公開コロキウム 社会システムの中の身体/アート

公開コロキウム
社会システムの中の身体/アート

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主旨

 生命と心の容れ物である身体は、多様な社会システムの中でそれぞれの意味や価値を表象しながら、個人と公共を媒介している。アートというシステムの中で身体は、インスピレーションの源泉として、 プライマリーなモティーフとして、 そして創作行為の主体として、創造に結びついた特権的地位を付与されてきたように見える。だが、アートの身体が他の社会システムへと移行するとき、そこには身体の解体あるいは脱身体化と言える現象が見出されるのではないだろうか。
 本コロキウムは、そのような問いを出発点として、第一部で過去の革新的な身体表象が社会に与えたインパクトとそれが回収される過程を確認し、第二部では現代アートの身体性を通して、生命と心と社会の新たな関係の中でわれわれが共生するための実践や認識論的可能性を討議していきたい。

開催概要

日時 2013年6月23日(日)13:00-17:30
会場 立命館大学 衣笠キャンパス 創思館カンファレンスルーム
参加条件 参加費無料・定員119名

プログラム

  • 13:00 開会のあいさつ

    松原洋子(先端総合学術研究科長)

  • 13:05-14:45 第一部 「身体による創造とその消費」
    司会:山崎明子(奈良女子大学)

    長田謙一(名古屋芸術大学)
    「研究課題【社会システム〈芸術〉とその変容】について」
    竹中悠美(立命館大学)
    「大恐慌のドキュメント写真における〈貧困の身体〉」 
    木村理恵子(栃木県立美術館)
    「1930年代日本の舞踊教育―石井小浪の活動を中心に」
    鴻野わか菜(千葉大学)
    「70年代ソ連のパフォーマンス・アート─非公式活動のゆくえ」

  • 15:00-16:30 第二部 「新たな座標系を求めて」
    司会:竹中悠美(立命館大学)

    服部正(甲南大学)
    「アウトサイダー・アートにおける身体性」
    ブブ・ド・ラ・マドレーヌ(アーティスト)
    「水際の身体─〈水図プロジェクト〉のただ中で」
    千葉雅也(立命館大学)
    「多面的なカタレプシー(硬化症)─フランシス・ベーコンの身体と都市」 

  • 16:45-17:30 共同討議

主催

日本学術振興会科学研究費基盤研究A【社会システム〈芸術〉とその変容─現代における視覚文化/美術の理論構築】(研究代表:長田謙一)、立命館大学大学院先端総合学術研究科

アクセス

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〒603-8577
京都市北区等持院北町56-1(創思館1F)
立命館大学大学院先端総合学術研究科 独立研究科事務室
TEL:075-465-8348

Core Ethics Vol.9

立命館大学大学院先端総合学術研究科
『Core Ethics』Vol.9 2013年

『Core Ethics』Vol.9表紙

目次 PDF<225KB>
奥付 PDF<57KB>
正誤表 PDF<31KB>
English


論文

障害児教育政策の現状と課題
――特別支援教育の在り方に関する特別委員会審議の批判的検討――
有松 玲 p.1
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DV被害者支援機関における支援の現状と課題
――フォーカス・グループインタビューより――
泉川 孝子 p.15
PDF<486KB>

韓国における公的扶助制度の扶養義務
――その実態と家族への影響を中心に――
林 徳栄 p.27
PDF<482KB>

アカマツ保全言説の検討
――京都における風致概念の展開――
岩田 京子 p.39
PDF<417KB>

『アリス』のパラドクス解釈の試み
――マクタガートとドゥルーズの時間論を中心に――
角田 あさな p.49
PDF<338KB>

バングラデシュの初等教育におけるジェンダー格差は解消されたのか
――障害児の教育へのアクセスの現状と政府統計との乖離――
金澤 真実 p.59
PDF<342KB>

「Y問題」の歴史
――PSWの倫理の糧にされていく過程――
桐原 尚之 p.71
PDF<401KB>

戦争と号外(2)
――第一次世界大戦からアジア・太平洋戦争まで――
小林 宗之 p.83
PDF<666KB>

自立生活センターの自立支援と相談支援事業
白杉 眞 p.93
PDF<388KB>

人は他者を支えるためにセルフヘルプグループに参加するのか?
――交換理論で読み解くセルフヘルプグループ――
白田 幸治 p.105
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搾取される笑顔
――日雇い制派遣イベントコンパニオンのジェンダー化された感情労働を事例として――
田中 慶子 p.117
PDF<350KB>

神谷美恵子と長島愛生園
――ハンセン病から精神医学へ――
田中 真美 p.127
PDF<458KB>

美的実在論の現代的論点に関する一考察
――ニック・ザングウィルの議論に焦点を当てて――
田邉 健太郎 p.141
PDF<272KB>

「僅かな資源しか持たない」離別シングルマザーの家族戦略と老後設計
――成人子との決別で獲得したひとりの老後――
谷村 ひとみ p.151
PDF<393KB>

天畠大輔におけるコミュニケーションの拡大と通訳者の変遷
――「通訳者」と「介助者」の「分離二元システム」に向けて――
天畠 大輔 p.163
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カーシェアリングがもたらすもの
――利用者の効用に着目した分析――
仲尾 謙二 p.175
PDF<355KB>

過労死被害と労災申請
中嶌 清美 p.187
PDF<432KB>

在宅ALS患者の身体介護の困難性
――ホームヘルパーの介護経験から――
西田 美紀 p.199
PDF<386KB>

1960-70年代の保健薬批判
――高橋晄正らの批判を中心に――
松枝 亜希子 p.211
PDF<464KB>

1960年代の住吉における部落解放運動の分岐点
――「天野事件」を中心に――
矢野 亮 p.221
PDF<407KB>

戦前期の髙島屋百選会の活動
――百選会の成立とその顧問の役割――
山本 真紗子 p.233
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大阪市公立学校における在日韓国・朝鮮人教育の課題と展望
――民族学級の教育運動を手がかりに――
梁 陽日 p.245
PDF<446KB>


研究ノート

ALS患者をめぐる支援制度の日韓比較
――難病・障害支援制度と介護保険制度の分析を通じて――
安 孝淑 p.257
PDF<590KB>

大学生活協同組合の経営改善とその存在意義
――同志社生活協同組合を中心とした経営危機の分析――
三上 保孝 p.269
PDF<396KB>

中国の観光産業におけるコンテンツの役割
――映画『狙った恋の落とし方2。』からの考察――
王 屹 p.279
PDF<511KB>

植民地主義研究会(2012年度)

院生代表者

  • 番匠 健一

教員責任者

  • 小泉 義之

企画目的・実施計画

 公募研究会としては2009年度に発足し、今回の申請で第4期目にあたる。ポストコロニアル研究や帝国史・植民地法制史など、近年の植民地主義研究の動向を踏まえつつ、植民者と被植民者を単純な構図に当てはめ植民地主義の支配の構図を単純化して語ってしまう欲望から身をひき、それぞれの場所に固有の植民地システムと個々のシステムの連関、植民地権力の偏在性を、近現代史を貫く歴史的なパースペクティブを共有しながら切磋琢磨することが、本研究会の目的である。
植民地主義関係のテキストの輪読、もしくは研究会のメンバーの研究発表を行いながら、それぞれの企画構成員が自身と自身の研究にとっての植民地主義とは何かという問いを深め、問題意識を共有する場の構築が、本研究会を実施する意義である。
 おおよそ月一回のペースで定期的に植民地主義に関する文献を購読し、同時に研究会の構成員による研究発表を行う。10月には、日本植民地における戸籍法研究者である遠藤正敬氏を招聘して公開研究会を開催する予定である。 また、他大学の院生も含めた共同研究グループでの国内植民地研究の資料調査・フィールドワークを行う予定であり、本研究会の構成員が参加する場合この資料調査の補助費を支給する。

活動内容

第1回 植民地主義研究会
2012年6月8日(金)16:00~

  • 大野光明(立命館大学博士課程)
    「沖縄べ平連論――フェンスを『越える』実践の条件と困難」
  • 西川長夫
    「3.11が明らかにしたこと-原発とグローバル化の問題を中心にして」

第2回 植民地主義研究会
2012年8月30日(木)16:00~

  • Colonial Linkages from the Viewpoint of Agricultural Colonization Theory in Hokkaido 北海道における農業植民論からみた植民地連関
    Kenichi Banjo (Ritsumeikan University)
  • Discourses on Okinawa as a Colony in Japan in the 1960s and 1970s 1960-70年代の「日本植民地としての沖縄」言説の検討
    Mitsuaki Ono (Ritsumeikan University, Research Fellow of Japan Society for the Promotion of Science)

第3回 植民地主義研究会 公開研究会
テーマ「植民地統治と国籍問題」
日時:2013年2月11日(月)
場所:立命館大学衣笠キャンパス、学而館2階 第2研究室
時間:15:00~19:00

  • 遠藤正敬(早稲田大学台湾研究所研究員)
    「「日本人」の鋳型としての戸籍-「民族」そして「国籍」を司る「家」の論理」
    コメント:原佑介
  • 鄭卉芸(大阪大学日本学研究科博士課程)
    「重層の「外地」に棲む妾」
    コメント:松田有紀子
  • 倉本知明(文藻外国語学院講師)
    「饒舌と沈黙-1970年代台湾文学における復員者と女性表象」
    コメント:原佑介

成果及び今後の課題

 研究計画にあるとおり、近年の日本植民地研究・ポストコロニアル研究の成果に学びながら、それぞれの研究テーマと植民地主義の問題とを関連付けて研究を進めるというのが、本研究会のテーマであった。本研究会は、生存学研究センター若手強化型研究プロジェクトとしても助成を受けることができ構成メンバーによる調査研究やフィールドワークを行うことができた。また、定例研究会や公募研究会の場において、構成メンバー以外の研究者と共同して議論を進めることにより、植民地をテーマにする他大学・本学他研究科との交流をはかることができた。
 来年度以降は、とりわけアメリカの占領政策と戦後日本社会の形成というテーマと接続する形で日本植民地主義を扱っていく予定である。

構成メンバー

  • 大野光明 先端総合学術研究科・公共領域・2005年度入学
  • 大野藍梨 先端総合学術研究科・共生領域・2006年度入学
  • 田中壮泰 先端総合学術研究科・共生領域・2005年度入学
  • 吉田幸恵 先端総合学術研究科・公共領域・2009年度入学
祝祭の多角的再考から導く共生研究(2012年度)

院生代表者

  • 梁 説

教員責任者

  • 渡辺 公三

企画目的・実施計画

目的

地域の祭り、民族(部族)の祭りという言葉でよく括られるように、祝祭や儀礼は土地や土地につながる神話と深い関係をもって継承されてきた。また3.11以降、地域の「祭り」は共同体の維持装置として、注目と再評価を集めるに至っている。多様な形で人々が移動を行う(移動を余儀なくされる)今日、祝祭はどのように変化していくのか、多彩なフィールドを持つ各研究者の研究領域から、今日の祝祭のあり様を収集し、そこから導き出せる「共生」社会構築への可能性と限界を見出すことを目的とし、本プロジェクトの推進を図った。

計画

「研究会・読書会形式での祝祭(論)の再考」、「共同・個別の調査やフィールドワーク実施」、「研究検討会と研究成果発表」の3つの方法を用いて、以下の研究計画を立案した。

  1. 2012年6月~10月 「祝祭(論)」の研究会(1回/月開催予定)
      モース、レヴィ=ストロース、岡本太郎の人類学的系譜と、ミハイール・バフチンの祝祭論を中心に進める。2012年度はバフチーンを予定。
  2. 2012年8月~2013年2月 各研究者による調査・フィールドワークの実施
  3. 2012年11月~2013年2月 調査・フィールドワークに基づく研究報告、プロジェクト内容に沿った検討会の開催(1回/月開催予定)
  4. 2013年3月 研究成果発表会開催

活動内容

定例研究会

年間計4回の読書会の開催と、1回のDVD上映会を開催し、今日的「祝祭」について、主として人類学的、社会学的、思想的角度からの考察を行った。当初は文化人類学の古典的文献からの「祝祭論」再考を試みたが、プロジェクト内での議論・検討を重ねた結果、H.ルフェーヴル、石橋純、広瀬純、ジャック・ランシエールを選択し、研究会を開催した。

第1回 「祝祭と共生」研究会
日時:2012年7月27日(金) 14:00~17:00
場所:学而館2F 共生部屋
内容: H.ルフェーヴル著 『パリ・コンミューン』検討会

第2回 祝祭と共生研究会
開催日時: 8月28日(火)14:00~17:00
場所: 学而館2F 共生部屋
内容: 石橋純著、『太鼓歌に耳をかせ』検討会

第3回 祝祭と共生研究会
開催日時: 9月24日(月) 14:00~17:00
開催場所: 学而館2F 共生部屋
内容: 広瀬純著 『闘争の最小回路』検討会
※石橋純監督、『ハンモックの埋葬』DVD視聴会 同時開催

第4回 祝祭と共生研究会
開催日時:3月5日(火)14:00~
開催場所:学而館2階 共生部屋
内容: ジャック・ランシエールの『民主主義への憎悪』

公開研究会

第1回公開研究会 
「文化の政治と太鼓の響き:民衆文化運動の現在性」
開催日時:2012年11月9日(金)14:00~18:00
開催場所:アカデメイア立命21 3F 中会議室
※南米ベネズエラのサンミジャン地域を舞台に、祭りの復興と地域の文化運動を追った『太鼓歌に耳をかせ』の著者、石橋純氏をお迎えし、公開研究会を開催した。本研究会の主要な関心事である「祭りや太鼓の響きに流れる“人々を突き動かすような力”とはどのようなものか。そうした力が民衆の側に主体的にあるとき、権力や政治に組み込まれていくとき、どう作用するのか。」という問題設定は、当プロジェクトにおいて、年間を通じた探究のテーマとなった。

第2回公開研究会
「祝祭・多文化交流の可能性を地域からみる」
開催日時:2013年3月19日(火)14:00~19:00
開催場所:京都市地域・多文化交流ネットワークサロン多目的コーナー

報告① 「在日フィリピン人コミュニティに係わる人類学的研究からみえたこと」
報告者 永田貴聖(立命館大学衣笠総合研究機構PDフェロー)

報告② 「東九条における「多文化交流」の現状~日常性とネットワーク化の課題」
報告者 山本崇記
(日本学術振興会PD・京都大学、京都市地域・多文化交流ネットワークサロン事務局)

報告③ 「5月光州の祝祭性に魅せられて
-周縁世界から見出した普遍性を今後につなげるために-光州、東九条の考察から」
報告者 梁説(立命館大学大学院先端総合学術研究科博士課程)

調査報告① 「高知花柳界の過去と現在―稲荷新地と玉水新地―」
報告者 松田有紀子(立命館大学大学院先端総合学術研究科博士課程)

成果及び今後の課題

 研究計画で見られるように、土地とのつながり(=移動による土地との断絶)に重点を置いた「祝祭」考察から「共生社会」実現への手立てを導くことを目指し、当院生プロジェクトは始動した。申請後、生存学研究センター若手強化型研究プロジェクトでの展開を契機に、“「祝祭」から見る「人間の生存、生のあり方」の考察”、“「人間の生存、生のあり方」から派生される「祝祭の形態」の考察”に研究をフォーカスさせた。このことによって、「祝祭的なるものに集う人々」、「祝祭的なるものを創造する人々」といった「人」に主眼を置き、文化人類学、社会学、政治学、哲学、思想史、etc…から多角的に考察することで「人と土地」「人と社会」などの関係性の具体性を可視化できるようになった。
 二年目以降の当プロジェクトには、東日本大震災以降の「祭り」の再評価、エンパワーメントとしての「祝祭」評価という現代的な潮流とは別の仕方から、「祝祭的なもの」について考察・探求する工夫が、課題として求められる。模索段階ではあるが、研究者が個々の専門領域での研究を推進するだけでなく、研究者自身のアイデンティティや存在の在り様にも向き合える装置として機能しうる可能性が、本プロジェクトにあると考えている。この点に本研究プロジェクトの特色があり、<院生のプロジェクト>としての意味がこの点にあると思われる。また将来的には、本研究プロジェクトが祝祭的なるものから得られる恍惚状態を知的に体験できるような「知」のトランス空間を創出できるようになることを目指したい。そのために、文学、思想、哲学、芸術の「読み」における恍惚領域をいかに担保するか、ということを念頭に置き、研究活動を進めるようにする。

●構成メンバーの研究成果は以下の通り
[論文](査読あり)
・松田有紀子「「女の町」の変貌──戦後における京都花街の年季奉公をめぐって」、天田城介・角崎洋平・櫻井悟史編『体制の歴史』、洛北出版、***-***頁、2013年4
[論文](査読なし)
・近藤宏「気候変動緩和枠組みに動員される先住民」『立命館国際言語文化研究』第23号 (ページ未定) 2013年
[海外での発表]
・Yukiko Matsuda, The Three Phases of Geisha Common-law family relationships in the Entertainment Quarters of Kyoto City: Mother-Daughter, Elder Sister-Younger Sister, Husband-Wife, 6 September 2012, British Association for Japanese Studies Conference 2012 Norwich/UK (University of East Anglia, Thomas Paine Study Centre)
[国内での発表]
・近藤宏「皮膚という表面」、2012年6月、日本文化人類学会、広島大学
・松田有紀子「「女の街」を生きぬく:京都花街におけるお茶屋の「商売感覚」に着目して」、2012年6月24日、第46回日本文化人類学会、広島大学東広島キャンパス
・梁説「自らの文化を創りだす人たち」、2012年11月10日、第26回韓国日本近代学会、立命館大学

構成メンバー

  • 西嶋 一泰
    先端総合学術研究科・共生領域・2009年度入学
  • 石田 智恵
    先端総合学術研究科・共生領域・2007年度入学
  • 松田 有紀子
    先端総合学術研究科・共生領域・2008年度入学
  • 近藤 宏
    先端総合学術研究科・共生領域・2006年度入学