オンラインシンポジウム「方法としての反ワクチン——歴史で考えるワクチン政策と抵抗する人びと——」


プログラム

※クリックでPDFファイルダウンロード

企画趣旨

ワクチンの歴史は、1796年のエドワード・ジェンナーによる天然痘予防ワクチンである種痘に始まる。19世紀にはすばやく世界に拡がった種痘の効果は絶大で、1980年、世界保健機関WHOは地球上での天然痘の根絶を宣言した。それは、近代の生物医学の輝かしい勝利とされている。
だが、それだけにはとどまらない。疫病による不慮の死をコントロール可能としたワクチンの存在は生物医学の権威を高めるとともに、近代社会における人間の生に対する合理的な支配の一つの範例となったからだ。その意味で、ワクチンは人間の身体に介入する生物医学的なテクノロジーであるだけではなく、生きた人間を対象とする生政治の登場と関わり合った社会的テクノロジーでもある。皮膚に穴を穿たれ、奇妙なものをすり込まれる「医療行為」を人びとに耐えさせたのは、人間の身体を調教する規律訓練の権力の上昇だった。
どんなワクチンであっても有害作用のリスクがゼロということはあり得ない。そして、ワクチンと関連した障害を受けたと感じる人びとの経験において、ワクチンは有害な異物でしかない。いっぽう、ワクチンが疾病のリスクを予防する手法である限りは、その有効性は集合としての人口のレベルにおいて確率の数字でしか表現できない。言いかえれば、ある個人が疾病に感染しなかったり軽い症状で済んだりした場合、それがワクチンの効果なのか、その個人の運が良かっただけなのかを客観的に判別をすることはできない。ワクチン被害のリアリティとワクチン有効性の数字の間のすれ違いは、ワクチンをめぐる議論の根底に横たわっている。
ここでは、国家レベルでのワクチン接種の導入とともに人びとの間に出現した反ワクチン運動の諸相を、非科学的な誤りとして断じるのではなく、歴史社会的な文脈に置き直して理解し、そこに含まれる可能性や意義を考えていきたい。

日時・場所

日時:2021年9月2日(木)13:00開始 16:30終了予定
会場: オンライン(zoom)
ミーティングID: 916 1791 8660
パスコード: 111111
参加費:無料
https://ritsumei-ac-jp.zoom.us/j/91617918660?pwd=YTUwbno5ZXc5dk9qV2dpbGtRYWlGdz09

本ワークショップは挑戦的研究(萌芽)「マイノリティアーカイブの構築・研究・発信:領域横断的ネットワークの基盤創成」(19K21620、代表:美馬達哉)の支援を受けています。
主催:「方法としての反ワクチン」実行委員会
共催:立命館大学大学院先端総合学術研究科、立命館大学生存学研究所

プログラム

  • 13:00-13:40
  • 「方法としての反ワクチン 個人と人口をめぐる生政治」
    美馬達哉(立命館大学 先端総合学術研究科)

  • 13:40-14:20
  • 「20世紀初頭アメリカにおける反種痘運動の組織化とメディア利用」
    平体由美(東洋英和女学院大学 国際社会学部)

    休憩10分

  • 14:30-15:10
  • 「幕末の反種痘論とは何だったのか?」
    香西豊子(佛教大学 社会学部現代社会学科)

  • 15:10-15:50
  • 「HPVワクチン定期接種A類疾病を推進する言説と反対(≒任意接種化要望)する言説構造のあわい―生政治とワクチン」
    佐々木香織(札幌医科大学 医療人育成センター)

    休憩10分

  • 16:00-16:30
  • 総合討論
    指定討論:塩野麻子(先端総合学術研究科・院生)

オンラインシンポジウム「方法としての反ワクチン——歴史で考えるワクチン政策と抵抗する人びと——」


プログラム

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企画趣旨

ワクチンの歴史は、1796年のエドワード・ジェンナーによる天然痘予防ワクチンである種痘に始まる。19世紀にはすばやく世界に拡がった種痘の効果は絶大で、1980年、世界保健機関WHOは地球上での天然痘の根絶を宣言した。それは、近代の生物医学の輝かしい勝利とされている。
だが、それだけにはとどまらない。疫病による不慮の死をコントロール可能としたワクチンの存在は生物医学の権威を高めるとともに、近代社会における人間の生に対する合理的な支配の一つの範例となったからだ。その意味で、ワクチンは人間の身体に介入する生物医学的なテクノロジーであるだけではなく、生きた人間を対象とする生政治の登場と関わり合った社会的テクノロジーでもある。皮膚に穴を穿たれ、奇妙なものをすり込まれる「医療行為」を人びとに耐えさせたのは、人間の身体を調教する規律訓練の権力の上昇だった。
どんなワクチンであっても有害作用のリスクがゼロということはあり得ない。そして、ワクチンと関連した障害を受けたと感じる人びとの経験において、ワクチンは有害な異物でしかない。いっぽう、ワクチンが疾病のリスクを予防する手法である限りは、その有効性は集合としての人口のレベルにおいて確率の数字でしか表現できない。言いかえれば、ある個人が疾病に感染しなかったり軽い症状で済んだりした場合、それがワクチンの効果なのか、その個人の運が良かっただけなのかを客観的に判別をすることはできない。ワクチン被害のリアリティとワクチン有効性の数字の間のすれ違いは、ワクチンをめぐる議論の根底に横たわっている。
ここでは、国家レベルでのワクチン接種の導入とともに人びとの間に出現した反ワクチン運動の諸相を、非科学的な誤りとして断じるのではなく、歴史社会的な文脈に置き直して理解し、そこに含まれる可能性や意義を考えていきたい。

日時・場所

日時:2021年9月2日(木)13:00開始 16:30終了予定
会場: オンライン(zoom)
ミーティングID: 916 1791 8660
パスコード: 111111
参加費:無料
https://ritsumei-ac-jp.zoom.us/j/91617918660?pwd=YTUwbno5ZXc5dk9qV2dpbGtRYWlGdz09

本ワークショップは挑戦的研究(萌芽)「マイノリティアーカイブの構築・研究・発信:領域横断的ネットワークの基盤創成」(19K21620、代表:美馬達哉)の支援を受けています。
主催:「方法としての反ワクチン」実行委員会
共催:立命館大学 先端総合学術研究科、生存学研究所

プログラム

  • 13:00-13:40
  • 「方法としての反ワクチン 個人と人口をめぐる生政治」
    美馬達哉(立命館大学 先端総合学術研究科)

  • 14:30-15:10
  • 「幕末の反種痘論とは何だったのか?」
    香西豊子(佛教大学 社会学部現代社会学科)

    休憩10分

  • 15:10-15:50
    「HPVワクチン定期接種A類疾病を推進する言説と反対(≒任意接種化要望)する言説構造のあわい―生政治とワクチン」
    佐々木香織(札幌医科大学 医療人育成センター)
    休憩10分

  • 16:00-16:30
  • 総合討論

映画論・映像史研究会(2021年度)

院生代表者

  • 向江駿佑

教員責任者

  • 竹中 悠美

概要

 本研究プロジェクトは、ジル・ドゥルーズによる『シネマ I 運動=イメージ』(1983年)および『シネマ II 時間=イメージ』(1985年)の2著作の再読を契機として、『シネマ I・II』以後の映画美学と映画学さらに表象文化論に対する理解の刷新を目的とする。1995年にある映画プロデューサーが語った「どのようなイメージであれ、われわれの手に入らないイメージはない」という断言は「レアリタスのイマーゴ」が従来のものと変わったことを告げている。ドゥルーズの知らなかったシネマの「イメージ」は、それでもなお実在たりうるであろうか。大陸の哲学者よりは映画の実際に詳しく、英米圏の映画研究者よりは哲学の思考に根を下ろした読解を心がけて、『シネマⅠ・Ⅱ』以後の映画に関する哲学書を精読する。視聴覚に偏った立場ではなく、共通感覚をたえず意識した「イメージ」の把握を目指すことになるだろう。

 本プロジェクトの全体テーマは、「ドゥルーズ『シネマⅠ・Ⅱ』と映画論・映像史研究の現在」である。本プロジェクトは以上の目的を達成するため、主に哲学テクストと映画テクストの精緻な読解を心がける。そのために本プロジェクトは映画美学と映画実践の二分野に精通する上倉庸敬先生を招聘し、講義と精読を進める。進め方としては今年度の10月から2月のあいだで毎月一回ずつの研究会を予定しており、それぞれの回は二部構成である。第一部を哲学テクストの読解にあて、第二部を映画実践の観点から映画テクストの理解にあてる。また上倉先生以外にもゲスト講師を招聘予定である。今現在はゲスト講師の方は未定でスケジュールを調整している段階である。例えば、現在想定しているのは、三宅祥雄先生や豊原正智先生である。その場合、上倉先生とゲスト講師による対談形式の講義となり、議論の射程も大幅に広がると考えている。

 本プロジェクトの意義は四つある。一つ目は哲学テクストの精緻な読解を通じて、文献講読力を向上させることである。二つ目は映画テクストを実践の観点から読解することを通じて、具体的なもの(作品)をただ単に鑑賞する次元にとどまるのではなく、それをみて哲学することに精通することである。三つ目は映画論や哲学に精通した上倉先生やゲスト講師とのディスカッションを通じて、我々研究メンバーの哲学と映画論に対する理解と見識が深まることである。そして最後に『シネマⅠ・Ⅱ』以後の映画に関する哲学書を読み、かつその読解を大陸と英米圏双方の研究成果を参照することによって、大陸哲学的な映画研究と英米圏的な映画研究の橋渡しを目指すことである。

活動内容

第一回研究会
日時:2021年11月12日(金)17時~19時
場所:創思館411教室
内容:上倉庸敬先生を招聘して、『シネマ』第一章を解説していただいた。具体的には、第一章を理解する上で重要なテクスト二点、アリストテレスの『自然学』とアウグスティヌスの『告白』の一節を精読した。

第二回研究会
日時:2021年11月26日(金)17時~19時
場所:創思館411教室
内容:上倉庸敬先生を招聘して、『シネマ』第二章と第三章を解説していただいた。今回は第二章と第三章を理解するための準備作りとして、映画テクニックに関する知識への理解を深めた。話題はフィルムのサイズに関する知識から映画製作におけるシナリオ構成の重要性までに及んだが、特にショットとカットとシーンの間に横たわる概念的差異に関する議論は、今後『シネマ』を読み進める上で、重要な礎となるだろう。

第三回研究会
日時:2021年12月3日(金)17時~19時 
場所:創思館411教室
内容:上倉庸敬先生を招聘して、ドゥルーズ『シネマ』一巻の議論を、実際の映画テクストにおいて確認する作業である。今回は『首領を殺った男』のラッシュと完成作品の二つを使用しながら、シナリオから映画作品へと至るプロセスを検討した。『首領を殺った男』のシナリオを皆で丁寧に読み進めながら、特に二つのシーンを詳細に見た。

第四回研究会
日時:2021年12月17日(金)17時~19時
場所:創思館411教室
内容:上倉庸敬先生を招聘し引き続き講義をしていただいた。今回は、一旦『シネマ』から離れて、シナリオ読解と中島貞夫『映画の四日間』をもとに映画生成のプロセスを検討した。映画が実際、現場でどのように作られているかということに関して、『映画の四日間』の議論を吟味することで理解した。

第五回研究会
日時:2022年1月21日(金)18時~21時
場所:創思館411教室
内容:上倉庸敬先生を招聘し引き続き講義をしていただいた。中島貞夫の『映画の四日間』をもとに、今回は『首領を殺った男』の演出面について考察した。特に視線の演出である。ラッシュと実際の作品を交互に見ながら、視線の動きを見極め、なぜそのような視線の演出になっているのかをディスカッションしながら、映画演出への考察を深めた。

構成メンバー

向江 駿佑
濱中 健太
荒木 慎太郎