため、次年度以降の研究会ではより多くのフィールド調査を実施することが望ましいと思われる。

    構成メンバー

    藤本 流位
    柴田 惇朗
    Kim Kyo
    髙畑 和輝
    中川 陽平
    西本 春菜