2021年のイベント
公聴会(2020年度)

2020年度秋学期博士学位審査(甲号)公聴会

以下のとおり公聴会を実施いたします。
なお、やむを得ぬ事情のあるときを除き、
先端総合学術研究科大学院生は全員参加を原則としています。


  • 【終了】学位審査申請者:小辻 寿規
    学位申請論文名:「京都市における「まちの居場所」活動の実践に関する研究」
    日時: 2021年 1月 12日(火)11時30分~12時30分
    場所: Zoom
    【主査】立岩 真也 教授 (立命館大学大学院先端総合学術研究科)
    【副査】佐野 淳也 准教授(同志社大学)
    【副査】岸 政彦 教授 (立命館大学大学院先端総合学術研究科)
    【副査】美馬 達哉 教授 (立命館大学大学院先端総合学術研究科)

2020年度春学期博士学位審査(甲号)公聴会


  • 【終了】 学位審査申請者:川﨑 寧生
    学位申請論文名:「日本の「ゲームセンター」史-娯楽施設が社会に根付く過程を中心に-」
    日時: 2020年 7月 9日(木)9時00分~10時00分
    場所: Zoom
    【主査】Martin Roth 准教授 (立命館大学大学院先端総合学術研究科)
    【副査】加藤 裕康 非常勤講師(関東学院大学)
    【副査】千葉 雅也 教授 (立命館大学大学院先端総合学術研究科)
    【副査】松原 洋子 教授 (立命館大学大学院先端総合学術研究科)
  • 【終了】 学位審査申請者:SHIN Juhyung
    学位申請論文名:「多様化するシリアスゲームと韓国社会」
    日時: 2020年 7月16日(木)10時30分~11時30分
    場所: Zoom
    【主査】小川 さやか 教授 (立命館大学大学院先端総合学術研究科)
    【副査】細井 浩一 教授(立命館大学映像学部)
    【副査】Martin Roth 准教授 (立命館大学大学院先端総合学術研究科)
    【副査】山本 貴光 講師 (立命館大学大学院先端総合学術研究科)
  • 【終了】 学位審査申請者:伊東 香純
    学位申請論文名:「精神障害者のグローバルな草の根運動-連帯の中の多様性-」
    日時: 2020年 7月16日(木)12時00分~13時00分
    場所: Zoom
    【主査】立岩 真也 教授 (立命館大学大学院先端総合学術研究科)
    【副査】長瀬 修 教授(立命館大学衣笠総合研究機構)
    【副査】後藤 基行 講師 (立命館大学大学院先端総合学術研究科)
    【副査】美馬 達哉 教授 (立命館大学大学院先端総合学術研究科)
  • 【終了】 学位審査申請者:山口 真紀
    学位申請論文名:「〈痛む主体〉生成過程についての社会学的考察―「傷つき」を理解しようとすることとは何か―」
    日時: 2020年 7月16日(木)13時30分~14時30分
    場所: Zoom
    【主査】立岩 真也  教授 (立命館大学大学院先端総合学術研究科)
    【副査】三島 亜紀子 嘱託講師(同志社大学)
    【副査】小川 さやか 教授 (立命館大学大学院先端総合学術研究科)
    【副査】小泉 義之  教授 (立命館大学大学院先端総合学術研究科)
  • 【終了】 学位審査申請者: 田中 多賀子
    学位申請論文名:「日本の小児人工内耳受容史:導入前・導入初期の聴覚障害教育領域・周辺の状況と成人期に入った当事者の受けとめ状況」
    日時: 2020年 7月16日(木)15時00分~16時00分
    場所: Zoom
    【主査】立岩 真也 教授 (立命館大学大学院先端総合学術研究科)
    【副査】城間 将江 教授(国際医療福祉大学大学院)
    【副査】岸 政彦  教授 (立命館大学大学院先端総合学術研究科)
    【副査】西 成彦  教授 (立命館大学大学院先端総合学術研究科)
  • 【終了】 学位審査申請者:柴垣 登
    学位申請論文名:「インクルーシブ教育実現のための方策の提案-都道府県間の特別支援教育の差異に着目して-」
    日時: 2020年 7月 16日(木)16時30分~17時30分
    場所: Zoom
    【主査】立岩 真也  教授 (立命館大学大学院先端総合学術研究科)
    【副査】堀家 由妃代 准教授(佛教大学教育学部)
    【副査】後藤 基行  講師 (立命館大学大学院先端総合学術研究科)
    【副査】美馬 達哉  教授 (立命館大学大学院先端総合学術研究科)


★ 公聴会発表者へ
公聴会発表にあたっての留意事項です。

  1. 発表時間は30分、質疑応答30分とする。
  2. レジュメの様式は特に指定しない。
  3. レジュメのデジタルデータをメールに添付して提出すること。
  4. 発表用原稿またはメモはレジュメとは別に各人において用意すること。
  5. 発表用に使用する機器類については事前に相談すること。
  6. 2010年度よりWEBでの音声配信も先端研内で公開としていますが、なんらかの理由により公開しない場合はその旨届けること。

以上

「アート/クラフト」研究会(2021年度)

院生代表者

  • 柴田 惇朗

教員責任者

  • 小川 さやか

概要

 本研究会の目的は「アート/クラフト」の境界的事例の質的研究を用いて、制度の枠を超えた社会における創造性のあり方について研究し、その成果を学術論文として発表することである。「アート」と「クラフト」は社会学者のベッカーが芸術生産研究において用いたアート・ワールドにおける生産物の制度的評価の基準である。「創造的な能力と天賦の才」が付与されているかの判定によって単に高い技術で生産された「クラフト」は「アート」から弁別すされると言われているが、その定義は曖昧なものである(Becker 1984=2016:300−19)。本研究会では「アート」の「クラフト」への接近(例:「天才」的技術の形式化)あるいは「クラフト」の「アート」への接近(例:工芸的生産物の芸術界での承認)の事例を境界的事例と捉える。すでにメンバーが調査をしているフィールドには「その最も純化されたかたちにおいてさえ」他の芸術と比べて「純粋さ」が劣ると考えられている演劇(Bourdieu 1979=1990I:31)やアート・ワールドの外で発展した切り絵、陶芸といった実践があり、豊富な境界的事例へのアクセスが可能である。これらの実践において創造性がどのように発揮され、作り手が芸術界やその他のコミュニティとどのような関係を結び、いかなる同期で活動を駆動しているのか。本研究会ではこのような問題に取り組んでいく。
 具体的な内容および実施方法は以下の通りである。5月から2月にかけて「アート」もしくは「クラフト」の従事者に関する質的研究を行う研究会メンバーで集まり、月例研究会を開催する。そこでは参考資料の講読に加え、各人の既存のデータおよび7月から10月の間のフィールドワーク・文献調査を通じて収集した新たなデータの断続的な集積、共同分析を行う。データの収集は「アート/クラフト」の生産だけでなく、生産が行われるに至った背景に着目して行う。その一環として行う予定の、福島県での調査対象の切り絵作家の創作的背景をめぐる調査の交通費予算を計上している。その他のフィールドワークの必要経費は本助成とは別に用意する予定である。調査データの分析の成果は11月から2月の間に論文としてまとめ、年度内に投稿を行う。なお、論文の具体的な内容および投稿先に関しては10月までに決定し、報告する。
 本研究会の意義は学際的な研究領域の院生が集まり、社会人文科学において広く重要性が指摘されている創造性に関する共同研究を行う点である。各学問領域の理論や方法論に関する知見の共有を通じた各人の研究者としてのスキルアップは各自の研究の充実に寄与すると考えられる。また、共著論文の執筆はそれ自体が貴重な研究経験となることに加え、それが各自の業績となることも大きな意義である。

【参考】Howard S. Becker, 1984, Art Worlds, University of California Press.(後藤将之訳,2016,『アート・ワールド』慶應義塾大学出版会.)・Pierre Bourdieu, 1979, La Distinction, Éd. Du Seuil.(石井洋二郎訳,1990,『ディスタンクシオンI・II』藤原書店.)

活動内容

本年度、当研究会は10回の例会と1度のフィールドワークを行った。例会ではメンバーの研究関心の共有や文献の輪読、フィールドワークおよび学会発表・論文提出に向けた準備を行った。

構成メンバー

柴田 惇朗
藤本 流位

incurable研究会(2021年度)

院生代表者

  • 戸田 真里

教員責任者

  • 後藤 基行

概要

 本研究プロジェクトの目的は、希少難病、慢性疲労症候群など医学的な地位が定まっていない「論争中の病」、医学で明確に説明できない病を患う人々が、生活を送る上で必要なサポートを当事者の視点から明らかにすることである。
 希少難病や論争中の病は、医療者にもよく知られておらず、診断までに時間を要することが多い。さらに診断されても治療法はなく、支援制度や可能なサポートについての情報提供も十分になされていない状況にあると考えられる。加えて、検査に異常がないなど、医学で明確に説明できず、診断がつかないために医療機関をさまよい続ける病者も少なくない。
 現在の医療制度は、病名が何らかのかたちで確定されることを前提に設定されており、これらの当事者は、医療や福祉のバックアップを受けられないまま、制度のすき間に追いやられている可能性がある。実際、当事者の置かれた状況については、社会的な認知がほとんどなされていない現状がある。
 当事者や支援者が置かれた状況の一端について、インタビュー調査を通じて明らかにし、当事者らのニーズを丹念に拾い上げていきたい。どのような公的サポート、制度的な改善が必要であるかを考察し、当事者が直面する困難を、診断名や診断の有無に左右されることなくサポートできる仕組みを考えたい。

活動内容

1. 後藤基行先生に指導を受けながら、定期的に勉強会を開催。『診断の社会学』(野島那津子)などを購読しながら、当該病者らに共通する困難について議論が行われ、多くの場面で医師による「診断」が病者と社会を繋ぐ結節点となっていることが確認された。
2. 「診断」が根拠となり動作する各制度について、その制度を規定する法律等に関する調査を各人が進めた。調査に関する報告は1月からに行わた。
3. 2月には野島那津子先生(石巻専修大学)に登壇いただき、『診断の社会学』著者解題及び、ディスカッションを行った(COVID-19の影響でオンライン開催)。メンバーの谷田(毎日新聞記者/生存学研究所客員研究員※院生でないため名簿には不記載)の呼びかけにより病者当事者の方達にも参加いただき、盛況を博した。同催しの様子はテキスト化され、生存学研究所サイト(arsvi.com)に掲載される。

構成メンバー

戸田 真里
中井 良平
西岡 知香
劉 心悦
高橋 初
栗川 治
寺田 准子
嶋津 麻穂

難病と地域生活(2021年度)

院生代表者

  • ユ・ジンギョン

教員責任者

  • 立岩 真也

概要

<目的>
 本研究プロジェクトの目的は、①難病を持つ人たちの地域生活を支える制度、政策を歴史的背景から読み解き、②実際の難病の人たちの地域生活でどのようなことが起きていて何が必要なのかを明らかにすることである。
 京都では約10年前に、制度や体制が十分とはいえない中、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の人たちの地域移行、地域生活が有志によって取り組まれ、実現した。さらにその前には、応益負担や障害程度区分を基盤とした障害者自立支援法(現、障害者総合支援法)に反対する運動が、身体障害者の団体とともに精神医療保健福祉に関わる団体を中心に進められていた。障害者自立支援法は2005年に成立したが、2010年の法改正で応能負担に見直され、2012年には障害者総合支援法となり、障害の範囲に難病等が追加された。本研究プロジェクトでは、こうした歴史的背景を明らかにしながら、難病の人たちの地域生活について考えていく。

<内容>
 日本では、障害を持つ人たちの介助制度は、1970年代から脳性マヒの人たちが中心に介助制度の獲得と拡大を求めて運動し、制度が作られてきた。そうした運動は、自立生活運動というように呼ばれてきた。そこでは、介助サービスの供給などを行なう組織として自立生活センターを作り運営していくことや、全身性障害者介護人派遣事業という自ら介助者を選んでその人に生活を介助してもらえる制度が構築されていった。他方で、難病の人たちは、脳性マヒの人たちと同様に日常生活で介助を必要とするにもかかわらず、障害を持つ人たちのこうした障害者運動とは違うかたちで生活の保障を求めてきた。とくにALSの人たちは、全身性の障害を伴う進行性の病気でありその過程では人工呼吸器の装着が必要になるなど、長時間の介助が必要である。しかし、ALSの人が家族介助によらずに障害の制度を使って暮らし始めたのは、1990年以降である。
 障害の原因を社会に帰属していく運動が障害者運動として展開されている中で、難病の人たちは、スモンを契機として難病対策要綱の策定に向けて取り組んでいた。1970年9月、スモンは原因が薬剤(キノホルム)であると判明したため、1972年10月に定められた難病対策要綱の対象疾患とはならなかった。全家連は精神衛生法とは別に精神障害者福祉法の制定を目指していたこと、筋ジストロフィーは一定の保障があったことを理由に難病対策要綱の枠組みに入らず、その他、患者団体を有する疾病が難病の対象疾病になるに至った。
 障害者運動の中で、彼らの主張が指し示した重要な論点は、生活者としての主体性の獲得――すなわち生活者としての自己決定であった。それは、家族の庇護や施設での管理などの抑圧や支配への抵抗として自立生活が目指されたということからでもあった。
 このことは、実際に制度を活用して生活していく中で、様々な場面で問題として立ち現れてきた。とくに介助者との関係において、必要なことやしてほしいことを介助者に指示し自分の生活を差配していくということが、障害を持つ人たちの「主体性」として求められた。こうした障害者運動の中で培われた考え方は、もちろん、障害を持つ人たちが獲得、拡大してきた介助制度の中にも位置付けられてきた。しかし、難病の人たちがこうした介助制度を使用し介助者と関係を構築していくときには「主体性」の獲得やその発揮をすること自体が難しく、そのことで介助者との関係が難しくなり生活が立ち行かなくなってしまうことがある。どうしても医療と切り離せない生活の中では「治療」「医療的管理」があり、「患者」というアイデンティティを持ってしまう。
 本プロジェクトでは、障害者運動の流れの中に難病の人たちが組みしなかった要因、難病の人たちがどのようなことを求め主張してきたのかを歴史的背景から解き明かしたい。そして、実際の暮らしから難病の人たちが、病名や症状によって分けられることなく安心して暮らせる仕組みを考えたい。歴史的背景から難病の人たちの生活の在り様を探っていくのは、本研究プロジェクトの独創的な点である。

<方法>
 具体的には、①実際にこれから地域移行をしようとしているALSのAさん、地域生活をしているBさんの事例の記録、②運動団体や当事者、家族、支援者たちへのインタビュー調査とデータの収集、③国内外の学会での研究発表や活動を通じた情報の集積とデータ取集、を行なう。①と②で得られたデータや資料は、生存学のホームページに掲載する。研究成果は報告書にまとめて配布する。

<意義>
 本研究プロジェクトの意義は、歴史的背景から難病の人たちの生活の在り様を探ることである。今ある難病の人たちの日常は、それぞれの背景や環境、他者との関係によって理解も意味合いも大きく変化する。そうした日常を歴史的背景から読み解くことは、すなわち、難病という概念や、谷間に置かれている難病の人たちを社会の中に再定位していく作業でもある。従来の社会福祉学の枠組みで捉えられてきた現象や社会関係を見直す点で、学術的にも意義がある。

活動内容

本年度は、コロナ状況下において変更を迫られながらも、①実際にこれから地域移行、地域生活をしようとしているALSのAさん、Bさんの事例の記録、②本人や家族、支援者たちへのインタビュー調査とデータの収集、③国内外の学会での研究発表や活動を通じた情報の集積とデータ取集に取り組んだ。
①については、昨年度から継続して行っているALSである70代の男性のAさんの地域移行にアクションリサーチを活用して取り組み事例の記録と、同じALSである30代の男性のHさんの地域生活について実際の生活状況について観察及び聞き取りを行った。Aさんは、長期入院から京都で地域生活を開始した。住み慣れている地域ではなく、京都で生活を始めたのは、重度訪問介護が利用できないからだった。Aさんは地域の国立病院で長期療養生活を送っていた。コロナの状況で一年以上面会ができないでいた。外出も外泊も面会もできない病院生活は辛く、本人も家族も何とか地域生活をしたいと考えていた。重度訪問介護の利用について関係機関に相談したもののそれを提供する事業所が少ないから重度訪問介護それ自体の利用が認められないでいた。家族は家で仕事をしているために介助が難しい。そこで京都の支援者らとつながり、京都市内で一人暮らしをすることとなった。他方、Bさんは、もともとの場所での生活を継続していたが、本人が必要とする重度訪問介護の時間数が認められずに、外出や本人が思い描く生活ができないでいた。重度訪問介護は24時間の見守りを可能とする制度であり、障害があっても他の者と平等に生活を送るために欠かせない制度である。10年前に比べて重度訪問介護の利用が進んだが、重度訪問介護を提供する事業所が少ないからその利用を認めない、本人が必要とする時間数が認められないなど、課題がある。さらに、重度訪問介護と介護保険では考え方が違うため、それが実際の地域生活で介助者の態度や振る舞いに影響していた。こうした課題については整理しようとしているところである。
②については、運動団体や当事者、家族、支援者たちへのインタビュー調査を行なった。具体的には、精神障害者の家族会の人2名、難病の障害者運動から障害当事者1名、ALSや精神障害の権利擁護をめぐる問題を法的な観点から整理するために刑法学者1名にインタビューを実施した。インタビュー記録については、許可が得られた人たちについては生存学のホームページに掲載している。
③については、新型コロナウィルス感染症対策のために予定を変更および中止、延期にせざるを得なかった。障害学会と難病看護学会で報告を行なった。

構成メンバー

ユ・ジンギョン
戸田 真里
中井 良平
篠原 史生
舘澤 謙三
白杉 眞

活動歴

2020年度の活動はコチラ

「障害者と労働」研究会(2021年度)

院生代表者

  • 栗川 治

教員責任者

  • 立岩 真也

概要

◆目的
 本プロジェクトは、次の2つを目的とする。
 ①「障害者と労働」に関わる研究をおこなっている院生が、共同研究を通じて、各自の研究力を向上させる。
 ②各院生が「障害者と労働」に関する最先端の国内・国際的な研究動向を把握し、実態を調査し、その成果を集積・発信していくことを通じて、学術研究の発展に寄与できる実践力を培う。

◆方法・内容
 上記の目的を達成するための方法として、次の内容の活動をおこなう。
 ①定例研究会の開催(月1回程度): 各院生の研究経過、研究成果を持ち寄り、相互の批判・討論を通じて、各自および共同の研究の課題を明らかにしていく。但し、新型コロナウイルス対策のため、当面(すくなくとも2021年度春学期)は、対面での研究会はおこなわず、電子会議システム等を活用してweb上でおこなう。
 ②研究成果報告会の実施(年度末): 公開の研究成果報告会をおこない、1年間の本プロジェクトの実績を報告するとともに、国内外の最先端の研究者を招聘してシンポジウム(講演会)を併せて開催し、今後のさらなる研究の進展を図る。
 ③生存学研究への参画: 立命館大学生存学研究所の研究活動に積極的に参画し、障害学国際セミナー(東アジア障害学フォーラム)での研究発表・海外の研究者との交流を深めるとともに、日常的には生存学HPの「障害者と労働」のサイト(http://www.arsvi.com/d/w0105.htm)での資料集積・内容拡充を、本プロジェクトの課題に位置付けておこなっていく。
 ④学会・研究会、調査への派遣: 「障害者と労働」に関する各種学会・研究会に参加する院生、およびインタビュー調査等に出張する院生に対して、旅費等を補助して、各自の研究活動を支援する。
 ⑤プロジェクト成果報告の発信: 上記①~④の活動成果を随時報告書にまとめ、生存学HPに掲載し、関係者から指導・助言を得る。

◆意義
 本プロジェクトは、現代の日本と世界において重要なテーマである「障害者と労働」に関して、最先端の学際的・国際的な知見・情報を得つつ、個々の院生が独創的な研究を進めるとともに、その成果を先端総合学術研究科および生存学研究所の活動・媒体を通じて世界に発信し、この分野の学術研究の進展に寄与していく経験を積めるという意義をもつ。これは、「障害者と労働」に関する研究を志す大学院生が多数在学する本研究科(おもに公共領域)の特色を生かし、また、日本と東アジア、そして国際的な障害学研究の拠点である生存学研究所が本研究科ときわめて密接な関係にあるという条件に恵まれていることによって可能となっていることである。

活動内容

新型コロナ対策のため、すべての活動をオンライン(zoom、メール等)でおこなった。
 具体的な月例かい等は、以下のとおりである。その他、メンバーのメーリングリストをつくり、日常的な情報交換、研究会企画、相互の研究相談をおこなった。

 ①定例研究会の開催(毎回zoomで)
 6月14日(月)16時~19時(参加者12名);文献購読;永野仁美,2013,『障害者の雇用と所得保障──フランス法を手がかりとした基礎的考察』信山社 第1章第1節,pp41-78(発題・栗川治); 日本の障害者雇用政策、差別禁止・合理的配慮法定以前)。議論;一般雇用と福祉的就労、ダウン症の高校生の進路、農業、超短時間就労、重度ダブルカウントと軽度障害、職場支援に福祉制度が使えない、等の意見交換。
 7月26日(月)16時~18時(参加者10名);「障害者雇用、とくに民間企業での一般就労について」(発題・岸田典子); 岸田さんは、全障連(全国障害者解放運動連絡会議)代表幹事等を務めた楠敏雄の研究をしているが、今回は、自身の視覚障害者としての銀行での一般就労の体験をふまえての問題提起。
 8月27日(金)15時~19時(参加者19名);講演「障害者と/の労働について」、講師 立岩真也先生; 「この主題が考えられてよいことについては幾度も述べてきた。」「障害者の就労という主題に限らず労働について考えることはこれからしばらくの大きな主題だと、私はかなりにまじめに思っている。」「労働の分配・労働の分割もおもしろい主題としてある。しばらく私たちは消費社会を語ってきたのだが、とくにこれから何十年かは労働がもっとも大きな主題の一つとなるだろう。」「この問いはかなりきっちり考えて複数の答しか出ない。」「ここではごく基本的なことを。一番単純には、「障害」に対応する英語は disability であり、労働は ability を要する行ないであり、ability がなければ仕事にはつけない、収入も得られない、終わり、となりそうだ。そして私自身は、そこからものを考えてきたところがある。働けないものは働けない、は事実として、ゆえに得られないのはおかしい。では、というようなことである」。参考資料 次のhp(立岩真也「障害者と/の労働について:覚書」)にメモ、文献等が多数紹介されている。
http://www.arsvi.com/ts/20210011.htm
 9月24日(金)16時~18時(参加者10名);内容 「[障害学会第18回大会 非公式サイドイベント] 自由報告についてのフリートーク」; 障害の呼称と表記(defectiveなど)、「不健康な障害者」、障害者雇用の理念的必然性、特別支援学校のトラッキング、障害教員の現場でのやりにくさ、存在価値論、「せめぎあいの共生」などについて議論。
 10月30日(土)17時~19時(参加者8名);討論資料論文: 栗川治「軽減労働同一賃金」を障害者雇用において可能にする条件──障害のある教員の事例を通しての異別処遇・同等待遇の検討」(発題・栗川治); 『障害学研究』17号投稿論文と再査読コメントを材料に。「労働の正当な評価」を求めていること、「労働・賃金」を離れて社会保障による所得保障に行くのでなく、「労働・賃金」のところでまだやれることがあり、それを拡張したいと思っていることなどについて議論。
 12月18日(土)16時~18時(参加者14名);「障害者と労働」・社会運動論研究会合同例会; テーマ 「〔障害の社会モデル〕の起源と障害者運動の初期フレーミング」(発題・栗川治); 購読文献 田中耕一郎,2017,『英国「隔離に反対する身体障害者連盟(UPIAS)」の軌跡──〈障害〉の社会モデルをめぐる「起源の物語」』現代書館: pp125-216 「第5章 結成初期フレーミングの検証」; 社会モデルの成立、70年代の同時多発的な社会運動の勃興、相互の影響関係は?、upiasと全障連はほぼ同時期。障害者運動と新左翼運動の関係、施設の問題、相模原事件との関係、障碍児のケア、分離教育などについて議論。

②公開研究会の実施

構成メンバー

渥美 勉
宇津木 三徳
岸田 典子
栗川 治
清水 一輝
竹村 文子
種村 光太郎
陳 可為
中井 秀昭
中井 良平
宮本 敬太
山口 和紀

活動歴

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SOGI研究会(2021年度)

院生代表者

  • OUYANG Shanshan

教員責任者

  • 立岩 真也

概要

【目的】
SOGI(Sexual Orientation and Gender Identity)とは、性的指向とジェンダー・アイデンティティのことを意味する。本研究会はSOGIの視点で幅広い課題を検討することを目指している。2021年度研究会の目的は、クィア理論、フェミニズムにとって重要な文献であるGender Trouble: Feminism and the Subversion of Identity (Butler, 1990)を精読した上で、ディサビリティ・スタディーズと交差する検討を行う。また、社会問題を着目し、これからの研究課題を検討することである。

【内容と方法】
本研究会の内容および方法は3つの活動で構成される。
①読書会を開催し、『ジェンダー・トラブル』を精読し、関連文献・論文の輪読を行うことを活動の基本とする。その場、担当メンバーがレジュメを作って発表する。
②外部講演会や外部の研究会に参加し、その場で得た知識と自分なりの感想などを研究会で検討する。
③読書会で検討したテキストの著者を招きして公開研究会を行う。

【意義】
本プロジェクトは、多様な専門領域とSOGIの接点を探ることによって、クィア理論、ディサビリティ・スタディーズに関心を持つメンバーは各自の研究を進捗させると考える。

活動内容

1)文献の講読
今年度は8回分けて、Butler, Judith, 1990, Gender Trouble: Feminism and the Subversion of Identity, Routledge. (=竹村和子訳, 1999,『ジェンダー・トラブル――フェミニズムとアイデンティティの攪乱』青土社). を講読し、議論を行った。
日時: 2021年4月25日、5月30日、6月27日、8月1日、9月4日、10月17日、11月21日、2022年1月16日
場所: Zoom(オンライン)

2)公開研究会の開催
①2022年2月13日に、「バトラーの議論を引き受けて」と題して、公開研究会を開催した。これまでのバトラーの議論を参照しつつ、バトラーの理論を踏まえたフェミニスト現象学や文学分析との結びつけに焦点を当てて議論をした。講演は羽生有希氏「フェミニスト現象学の継承としての『ジェンダー・トラブル』」である。院生発表は、メンバーである森祐香里「〈肉体〉を思考する場としての文学 ―第二次世界大戦直後日本における肉体文学研究から」であり、その後、参加者を含めた総合討論を行った。
文献閲読:
羽生有希,2019,「来たりし、来たるべきフェミニスト哲学――フェミニスト現象学とジェンダー・パフォーマティヴィティ」『現代思想総特集 ジュディス・バトラー』47(3):130-144.

②2022年2月25日に、「バトラー・政治・身体」と題して、公開研究会を開催した。ジュディス・バトラーの『ジェンダー・トラブル』は1990年に出版されたが、今もなお、議論を巻き起こし、クィア理論に限らずさまざまな分野に影響を及ぼし続けている。講演の五十嵐舞氏は、911以降のアメリカ社会問題をバトラーの議論に結びつけ検討し、そして日本の性差別とジェンダー問題を提示した。その後、参加者を含めた総合討論を行った。
文献閲読:
五十嵐舞,2019,「複数の『わたし』による連帯――ジュディス・バトラーの集合の政治と差異」『現代思想総特集 ジュディス・バトラー』47(3): 225-234.
――――,2021,「ままならない身体、ままならない情動――ジュディス・バトラーの『パフォーマンスティヴィティ』と『プレカリティ』」『帝国のヴェール――人種・ジェンダー・ポストコロニアリズムから解く世界』164-170.

構成メンバー

OUYANG Shanshan
SHEN CHIN
長島 史織
QU Honglin
宮内 沙也佳
勝又 栄政
森祐 香里

活動歴

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