第87回日本社会学会大会のシンポジウム「<当事者宣言>の社会学――カムアウトからカテゴリー構築まで」公開報告会

研究会趣旨

    2014年11月23日(日)13:30~17:00まで、神戸大学六甲ホールにて、第87回日本社会学会大会のシンポジウムの一つとして「<当事者宣言>の社会学――アウトカムからカテゴリー構築まで」が開催されました。このシンポジウムに上野が討論者として参加したので、このシンポジウムを踏まえた上で、「当事者性」や「当事者研究」について議論ができればと思っています。関心のある方々は申し込み不要ですので、自由にご参加ください。なお、当該企画は上野のプロジェクト演習の番外編として企画されています。

    参加費無料・申し込み不要ですが、教室が狭いため、また人数確認のため、天田・上野までご連絡頂けると有り難いです

開催概要

    日時:2014年11月28日(金)16:20~19:30
    場所:立命館大学衣笠キャンパス創思館405・406
    参加費無料・申し込み不要

    報告
    広瀬浩二郎(国立民族学博物館)「触常者とは誰か――自尊心・主導権・持続力を兼ね備えた“当事者”の模索」へのコメント
     報告者:中村亮太(15分)
    高森明(発達障害当事者)「アブノーマライゼーション宣言解説」へのコメント
     報告者:白田幸治(15分)
    杉野昭博(首都大学東京)「障害ソーシャルワークの視点から見た障害者運動の主張」へのコメント
     報告者:栄セツ子(15分)
    小宮友根(東北学院大学)「言葉を用いた革命の試み」へのコメント
     報告者:三上保孝(15分)

    討議
     討論者:上野千鶴子(立命館大学)(20分)
    全体コメント:
     討論者:天田城介(20分)
    全体討論(80分)

    司会:萩原三義

「音楽と社会」研究会

院生代表者

  • 堤 万里子

教員責任者

  • 吉田 寛

企画目的・実施計画

 音楽文化を考えるうえで、社会との関わりからとらえ直すことは、最近の主潮になっている。この潮流は、ポピュラー音楽だけでなく、西洋芸術音楽においても特に顕著になっており、カルチュラル・スタディーズの影響を受けた新しい音楽学が構築されつつある。そこで本研究会では、1)音楽社会学における基礎文献の輪読、2)現代における多様な音楽文化についての検討、を通し、音楽文化と社会との相互関係を理解することを目的とする。
 

活動内容

 前期は音楽社会学の基礎文献である、テオドール・アドルノ『音楽社会学序説』の講読とディスカッションを月2回のペースで行った。後期はまずVOCALOID、ロック・フェス、コンサートにおける作曲家、そして「場所」概念について各自発表した。その後2014年12月20日(土)に、下記のシンポジウム「音楽の〈場〉と聴取経験の変容」を実施した。

  • シンポジウム 音楽の<場>と聴取経験の変容


    音楽の〈場〉と聴取経験の変容

    ※クリックでPDFファイルダウンロード。

    日時: 2014年12月20日(土) 15:00~17:30
    場所: 立命館大学衣笠キャンパス創思館303、304
    アクセス
    キャンパス

    【内容】
    15:00~16:30  基調講演

    登壇者(五十音順、敬称略):

    柴那典(ライター、編集者、音楽ジャーナリスト)「インターネット環境の浸透はポピュラー音楽の「場」と「表現」をどう変えたか」
    【要旨】
    レコード、カセットテープ、CDと変遷してきた音楽メディアのあり方は、インターネットの普及以降、大きく変化した。それは単なる技術の発展にとどまらず、それによって、音楽がリスナーにどう聴かれ、どう受容されるか、そのあり方も変わってきた。ここではYouTubeやニコニコ動画などの動画共有サービスが誕生し、海外ではSpotifyなどのストリーミングサービスが普及した00年代後半から10年代初頭にかけてをその端境期と位置付け、その前後で音楽の聴取と表現がどう変わったのかを考察する。特にニコニコ動画とボーカロイドを巡るシーンにおいて音楽が「聴取」だけでなく「派生創作」の対象となってきたことを分析し、また音楽を所有することの意識の変化について考える。また『アナと雪の女王』のヒットを巡る状況の分析などを通して、日本と海外の比較も行う。

    永井純一(神戸山手大学)「フェスティバルとリア充」
    【要旨】
     本報告は野外音楽フェスティバルとそのオーディエンスに注目し、音楽を介した若者のコミュニケーションについて考察するものである。
     近年、メディア環境の変化に伴い、人々の音楽への接し方は大きく変わった。たしかに音楽市場は縮小の一途を辿っているが、若者は音楽から完全に撤退したわけではない。CD売上げの低迷に反して、ライブ市場が活況をみせていることはその現れのひとつといえるだろう。
     2000年頃から隆盛したフェスティバルもまた、新しい音楽との接し方を人々に提供した。それは演奏に全神経を傾けるようなコンサートとも、演者とオーディエンスの一体感を志向するライブとも異なり、会場にいることそのものを楽しむような体験である。そしてその体験を共有するための仲間の存在は、以前よりも重要さを増している。
     一見するとフェスティバルに共に参加する友人がいることは、当事者にとってよろこばしいとこであろう。しかし、報告者の観察によると、フェスティバル内の同質化傾向や同調圧力のようなものは強まっているように見受けられる。そうであるとすれば、今日のフェスティバルとはどのような場であり、そこに参加することは何を意味するのか。このことに注目し、音楽を媒介としてつながる関係性の現状について、統計調査の結果や各種データを適宜参照しながら考えたい。

    宮本直美(立命館大学)「コンサート空間における作曲家と演奏家」
    【要旨】
    現在の一般的なクラシック音楽コンサートでは、18世紀~20世紀前半までの有名作曲家の交響曲や協奏曲がプログラムを飾る。ベートーヴェン、モーツァルトなど、そこにはクラシック音楽ファンにとってはお馴染みの大作曲家の名前が掲げられており、さらにそれを誰が演奏するかという情報が聴衆の関心対象となる。世界的に有名な指揮者、独奏者、そしてオーケストラは、過去に生み出された音楽作品の総数から考えればほんのわずかな数の楽曲を繰り返し演奏し、その解釈と表現の違いを聴かせている。しかし過去の作品を繰り返し演奏するという、このクラシック音楽業界の習慣は19世紀に定着したものである。それ以前は、また19世紀においてさえ、新作を聴くことがあたりまえの習慣だった。この習慣の変化は、コンサート空間における作曲家と演奏家の完全な分離をもたらし、さらには音楽の聴き方、批評のあり方をも変えることとなった。本報告では、コンサートが現在の形態を獲得する過程で、その空間における様々な役割がどのように再編されたのかを考察する。

    16:30~16:40  休憩

    16:40~17:30  フリーディスカッション

  • 事前申し込み不要、参加費無料
  • 問い合わせ先: ritsongakuba[@]gmail.com

成果及び今後の課題

 本研究会は、研究会で得た知見を各自の研究へフィードバックすることが到達目標であり、共同での学会発表および論文執筆は行っていない。しかしながら12月に開催した公開シンポジウムにおいて、前期・後期の研究会で獲得した知見と各自の研究との接合点をふまえたディスカッションを実施できたことが、本研究会の成果と言える。また研究会構成メンバーの青野恵介は今年度の研究会を通じて得た知見を生かして修士論文を提出するなど、各自の研究を遂行することができた。

構成メンバー

青野 恵介  表象領域・2013年度入学
荒木 健哉  共生領域・2013年度入学
奥坊 由起子 表象領域・2012年度入学
堤 万里子  表象領域・2014年度入学
山口 隆太郎 表象領域・2013年度入学

活動歴

2015年度の活動はコチラ
2016年度の活動はコチラ

映画を通じて問いなおす「記憶」の形成

院生代表者

  • 梁 説

教員責任者

  • 渡辺 公三

企画目的・実施計画

 本企画の目的は、人々の〈記憶〉を映画(映像)として表出する作品を鑑賞することで、記憶の描かれ方、記憶の継承のされ方、記憶の変転の有り様を、文学、社会学、人類学といった領域横断的な知見から考察することを目的としている。
 映像作品の制作者は、人々の生活の中の政治・文化・宗教・差別といった数多くの要素が混然としている現実の諸相を映し出し、人文科学がテーマとする〈記憶〉や〈語り〉といった概念の基底となる構造を表出しており、見る側の〈記憶〉についての思考を喚起させる。〈記憶〉という共時・通時を内在する概念について、映画という現代の事象表現から読み解こうとする本プロジェクトの試みは、「表象」理論と実践に挑むものであり、本プロジェクトの意義としてある。また、公開研究会を前提としている点においては、個人では観賞困難な映画作品を広く一般に鑑賞する機会を提供するという点においても意義を備えている。

活動内容

  • 1.特別試写会
  • 制作者倉岡明子氏を迎えて-『だからまいにちたたかう』(7/29)実施、プレ企画『六ヶ所人間記』(7/28)『夏休みの宿題は終わらない』(7/29)実施。映画上映に加え、制作者倉岡氏より、10年にわたるパレスチナの状況の変化などの説明を受けた討論会の実施。先端研修了生金城美幸氏(立命館大学衣笠総合研究機構PD)から、直近のパレスチナの状況を聞くなど、内容の濃い討論会を実施。事前学習として、パレスチナ-イスラエル問題に関する学習、試写会のための事前試写を行った。

  • 2.『こつなぎ――山を巡る百年物語』上映会
  • ■日時: 2014年11月16日(日) 12:30~16:00
    ■会場: 立命館大学衣笠キャンパス 充光館301
    ■プログラム:
    12:00 開場
    12:30~14:30 映画上映
    14:45~16:00 森下直紀氏(和光大学経済経営学部)講演・全体討論
    16:00 終了
    16:15~18:00 懇親会

    ■開催趣旨:
    法的な紛争とその歴史は、いかに記憶され、記録されたのか。
    このような問いをたてる視点から、本企画ではドキュメンタリー映画『こつなぎ――山を巡る百年物語』をとりあげて上映します。
    本作におさめられているのは、入会権をめぐる議論に焦点化される近代日本における土地所有や山林の用益にかかわる制度の問題と、山村という、ある生きる場をめぐる人々の闘いの記録だといえるでしょう。また、上映とあわせて、環境史や環境技術社会論がご専門の森下直紀氏を講師として招聘した公開討論会を行ないます。
    本企画では、多様な学的観点をふまえたフロア全体でのディスカッションを通じて、映像作品での人々の記憶の描かれ方、記憶 の継承のされ方、記憶の変転のあり様を多様な学問分野の領域横断的な知見から考察することを試みます。

    ■参加費無料・事前申込み不要
    ■主催:立命館大学先端総合学術研究科2014年度院生プロジェクト「映画を通じて問いなおす「記憶」の形成」

    ■映画『こつなぎ――山を巡る百年物語』概要
    企画・制作: 菊地文代
    監督: 中村一夫
    製作会社: 株式会社周
    配給: 「こつなぎ」上映実行委員会事務局、株式会社パンドラ
    日本/2009年/日本語/カラー、モノクロ/ビデオ/120分/
    山形国際ドキュメンタリー映画祭2009特別招待作品

    「東北地方の山間の集落で、1917年から1975年まで、入会権をめぐる訴訟裁判があった。人々が自由に山に入り、木 々や実など山の恵みを享受してきた慣習に対して、近代的な土地所有制度が強制され、結局反地主側の敗北に終わる。40年前に取材に入った菊地周さんら3人が残した映像とインタビュー録音をもとに、闘いの歴史を明らかにしていきながら、現在の人々の暮らしに目を向け、日本の農村における近代化の問題を、今日に問い直す。」(出典:YIDFF 2009 公式カタログ〔http://www.yidff.jp/2009/cat035/09c038.html)

    ▼映画『こつなぎ』ダイジェスト版はこちら

  • 3.映画『基地の町に生きる』上映会とトークセッションの実施(2015/2/21)
  • 米軍基地の街で生きる女性たちの証言を集めたドキュメンタリー映画の上映に加えて、秋林こずえ氏(同志社大学大学院グローバル・スタディーズ研究科教授)には、軍隊と性暴力をめぐってジェンダーの視点から、また先端研修了生の大野光明氏(大阪大学グローバルコラボレーションセンター特任助教)には、米軍基地の歴史と現在をめぐる社会運動の視点からコメントをいただき、米軍基地をめぐる〈記憶〉がどのように分断され、自分の基地の〈記憶〉をどう継承しうるのかについて討論を行った。