「日中社会の生と死」研究会(2022年度)

院生代表者

  • 岳 培栄

教員責任者

  • 立岩 真也

概要

 近年、日中両国とも多死社会を迎えている。本研究プロジェクトは、異なる専門領域の研究メンバーを集め、日本と中国の社会を中心に生と死にまつわる問題群を扱う代表的な文献を精読したり、自らの研究テーマと関わらせながら議論を行ったりすることによって、基礎知識を深める場であり、新たな視点を生み出すコモンズの創出を目的としている。メンバーの研究関心は、死別のグリーフや、宗教による終末期ケア、献血など多岐にわたっており、加えて構成は多国籍であり、互いに馴染みのある社会の状況を分かち合うことが可能となる。このように、研究分野および日中社会の共通性と相違性の交錯を通し、各自の研究の遂行に大きな役割を果たすことが期待できる。
 内容と方法は以下のように想定する。①研究メンバーのみを対象とする勉強会、読書会を月に一回程度で行う。勉強会は、担当者から自らが進めている研究を発表してもらい、メンバーたちがコメントするという形で進行する。読書会は、古典あるいは最先端の文献を選定し、メンバーたちが精読して討論する形で進める。②日本と中国で活躍している研究者を招いて、講演会を企画する。現時点では、2回の講演会を行う予定である。講演会では、事前に設定した話題に関して、講師が2時間程度の講義を行い、その後メンバーとの交流時間を設ける。

活動内容

①勉強会
 7月10日(日)13:00―16:00 会場:究論館プレゼンテーションルームA
 現時点で取り組んでいる研究テーマおよび関心のある死生に関わることを主題として発表し、議論を交わした。
②先端研院生プロジェクトスタートアップ報告会
 7月23日(土)―7月25日(月) 会場:創思館303
 ブースを出し、活動内容や今後の予定について報告した。
②読書会
 8月6日(土)14:00―17:00 会場:究論館プレゼンテーションルームA
 講読文献:『現代社会を宗教文化で読み解く 比較と歴史からの接近』櫻井義秀・平藤喜久子編著,2022,ミルネヴァ書房.
 指定した講読文献を事前に精読したうえで、読書会で各章の内容のまとめを分担のかたちで発表した。そして、論点を立て、議論を行った。
③オンラインによる文献紹介
 講演会準備の一環として、招く予定の講師の著書を紹介した。SNSを通じて、随時コメントし、心得を分かち合った。
 紹介した文献:
 『これからの仏教 葬儀レス社会 −―人生百年の生老病死』櫻井義秀著,2020,興山舎.
 『東アジア宗教のかたち 比較宗教社会学への招待』櫻井義秀著,2022,法蔵館.
 『統一教会 ――日本宣教の戦略と韓日祝福』櫻井義秀・中西尋子著,2010,北海道大学出版会.
④講演会
 テーマ:現代日本の葬送とグリーフ
講師:櫻井義秀(北海道大学文学院教授)
開催形態:現地(立命館大学衣笠キャンパス)+ZOOMによるオンライン配信
開催日時:2022年11月12日(土曜日)14:00ー16:30
 予定プログラム
14:00―14:05      挨拶、講師紹介
14:05―16:05      櫻井先生の講演
16:05―16:30      質疑応答
16:30          終了予定
 講演は対面+Zoomによるオンライン配信のハイブリッドで開催した。当日の参加者は43名(対面7名、オンライン36名)であった。講演会には、本研究会のメンバーをはじめ、立命館大学の他研究科の学生、他大学の学生、医療関係者、宗教団体関係者など幅広い方々にご参加いただいた。14時〜16時に、講師の櫻井氏は講演を行った。まず、現代日本社会の高齢者のライフスタイルの変化の説明を通じて、高齢社会におけるグリーフケアの重要性を明らかにした。次に、日本における葬送の歴史を踏まえながら、寺院仏教と葬送儀礼の未来について論じた。16時〜16時30分の質疑応答では、コロナ禍における葬送の変遷とこれからのあり方を中心に議論を深めた。

成果及び今後の課題

 今年度は、勉強会と読書会を2回、講演会を1回実施した。勉強会では、それぞれ4領域に所属しているメンバーたちが自ら取り組んでいる研究を分かち合い、視野を広げることができた。特に死生にまつわる議論を通じて、社会学や文化人類学や哲学など、さまざまな分野が死生の研究をどのアプローチでどのように展開しているのかを概観することができた。読書会では、メンバー10名の分担発表により、効率的に大量の文献が講読することができた。講演会の開催により、読書会で講読の際に議論したものを、招聘した講師と直接に交流することができて、知識を深めることが実現できた。
 しかし、当初予定していた「月一回」の勉強会・読書会が、構成メンバーのさまざまな事情により、2回しか実施することができなかった。これから構成メンバーが主体的に読書会に参加できるような環境づくりを行うことは、今後の課題としたい。

構成メンバー

岳培栄
談拉成(TAN Lacheng)
陳可為(CHEN Kewei)
楊雅琳(YANG Yalin)
王裕森(WANG Yusen)
黄楚杉(HUANG Chushan)
範宸宇(FAN Chenyu)
何錦雲(HE Jinyun)
岳恒萱(YUE Hengxuan)
馮雲龍(FENG Yunlong)

ソーシャル・プラクティスとアート研究会(2022年度)

院生代表者

  • 藤本 流位

教員責任者

  • 竹中 悠美

概要

 本研究の目的は、現代アートあるいは社会学の文献を用いた講読会を行うことによって、近年にはより社会的な実践として問われる現代アートのあり方についての知見を深めることである。
 具体的な内容については以下の通りである。2022年6月から2023年2月にかけて美術分野に関連した研究を行なうメンバーによる月例の研究会を実施する。研究会では文献の講読に加えて、レジメの制作を行ない、発表形式によって講読会を進めていく。また、秋学期以降からは文献講読に加え、関西圏の美術館・芸術祭を対象としたフィールドワークを実施し、その調査報告を行なっていく。
 本研究の意義は、表象および公共領域からなる学際的な院生メンバーによって、21世紀以降の現代美術において注目されている「ソーシャル・プラクティス」としての現代アート作品とその理論についての議論を行なう点にある。そこでは、各領域のなかで前提とされる理論や事例を共有することによって、専門分野だけにとどまることのない幅広い知見の獲得を狙っていく。また、研究会におけるレジメ制作・調査報告など、研究発表において必須となる実務的な演習を通して、研究者としてのスキルアップを目指すことも意義の一つである。

活動内容

第一回研究会
日時:2022年6月25日(土)
場所:究論館プレゼンテーションルームC
内容:研究会の指針と今後の調整事項の相談。本研究会が問題とする「ソーシャル・プラクティス」としての現代美術の実践についての事例とその理論を共有し、そのさらなる具体的な先行研究として2022年に邦訳刊行されたニコラ・ブリオーの『ラディカント』の講読を行なっていくことを説明した。
第二回研究会
日時:2022年7月13日(水)
場所:究論館プレゼンテーションルームC
内容:『職業は専業画家』の著者であり、ギャラリーに所属することなく専業画家として日本画を制作する福井安紀さんをお招きし、実践者としての立場から作品制作や経済活動に関するお話をしていただいた。日本画の歴史的な変遷のなかで自身の作品がどのように制作されているのかといった方法論のほか、実際に作品を購入していただくための戦略などをお聞きした。
先端総合学術研究科院生プロジェクトスタートアップ報告会
日時:2022年7月23日(土)~25日(月)
場所:創思館303、304教室
第三回研究会
日時:2022年8月4日(木)
場所:Zoom
内容:ニコラ・ブリオー『ラディカント』序論〜第一部までの講読。1990年代以降のグローバリゼーションの到来による現代美術の変化のなかで、問題視される西洋主体の「多文化主義」的なイデオロギーによる特異性の還元に対して、ブリオーによって主張された「オルターモダニティ」の概念を中心とする議論を行なった。ここでブリオーは対象の特異性を「翻訳」することの重要性を説くが、講読会のなかでは、キュレーターのブリオー自らによる「翻訳」の事例が記述されていないことへの批判がなされた。
第四回研究会
日時:2022年8月30日(火)
場所:Zoom
内容:ニコラ・ブリオー『ラディカント』第二部〜訳者解説までの講読。文化的特異性の還元に抵抗する事例として、トーマス・ヒルシュホーンやティノ・セーガルといったアーティストが参照され、素材の乱雑な扱われ方、行為そのものの作品としての提示など、21世紀の現代美術に特有の実践が論じられている。これに対して講読会では、研究会メンバーそれぞれの見地から、この論旨に沿った具体的なアーティストを事例として議論の俎上に乗せながら、検討を進めていった。そのなかでは昨年度に東京にて展覧会が開催されていたクリストなどが上げられた。
第五回研究会
日時:2022年9月30日(金)
場所:プレゼンテーションルームA + Zoom
内容:研究会メンバーであるKim Kyoが制作に参加した映像作品《Sol in the Dark》(監督=Mawena Yehouessi)の視聴、検討会を実施した。同作品では、フランス国内を中心に波及するマイノリティのアイデンティティ、若い移民者世代の問題意識をテーマに、デジタル文化と、「LASCAR」と呼ばれるフランスのスラムを拠点に活動する若者に焦点が当てられている。検討会では、意図的に情報過剰な映像といった制作の手付きに対する見解や、映像内容を踏まえて、マイノリティの人々によってコミュニティが形成される場合、それ以外の人々が意図的に排除されるような傾向にあるといった指摘がなされた。
第六回研究会
日時:2022年11月18日(金)
場所:国立京都国際会館
内容:アートフェア「Art Collaboration Kyoto」へのフィールド調査。
第七回研究会
日時:2022年12月11日(日)
場所:究論館プレゼンテーションルームA + Zoom
内容:前回のフィールド調査内容の報告、および検討会。それぞれの調査者がフェアにて展示されていた作品をピックアップするというかたちで報告を行なった。また、全体を踏まえた検討会のなかでは、日本国内のギャラリーが親交のある海外のギャラリーを招聘し、コラボレーションというかたちでそれぞれのブースを展開するアートフェアとしての特性、海外のアートフェアの傾向との対比などから、アートフェアとして作品を見ることへの理解を深めた。

成果及び今後の課題

 本研究会にて実施した講読会によって、『ラディカント』を各領域、各参加者の視点から、検討し、内容の理解を深めることができた。さらに、映像作品の視聴やフィールドワークなど、より実践的な事例を扱った検討によって、批評的な作品の鑑賞と議論の経験を積むことができた。しかし、フィールド調査に関しては一度の実施に留まってしまったため、次年度以降の研究会ではより多くのフィールド調査を実施することが望ましいと思われる。

構成メンバー

藤本 流位
柴田 惇朗
Kim Kyo
髙畑 和輝
中川 陽平
西本 春菜

美学・芸術学基礎文献講読会(2022年度)

院生代表者

  • 中川 陽平

教員責任者

  • 竹中 悠美

概要

 本研究会の目的は、美学・芸術学に関する文献の講読会と講師によるフィードバックと講義を通して、これまでギリシア哲学から「美学」の誕生を経て、近代までたどってきた美学・芸術学史の概観を把握し、基礎的・理論的な知識・研究力を養うことである。
 具体的な内容及び実施内容としては二つに分けられる。まずは、7月、8月に基礎的な知識を付けるために月に一回の講読会を開催し、それぞれの担当を決めレジュメを用意したうえで発表をする。文献としては田之頭一知(2017)『美と藝術の扉』萌書房、小田部胤久(2020)『美学』東京大学出版会を予定している。その他の文献については第一回講読会にて研究メンバー自身の研究内容と照らし合わせたうえで決定していく。
 講読会を通して美学・芸術学史の概観を把握したのち、2月までの毎月、美学を専門とする講師(京都大学の杉山卓史准教授、大阪芸術大学の田之頭一知教授等)を学外から招聘し、より専門的な講義を行っていただく。
 本講読会は美学・芸術学、またはその周縁で研究する学生が、美学会をはじめ各学会への参加、発表の際に必要となる基礎的な知識や研究力を養うという点で意義がある。またレジュメを作成し発表するということは今後の研究発表において基礎的な技術となるため、実践を通して研究者としてのスキルアップも試みる。

活動内容

2022年5月~7月 文献講読を中心とした月例研究会の実施。

第一回講義
日時: 2022年 10月27日(木) 16:00~18:30
場所: Zoomオンライン会議
内容: 本講演会では美学・芸術学に関する知識を深めることを目的とし、京都大学の杉山卓史准教授を招聘し、ヨハン・ゴットフリート・ヘルダーの思想を詳細にご紹介いただいた。16時からオンラインにてプログラムを開始し、約1時間半の講演をしていただいた後に学生からの質問とそれを起点としたディスカッションを1時間ほど行った。

第二回講義
日時: 2022年 12月5日(月) 17:00~19:30
場所: Zoomオンライン会議
内容: 大阪芸術大学教授の田之頭一知先生に、ご著書の『美と藝術の扉―古代ギリシア、カント、そしてベルクソン―』(きざす萌書房、2017年)におけるベルクソンの項を中心に解説いただき、そのうえで当日参加した院生メンバー3名とのディスカッションを行った。ベルクソンの中心概念である「持続」が主な議題となったが、ベルクソンの理論によって芸術を理解することよりもむしろ、諸芸術の側からベルクソンの「持続」を再度問い直すような刺激的な議論を紹介いただいた。

第三回講義
日時: 2022年 12月22日 (木) 13:00~15:00
場所: Zoomオンライン会議
内容: 本講読会では、前回の講義に引き続き京都大学の杉山卓史准教授を招聘し、杉山先生の博士論文を講読文献として質問やディスカッションを行った。カントやヘルダーの思想に関する知見を深めるとともに、博士論文の構想を練り上げていく過程など、これから博士論文を執筆する際に参考になるご意見をご教授していただいた。13時から開始し、15時まで論文の内容に関する質問や、博士論文を執筆するということに関しての質問をし、議論を発展させた。

第四回講義
日時: 2022年12月26日(月) 
場所: 究論館プレゼンテーションルームA
内容: 大阪芸術大学教授の田之頭一知先生を再度お招きし、前回のベルクソンの議論を念頭に置きつつ当日参加した院生メンバー3名と、各々の研究課題に応じたベルクソンの理論の関係性についてディスカッションを行った。そこでは引き続き、諸芸術の側からベルクソンを再度問い直すといったように、ベルクソンの理論をある意味で現代の芸術に合わせた形に応用するといった仕方を模索するものであった。加えて音楽美学上の重要な問題である「沈黙」という概念について取り扱い、導入とした。西洋思想史上のそれを踏まえつつ、ジゼル・ブルレの「沈黙」、ジョン・ケージの「沈黙」、武満徹の「沈黙」と思想家・作家たちの「沈黙」概念について議論した。

成果及び今後の課題

 本研究会では、カント、ヘルダー、ベルクソンの美学思想に関して理解を深めることができたと同時に、先生方との議論によって参加メンバー自身の研究に活かせるような知識を獲得することができた。
 翻って、当初予定をしていた例会での参加メンバーによる発表まで手が回らなかったため、今後の課題としたい。

構成メンバー

中川 陽平
藤本 流位
高畑 和輝
西本 春菜
鶴見 亮輔
勝又 栄政
北村 公人

映画・テレビドラマ映像分析研究会(2022年度)

院生代表者

  • 荒木 慎太郎

教員責任者

  • 竹中 悠美

概要

 本研究プロジェクトは、近年研究され始め、活発に研究されるようになったテレビドラマに焦点を当てる。
テレビドラマ制作の技術がどのように映画から受け継がれ、またテレビドラマが独自の価値を獲得し映画とは違うものとして成立していくのかを検討し、映画・テレビドラマを脚本や監督・演出といった制作の面から分析する能力を向上させることを目的とする。
 本研究会は映像作品を鑑賞しディスカッションを行うことが基本的な様式となるが、ゲスト講師を招聘し、専門的な分野からの意見とご教授をいただくことで、映像作品を理論・実践の面から検討する。ゲスト講師は映画美学と映画実践に精通する大阪大学名誉教授の上倉庸敬先生を予定し、制作分野など他のゲスト講師の方にも交渉中である。
 また、京都という都市は映画と縁深く、東映撮影所を始めとする撮影所と撮影地が多く存在する。近年は実写だけでなくアニメにおいても京都は多く描かれており、映像作品における京都の価値は大きい。映像作品の検討に加えて、撮影所や撮影地に行き、実際に目で見て観察することで、切り取られた映像の中の京都と実際を検討することも行いたい。
 本研究会の意義は、映画とテレビドラマを、脚本や監督の作風といった制作の面から検討することであり、実際に撮影所や撮影地に行ってシーンやカット、ショットを検討する試みは新たなディスカッションの糸口となるのではないか。

活動内容

第一回研究会
日時:2022年8月19日(金)16時~19時
場所:創志館312
内容:上倉庸敬先生(大阪大学名誉教授)を招聘し、デヴィット・ボードウェル『小津安二郎 映画の詩学』第一章の読書会を行った。継続して購読を行うために、整理を行いながら、第一章の精読を行った。
第二回研究会
日時:2022年9月16日(金)16時~19時
場所:創志館312
内容:上倉庸敬先生(大阪大学名誉教授)を招聘し、デヴィット・ボードウェル『小津安二郎 映画の詩学』第一章の読書会を行った。ボードウェルの指摘する、日本らしさ、革新性についての理解とディスカッションを行い、上倉先生にご教授をいただいた。カットの比較検討も行い、家屋の奥まで詳細に映されるショットや「触れる」という主題の重要性が浮かび上がった。
第三回研究会
日時:2022年10月28日(金)16時~19時
場所:創志館312
内容:上倉庸敬先生(大阪大学名誉教授)を招聘し、デヴィット・ボードウェル『小津安二郎 映画の詩学』第二章の読書会を行った。ボードウェルの指摘する、日本らしさについての検討を行った。小津安二郎は保守的な監督なのか、革新的な監督なのか、ボードウェルの小津論を読み進めながら、上倉先生にご教授をいただき、小津映画についての理解と、ショットについての理解を深めた。
第四回研究会
日時:2022年11月18日(金)16時~19時
場所:創志館408
内容:上倉庸敬先生(大阪大学名誉教授)を招聘し、デヴィット・ボードウェル『小津安二郎 映画の詩学』第三章の読書会に向け、小津安二郎監督『戸田家の兄妹』(1941)を視聴し、ディスカッションを行った。ボードウェルの指摘する日本らしさについての検討を行っていくために、上倉先生にご教授をいただき、小津映画とショットについての理解を深めた。
第五回研究会
日時:2022年12月16日(金)16時~19時
場所:創志館408
内容:上倉庸敬先生(大阪大学名誉教授)を招聘し、デヴィット・ボードウェル『小津安二郎 映画の詩学』第二・三章の読書会を行った。映画のスタイルと構造を中心に、映画を参照しながらディスカッションを行った。ボードウェルの指摘する規範や評価について、上倉先生にご教授をいただき、小津映画とショットについての理解を深めた。
第六回研究会
日時:2023年2月28日(金)11時~18時
場所:創志館408
内容:メンバーの関心のある作品や、研究対象となる映像作品を持ち寄り、鑑賞会とディスカッションを行った。映画『パルプ・フィクション』(1994) など、名作を改めて見ることで新たな気付きと議論が生まれた。また、テレビドラマ『スケバン刑事』(1985)を大画面で見ることで、テレビサイズというスクリーンに収めるための横幅の狭さを強く感じるとともに、そこから生じるセットの問題や、作られたショットの違和感についてもディスカッションを行った。

成果及び今後の課題

 本研究会を通じて、デヴィット・ボードウェル『小津安二郎 映画の詩学』で論じられている映像論(小津論)について理解を深めることができ、カットやショットに込められた意味を見つけ、それらに対する理解を深めるための貴重な機会となった。読書と合わせて、映像作品の鑑賞を行うことで、映像の持つ「感じる」という感性と物語の関係性を改めて認識し、理解を深めることができた。
 映像理論の理解を深めることに重点を置いたため、計画していた撮影所に行き、実際にシーンやカットを検討することはできなかった。メンバーの意見を取り入れながら、映画・テレビドラマという垣根にとらわれず、理解を深めることを目的とし、一定の成果を得られたが、メンバーそれぞれが、自身の研究分野と映像文化の関係性をより明確化し意識していくことで、研究会の質の向上が期待できると感じた。今後はメンバーの研究内容についても意見交換を行い、理解を深めながら、映画・テレビドラマについての理解を深め、実践も行えるように運営を行っていきたい。

構成メンバー

荒木 慎太郎
濱中 健太
嶋津 麻穂
西川 秀伸
宮内 沙也佳
張 芸馨

SOGI研究会(2022年度)

院生代表者

  • OUYANG Shanshan

教員責任者

  • 立岩 真也

概要

【目的】SOGI(Sexual Orientation and Gender Identity)とは、性的指向とジェンダー・アイデンティティのことを意味する。本研究会はSOGIの視点で幅広い課題を検討することを目指している。2022年度研究会の目的は、クィア・アクティビティにおいて、SOGIはどのように表象されているのかという課題を中心に、クィア理論、メディア分析、ディスアビリティ・スタディーズ、地域研究など多様な分野から考察することである。
【内容と方法】本研究会の内容および方法は3つの活動で構成される。
①読書会を開催し、クィア・アクティビティに関する文献・論文の輪読を行うことを活動の基本とする。その場、担当メンバーがレジュメを作って発表する。
②クィア映画祭、展覧会など関連イベントに参加し、その場で得た知識と自分なりの感想などを研究会で検討する。
③読書会で検討したテキストの著者、海外の研究者を招きして公開研究会を行う。
【意義】本プロジェクトは、多様な専門領域とSOGIの接点を探ることによって、コミュニティと社会運動研究に関心を持つメンバーは各自の研究を進捗させると考える。また、プロジェクトを通じて、海外の研究者との交流に促進する。

活動内容

(1)文献の講読と映画鑑賞

1 日時:2022年8月31日
内容:文献講読 千葉雅也,2018,「あなたにギャル男を愛していないとは言わせない──倒錯の強い定義」『意味がない無意味』河出書房新社,94-228.

2 日時:2022年9月30日
内容:文献講読 White, Francis Ray. “No fat future? The uses of anti-social queer theory for fat activism,” Queer futures: Reconsidering ethics, activism, and the political (2013): 21-36.

3 日時:2022年9月24日〜25日
内容:関西クィア映画祭に参加し、パートナーシップやエイジングを反映する『夫=夫』、同性を好きになったろう者のストーリーである『ジンジャーミルク』、トランスジェンダー の議論を集めた『ノー・オーディナリーマン』など作品を鑑賞した。

4 日時:2023年2月10日
内容:文献講読 Stockinger Arnaud, 2020,「Can Film Be Gay? : Re-thinking “Gay” as a Film Genre in Japanese Context」『国際文化学』 33:114-134; 映画『エゴイスト』を鑑賞した。

5 日時:2023年2月11日
内容:文献講読 三須祐介, 2021, 「戦争と「同志」叙事:大島渚『戦場のメリークリスマス』から明毓屛『再見,東京』へ」『立命館言語文化研究』 33 (1):97-110; 映画『戦場の メリークリスマス』を鑑賞した。

(2)公開研究会の開催
2023年2月12日に、「母/子それぞれが互いに綴る背反と和解、10年の軌跡」と題して、公開研究会を開催した。イベントでは、研究会メンバーである勝又栄政さんによる講演を通し、著書『親子は生きづらい── “トランスジェンダー”をめぐる家族の物語』執筆の経緯をはじめ、本書の内容をご紹介いただきつつ、「トランスジェンダーの子と親」の現状について、お話いただいた。その後、参加者とともに議論を深めた。
文献閲読:勝又栄政,2022,『親子は生きづらい── “トランスジェンダー”をめぐる家族の物語』金剛出版.

活動内容

 今年度は、SOGIはどのように表象されているのかという課題を中心に、クィア理論、メディア分析に関連する文献を講読し、それに関連する映画も鑑賞した。クィア・アクティビティの多様さを学習することができた。また、公開研究会を通じてトランスジェンダーに関わる議論や当事者の経験への理解も深めることができた。今後、学際的、国際的な研究会活動をしていくことを望んでいる。

構成メンバー

OUYANG Shanshan
長島 史織
QU Honglin
TAN Lacheng
宮内 沙也佳
勝又 栄政

活動歴

2021年度の活動はコチラ
2020年度の活動はコチラ
2019年度の活動はコチラ

これまでのパンフレット類

立命館大学大学院 先端総合学術研究科 パンフレット(2024年度版、2025年入学者用)

立命館大学大学院 先端総合学術研究科 パンフレット(2023年度版、2024年入学者用)

立命館大学大学院 先端総合学術研究科 パンフレット(2022年度版、2023年入学者用)

立命館大学大学院 先端総合学術研究科 パンフレット(2021年度版、2022年入学者用)

立命館大学大学院 先端総合学術研究科 パンフレット(2020年度版)

立命館大学大学院 先端総合学術研究科 フライヤー・ポスター(2019年度版)

立命館大学大学院 先端総合学術研究科 パンフレット(2019年度版)

立命館大学大学院 先端総合学術研究科 フライヤー・ポスター(2018年度版)

立命館大学大学院 先端総合学術研究科 パンフレット(2018年度版)

※クリックでパンフレット見開きPDFをダウンロード。

立命館大学大学院 先端総合学術研究科 パンフレット(2017年度版)

※クリックでパンフレット見開きPDFをダウンロード。

立命館大学大学院 先端総合学術研究科 フライヤー・ポスター(2017年度版)

立命館大学大学院 先端総合学術研究科 パンフレット(2016年度版)

立命館大学大学院 先端総合学術研究科 フライヤー・ポスター(2015年度版)

立命館大学大学院 先端総合学術研究科紹介パンフレット(2014年度版)

立命館大学大学院 先端総合学術研究科紹介パンフレット(2013年度版)

出版助成・研究支援制度紹介パンフレット(2013年度版)

出版助成・研究支援制度紹介ポスター(2013年度版)

Core Ethics vol.18

立命館大学大学院先端総合学術研究科
『Core Ethics』Vol.18 2022年

コアエシックス18号_表紙

目次 PDF<157KB>
奥付 PDF<46KB>


論文

警備業法制定前後期における労働組合弾圧主体の変遷
―労働組合資料を中心に―
岩﨑 弘泰 p.1
PDF<439KB>

戦時下音画理論の系譜
―今村太平とそのアニメーション音画理論の来歴―
王 琼海 p.13
PDF<522KB>

中国都市部における「農民工」の子どもの教育期待の格差構造
―戸籍制度による農民工身分効果をめぐって―
岳 培栄 p.27
PDF< 1MB>

治療の差し控えと中止におけるQOL と終末期の概念
柏﨑 郁子 p.39
PDF<39KB>

法科学における異同識別の基準の検討
―和歌山カレー事件の分析化学鑑定を中心に―
木村 祐子 p.51
PDF<388KB>

脳性麻痺に試された定位脳手術
小井戸 恵子 p.63
PDF<396KB>

事業内ホームヘルプ制度の再検討
―「委託方式」を中心に―
佐草 智久 p.75
PDF<878KB>

高次脳機能障害がどのようにしてわかるのか
―受傷の契機と本人の気づきに着目して―
澤岡 友輝 p.87
PDF<352KB>

「病いの意味」を巡る対立に医療者はどう向き合うのか
―A・クラインマンの説明モデルの考察から―
中井 良平 p.99
PDF<393KB>

在宅看護でマネジメントはどう扱われてきたのか
―看護教育カリキュラムの変遷より―
中西 京子 p.111
PDF<344KB>

力と身体
―ドゥルーズとニーチェ哲学―
濱中 健太 p.123
PDF<325KB>

目の見えない母親が子どもを「見る」経験とは
平田 恭子 p.135
PDF<399KB>

知的障害者の政治及び投票意識の実像
―当事者5 人の聴き取り調査から―
堀川 諭 p.149
PDF<394KB>

自らにとっての「救い」を見いだす実践
―中国新婦仔の家族・親族との関係に関わる生活史を中心に―
李 思航 p.165
PDF<476KB>


研究ノート

韓国の障害教員雇用政策
中村 雅也 p.179
PDF<396KB>


批評

武田俊輔著『コモンズとしての都市祭礼―長浜曳山祭の都市社会学』
(新曜社 2019 年)
片 平 深 雪 p.193
PDF<229KB>

メディアからの発信 2022年度
  • 立命館大学本学広報課で運営しているメディア「shiRUto」にて美馬先生の記事(「オンライン診療」はアフターコロナの標準になるか? 基礎知識を専門家が解説)が公開されました。
  • 小川さやか教授を中心に当研究科教員が担当した本学教養教育科目「超領域リベラルアーツ」の授業レポートが掲載されています。
    授業レポート#5「書くことと学問の未来:論文・エスノグラフィーを刷新する」(立命館大学教養教育

  • 本研究科の後藤基行講師の研究とコメントが、朝日新聞で紹介されました。
    〈光あれ 水平社宣言100年〉「コロナとハンセン病 情報不足の恐怖、個に敵意」(朝日新聞・京都版 2022年3月11日朝刊23面)

2021年|立命館大学大学院 先端総合学術研究科

2021年度 行事

2021年4月

  • 2日(木) 入学式
  • 4日(日) 先端研研究科別オリエンテーション
  • 6日(火) 春セメスター授業開始

2021年5月

2021年6月

2021年7月

  • 3日(土) 7月実施入学試験 試験日
  • 17日(土) 博士論文/博士予備論文構想発表会
  • 18日(日) 博士論文/博士予備論文構想発表会
  • 21日(水) 7月入試合否発表、9月入試出願開始
  • 26日(月) 春セメスター授業終了
  • 31日(土) 『コア・エシックス』投稿原稿検討会

2021年8月

  • 1日(日) 『コア・エシックス』投稿原稿検討会
  • 2日(月) 『コア・エシックス』投稿原稿検討会
  • 4日(水) 9月実施入学試験 出願締切

2021年9月

  • 12日(日) 9月実施入学試験 試験日
  • 26日(月) 秋セメスター授業開始
  • 29日(水) 9月入試合否発表

2021年10月

  • 2日(土) 学位授与式(博士)
  • 5日(火) 博士論文/博士予備論文構想発表会

2021年11月

2022年12月

2022年1月

  • 12日(水) 2月実施入学試験 出願締切
  • 24日(月) 秋セメスター授業終了

2022年2月

  • 6日(日) 2月実施入学試験 試験日
  • 9日(水) 博士論文/博士予備論文構想発表会
  • 24日(木) 2月入試合否発表

2022年3月

  • 26日(土) 学位授与式(博士)
阿部 朋恒(あべ・ともひさ)

阿部写真

領域

共生

職位

准教授

専門

文化人類学

担当科目

リサーチマネジメントI/リサーチマネジメントCA
基礎講読演習II/超領域講読演習CB
プロジェクト予備演習III(共生)
プロジェクト演習(共生)

業績

研究者学術情報データベース

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