Core Ethics Vol.11

立命館大学大学院先端総合学術研究科
『Core Ethics』Vol.11 2015年

コアエシックス11号_表紙
目次 PDF<212KB>
奥付 PDF<55KB>


論文

風景思想の転換に参与したローカルエリート
――小林吉明による京都市郊外の風致保全・保勝事業を事例に―― 
岩田 京子 p.1
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ミシェル・シオンによる映画の音声/声をめぐる概念の再考
――映画『二〇〇一年宇宙の旅』の分析を通して――
越智 朝芳 p.13
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滋賀難病連の患者運動と滋賀県との「協働」
――協働関係となる要因分析――
葛城 貞三 p.23
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ルイス・キャロルの『アリス』シリーズにおける二者性の表現
⻆田 あさな p.35
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宇都宮病院事件から精神衛生法改正までの歴史の再検討
――告発者及びその協力者の意図との関係――
桐原 尚之 p.47
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「全国重症心身障害児(者)を守る会」の発足と活動の背景
窪田 好恵 p.59
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「英会話講座」から多文化交流の「場」へ
――亀岡市におけるグローバルセッションの転換―― 
児嶋 きよみ p.71
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精神障害当事者にエンパワメントをもたらす公共の語りの場の設計
――語り部グループ「ぴあの」の実践事例をもとに――
栄 セツコ p.83
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老人福祉法制定前後の在宅高齢者福祉政策に関する再検討
――1950 ~ 1960 年代前半の京都市を事例に―― 
佐草 智久 p.95
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統計的手法による『山海経』編著者の識別
下西 紀子 p.107
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台湾における終末期医療の法と倫理
――終末期退院の慣行と「安寧緩和医療法」をめぐる判決を手掛かりに―― 
鍾 宜錚 p.123
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ある行政官僚の当事者運動への向き合い方
――障害基礎年金の成立に板山賢治が果たした役割――
高阪 悌雄 p.135
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ハンセン病の医療の変遷の歴史
――1960 年代の長島愛生園の医療を中心にして―― 
田中 真美 p.147
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障害分野へのケアマネジメント導入をめぐる迷走と諸問題・1995 年―2006 年
萩原 浩史 p.159
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華人プロテスタント信者の越境的連結
――「中国信徒布道会」をめぐる一考察――
モリ・カイネイ p.171
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戦後の大阪住吉におけるローカル・ポリティクス
――天野事件を通じて――
矢野 亮 p.183
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中国人観光客における日本観光の〈オーセンティシティ〉
――観光政策と観光産業の狭間で体験する日本――
王 屹 p.195
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書評

「我々」と「彼ら」の文化ではない「多文化」の思考へ
――学習言語とは何か─教科学習に必要な言語能力――

What is academic language? The language abilities needed for academic studies
2011 バトラー後藤裕子(Yuko Goto Butler)三省堂

児嶋 きよみ p.209
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2014年|立命館大学大学院 先端総合学術研究科

2014年度 行事

2014年4月

  • 3月30日(日) 院生オリエンテーション
  • 1日(火) 前期セメスター開始
  • 7日(月) 前期セメスター授業開始

2014年5月

  • 19日(日) 本学創立記念日(授業日)

2014年7月

  • 21日(月) 前期セメスター授業終了

2014年9月

  • 25日(木) 前期セメスター終了
  • 26日(金) 後期セメスター開始/後期セメスター授業開始

2015年1月

  • 19日(月) 後期セメスター授業終了

2015年3月

  • 31日(火) 後期セメスター終了
メッセージ 松原洋子 教授・研究科長(2012~2014年度)

― 「アウェイ」を楽しみ「ホーム」を創る ―

松原洋子

 2003年、5年一貫制のプロジェクト型大学院として出発した先端総合学術研究科(先端研)は、2013年4月に開設11年目を迎えます。先端研は、学部から独立した大学院だけの教育組織です。定員は150名で、人文社会系としては規模の大きい大学院です。院生は、学部から直接大学院に進学した人のほか、社会人から院生に転身した人、仕事をしながら、あるいは子育てや介護をしながら研究を続ける人など様々です。
先端研では学問的な専門分野、つまりディシプリン内部の課題の解決に終始するのではなく、現代の世界における先端的問題を探り当て取り組むことを重視しています。この場合の「先端」とは必ずしも「最新」「最前線」を意味しません。歴史の襞に隠れた出来事の再評価が、既成概念を覆すこともあります。世界に向けた「問い」としての新しさと独創性。これが私たちのめざす「先端」です。
 このような問いは複合的でダイナミックです。この問いに分野別の縦割りの知ではなく、横断的かつ総合的な知で接近し、「博士(学術)」にふさわしい学位論文に結実させることが院生の目標となります。院生たちは、それぞれが自分の経験から、あるいは知識や思索を通して見いだした問いを携えてきます。時には野蛮といえるほど素朴な問いであっても、教員たちはその問いの先に博士論文にまで結実する芽があると信じて伴走します。入学時と研究テーマが全く変わることもあります。しかし、それは初発の問いを教員や学友と粘り強く深めた結果なのです。「正しい問いをいかに立てるか」にこそ、研究の成果が表れるとも言えます。
 それぞれの学問分野には、研究者たちが時間をかけて吟味してきた知と方法が蓄積されています。したがって、いずれかの学問分野をまずは「ホーム」にみたてて、研究者としての訓練を積んでいきます。しかし、複合的でダイナミックな問いを見いだして磨き、研究成果に結実させていく営みは、問題意識を特定の学問分野に閉じ込めていては成立しません。「ホーム」以外の専門分野、さらは学界の外に蓄積されている膨大な知と技法に向けて意識を開き、「アウェイ」でのプレイを楽しむことです。
 先端研には、異分野の知識を交換し、共有し、議論して切磋琢磨する他流試合の機会が授業以外にも豊富にあります。たとえば、博士論文・博士予備論文構想発表会学位審査公聴会、『CoreEthics』(先端研発行)の草稿検討会などです。こだわりのテーマをそれぞれ抱えつつ、「アウェイ」での交流を常態とするなかから、専門分野は違っても関心や目標を共有する人々とのプロジェクトが生まれ、それが新たな「ホーム」となります。「自身のテーマを自らの力で徹底的に思考する」(先端研アドミッションポリシー)には、学術分野における研究蓄積に謙虚に学びながら、プロジェクトという新しい知の連携をプロデュースし成果を生み出す力量が必要です。それを引き出し育てるのが先端研の「プロジェクト型教育」であると考えています。先端研の教員は全員大学院専任です。先端研ならではの研究を生み出すために、教員相互で研究プロジェクトを組み、緊密に連携しながら院生指導にあたっています。また先端研では、院生が主宰する「院生プロジェクト」への財政的援助も行なっています。さらに、研究指導助手英語論文指導スタッフなど細やかな研究支援体制を用意しています。
 開設以来、私たちは院生とともに試行錯誤を重ね、多くの修了生と優れた研究成果を生み出してきました。2012年に続き、2013年にもパワフルな教員スタッフを迎えています。先端研の新たな挑戦が始まります。

研究科長 松原 洋子 『履修要項』より