多様化社会現象とデジタルコンテンツ研究会(2017年度)

院生代表者

  • 焦岩

教員責任者

  • Paul G. Dumouchel

企画目的・実施計画

 本プロジェクトの目的は、①社会的な文脈でデジタルコンテンツと社会現象を解釈すること、②デジタルコンテンツを用いて社会現象を理解することである。人々はデジタルテクノロジーの発展と共に、より一層デジタルコンテンツに依存して他人とのインタラクションとコミュニケーションを行うようになった。我々にとってデジタルコンテンツの役割が大幅に増えてきた。しかし、このようなデジタルコンテンツの役割を重要視すべきという意見に対して、人々の間に実際におこなうインタラクションやコミュニケーションの行為がそもそも重要で、逆にデジタルコンテンツはその行為を妨げてしまうという否定的な意見も近年強まっている。さらに近年、デジタルコンテンツにおける政治性に関する議論も盛んになっている。これらから、刻一刻と多様化が進行する現代社会のなかで、デジタルコンテンツの役割と多様化の社会現象を社会的な文脈で解釈することが、コンテンツの政治性についての理解にも、必要であると考えられる。そのため、本プロジェクトはメディア社会論・コミュニケーション論・コンテンツ論・遊び論・デジタルテクノロジー論などの視点からアプローチしていく。本プロジェクトは現代社会におけるデジタルコンテンツと社会現象との関係について明らかにし、デジタルコンテンツの政治性に対する主張を強める点で意義を有する。

活動内容

 今年度の活動は主にシンポジウムと例会・集まり会という二つの内容を実行してきた。それぞれの詳細は以下の通りである。

1.多文化における社会現象と他国のコンテンツ発展状況を勉強することができる機会として、国際的なシンポジウムを開いた。詳細は以下通りである
テーマ:韓国エレクトロニック・スポーツ(eスポーツ)の文化
日時:7月25日(火)17:00~20:00
場所:立命館大学衣笠キャンパス創思館三階303・304号室
ゲスト:
カン・シンギュ(Kang Shinkyu)――韓国西江大学校研究員、ゲームスタティーズ
コメンテーター:
 ポール・デュムシェル(Paul G. Dumouchel)――本学、政治哲学
 吉田 寛――本学、感性学
通訳者(韓国→日本語):
 南 玉瓊――本学、国際関係科
プログラム:
17:00~17:10 開始挨拶
 17:10~19:10 韓国eスポーツの文化(カン・シンギュ)
 19:10~19:40 質問
 19:40~20:00 議論・コメント(カン・シンキュ、ポール・デュムシェル、吉田 寛)
 20:00 終了

2.男女間のコミュニケーションに着目し、そのコミュニケーションのなかで生じた差を解釈する方法をテーマとして、2017年度において、5月22日(火)、6月30日(金)、7月21日(金)、9月29日(金)、11月15日(水)、1月31日(水)に、6回にわたって、例会・集まり会を催した。一回目は、研究会の主なる活動と進む方向について参加メンバーの意見を交換し、乙女ゲームについての理解および、現代社会との繋がりや現代社会への影響などについて、議論を行った。二回目は、各メンバーは乙女ゲームとかかわる文献をしらべ、研究会で他のメンバーに紹介し、紹介した文献内容について意見と質問をお互いに交流する勉強会を開いた。三回目は、25日に開催するシンポジウムで発表する内容に関連する予備知識を習うため、事前勉強会を開き、シンポジウム当日の下準備および、注意事項と流れの説明を行った。四回目は、乙女ゲームの仕組みやシステムを深く理解するため、ゲームコンテンツを制作する際によく使うアプリケーションと技術を紹介し、実践に操作してみた。五回目は、ジェンダーや分析哲学などの視点から乙女ゲームにある表象について検討を行った。六回目は、今年度の活動を振り返り、一年間の研究成果と今後の課題をまとめた。

成果及び今後の課題

 本プロジェクトの成果として以下の点が挙げられる。
 2017年度の研究活動を通じ、メンバーのそれぞれの母国にある国際的な事例を用い、乙女ゲームという表象を、社会的・ジェンダー的・哲学的・教育学的などの視点で見ることによって、デジタルコンテンツと社会現象を解釈し、理解することが深めたられた。また、シンポジウムで、韓国の事例に中心し、ゲームが社会と人間への政治的な影響とその影響を働いているゲームの仕組みについても深く考えられた。今後の課題として、乙女ゲームの他に、他のジャンルのゲームが社会や人間への政治的な影響について検討することであると考えられる。

構成メンバー

焦 岩(表象領域・2014年度入学)
佐草 智久(公共領域・2013年度入学)
劉 雨瞳(表象領域・2016年度入学)

アジアの精神障害者の自助活動研究プロジェクト(2017年度)

院生代表者

  • 伊東香純

教員責任者

  • 立岩真也

企画目的・実施計画

[目的]本研究プロジェクトの目的は、精神障害者の自助活動においてその活動のリーダーを育てるための研修の構造化を試みることである。
[内容]アジアには、コミュニティに設置された小さな檻に閉じ込められたり木に縛りつけられたりしている精神障害者がいる。かつて日本にも類似の私宅監置があり、この監置の状況の悲惨さから患者の精神科病院への移送が進められたが、それが現在では長期的な非自発的隔離に至っている。それぞれの地域の精神障害者は、その地の社会的文化的状況に合わせて自分たちを抑圧する実践とは異なる考え方に基づくオルタナティブな実践をおこなってきた。このような異なる状況に応じた実践についての情報を共有し、その共通点から精神障害者の自助活動のリーダーとしてアジア域内で活動するために必要な資質を明らかにする。
[方法]アジアで自助活動をおこなう精神障害者を講師として招聘して研究会を開催する。
[意義]精神障害者の運動についてのこれまでのほとんどの研究は、精神医療体制のあったことある欧米の運動を対象としてきた。これに対し本プロジェクトには、精神医療が普及していない地域の精神障害者の活動を明らかにし、そこからこれまで不利益を被ってきた本人たちの手でそのオルタナティブの実践を築いていくことに資するという意義がある。

活動内容

日時:2017年11月22日(水)・23日(木)
会場:立命館大学大阪いばらきキャンパス

◆22日(水)13時~16時(参加人数:約20名)
「精神障害者のピアサポートに関する各国からの報告」
◇13:00~ Chintha (Sri Lanka) ◇13:30~ Tien and Sissy (Taiwan) ◇13:50 Linus and Frank (China) ◇14:30~ Vincent and Susan (HongKong) ◇14:50~15:10 Waqar (Pakistan) ◇15:10~ Patcharin and Win (Thailand) ◇15:30~質疑応答

◆22日(水)18時半~21時(参加人数:約35名)
ワークショップ「オープンダイアローグ――アジアでのひろがり・ふくらみ、そして新たな対話を聴く!」
◇18:30 開会の挨拶 ◇18:40 講演――インドの取り組み(講師:Bhargavi Davar・インド) ◇19:00 ワークショップ(楽器を使ったオープンダイアローグの体験) ◇20:30 意見交換 ◇21:00 閉会の挨拶

◆23日(木)13時~18時(参加人数:約30名)
公開学習会「アジアにおけるピアサポート実践とシステム」
◇13:00 挨拶 ◇13:10 報告――藤井千代(国立精神神経研究センター)、外務省 ◇14:00 講演「アジアにおけるピアサポート実践」:Bhargavi Daver(TCI-Asia) ◇15: 00 指定発言:Yeni Rosa Damayanti(インドネシア)・Wiriya Tangpanyawong(タイ) ◇16:00 フロア発言 ◇17:00 閉会 ◇ 18:00 懇親会

成果及び今後の課題

◇国際的な活動を牽引するリーダーを育成するための研修カリキュラムを作成した。
◇SDGs、アジア太平洋障害者の10年、障害者権利条約、実際のアジアの精神障害者の状況と取り組みをまとめた。

構成メンバー

伊東香純
桐原尚之
谷口俊恵
寺前晏治

存在論的美学研究会(2017年度)

院生代表者

  • 根岸貴哉

教員責任者

  • 竹中悠美

企画目的・実施計画

 本プロジェクトは、昨年度の「芸術経験と作品存在の哲学的解釈学研究」研究会から継続している研究会である。本研究会の目的は、哲学的・美学的なテクストの読解を通して、哲学史や芸術学への知識を深めることにある。そのために、上倉庸敬先生を招聘し、議論と講読を進める。

活動内容

・第1回研究会
2017年 11月 22日(水)18時30分~21時00分
場所:衣笠キャンパス究論館プレゼンテーションルームB
内容:ジルソン『絵画と現実』における「1-3 現存と現前」(pp.43〜65)について、講読をすすめた。当該箇所では、おもに絵画作品と音楽作品を区別し、比較しながら芸術作品の現前性と現存性についての議論が中心であった。

・第2回研究会
日時:2017年 12月5日(水)18時00分 ~ 21時00分
場所:衣笠キャンパス究論館プレゼンテーションルームA
内容:前回に引き続き、上倉先生を招聘して、エチエンヌ・ジルソン『絵画と現実』における現存(existence)「現存と現前」についての議論を、フォルマとマテリアという二つの側面から検討した。

・第3回研究会
日時:2017年 1月 24日(水)  18時 00分 ~  20時 30分
場所:衣笠キャンパス究論館プレゼンテーションルームC
内容:上倉先生を招聘して、エチエンヌ・ジルソン『絵画と現実』における「2 個体性」および「2-1質料因」(pp.68〜85)について、講読と議論をすすめた。

・第4回研究会
日時:2018年 1月 31日(水)  17時 00分 ~  19時 30分
場所:衣笠キャンパス究論館コミュニケーションルームC
内容:上倉先生を招聘して、『絵画と現実』における「質料因」について、英語版とフランス語版を確認しつつ、議論を行った。また、これまでの絵画と現実性の問題の具体例として、ルーヴル美術館が所有するヤン・ファン・エイク《宰相ロランの聖母》の解説映像を鑑賞した。

・第5回研究会
日時:2018年 2月 23日(土)  18時 00分 ~  20時 30分
場所:衣笠キャンパス創思館404・403教室
内容:上倉先生を招聘して、これまで見てきた絵画作品の様態の具体例として、「ダ・ヴィンチ ミステリアスな生涯」というレオナルド・ダ・ヴィンチの作品を具体例とした映像を鑑賞し、理解を深めた。

成果及び今後の課題

 今年度の本研究会では、昨年度に引き続き、エチエンヌ・ジルソン『絵画と現実』の講読を進めた。本書は、哲学の手法を用い、絵画を考察するためのものであり、芸術経験を哲学的に考察することを目的とする本研究会の趣旨に合致していた。また、絵画と音楽の比較や、絵画における運動性の問題などを取り上げている同書は、各参加メンバーの興味、関心や専門に近しい。つまり、本書を通じ、哲学的な論点を背景にしながら、各メンバーの専門分野を議論することにより各自の研究を発展が期待できる点において適していたからである。議論を通じて、ディスカッション能力の向上や各メンバーの専門分野への応用だけではなく、テクストの読解自体や、正しいとされる読解を通して理解を深めることができた。とくに、邦訳だけではなく、英語、フランス語などの原典にあたり、言及されている書物についても検討したことなどは、テクストへ対して深く考究できたと言えるだろう。
 しかし、講読の速度が遅かったことは、昨年度から引き続く課題である。

構成メンバー

根岸 貴哉
向井 駿佑
焦 岩
忠岡 経子
西澤 忠志
森 敬洋

生命倫理研究会(2017年度)

院生代表者

  • 安田智博

教員責任者

  • 小泉義之

企画目的・実施計画

 本研究会は、人の生命(生死)をめぐる問題に関する先行研究を取り上げ、倫理的観点から検討することを目的としている。今年度は、博論執筆中のメンバーの研究発表に合わせて実施した。こうした他者との議論を通じて、新たな方法論が展開されることも考えられる。ここに、本研究会の存在意義があるといえよう。

活動内容

日時、場所:2018年2月28日、14:00-17:00、究論館プレゼンテーションルームB
内容:坂井めぐみの博士論文の草稿検討会

成果及び今後の課題

 今年度は計1回の研究会を行なった。その内容は博士論文の進捗状況を発表し、議論したものである。発表者は、その後の執筆に有用な視座が与えられた。そして、研究会で博士論文の発表を聞くことで、参加者も刺激を得ることができた。
 今後も引き続き参加者が相互に刺激を与え合い、各々の研究を進捗させる一つの拠点として研究会を位置づけていきたい。

構成メンバー

髙木 美歩
坂井 めぐみ
篠原 眞紀子
北島 加奈子
三浦 藍
笹谷 絵里
住田 安希子
安田 智博