小泉 義之(こいずみ・よしゆき)

小泉写真

領域

生命

職位

教授

専門

哲学
倫理学

担当科目

生命論I・II
プロジェクト予備演習I・II・III(生命)
プロジェクト演習(生命)

業績

※21年度以降の最新情報は、下記にリンクされている研究者学術情報データベースをご参照ください。

2020年度 業績一覧
2019年度 業績一覧
2018年度 業績一覧
2017年度 業績一覧
2016年度 業績一覧
2015年度 業績一覧
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2006年度 業績一覧
2005年度 業績一覧
2004年度 業績一覧
2003年度 業績一覧
2002年度以前の業績

研究者学術情報データベース

  • 研究者学術情報データベース
  • 立命館大学の奨学金・支援制度

    立命館大学には、本研究科院生が利用できる研究支援制度が数多くあります。
    以下は利用できる支援制度の一部です。制度は変更される場合があります。詳細は、入学手続き時または入学時に説明します。
     

    院生のための奨学金・研究活動助成制度

    • 先端総合学術研究科出版助成制度
    • 先端総合学術研究科院生プロジェクト
    • 立命館大学西園寺大学院進学奨励奨学金
    • 立命館大学大学院特別奨励奨学金(S・A・B)
    • 立命館大学大学院特別育英奨学金(S・A・B)
    • 立命館大学大学院学生学会発表補助金
    • 立命館大学大学院博士課程後期課程研究奨励奨学金(S・A・B)
    • クレオテック大学院私費留学生奨学金
    • 立命館大学大学院博士課程後期課程国際的研究活動促進研究費
    • 立命館大学大学院博士課程後期課程学生学会発表補助金
    • 立命館大学大学院研究会活動支援制度
    • 立命館大学生存学研究センターにおける各種研究活動助成制度

     

    立命館大学大学院生に対する奨学金・支援制度の概要

     ■修士・博士課程前期課程・一貫制博士課程(1~2回生)
     ■博士課程後期課程・一貫制博士課程(3回生~)・4年制博士課程
     

    日本学術振興会特別研究員など採用へのサポート

    本研究科では、現在の研究者にとって必須である研究計画書の作成に対するサポート体制が充実しています。その結果として、多くの院生・修了生が日本学術振興会特別研究員ならびに立命館大学専門研究員プログラムに採用されています。

    研究計画書作成のサポート

    • 「アカデミックライティングIV」での研究計画書作成指導
    • 研究指導助手による研究計画書作成サポート

    これまでの日本学術振興会特別研究員採用者

    • 2012年度 DC 9名 + PD 6名
    • 2013年度 DC 2名 + PD 3名
    • 2014年度 DC 4名 + PD 2名
    • 2015年度 DC 2名 + PD 4名
    • 2016年度 DC 1名 + PD 1名
    • 2017年度 DC 2名 + PD 1名 + RPD 1名
    • 2018年度 DC 4名
    • 2019年度 DC 2名 + PD 1名 + RPD 1名
    • 2020年度 DC 3名 + PD 1名
    • 2021年度 DC 4名 
    • 2022年度 DC 5名 

    これまでの立命館大学専門研究員プログラム(旧ポストドクトラルフェロープログラム) 新規採択者

    • 2012年度 3名
    • 2013年度 4名
    • 2014年度 4名
    • 2015年度 0名
    • 2016年度 3名
    • 2017年度 1名
    • 2018年度 0名
    • 2019年度 2名
    • 2020年度 0名
    • 2021年度 1名
    • 2022年度 1名

    これまでの大学院高度化施策初任研究員採択者数

    • 2019年度 1名
    • 2020年度 3名

    立命館NEXTフェローシッププログラム

    • 2021年度 1名

    立命館先端研究アカデミー次世代研究者育成プログラム

    • 2021年度 1名
    • 2022年度 1名

    ※採択者は先端総合学術研究科修了生のみをカウントしています。

    開設5年の到達点

    2007年10月18日

    (立命館大学大学院先端総合学術研究科設置認可申請書より)

    先端総合学術研究科は、立命館大学のリソースを最大限に活用し、学内設置の諸研究所・研究センターとの連携構築をめざしながら、プロジェクト参加型の研究者養成を目標に掲げ、2003年4月に一貫制博士課程として発足した。既存の学部を基礎としたディシプリンを軸とした研究科とは発想をことにする独立研究科による研究者養成の試みである。
    本研究の設置の趣旨は、20世紀における自然科学の発展のインパクトを受けとめつつ人社系学問分野を批判的に再構築する能力と意欲を持った研究者を養成することを目指している。学問の刷新を「先端性」と「総合性」の両面から押し進めるという野心的な試みである。

    このような目的を達成するために、(a)「核心としての倫理」(コア・エシックス)を軸とし、(b)人文科学、社会科学、自然科学の3分野を横断する先端的で総合的なテーマを設定し、(c)本学の研究所・研究センターと連携し、学内外の研究者とネットワークを構築して、ディシプリンを横断するプロジェクト研究を活用し、(d)時代的要請に応えうる柔軟な構造を備えた教育システムを構築することをめざした。世界の現実の動向との接触面であり、新たな学問的課題が産出されるべき先端領域として、「公共」=公共性の再定義、「生命」=生命・環境の倫理、「共生」=多文化・多言語主義、「表象」=ディジタル時代の芸術表象、の4つのテーマ領域を設定した。
    研究科のカリキュラムは、自立したプロジェクト参加・推進者として院生を育てることを目標としている。院生に明確な研究テーマと研究計画を持たせ、世界で通用する基礎能力を養成し(講読演習の重視)、これからの研究に必須な多様なスキルを獲得させ(独自のスキル科目)、プロジェクト運営の能力と責任感を養っている。
    学部を基礎とした研究科とは異なり、ディシプリン中心からテーマ中心へ、プロジェクト中心への転換である。4テーマ領域は倫理的な問題意識の共有という点ばかりでなく、内容的にも相互に連環しており、既存の「系・分野・分科」区分とは必ずしも対応しない。プロジェクトそのものは研究科の専任担当教員が、一定の基礎的な予算のうえに、競争的な外部のファンドあるいは学内の研究補助金を獲得して推進し、そこに院生が参加することを基本としている。したがって担当者にはプロジェクト推進の能力が求められる。また、プロジェクト参加による院生の研究推進能力の養成を補完するものとして、それぞれの問題意識に対応した学会への所属と学会報告をおこなうことを積極的に推奨し、実績をあげている。一貫制博士課程として、一年次からの講義、スキル科目、および2年次の「博士予備論文」の準備(研究科の主要な「定期学会」ともいえる「博士予備論文構想発表会」の開催)、博士論文準備のための演習科目、演習における複数ディシプリンの担当者による指導、担当者による個別の論文指導によって構成されるコースワークは、新たな問題意識と研究能力をそなえた研究者養成のモデル構築の役割を果たしうることを目標としている。

     本研究科は、上記のような設置趣旨に呼応して、開設以来きわめて明確な問題意識と研究目標をもった者が数多く入学してきた。「プロジェクトを基礎とした人社系研究者養成」プログラム(プロジェクトベーストプログラム)を設定し、院生たちの個性的な問題意識を育てつつ、それに明確な表現を与え、彼ら自らが普遍性をそなえた説得力ある論理展開にまで練り上げる力をつける努力を行ってきた。
     とりわけ、次の4点を目標として取り組んできた。

    (a) 論文構築の基礎能力を強化する
    (b) 「スキル系科目」を強化する
    (c) 国際シンポジウム、プロジェクト研究における協働実践を強化する
    (d) 人的ネットワークをいっそう拡大強化する

    これらに即して、スキル系科目の今後の院生教育における必要性と重要性の検討作業、海外留学やフィールドワーク中の院生、遠隔地からの通学者などに、有効な研究指導を行うためのシステムについて検討、海外も含めたプロジェクトベーストプログラム型教育システムの調査・検証を進めつつ、具体的な強化を目指してきた。そのために海外におけるプロジェクト研究を主軸とした研究者養成教育機関との積極的な交流および協力協定の締結にも取り組んできた。
    こうした目的にかんがみ2005年度「魅力ある大学院教育イニシアティブ」に「プロジェクトを基礎とした人社系研究者養成プログラム」として応募し、幸運にも採択された。このプログラムは、本研究科が2003年の開設以来すでに2年間に試行し実施し有効性を検証してきた、すでにのべたプロジェクトを基礎とした研究者養成のメインのコースワークおよびプロジェクトにおける院生自身の研究活動をより高度化するために何が必要かを熟考した。その結果、それをいっそう補強し効果的なコースに高めることを目的として構想されたものである。以下に示すのは当プログラムにおいて実施された目標および活動内容である。

    (a)論文構築基礎能力の強化
     院生各自の固有の問題意識を尊重しながら、かつ開花させるためには、この「論文構築基礎能力」の強化がもっとも重要である。したがって、2005年度に日本語・英語の論文指導スタッフを雇用し、直接面談指導やEメール、メーリングリストなどを活用したきめ細かな指導を通じて、論文指導の基礎能力の構築に努めてきた。また、スタッフが常駐する論文指導室を開室することで、院生に日常的に指導を行う体制を構築した。院生のニーズは高く、多くの院生が利用した。
     一方で、本研究科には一定数の遠隔地に在住する有職者の院生が在籍しているが、彼らに対しては、Eメールや電話などの媒体を利用した遠隔指導が特に効果を挙げた。
    日本語・英語それぞれの論文指導に専念して担当できるスタッフが在室し、本研究科の専任教員と密接な連携をとることで、論文指導体制はより強化できた。また、論文作成のための関連図書、消耗品、機器備品等を購入・備え付けることで、より充実した論文指導を行える環境が整備された。院生指導の経験を踏まえ、「日本語論文作成マニュアル」、「英語論文作成マニュアル」を作成し、個別指導の効果の向上を図った。

    (b)スキル系科目の強化
     ディジタルスキルおよびリサーチメソッドという科目群のよりいっそうの高度化に向けた方向性を検討するために、当該科目の担当教員のヒアリングおよび院生の授業アンケートを実施した。その結果、高度化の具体的な方策については、更なる情報の収集を進めるとともに、問題点を多角的に検討し、本研究科に適した科目内容についての議論を継続することとした。研究科として進むべき方向性を確定して、高度化に向けて作業を進める予定である。
     また、スキル系科目(アカデミックライティング)とも関連するライティングセンターについては、日本ではまだライティングセンターが普及していないという事情もあり、2006年2月にアメリカのライティングセンターの視察を行った。具体的には、Pennsylvania
    State University、American University、University of Maryland、Duke
    Universityの計4大学7つのライティングセンターを訪問・調査し、情報収集とアメリカの大学における現状も把握して、報告書を作成した。加えて、実際にアメリカの大学院でライティングセンターを利用したことのある日本人の方にも協力を要請し、レポートを作成した。また、同月早稲田大学で開催されたシンポジウム"Waseda
    Symposium on Teaching and Research in Academic Writing"にも参加し、日本国内におけるライティングセンターの実情も把握した。
     英語ライティングの調査をしていく中で、英語ライティングとは「資料収集から分析、構成、実際の論文の執筆、そして要旨の提示」という一連の作業全体を英語で行う構想の過程であり、英語ライティングの方法の模索を行うことは、言語を別にすると、それ以外は日本語論文の構築の方法にほかならないということを再認識した。
     これらの出張報告書やその他の情報をもとに、将来のあるべきライティングセンターのあり方を展望に入れ、研究科内で議論を重ね、全学に対しても、ライティングセンターの必要性を繰り返し力説してきた。その結果、少しずつではあるが、全学で大学院生を対象としたライティングセンターが必要であるという声が高まってきている。本研究科では、本教育プログラムの中で実施してきた調査・情報収集で得た内容を、全学的なライティングセンター設立に向けて積極的に提供する活用する。

    (c)国際シンポジウム、プロジェクト研究における協働実践の強化
    本研究科は、世界各国から著名な研究者を招聘して、国際コンファレンスやシンポジウム、ワークショップ、講演会などを開催してきた。
    このうち、2005年10月末に開催した立命館大学先端国際コンファレンス『倫理・経済・法:不正に抗して』は、集中講義や講演に招聘し本研究科と連携をとってきた著名な研究者たちも参加して、3日間にわたりアメリカ、イタリア、インドなどから報告者が参集して開催された。本企画に際して、多数の院生がペーパーの集約、編集、翻訳、資料作成、当日の運営などに積極的に携わった。
    特に、2005年10月末に開催した立命館大学先端国際コンファレンス『倫理・経済・法:不正義に抗して』(国際シンポジウムの際に、一定の予算を配分して院生自らのイニシアティブで比較的若手の研究者(アメリカ、インド、イタリアなど各国から参集する)による研究集会(国際シンポジウムの第3部)の部分の組織を実施した。また、そのためのペーパーの集約、編集、翻訳、印刷などを行い、これらの作業には、すでに個別のゼミで海外研究者を招聘し、集中講義や講演などを行い、その準備過程に院生が積極的に取り組んだ。
     また、フランスの歴史家アラン・コルバン(パリ第一大学名誉教授)氏を本学に客員教授として招きたいという本研究科院生のイニシアティブではじまったアラン・コルバン氏インヴィテーションプロジェクトは、2004年11月からはじまり、地道な準備・活動を経て、2007年1月の集中講義およびシンポジウム「近現代史への問い-アラン・コルバン教授を迎えて」を開催するに至った。その準備段階として、2006年6月以降、院生が主体となって外部講師を招き、計3回事前研究会を開催するなど集中講義・シンポジウムに備えてきた。集中講義最終日にはワークショップを開催して、院生が研究報告をおこなうなど、院生が主体的に参加した。

    (d)人的ネットワークのより一層の拡大
     国際シンポジウムをはじめ、日本および欧米の傑出した研究者を招聘して集中講義、講演会、ワークショップ、共同研究会などを実施し、人的ネットワークを拡大・強化した。また、海外大学との交流協定としては、台湾の佛光人文社会学院、イタリアのベルガモ大学複雑性認識論人類学大学院と包括的研究協力協定を締結した。今後も、具体的な取り組みを行っていく予定である。さらに世界的にも高等教育機関として高位にランクされるエコール・ノルマル・シュペリウールとの連携も視野に入れ準備を進めている。
     国際的ネットワークの形成は、大学全体としての「研究高度化」方針とも密接に関わっているので、先端総合学術研究科としては、国際共同研究や共同学位授与制度などの展開に向けた枠組み作りを現在検討中である。一方国内においては2006(平成18)年度、官民シンクタンク・研究所との将来的な連携をにらんだ研究所訪問・インタビュー、シンクタンクから人を招聘して研究会を実施した。
    「魅力ある大学院教育イニシアティブ」の「プロジェクトを基礎とした人社系研究者養成プログラム」の終了に当たって、文部科学省から外部シンクタンク等との連携などについていっそう強化するべきである、等の評価が示された。こうした評価をふまえてプロジェクトを基礎とした人社系研究者養成プログラムのモデルとしてのいっそうの高度化と精緻化をはかってゆくことを現在の目標としている。「魅力ある大学院教育イニシアティブ」の成果も踏まえて、2007年度グローバルCOEに本研究科を軸に「『生存学』創成拠点」プログラムとして応募し、採択された。ここにも本研究科の研究者養成の理念への期待と評価があらわれていると受け止め、いっそうの深化をはかってゆきたい。

    本研究科の教学方針がディシプリン型の研究者養成方法と決定的に異なるのは、複数のテーマ(「公共」「生命」「共生」「表象」)をたてて、院生ひとりひとりの問題意識を幅広くすくいとる入試方式、テーマ担当教員に偏らない複数教員による指導、テーマごとの自足を避けるために「核心としての倫理(コア・エシックス)」という総合的な理念を中心にすえたカリキュラム編成などである。これに、主題のいかんにかかわらず、院生のニーズをカバーできる多様なスキル科目を設置することで、院生相互の交流や切磋琢磨の促進を図っている点にある。
    学内においては、既存研究科の再編をにらんだ大学院博士後期課程の見直しが進められており、本研究科が示した路線が、学内で触媒的に働いている。
     プロジェクトに基礎を置いた研究者養成の状況は、設置3年目である2005年度には1名が早期修了によって博士学位を取得し、2006年度は同じく早期修了によって4名が博士学位取得した。
     他方、院生に研究分担者としての参画を求める「プロジェクト研究」は、学内研究所の研究会活動とも緩やかな連携を樹立しつつあり、学内の研究支援体制は、後期課程支援を重視する方向へと向かいつつある。

    設置の趣旨及び設置を必要とする理由

    (立命館大学大学院先端総合学術研究科設置認可申請書より)

    I 先端総合学術研究科の設置趣旨

    (1)先端総合学術研究科の理念-ディシプリンからテーマヘの転換

     日本の大学制度は今、近代化の初期に大学が創設されて以来、もっとも大きな変革の時代に直面している。学部から大学院までの教育研究システム全体が、国際的な水準を視野に入れた根底的な見直しをせまられている。高度な専門職技能の養成と、新たな時代の問題に取り組む研究者の養成がもとめられているのである。この新たな時代の研究者の養成に向けて立命館大学が提起するのが先端総合学術研究科の構想である。

     基本的に学部の上に置かれた現在の大学院は、明治以来の近代的学問体系にのっとったディシプリン、すなわち専門分野の区分に基づいて構成されている。先端総合学術研究科は、20世紀から今世紀に引き継がれた新たな質の、先端的なテーマに取り組む研究者の養成のために、特定学部を基礎とするのではない独立研究科とする。独立研究科としてディシプリンの総合化をはかり、また、研究所・センター群との連携によるプロジェクト研究における教育によって、大学院教育と先端的で総合的な研究との緊密な結合を実現することを基本的な狙いとしている。

     テーマ中心のプロジェクト研究に大学院学生を参加させることによって研究者養成教育をおこなう先端総合学術研究科は、ディシプリンを基礎とした既存研究科と建設的な緊張関係を保持しつつ、新たな研究領域創出をリードし、大学院学生に新たな選択肢を提供するものである。こうした目標を実現するために、テーマを中心とする研究科が教育システムとして備えるべき条件をとりわけ以下の5点に留意して検討し、構想を組み立てた。

    1)「核心としての倫理(コア・エシックス)」の問題をテーマ群の求心的な軸として設定する。

    2) 集中的な講読科目である基礎共通科目によって、諸分野に共通する基礎教育とテーマごとの基礎教育を確保する。

    3) 学内研究所、リエゾン部門(産官学連携推進担当部署)の蓄積をさらに発展させ学内外の研究者ネットワークを構築し、プロジェクト研究を展開する。

    4) 既存研究科との協同、連携、教員・学生の交流をはかり、既存のディシプリンを活用する。

    5) 定期的にプロジェクト研究の到達点を検証し、評価し、必要な見直しをおこなうことで、テーマの持続性のなかに変化を組み込む。

     以上の構想に基づいて、立命館大学が新たな大学院教育システムとして提起するのは、(a)「核心としての倫理(コア・エシックス)」を基軸として、(b)人文科学、社会科学、自然科学の3分野を横断する先端的で総合的なテーマ設定をもった、(c)オープンな研究者ネットワーク構築と多様な成果獲得を目指すプロジェクト研究を活用した、(d)時代的要講に応えうる柔軟な構造をそなえた、教育システムである。

    (2)4つのテーマと「核心としての倫理」

    (a)4つのテーマ(教育研究の柱となる領域):「公共」「生命」「共生」「表象」

     20世紀の提起した問題とは何か。わたしたちはそれを「公共」「生命」「共生」「表象」という4つのテーマに集約する。これらのテーマのもとにプロジェクト研究が展開される。そしてこれらテーマの中心に、今日あらためて深く問い直されている倫理への問いを設定する。「核心としての倫理〔コア・エシックス〕」を常に視点の中心にすえつつ、現代の諸科学分野に共有された問題群を4つのテーマのもとで追求することを通じて、新たな研究領域の創出をになう、先端的で総合的な知の探求者、制作者を養成することがこの大学院の目的である。こうした先端性と総合性の追求のこころみは専門分化した既存の研究科体制では実現がむずかしいものである。
     国家社会の変容、生命観の変化、民族や文化の対立、映像を含む情報技術の展開など、20世紀の正負の遺産を腑分けしながら、21世紀の世界を作り上げてゆくための知の主題に、自然科学の成果と人文科学、社会科学の知見を総合して取り組む大学院学生を教育するという課題に、わたしたちは「核心としての倫理」を中心とした4つの先端的なテーマ設定によって応えてゆきたい。

     それぞれのテーマは、知と世界の現実の動向との接触面であり、新たな課題が産出されるべき先端領域として選ばれている。各テーマに複数のディシプリンからの領域横断的アプローチをおこない、これらのアプローチを総合するいっぽう、テーマを個別的に深化することによって研究を展開するという方法を大学院学生に習熟させることが主要な目的である。
    「公共」「生命」「共生」「表象」というテーマは、「核心としての倫理」を軸とした、テーマのネットワークを構成する。大学院生は、4つのテーマによるプロジェクト研究と連携したプロジェクト演習という科目を履修

    公共-21世紀における公共性

     国家が「公共」を独占できた状況が崩れはじめ、「市民」の日常感覚を基礎に新しい共同性が組織化されつつあるという過渡期の状況が、「公共」を新たな探求の課題として浮上させた。福祉国家と旧社会主義圏とを問わず現出する、こうした課題をプロジェクト演習「21世紀における公共性」によって原理的なレベルから探求する。とりわけ国際関係論・比較文化論、経済学、社会学のディシプリンからの接近がおこなわれる。
     20世紀の人類は、二度の世界大戦と大恐慌の不幸な経験をへて、福祉国家の建設と社会主義の建設という大掛かりな実験をこころみてきた。しかし新たな世紀に入った今、社会主義体制は崩壊し、福祉国家は行き詰まりを経験しつつある。近代社会をリードしてきた「最大多数の最大幸福」という倫理的な要請は、今後どのように捉え直されることができるのであろうか。また国家の役割はどのように問い直されるのだろうか。「公共」のテーマにはそのような倫理の問いが内包されている。

    生命-争点としての生命

     ダーウィンが進化論を提唱して以来、生命の多様性は、あらためてさまざまな探求の争点となってきた。そして20世紀の分子生物学の発展、ゲノム分析の進展、新しい生命操作技術の登場、自然破壊の急速な進行による生命の多様性の喪失は、わたしたちの生命観および環境観の根幹をゆるがす、深刻な問題をなげかけている。プロジェクト演習「争点としての生命」では、21世紀の生命と環境の新たなあり方を考えるために、哲学・倫理学、科学論・ジェンダー論、生物学・環境論のディシプリンからの接近がおこなわれる。

     生命維持装置の実用化と普及は、生死の境界を不明確にし、生殖にかかわる技術の開発は、人の生殖の操作可能な範囲を著しく広げている。生命科学技術の飛躍的な進展による生命と死の操作可能性の著しい拡大は、わたしたち自身がわたしたち自身に対して何をどこまで許すのかという、今までにない倫理の問題を提起している。

    共生一共生の可能性と限界

     人類の歴史は、多様な文化の創造と共生の歴史であった。それは多大な犠牲をともなう不完全な共生の実験であり、過去に測る時、わたしたちは多くの犠牲者たちの痕跡を見出すことになる。逆に、21世紀において敢えて「共生」を語ろうとするならば、それは、そうした犠牲者のうえに、犠牲を伴わない共生の可能性を構築していくことでなければならない。プロジェクト演習「共生の可能性と限界」では、共生の実態を調査、観察するだけではなく、最終的には共生の倫理を問うために、政治哲学、比較文学、文化人類学のディシプリンからの接近がおこなわれる。

     世界のさまざまな亀裂があらためて顕在化しはじめた21世紀に、わたしたちは異なった生き方の作法、異なった歴史へのヴィジョン、異なった信仰や価値の体系、異なった民族への帰属を互いにどのように対置し尊重しあうのか、あらためて差異を認識し「共生」の倫理を創りあげることが求められている。

    表象-表象文化における伝統と技術

     情報技術の進展は、イメージと表象のあり方に根底的な変化をもたらし、日常生活における人間関係の様相に深い影響を与えはじめている。それと同時に、情報複製技術の進展は、オリジナルとコピーの関係の再考を迫るとともに、人権や著作権などの既成の概念では解決しきれない侵害の可能性をもたらしている。プロジェクト演習「表象文化における伝統と技術」によって、近現代の表象体系のあり方を、技術的側面まで視野に入れつつ批判的に探求するために、美学・芸術学、伝統芸能論、情報工学のディシプリンからの接近がおこなわれる。

     20世紀は、知識と情報が新しいメディアを通じて、今までにない速度と密度と広がりで流通し始めた時代であった。それまでの地域的な基盤のうえに成長し、享受されてきた文化のありかたにも、また社会構造や政治動態にも大きな変容がもたらされた。表象の操作には戦時期におけるそれのような不幸な例もあった。文化の伝承と創造にかかわるメディアと「表象」にはらまれた問題もまた、倫理の視点からの検討が求められている。

    (b)「核心としての倫理(コア・エシックス)」

     こうした問題の広がりは、20世紀が21世紀に引き継いだ最大の技術的達成ともいえるIT技術とヒトゲノム解読そして生体組織工学のもたらすインパクトの今後の展開を考えても、近年いっそう大きなものとなってきている。21世紀における新たな問いは、あらためて人聞とは何か、いかに共に生きてゆくべきか考えることを求めている。こうした普遍的な問いは、人文科学と社会科学の区分を超え、さらに自然科学との対話と協同を求める、領域横断的な構造をそなえている。「公共」「生命」「共生」「表象」というテーマ群に人文科学、社会科学、自然科学の各ディシプリンから取り組むこと通じて、既存学問の融合をはかりつつ、単なる対症療法に終わらない根源的な問い直しによる新たな研究領域の創出を目指した教育システムを構築することが、現在、必要とされている。

     こうして21世紀に引き継がれた問いの中心にあるものを、わたしたちは人文科学、社会科学、自然科学の「核心としての倫理」と呼び、新たな大学院における教育の軸とする。

     人間にとって基本的なこうした問いに応えることは、現在、もっとも緊急で重要な挑戦であろう。今、根源に帰ることがもっとも先端に立つことでもある。

     新たな大学院における総合の基礎となるこの「核心としての倫理」は、1、2年次の基礎共通科目「基礎講読演習(コア・エシックスI・Ⅱ・Ⅲ)」における集中的な講読演習によって深められる。

    (3)開かれたプロジェクト研究による研究者養成教育

     「核心としての倫理」を基礎として展開される4つのテーマの追求が、大学院教育の先端性と総合性を内容面から支えるとすれば、教育システムとして先端性と総合性を実現するのが研究所・センター群において展開されるプロジェクト研究への大学院学生の参加による、研究者の「オン・ザ・ジョブ・トレーニング(On-the-job Training)」である.この教育システムは、プロジェクト研究を推進するテーマ責任者を中心とするプロジェクト担当者のイニシアティヴのもとに形成される、学外へも広がる研究者ネットワークのなかで、大学院学生の研究力量を実践的に鍛えることを目的としている。もっとも先端的に問題提起をおこなっている研究者に直接接しながら、個別の研究領域にとどまらない知識と展望を獲得する機会を提供するものである。研究所・センター群との連携をおこなう必要性はこうしたオープンな教育・研究の場の形成という点にある。

     したがって、プロジェクト研究においては、とりわけ学外の人材からも積極的かつ的確に教育効果を引き出し、アカデミックな世界をリードしうるネットワークを構築してゆくことが重要である。こうした方針は、先端総合学術研究科においては、大学外の研究所あるいは企業における研究開発に携わる研究者、専門家が兼職教員としてプロジェクト研究を担当する体制を実現することによっても追求される。プロジェクト研究の形態については、これまで立命館大学において実施されてきた「学術フロンティア」、「オープンリサーチ」、さまざまな受託研究などから得た経験を生かし、多様なネットワーク構築を目指してゆきたい。また大学院学生レベルでの外部の教育組織との連携、たとえば国立共同利用研究機関における研究員制度の活用などを奨励してゆきたい。

     「核心としての倫理」を軸とした4つのテーマによるプロジェクト研究を組みこんだこの研究科は、大学院学生に柔軟な教育システムを提供し、基礎教育と研究における「オン・ザ・ジョブ・トレーニング」の有効な組み合わせを実現するために一貫制博士課程とする。

     さらに4つのテーマによるプロジェクト研究を常に時代的な要請に応えるものにするために、外部評価を組みこんだ定期的な評価システムによってプロジェクト研究のテーマそのものの評価と、必要に応じた見直しのシステムを構築する。より具体的にいえば、評価の作業をおこなった後に、その結果を反映できるようにプロジェクト研究のテーマそのものを見直し、時代の要請に即応した新しいテーマ設定と、それに対応した適切な担当体制への再編をおこなう。

    II 養成すべき人材像

     先にふれたディシプリンすなわち専門分野に基づく旧来の大学院教育の限界は、多くの場合大学および大学院の教育システムそのものが外部との緊張関係を失って閉塞した状況に陥っていることからも由来している。こうした状況を打開するために、近年では教育研究分野に大学外の経験を積んだ人材を積極的に導入することが試みられてきた。わたしたちは今、近年の試みの重要性を認識しながらも、外部からの経験を導入するだけでなく、大学院の教育と研究のあり方そのものから、従来のディシプリンの枠組みを超えた、複数の分野と果敢に連携し共同する試みを提起するべき段階にさしかかったと考えている。なぜなら、重要なことは大学院における教育を現実の複雑さの水準に見合ったものに引き上げることだけでなく、世界の動向に一歩先んじつつ、今後必要とされる新しい人材を、さまざまな分野に向けて輩出することにあるからである。新しい人材は以下のような能力を備えることが期待される。

     1)世界のさまざまな動向にリアルタイムで対応しうる、研ぎ澄まされた感受性とレスポンス能力。

     2)世界の新たな兆候を、歴史的な視点を踏まえて、人間にとって基本的で普遍的な問いとして提起し、回答する能力。

     3)こうした問いと回答を、研究者をはじめ、さまざまな活動をしている市民や専門家などとの共同作業と連携のなかで展開しうる能力。

     4)獲得された研究成果を、旧来のメディアだけでなく、多様な媒体(電子媒体、映像媒体)を通して、広く内外に有効に発信する能力。

     5)新たに創出される研究のあり方をシステムにまで高めて、次世代に継承する能力。 先端総合学術研究科は、新鮮な感性と基礎的なディシプリンを踏まえた原理的な考察とを結びつけ、核心的な問題群をあきらかにするために、「象牙の塔」でも「蛸壼」でもない、オープンな教育と研究の場を創出する。すなわち個々のメンバーがそれぞれの個性的な問題意識を通じて連携しあいながら、研究内容についての説明責任を担い、自己責任のもとで成果発信を行ないうる教育と研究の場である。そこでは「核心としての倫理」を基軸として「公共」「生命」「共生」「表象」をテーマとする複数のプロジェクト研究に参加しながら博士論文を作成するという経験を通して、これからの時代をさまざまな分野で主導する新しい活動のスタイルをもった研究者を養成することを目標としている。それぞれ、学部段階で修得したディシプリンを基礎としながら、テーマに即した具体的な主題に取り組むプロジェクトを企画立案し問題の解決をリードすることで、既存の領域を横断する新たな研究領域を切り開き、現代世界への知的な貢献を果たすのである。

     このような柔軟な感性と新しいタイプの知性とプロデューサーとしての実行力をそなえた博士学位保持者は、旧来の研究機関だけでなく、多様なネットワークで実力を発揮し、国内のみならず世界のさまざまな機関(政府・自治体、民間企業、シンクタンク、NG0/NPO、メディアなど)において活躍を待望される人材である。既存の機関が刷新され、新たなネットワークが創出される時代のなかで、社会的にもますます広く要請される、新しい時代に即応できる実力をともなった博士学位を保持する人材こそが今後いっそう高く評価されるだろう。また、それらの人材は将来、先端総合学術研究科が人的ネットワークを構築してゆくにあたって、資するものであることはいうまでもない。

    キャンパス・ハラスメント防止ガイドライン

    立命館大学大学院先端総合学術研究科
    キャンパス・ハラスメント防止ガイドライン

    目次

    0.はじめに

    1.ガイドライン制定の趣旨

    2.研究科の責任と構成員の義務

    3.ガイドラインの対象

    4.ハラスメントの定義

    5.パートナーシップの基礎となる信頼関係

      1)教員・研究科の義務
      2)禁止される行為

    6.パートナーシップ委員会(仮称)

      1)委員会の設置
      2)委員会の構成
      3)委員会の業務

    7.相談室の開設に向けて

    本文

    0.はじめに

     大学の研究の力量が、大学院に結集した若手研究者、大学院生の鋭い問題意識と多様で自由な発想やそれらの能力にかかっていることは、大学内外の研究者、教育関係者の共通理解である。特に大学院生が研究者として成長していく途上でハラスメント等の人権侵害に煩わされることなく、活き活きと研究に専念できる真に「魅力ある大学院」を構築しえた大学こそが研究の力量を伸ばすことができる。
     立命館大学のセクシュアル・ハラスメントやアカデミック・ハラスメント(以下、キャンパス・ハラスメント)への対策は、全国あるいは世界の標準から見て立ち後れていたが、ようやく全学的なハラスメント対策に向けた制度的な改革の機運が芽生えつつある。
     立命館大学大学院先端総合学術研究科(以下、本研究科)では、本研究科院生会からの問題提起を受け、キャンパス・ハラスメントを議題とする協議会において率直な議論を重ねた。協議会での検討を踏まえ、本研究科はキャンパス・ハラスメント防止ガイドラインを制定する。ハラスメント防止のガイドラインが内実を持つためには、ハラスメントを受けた被害者に対して迅速に対応する相談窓口などの実効性のある機能が必要であり、時には調停あるいは処分等を検討し実行する権限を備えた全学的な組織が確立されなければならない。研究者養成を目指す本研究科は、事の重要さと迅速な制度化の必要性を鑑み、個別研究科レベルでの相談窓口の設立への模索を継続すると同時に、全学的な組織の設置についても提起していく。当面、本ガイドライン作成の場となった協議会の意志を継承する役割も含めて「パートナーシップ委員会」(6.参照)を発足させる。

    1.ガイドライン制定の趣旨

     本研究科のすべての構成員は、安全、平等かつ快適な状態で研究、教育、就労ができる権利を有する。すべての構成員とは、教員・職員(いずれも常勤・非常勤を問わない)・院生(本研究科のプロジェクト等に関わりのあるすべての者。以下、「院生」という)である。本研究科はセクシュアル・ハラスメントやアカデミック・ハラスメント等の人権を侵害し、個人の尊厳を損ねる行為を決して容認しない。様々なハラスメントの防止に留まらず、プロジェクトを円滑に推進するための信頼関係の構築を励行する。ここでいうプロジェクトとは、本研究科の研究教育活動の基本形態を指し、狭義の「プロジェクト研究」および、共同で開催されるシンポジウム等の活動を含む。こうした研究教育活動において万一、ハラスメント等が発生した場合に備え、このガイドラインを定める。
     院生には何らかの独創的な視点が認められ、既に教員を含む他者を凌ぐ何かを有するプロジェクト・パートナーである。教員は院生の可能性を謙虚に受け止め、そこから学び、それをより伸ばすという姿勢を保持せねばならない。また、大学職員と良好な関係を形成することは、プロジェクトの推進にとって不可欠であり、院生・教員は大学職員と協力し、本研究科全体が新たな領域を切り開く有機的な教育研究システムとなるよう努力する。
     本研究科は、人文科学と社会科学の刷新と総合を倫理的な原点「核心としての倫理」から、自然科学の成果を受け止め、人文科学と社会科学の刷新と総合をはかり、よりよく生きるための知の再構築を推進することを使命と考えている。それにふさわしい研究環境を整えるために、他人の人格を傷つける言動を行わない決意を表明するとともに、そのような言動を防止するための万全の配慮と不断の努力を行うことを宣言する。

    2.研究科の責任と構成員の義務

     本研究科のすべての構成員は、相手の立場を尊重することに努めるとともに、信頼関係を損ない、人としての尊厳を傷つけるハラスメント等を起こさないこと、防止することに努める。本研究科教授会は、ハラスメント等の人権侵害に対して厳しい態度で臨み、快適な研究・教育・職場環境を作る努力を行う。研究科の教学全般に責任を負う研究科長は、ハラスメント等の防止と対策に関する研究科全体の施策全般についても責任を負い、また各テーマ領域責任者等は、具体的な施策や措置の実施について責任を負う。

    3.ガイドラインの対象

     1) このガイドラインは、本研究科の構成員のすべてを対象とする。ただし、教員・職員については離職後、院生については、研究科を卒業・退学などで学籍を失った後においても、在職中もしくは在学中にうけた被害についての訴えを申し出ることができる。
     2) このガイドラインは、ハラスメントが本研究科の構成員相互間において問題となる場合には、学内・外、授業中・外、課外活動中・外、勤務時間内・外など、それが起こった場所・時間帯を問わず、適用される。
     3) ハラスメントが、本研究科の構成員と本研究科の構成員以外の者との間において問題となる場合には、当事者間に職務上の利害関係のあるときに限り、このガイドラインを適用する。したがって、教員が大学等の外において行う講演・講義、あるいは、院生のアルバイト先での問題等についても、このガイドラインを適用する。ただし、加害者が研究科の構成員以外の者であるときには、このガイドラインの手続きを準用し、研究科として解決のために必要かつ適当な措置をとるよう努力する。

    4.ハラスメントの定義

     ハラスメントとは、性別、社会的身分、人種、国籍、信条、年齢、職業、身体的特徴等の属性あるいは広く人格等に対する言動によって、相手に不利益や不快感を与え、あるいはその尊厳を損なう人権侵害である。アカデミック・ハラスメントおよびセクシュアル・ハラスメントとは、教育上の優越的地位にある者が継続的関係において行う不適切な言動・指導・待遇によって、相手の研究意欲・研究環境を阻害し、あるいはその後の人生においても悪影響を残す人権侵害である。この場合、意に反する他者の人権を侵害する性的言動を伴うものを特にセクシュアル・ハラスメントと言う。これらは、その生起する状況や内容に違いはあるが、何らかの優越的地位に依拠し、権力関係の中で生じるものであり、広義にはパワー・ハラスメントと言える。ハラスメントの認定は、被害者の判断を基準とする。

    5.パートナーシップの基礎となる信頼関係

     プロジェクト・パートナーである院生とプロジェクト・リーダーである教員の適正な関係は信頼関係の上に構築される。とりわけ研究活動開始の初期は、信頼関係の構築が重要である。その前提として、ハラスメントの防止とその根絶のための環境づくりが行われなければならない。教員は、院生の言葉を注意深く傾聴し、院生の主題の核心を十分に理解し、発展の可能性及び行き詰まっている点を慎重に判断する。必要に応じて、院生とともに探求を進める姿勢を明確に示すことが基本姿勢となる。具体的に守るべき行動規範は、信頼関係の構築、維持、発展を促す規範である。大別すると、教員・研究科が積極的にすべき義務と絶対にしてはならない禁止行為がある。

    1)教員・研究科の義務
    院生の能力向上への寄与
     1.必要に応じた院生への助言指導を行う。
     2.適切な文献、学会、研究会、雑誌媒体等の紹介をする。
     3.院生に必要な推薦書の作成をする。
     4.院生が研究成果を発表する適切な機会を保障し、その能力向上の支援を行う。

    教育機会の平等の保障
     5.日本語を第一言語としない院生には、特にその必要に応じた配慮を行う。
     6.遠隔地に居住する、長時間働いているなどで大学にあまり来ることができない院生には、メールなどの通信手段を使って、充分な指導の機会を保障する。
     7.障害を持つ院生には、必要な配慮のもとに指導を行う。
     8.演習、予備演習、研究科内の良好な人間関係を保つよう寄与する。

    プロジェクト遂行のための配慮
     9.プロジェクトの計画実践を通して院生の能力向上に寄与し、そのための必要な配慮を行う。
     10.教員への助言・資料提供、プロジェクトへの貢献をした院生の名前を公的に明示する。
     11.プロジェクト等の遂行には、院生に事前事後の充分な説明を行い、必要に応じて計画を変更する。
     12.万一、プロジェクト等の遂行に何らかの問題を生じた場合には、院生の努力を無駄にしないよう、必要に応じてプロジェクト等の軌道修正を行う。

    研究科全体に関わること
     13.論文審査や講義の評価の透明性を保ち、院生からの異議申し立てを真摯に受け付ける。
     14.プロジェクト推進にあたって、研究科に必要な制度やシステムの整備を行う。

    2)禁止される行為
     以下の具体例は「アカデミック・ハラスメントをなくすネットワーク」資料などを参考にしている。
    1.学習・研究活動妨害(研究教育機関における正当な活動を直接的・間接的に妨害すること、何らかの契約不履行)
     例)学会などへの出張を正当な理由無く許可しない/プロジェクト等の遂行に十分な事前事後説明を行わず、結果として研究時間を奪う、など
    2.卒業・修了・進級妨害(院生の進級・卒業・修了を正当な理由無く認めない、正当な理由無く単位を与えない)
     例)理由を示さず単位を与えない、など
    3.選択権の侵害(就職・進学の妨害、望まない異動の強要など)
     例)本人の希望に反する学習・研究計画や研究テーマを押しつける、など
    4.指導義務の放棄、指導上の差別(教員の義務である研究指導や教育を怠ること。また指導下にある院生を差別的に扱うこと)
     例)「放任主義だ」と言いセミナー・ゼミを開かず、研究指導やアドバイスもしない/自分が興味のあるテーマで研究する院生にのみ指導するなどの指導の上で差別がある、など
    5.不当な経済的負担の強制(本来研究費から支出すべきものを、院生に負担させる)
    6.研究成果の搾取(研究論文の著者を決める国際的なルールを破ること、アイデアの盗用など)
     例)院生のアイデアを使い、こっそり論文・発表をする、など
    7.精神的虐待(不適切な発言やメール・相手の主張の不十分な点を揶揄する。本人がその場に居るか否にかかわらず、院生を傷つけるネガティブな言動を行う。発奮させる手段としても不適切)
     例)「ゼミに出る資格がない、出て行け」「厳しく言うのは愛情だ」「女は研究者に向かない」など
    8.身体的暴力(殴る・蹴る)
    9.誹謗、中傷
     例)職務上知りえた院生の個人情報を他の教員や院生に告げてまわり、結果として大学で当人の居心地を悪くさせる
    10.不適切な環境下での指導の強制
     例)指導するからといってホテルの一室に呼びつける
    11.優越的地位・権力関係の濫用
     例)日曜に研究室に来ないと留年させるなどの不当な規則の強制/食事に付き合わないと指導しないなどの親密な関係の強要/研究データの捏造・改ざんの強要などの不正・不法行為の強要
    12.プライバシー侵害
     例)院生が望んでいないにもかかわらす、恋人のことなど根掘り葉掘り聞く
    13.その他
     例)自らの不適切な言動について、言い訳をするだけで改善をしない(被害が深刻になる可能性)/教員同士の個人的な確執による鬱憤を、相手が指導する院生へ不利益を被らせることで晴らそうとする/教員間の権力関係が院生に影響を及ぼす(権力のない教員についた院生への悪影響の可能性)、など

    6.パートナーシップ委員会

    1)委員会の設置
     本研究科は、ハラスメントに関する情報の収集および研修、ハラスメントに関する学内外機関との連携、協力等を行うため、「パートナーシップ委員会」(以下「委員会」)を置く。教授会は委員会の意見を尊重する義務を負い、また教授会は委員会の意見について話し合った内容を委員会に対して回答する義務を負う。

    2)委員会の構成
     院生会の代表者2名と教授会の代表者1名および副研究科長の計4名(男女比は1:1となるよう配慮する)が委員会を組織する。
     教授会の代表者は院生の推薦を得た教授会のメンバーを教授会の承認を得て決定する。委員会は必要に応じて大学職員の参加を求める。委員会の判断により必要に応じて外部の専門家への諮問あるいは会議への参加を求めることができる。

    3)委員会の業務
    1.人権擁護の意識徹底の活動
     新入生オリエンテーションでの説明(院生会)、リーフレットの作成、研究科構成員すべてを対象とする継続性を持たせた研修(外部専門家の指導)、学生便覧など(必要に応じて大学職員と協力)、カリキュラムの中での人権教育の取り組みの検討(委員会全体)などハラスメントへの問題意識を高める活動を主導する。また全学的な組織および各研究科レベルでの相談窓口の設置へ向けた学内での問題を継続的に行う。
    2.ガイドラインの定期的な見直し
     最低半期に1回は、ガイドラインの見直しを継続的に検討する。
    3.その他
     院生会の代表者、あるいは教授会の代表者から開催の要請があった場合には、直ちに委員会を開催する。

    7.相談室の開設に向けて

     本研究科は、院生が研究を深めうるプロジェクト等への参加を通じた研究者養成を原則とする。プロジェクトの円滑な遂行には、プロジェクト・パートナーである院生とプロジェクト・リーダーである教員との信頼関係の構築、維持、発展が必要である。より良い適正な関係へとしていくために、本研究科はハラスメント等の相談室を設置することを目標とする。相談室の機能の詳細は、今後「パートナーシップ委員会」を中心に詰めの作業を続行する。現時点において、以下を構想している。
     相談室には、研究科とは利害関係のない、人権擁護に精通した専門家を相談員として配置する。相談員はハラスメント等の被害者のすべての過程における主体性、意思を尊重する。守秘義務を遵守し、プライバシーを保護する。また、相談等に関わった人すべてに対する二次被害を防止する。相談員の具体的な業務は、研究科構成員の訴えを聞き受け止めること、被害者の救済方法の整理・確認、被害者のカウンセリング、必要な複数の窓口の照会・選択肢の提示、第三者からの相談の受付等である。相談員以外の教職員も、相談した本人が望んだ場合には受けた相談を相談室に連絡することができる。

     このガイドラインは、2006年3月28日の教授会承認および「パートナーシップ委員会」の発足を条件として発効し、パートナーシップ委員会で継続的な見直しが行われ、その度に更新される。

    このページに関する問い合わせ

    立命館大学大学院先端総合学術研究科
    〒603-8577 京都市北区等持院北町56-1
    衣笠独立研究科事務室 先端総合学術研究科気付
    TEL:075-465-8348 FAX:075-465-8364
    E-mail:doku-ken★st.ritsumei.ac.jp (★→@)

    UP:20060418
    CONVERT:20201026

    パートナーシップ委員会

     パートナーシップ委員会の目的は、大学院の研究環境の改善に向けてハラスメントを含む大学院独自の見えにくい課題を析出し、教員と院生が共に問題を共有し、解決に向けた現実的な提案を行うことにあります。例えば、障害や病を抱えた院生やLGBTなど異なりを抱えた院生が抱える課題は、大学内の施設の利用から日常的な差別やハラスメント、日々の研究活動、研究者としてのキャリアパスの課題まで多岐にわたります。その中には学部と共通するものもありますが、大学院独自の課題も多いと認識しています。またマイノリティやダイバーシティに関連する課題だけでなく、情報格差やヘイトスピーチ、大学自治のあり方、分野横断的な院生同士の交流の促進といった大学院の未来を展望するための課題も数多くあると考えます。
     本委員会は、大学院をとりまく環境の既存の問題を解決するとともに大学院の未来を展望するために、学内の院生と教員が共に議論する勉強会、研修、シンポジウムを実施します。それを通じて特定の課題に対する教員・院生相互の理解を深め、各研究科での日常的な営みへと還元されることを到達目標としています。

    2023年度 立命館大学大学院 先端総合学術研究科
    パートナーシップ委員会企画イベント
    「衣笠研究科交流フォーラム:つながる院生・ひろがる研究」

    2023年度 立命館大学大学院 先端総合学術研究科
    パートナーシップ委員会企画イベント
    「衣笠研究科交流フォーラム:つながる院生・ひろがる研究」

    ◇開催日時
    2023年12月15日(金) 17:30~19:00(予定)

    ◇場所
    立命館大学衣笠キャンパス諒友館食堂1階
    途中入退場自由・申込不要

    ◇企画趣旨
    立命館大学大学院学生育成目標では院生の分野横断的な研究交流・協力が推進されており、とりわけ先端総合学術研究科では「プロジェクト型大学院」のもと研究・教育が実施されています。しかしながら、コロナ禍を経た現在、院生同士や教員とのオープンな場での交流機会が減少しています。そこで本企画では文学研究科、法学研究科、映像研究科、社会学研究科、国際関係研究科、先端総合学術研究科の6研究科から総勢24名の院生が、それぞれの研究科と個人の研究を紹介し、会場参加者との対話・交流を行います。他研究科にある近接領域や、他分野との出会いの中で参加者のディシプリンを確立・再考する機会を提供いたします。

    ◇タイムテーブル

    17:30 開会の挨拶 趣旨説明

    17:50 ポスターセッション
    研究科紹介 ×6
    6つの研究科それぞれで学べることや教育方針などを紹介
    授業の雰囲気や大学院生の自主研究会など耳より情報も?

    個人研究発表 ×24
    大学院生が自身の研究の意義や可能性を紹介
    ポスターの前に立つその人こそ、運命の研究仲間かも?

    18:50 閉会の挨拶

    ※ポスターセッションとは
    発表者が伝えたいことを一枚の大判ポスターにまとめて掲示し、来場者に対面で説明する形式の研究イベントです。

    ◇主催
    立命館大学大学院先端総合学術研究科パートナーシップ委員会

     

    過去のパートナーシップ委員会企画

     

    立命館大学大学院先端総合学術研究科パートナーシップ委員会報告書






    過去のイベント
    カレンダー

    2023年度 行事

    ★随時更新★ [最終更新:2023年4月3日]
    *予定は変更の可能性があります。

    2023年4月

    • 2日(日) 新入生オリエンテーション
    • 4日(火) 入学式
    • 6日(木) 春セメスター授業開始

    2023年5月

    • 25日(木) 7月実施入学試験 出願開始

    2023年6月

    2023年7月

    • 1日(土) 7月実施入学試験 試験日
    • 20日(木) 7月入試合否発表、9月入試出願開始
    • 22日(土) 博士論文/博士予備論文構想発表会
    • 23日(日) 博士論文/博士予備論文構想発表会
    • 24日(月) 博士論文/博士予備論文構想発表会
    • 26日(水) 春セメスター授業終了
    • 29日(土) 『コア・エシックス』投稿原稿検討会
    • 30日(日) 『コア・エシックス』投稿原稿検討会
    • 31日(月) 『コア・エシックス』投稿原稿検討会

    2023年8月

    • 3日(木) 9月実施入学試験 出願締切

    2023年9月

    • 10日(日) 9月実施入学試験 試験日
    • 24日(日) 学位授与式(博士)
    • 26日(火) 秋セメスター授業開始
    • 29日(金) 9月実施入学試験 合格発表

    2023年10月

    2023年11月

    2023年12月

    • 14日(木) 2月実施入試出願開始

    2024年1月

    • 11日(木) 2月実施出願締切
    • 22日(月) 秋セメスター授業終了

    2024年2月

    • 4日(日) 2月実施入学試験 試験日
    • 7日(水) 博士論文/博士予備論文構想発表会
    • 22日(木) 2月実施入学試験 合格発表

    2024年3月

    • 23日(土) 学位授与式(博士)
    多彩な大学院生