オンラインワークショップ「ロックトインを常態として生きる withコロナ社会研究プログラムの成果から」

日時・場所

3月28日(日)15:30開場 16:00開始 19:00終了予定
詳細はこちら:https://www.ritsumei-arsvi.org/news/news-3542/
お申し込みはこちらから:https://tinyurl.com/y74fv28h
会場:オンライン(zoom)
参加費:無料 
*情報保障が必要な方のために文字通訳が入ります

趣旨

 このワークショップは、「ロックトイン・シンドローム(LIS、閉じ込め症候群)」の人びとの生きられた経験を明らかにするための国際プロジェクトの一部です。
 多くの人にとって、LISというのは馴染みのない病名(症候群名)でしょう。これは、脳の障害や病気(たとえば、筋萎縮性側索硬化症(ALS))が原因となって、身体が動かず、言葉も出なくなった状態を指しています。ただし、全身が麻痺していても、五感と認識力は冒されておらず、目の動きとまばたきで意志を伝えることはできます。
 企画者の一人であり、LISとなった母を見送った経験のある川口有美子は、かつて「ALSの人の話は短く、ときに投げやりなようでもあるけれども、実は意味の生成まで相手に委ねることで最上級の理解を要求しているのだ」と述べたことがあります(『逝かない身体』)。たしかに、ここで紹介する一つ一つの語りは長くはありません。もちろん、その理由が障害にあります。
 けれども、コミュニケーションすることの「困難」は「不可能」を意味しません。聴き手が諦めない限り、短い語りも豊かで深い相互作用を生み出すことができます。それが、この国際共同研究の出発点でした。ここでは、そうした人びとが、自らの身体の状態と自らの棲まう世界をどのように経験しているかを、アンケートやインタビューで明らかにする国際共同研究の成果の一部を紹介します。
 そして、このワークショップそのものは、研究に留まらない一つの実践として、LISの人びと自身が時間をかけて一文字一文字を入力した語りを紹介し、ゆったりとしたコミュニケーションの場を生み出すことを目指しています。
 さらに、日本での調査では、コロナ禍についての問いも追加しました。そこからは、ウィズコロナ社会を生きるLISの人びとだけの経験に留まらず、「脆弱性」を有するとされてきた人びと——病者・障害者・高齢者など——の姿も見えてくるでしょう。
 コロナ禍は、外出の難しい状況の中で工夫しながら日々を過ごし、人工呼吸器の必要性を心配する生き方を、多くの人びとにとってリアルなものとしました。しかし、ここで強調したいのは、それが、ある人びとにとっては緊急事態や非常事態ですが、別の人びとにとっては生活の常態に過ぎないということです。ウィズコロナ社会での「生きるのに忙しい」生き方を指し示す先達に耳を傾けることから、始めることにしましょう。

プログラム

  • 第1部
  • 16:00~16:15 開会挨拶、趣旨説明(立命館大学生命科学部 姫野友紀子)

    16:15~16:35 「ロックトイン・シンドローム入門」(立命館大学先端総合学術研究科 美馬達哉)

    16:35~17:05 「ロックトインで経験する身体と時間」(「withコロナ社会での持続可能なケア」調査中間報告1)

    17:05~17:25 「スペインとフランスでロックトイン・シンドロームと共に生きる人々の一人称の語り:人びとは何を語るのか、“First-person narratives of people living with LIS in Spain and France: What do they talk about?”」(Rovira i Virgili University Lina Masana)(通訳あり)

    17:25~17:35 休憩(10分)

  • 第2部
  • 17:35~17:55 「ロックダウンのなかのロックトインの経験」(「withコロナ社会での持続可能なケア」調査中間報告2)

    17:55~18:55 全体討論
    ファシリテーター 川口 有美子|NPO法人ALS/MNDサポートセンターさくら会副理事長/事務局長
    調査被験者の人びとからの追加意見と調査へのフィードバック

    指定発言 伊藤 道哉|日本ALS協会副会長、中西 正司|全国自立生活センター協議会副代表、村上靖彦|大阪大学人間科学研究科

    コメントと総括 Fernando Vidal|ICREA/Rovira i Virgili University

    18:55~19:00 閉会挨拶 立命館大学先端総合学術研究科 美馬達哉

主催等

主催:立命館大学「withコロナ社会での持続可能なケア」研究グループ
共催:立命館大学生存学研究所、NPO法人ALS/ MNDサポートセンターさくら会
後援:立命館大学先端総合学術研究科

本ワークショップは挑戦的研究(萌芽)「マイノリティアーカイブの構築・研究・発信:領域横断的ネットワークの基盤創成」(19K21620、代表:美馬達哉)の支援を受けています。
連絡先: lismimahimeno@gmail.com

「ゼロ世代」WEBコンテンツ保存プロジェクト

院生代表者

  • 向江 駿佑

教員責任者

  • 竹中 悠美

概要

 本プロジェクトは、2019年度より本学アート・リサーチセンターの「日本文化DH拠点研究拠点形成支援プログラム」の一環として継続している「「ゼロ世代」WEBコンテンツ保存プロジェクト」(ゼロプロ)を土台とし、その成果の応用の観点から異なる方向で発展させるものである。ゼロプロでは、今日のオンライン・エンタテインメントにおいて不可欠なものとなっているユーザーの創造的参加の源流を、インターネットの一般利用が普及した1995年頃から2000年代にかけての自主制作ゲーム・動画・アートなどとその批評言説にもとめ、それらのメタデータおよび現物の保存を試みてきた。その成果として現在までに約750タイトルのメタ・データベースを作成している。
院生プロジェクトとしては、①今年度さらに拡充予定の上記データベースについて国内外の研究者との共同研究の可能性を開くことと、②WEBコンテンツとしてのゲーム、動画、ドラマやアニメの歴史研究および批評に向けて、収集データの分析と応用の段階に進むための成果公開や議論の場の構築を目指すものである。①では韓国や中国でのコンテンツの収集及び研究者との交流をはかり、②では対面ないしはオンライン会議でのワークショップを開催し、得られた成果を学会等での報告やアートリサーチセンターのサーバーにアップロードするかたちで公開することを目的とする。

活動内容

 公開データの作成に向け、今年度は収集したコンテンツのメタデータ化の範囲や手法の検討を中心に、設計部分に重心をおく。疫病の蔓延により留学生メンバーの入国が大幅に遅れる見込みであることから、キャンパス閉鎖期間である春学期はZoomなどで打ち合わせを重ねつつ、各自担当国のWeb文化としてのゲーム、動画、ドラマなどにかんする資料収集をおこなう。ただし新入生の張にかんしては修士論文の構想を固めることを優先するため、今年度はコンテンツの収集については補助的な役割とし、作業手順の共有や定期ミーティングへの継続的な参加によるプロジェクトの運営方法の理解に主眼をおく。
 秋学期以降は、「ゼロ世代」の日韓それぞれの作品群とローカル・コンテクストについての研究会を開催し、双方の分析についての比較検討と統合をおこなう。また、メディア研究にかんする情報は作品現物とはことなり保存や信頼性の観点からいまだ紙媒体の参照が必須であること、本研究にかんするマルチメディアな展覧会が開催された場合には現地調査も必要となることから、国会図書館とIAMAS、ICC、および可能であれば訪問時期に開催される各種メディア芸術関連イベントの調査をおこなう。研究成果は8月と2月に開催されるアート・リサーチセンターでの報告会のほか、例年3月頃におこなわれる日本デジタルゲーム学会等、メンバーの参加する各学会での報告を予定している。

成果及び今後の課題

 上述のとおり本プロジェクトはアート・リサーチセンターの同名プロジェクトと連携していることから、8月の「ARC Day 2020」および2月の「文部科学省国際共同利用・共同研究拠点「日本文化資源デジタル・アーカイブ国際共同研究拠点」・ 研究拠点形成支援プログラム 研究プロジェクト/2020年度成果発表会」にて成果を報告したほか、向江・森・ムンの共著で『アート・リサーチ』21号に研究ノート(「WEBコンテンツから〈ゼロ年代批評〉を逆照射する——クリエイションとジェンダーを中心に」)を投稿した(3月刊行)。さらに本プロジェクト単体での活動として、21年2月25-6日にかけて、国立国会図書館およびICCにおいてデジタルコンテンツの収集・管理・公開にかんする現地調査をおこなった。とくに前者においては、職員でデジタルアーカイブ学会の会員である井上那智氏をはじめとする関係者各位にインタビューや閉架書庫を含む館内の案内などでご協力いただいた。さらに3月には、デジタルゲーム学会において向江が報告をおこなった。今後は先送りにした中国語圏のコンテンツの追加や、システム整備の関係でペンディングされているアート・リサーチセンターのサーバー上でのデータベースの公開を実現したい。

構成メンバー

向江 駿佑
森 敬洋
ムン ゼヒ
張 芸馨