比較文学と<共生>研究会(2016年度)

院生代表者

  • 橋本 真佐子

教員責任者

  • 西 成彦

企画目的・実施計画

【企画目的】
 文学の中にいかに〈共生〉を見出すことができるのか、時代や地域を越えて立ち現れてくる諸問題について検討する。本プロジェクトは、海外文学と日本文学の接触を通して、文学の〈共生〉の可能性を探るものである。具体的に現段階で切り口となりうるキーワードは、〈帰属〉、〈越境〉、〈海外〉である。テクスト研究を通じて、国民文学の枠を乗りこえるとともに、世界文学として存在し読まれ続けられうる作品として生き延びる文学の要素とは何であるかを考察する。時代によって変容する文学や言語のなかから垣間見える普遍的な価値について理解を深めることを目的とする。
【実施計画】
 本年度は院生プロジェクトをたちあげて初年度に当たる。メンバー全員が文学研究をしており、西成彦教授の読書会にも参加している。オブザーバーの参加を含めて、研究会の充実を図りたい。

活動内容

【通年研究会】
 月1〜月2回程度の頻度で研究会を開催した。一つの課題テクストを読み、互いに議論することで、研究会の目的に即した問いの探求を行った。前期は、〈共生〉に関するテクストを輪読してディスカッションを行った。後期は、二度の映画鑑賞を行ったほか、台湾と植民地に関する文学作品と研究書を精読した。その中でも、特に台南文学について理解を深め、指定質問の準備をする等、公開研究会にむけて取り組んだ。
(文献)
リービ秀雄『越境の声』、岩波書店、2007年
藤井省三、垂水知恵、河原功、山口守『講座 台湾文学』、国書刊行会、2003年
白先勇・山口守訳『台北人』、国書刊行会、2008年
大東和重『台南文学––日本統治期台湾・台南の日本人作家群像-–』、関西学院大学出版会、2015年
(論文)
牧野成一「村上春樹の日本語はなぜ面白いのか—文体を中心に–—」、Proceedings of Central
Association of Teachers Of Japanese Conference、2013
大東和重「植民地の地方都市における『文壇』と『文学』−−日本統治期・台南の台湾人作家たち−−」、『文学』、第17巻第3号、岩波書店、2016年5-6月
(小説)
佐藤春夫『霧社』、「定本佐藤春夫全集」第5巻、臨川書店、1998年
(映画)
『セデック・バレ』
『GF*BF』(2016年度「孔子学院の日」映画上映会に参加)

【公開研究会開催】
12月に公開研究会「〈帰属〉〈越境〉〈海外〉を考える—台湾文学からの視座–−」を開催し、関西学院大学法学部の大東和重教授を講師として招聘した。その際、「考古学と文学のはざま—戦前の台南における平地先住民研究事始め−−」というテーマでお話いただいた。本プロジェクトのメンバーは、大東和重教授の著作、報告にかんする指定質問を行った。

【報告書作成】
2月に、本年度後半の取り組みとしてその成果を、論集『〈越境〉〈帰属〉〈海外〉—文学から「植民地台湾」を考える−−』にまとめた。

  • 台湾文学に関する公開勉強会

<帰属><越境><海外>を考える
――台湾文学からの射程――


台湾文学に関する公開勉強会

※クリックでPDFファイルダウンロード。

  • 日時:2016年12月4日(日)15:00-17:30(開場14:30-)
  • 場所:立命館大学 衣笠キャンパス 創思館303・304号室
  • 講師:大東和重先生(関西学院大学法学部・法学研究科教授)
  • 大東和重先生のプロフィール:
  • 関西学院大学の法学部・法学研究科の教授で、比較文学及び文学史というアプローチから日本及び中国、台湾の文学を研究していらっしゃいます。主な著作には中国人作家・郁達夫と大正時代の日本文学の関係を記した「郁達夫と大正文学」(2012)、戦前植民地であった台湾の、地方都市である台南の文学について研究した「台南文学‐日本統治期台湾・台南の日本人作家群像」(2015)があります。

 

  • 主催:比較文学と<共生>研究会
  • 開催要旨:
  • 台湾文学、特に台湾が日本に占領されていた戦前の台湾文学を取り上げ、<内地人>である日本人と<外地人>である台湾人や民族マイノリティがどのような関係を保持し、どのような共生のしかたを築き上げてきたのかを読み解いていく。

  • タイムテーブル:
  • 14:30 開場
    15:00-15:10 開会の挨拶 司会 橋本真佐子
    15:10-16:00 大東和重先生の講演
    16:00-16:20 休憩
    16:20-16:50 指定質問およびディスカッション
            指定質問者:柏尾有祐・黄茜・大野藍梨・佐々木亮
    16:50-17:00 閉会の挨拶 西成彦先生よりコメント
    18:30- 懇親会(とりのすけ金閣寺前店)

  • 事前予約不要・参加費無料
  • お問い合わせはチラシのアドレスまでご連絡ください。

  • 研究会の紹介:
  • 比較文学と<共生>研究会で、これまでに主に取り上げた作家は、占領期に台湾に住み、台湾で日本語文学を著していた國分直一(1908-2005)や佐藤春夫(1892-1964)などがいます。使ったテキストとしては大東和重先生の「台南文学-日本統治期台湾・台南の日本人作家群像-」、特にその第5章から終章です。その他、学術雑誌「文学」2016年5-6月号に収録された大東先生の「植民地の地方都市における『文壇』と『文学』-日本統治期台湾・台南の台湾人作家たち-」もテキストとして使用しました。

成果及び今後の課題

 後期からは、メンバー各自の研究テーマ領域ではない、「台湾」の文学テクストに沈潜することになった。「台湾」に領域を限定したことには理由がある。前期での活動を顧みた際、「台湾」に関係する文学テクストを扱った点が挙げられる。これはメンバー間で意図していないにも関わらず、上記にも記したように、研究会の性格を含意することで自然と「台湾」という領域にテーマが向かっていったと思われる。台湾文学という射程のみに限定することで、各自の研究テーマとは異なりながらも、より広範且つ深度のある読み、思考を行うことができた。そして、前/後期を通して得られた知見を最終的に論集として纏めた。また、この成果は研究会当初の目的である、国民文学のみのテクストの読みからより柔軟な視座を基に、世界文学的に読むことにも関係するものであった。
 今後は、さらなる研究会の発展の為に、台湾文学以外の地域の文学テクストにも向き合い、また学会への参加などを通して、充実を図りたい。本プロジェクトのメンバーは全員、台湾ないしは台湾文学にかんしてまったくの初学者であったが、台湾の重層的な歴史、日本統治時代の文学、あるいはクイア文学も含めた現代台湾文学についての知見が得られた。そのなかでも、植民地期台湾の文学に関心を寄せた私たちは、論集『〈越境〉〈帰属〉〈海外〉—文学から「植民地台湾」を考える−−』にレポート・エッセイを寄せた。今年度の取り組みを次年度以降につなげるために、まずは論集の合評会、パネル展示などの企画をしていきたい。

構成メンバー

大野藍梨 (共生領域)2006年度入学
柏尾有祐 (共生領域)2015年度入学
佐々木亮 (共生領域)2016年度入学
黄茜(共生領域)2015年度入学
橋本真佐子(共生領域)2016年度入学

生命倫理研究会(2016年度)

院生代表者

  • 安田 智博

教員責任者

  • 小泉 義之

企画目的・実施計画

本研究会は、人の生命(生死)をめぐる問題に関する先行研究を取り上げ、倫理的観点から検討することを目的としている。研究活動をはじめて9年目になった今年度は、学会発表やジャーナルへの投稿を目標にし、各々の研究を進捗させる一つの拠点として研究会を位置づけ活動を行なったとともに、香西豊子先生を招聘して公開研究会を開催した。

活動内容

  • 第1回研究会
  • 7月2日(土)13:30~15:00
    於:立命館大学究論館プレゼンテーションルームC
    内容:自己紹介、第2回目の日程&報告者、予算(消耗品)の使途、香西企画の打合わせ

  • 第2回研究会
  • 7月16日(土) 13:30~16:00
    於:立命館大学究論館プレゼンテーションルームC
    報告者&内容:
    坂井めぐみ(「患者にとっての臨床研究とリスク――脊髄を事例として」)
    高木美歩(構想発表原稿「日本国内の心の理論研究に見る「自閉症」概念の変容」)

  • 生命倫理研究会 公開研究会

  • 生命倫理研究会 公開研究会

    ※クリックでPDFファイルダウンロード。

    日時:2016年11月26日(土)11時~17時
    場所:立命館大学 衣笠キャンパス 創思館
    タイムテーブル:

    11時~12時30分――*ランチ懇親会(会場:創思館409)

    13時――公開研究会開始(会場:創思館401・402)
    司会からの紹介(司会:安田智博)

    13時10分~14時――講演題目「「預防」医学と倫理――「天命」から「人別」へ」
    講演者:香西豊子(佛教大学)

    14時~14時30分――指定質問
    櫻井悟史(生存学センター専任研究員)
    笹谷絵里(立命館大学 先端総合学術研究科)

    14時30分~45分――質疑応答
    (休憩:15時まで)

    15時~16時30分――院生発表
    住田亜希子(立命館大学 先端総合学術研究科)
    「「角膜移植に関する法律」の制定過程――国会議事録を中心として(仮)」
    高木美歩(立命館大学 先端総合学術研究科)
    「軽度発達障害」という用語を巡る論争とその影響について」
    コメント:香西豊子

    16時30分――全体ディスカッション

    17時――終了

    参加費無料
    *ランチ懇親会のみ昼食の準備のため予約制とさせていただきます。
    ランチ:左京区白川 「青おにぎり」
    (一人500円程度の昼食代をご負担お願いいします)
    ランチ懇親会の予約は、11月20日までにチラシのアドレスまでご連絡ください。





成果及び今後の課題

今年度は計4回の研究会を行なった。その内容は各自の研究の進捗状況を発表し、議論し、その後の学会発表や論文執筆に有用な視座が与えられた。また公開研究会にむけての勉強会や公開研究会を通じて、活発な質疑応答が行われることで刺激を得ることができた。
今後も引き続き参加者が相互に刺激を与え合い、各々の研究を進捗させる一つの拠点として研究会を位置づけていきたい。

構成メンバー

安田 智博(生命領域・2010年度)
笹谷 絵里(生命領域・2014年度)
坂井 めぐみ(生命領域・2011年度)
篠原 眞紀子(公共領域・2014年度)
南 玉瓊(国際関係学研究科・2012年度)
北島 加奈子(生命領域・2015年度)
西沢 いづみ(生命領域・2008年度)
住田 安希子(生命領域・2013年度)
高木 美歩(公共領域・2015年度)

ワークショップ 「トランス・ナショナルな高齢者介護――日本とASEANの事例から」

立命館大学大学院先端総合学術研究科 公共領域 プロジェクト演習(公開)ワークショップ「トランス・ナショナルな高齢者介護――日本とASEANの事例から」

 

日時

2016年11月22日(火曜日) 16時20分〜(2時間程度)

会場

立命館大学衣笠キャンパス 創思館403・404
立命館大学衣笠キャンパスマップ(30番の建物)
 

プログラム

  • 報告
  • 上野 加代子 氏(徳島大学総合科学部・教授)
    「日本から東南アジアへの退職移動」
     
    廣瀬 豊邦 氏(向陽介護センター代表/NPO法人日本フィリピンボランティア協会・副会長)
    「フィリピン人介護士の現状」
     

  • 質疑応答
    指定質問:
    佐草 智久(立命館大学先端総合学術研究科大学院生)
    渡辺 克典(生存学研究センター)
     

  • 司会
  • 美馬 達哉(立命館大学先端総合学術研究科)

 
 

趣旨

 現代社会のグローバリゼーションはたんに経済やマスメディアの領域だけではなく、個々人の身体性や親密性の領域までも深く変容させつつある。なかでも、人口構造転換として先進国から拡大しつつあるグローバル高齢化は、私たちの目の前に、介護やケアや依存をこれまでにない形での喫緊の課題として押し上げつつある。
 こうした観点から、日本ASEAN関係における移動と高齢化を、日本から東南アジアへの退職移動(徳島大学総合科学部・教授・上野加代子)、フィリピン人介護士の現状(向陽介護センター代表/NPO法人日本フィリピンボランティア協会・副会長・廣瀬豊邦)という二つの方向性から照射する。
 
 

主催

立命館大学大学院先端総合学術研究科
 

共催

立命館大学生存学研究センター
 

お問い合わせ

先端総合学術研究科 研究指導助手
sentan01■st.ritsumei.ac.jp  *■を@にかえて送信してください。