2019年度先端総合学術研究科 オープン交流会

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2019年度先端総合学術研究科 オープン交流会では、第一線の研究者として活躍する先端研の修了生たちからご自身の現在の研究の状況について、お話しいただきます。どなたのご参加も歓迎いたします。「研究の先端にふれる、自分の未来がみえる。」

日時・場所

  • 2019年7月21日(日) 17:30~18:00
  • 衣笠キャンパス創思館カンファレンスルーム

講演スケジュール(予定)

  • 17:30-  講師 中倉 智徳氏 (生命領域:2010年3月修了)
          (千葉商科大学 人間社会学部 専任講師)
        「ハイパーメリトクラシーとタルドによる精神の量化について」
  • 18:00- 懇親会

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SOGI研究会

院生代表者

  • SHEN CHIN

教員責任者

  • Paul G. Dumouchel

企画目的・実施計画

【目的】SOGI(Sexual Orientation and Gender Identity)とは、性的指向とジェンダー・アイデンティティのことを意味する。本研究会はSOGIの視点で幅広い課題を検討することを目指している。2019年度研究会の目的は、性的少数者が対面する医療や福祉の現場で「誰がどんな困難を持っているのか」という問題意識のもとに、先行研究を整理した上で、これからの研究課題を検討することである。
【内容と方法】本研究会の内容および方法は3つの活動で構成される。
①読書会を開催し、「医療福祉とSOGI」に関する重要文献・論文の輪読を行うことを活動の基本とする。その場、担当メンバーがレジュメを作って発表する。
②外部講演会に参加し、その場で得た知識と自分なりの感想などを研究会で検討する。
③読書会で検討したテキストの著者を招きして公開研究会を行う。

活動内容

1)文献の講読
春学期に7回、秋学期に3回に分けて、毎回メンバー2名を担当し、以下の論文または文献を章ごとで議論を行った。
①藤井ひろみ,2018,「レズビアンである患者と医療者の相互作用:事例からの検討」母性衛生 59(1):181-188. 
②QWRC,2016,『LGBTと医療福祉』Queer and women’s Resource center.
③イヴ・セジウィック,上原早苗・亀澤美由紀訳,2001,『男同士の絆──イギリス文学とホモソーシャルな欲望』名古屋大学出版会.
④小西真理子,2017,『共依存の倫理──必要とされることを渇望する人びと』晃洋書房.

2)外部学習会の参加
①2019年6月7日,「LGBTQと法-同性愛の弁護士の視点から」講演会立命館大学産業社会学会.
②2019年6月8日,「SOGIと〇〇を考えるプロジェクト」第2回,G20―LGBTQ主催.

3)学習会と公開研究会の開催
①2019年2月20日に、東アジアの性的マイノリティ研究、ジェンダー研究を専門としている福永玄弥氏をゲストスピーカーとして、「LGBTフレンドリーな東アジアの誕生」というテーマで学習会を開催した。
②2019年2月20日に、「ケア・BDSM・親密性」と題して、公開研究会を開催した。講演は小西真理子氏「ケア・BDSM・親密性──BDSMにおける規範をぬぐって」である。院生発表は、メンバーである長島史織「アセクシュアルから考える親密性──多様な関係性、多様な自己の可能性」、OUYANG Shanshan「障害者におけるセクシュアル化される身体に関する考察」であり、その後、来場者を含めた総合討論を行った。

成果及び今後の課題

今年度は、公開研究会を通じて、医療福祉とSOGI、クィア研究と関連する幅広い議論ができた。また、メンバーであるOUYANG Shanshanはこれまでの研究会活動から得た知見を活かして、2020年01月11日に「セクシュアルマイノリティと医療・福祉・教育を考える全国大会2020 分科会」で、学外の研究者と共同発表をした。今後もこうした交流と学際的な研究活動を継続していくことを望んでいる。

構成メンバー

・SHEN CHIN 
・OUYANG Shanshan
・長島 史織
・Sya Sei Gi
・QU Honglin

映像人類学先端研究会

院生代表者

  • 福田 浩久

教員責任者

  • 小川 さやか

企画目的・実施計画

 本研究会では 、多様化する複合的なメディア状況のなかでフィールドワークを考える。調査の手法としてペンで「書き取る」だけでなく、カメラやマイクなど多様な機材で「書き取り」、映像やCD、インスタレーション、ゲーム、SNS、VR、ARなど多様な媒体で成果を発表するマルチモーダル人類学がアメリカ人類学協会で提唱されたのが2017年である。こうした近年の傾向に鑑み、研究者がマルチモーダルな調査手法および成果発表を自身で遂行できるよう基礎的な能力を提供するのが本研究会の目的である。昨年度の研究会では映像に重点を置き、映像(マルチモーダル)人類学について「読む」「観る」「撮る」「編む」ことで考えてきた。今年度ではそもそもフィールドで調査をするということは何なのか、エスノグラフィーを「制作」するということは何なのかという人類学的研究の原点に立ち戻って考えたい。「制作」という概念は近年邦訳も刊行されたインゴルドの著作でも取り上げられているが、フィールドワークという行為そのものがフィールドワーカーと調査対象者たちの「制作」であるという原点に立ち返ることが、モードの多様化する現代において、一層欠かせないと考えるからである。

活動内容

 具体的な活動としては講師招聘を中心に、輪読会と映像上映も実施した。講師は3人招聘した。まずは夏に芸術人類学の中島智先生を招聘し、その予備段階として先生の著作である『文化のなかの野性 芸術人類学講義』を輪読した。ワークショップでは「制作」についての講義と実際に研究生に手を動かし「制作」してもらう二段構えにした。秋には、人類学でも現在注目されているビジュアル・ナラティブに焦点をあて、心理学の分野でビジュアルナラティブ研究の第一人者であるやまだようこ先生と、人類学者かつ漫画家でもある都留泰作先生を招聘して、異なる専門領域の研究者、実践者、それぞれの立場から、参加者に実践課題を課しながら、お話を伺った。 また映像はいわゆる民族誌的なものから実験映像まで幅広く上映した。

  • ワークショップ「制作と人類学」
  • 立命館の映像人類学先端研究会では、このたび「制作と人類学」と題したワークショップを開催します。インゴルド 『メイキング』(2017 [2013])や上妻『制作へ』(2018)など、近年、人類学周辺で制作するということについての言及が盛んになってきていますが、講師には人類学と制作ということについて深く、長く、考えていらっしゃる『文化のなかの野性 芸術人類学講義』(2019 [旧装2000])の中島智先生をお招きします。一方的に話を聞いて頭で理解するというよりは、テーマに相応しく実際にフィールドに出て、身体で理解していただく演習になります。演習形式ゆえ、小人数の募集にはなりますが、ご関心の方は福田までご連絡ください。

    【タイトル】制作と人類学
    【講師】中島智 
    【日時】8/8(木) 13:00- 19:00頃
    【場所】立命館大学 衣笠キャンパス 創思館411号室
    【定員】10名
    【概要】制作空間としてのフィールドワークを考えたとき、求められるのはアノニマスな客観的手続きではなく、アノニマスな共制作ではないだろうか。そこでは表現されたものから表現されていないものを読み取っていく交感作用が看過できない。たとえば人類学者はインフォーマントたちが「表現しなかったもの」をみる。というのは、もし「表現したもの」のみに頼るのなら、彼らにカメラやノートを渡し、彼らに撮ったり自己申告してもらえば済むことだからだ。ある文化で自然化/無意識化されているものは、それを自然化していない余所者にしか見えない。制作、そしてフィールドワークは、そうしたアノニマスな位相(時間の外、空間の外)に身を置くことでもある。

 

成果及び今後の課題

 中島先生の著作とワークショップは当初の目論見通り「フィールドワーク」と「制作」について徹底的に考えることで、メンバー各員が自分の研究について考えを深めるきっかけになり、成功であった。またその次の段階としてフィールドワークの手法及びアウトプットとして注目を浴びているビジュアルナラティブについて、研究者、実践者双方の立場からの話を伺えたのも、今後どういうエスノグラフィーを「制作」するのか/できるのかという観点から益が多かった。一方で「制作」について思考する中で生じた疑問もあった。その最大のものは、人類学と詩的制作(いわゆる論文とは異なった、従来の枠組みであれば詩、小説、映画、展示など芸術に分類されるような制作。伝統的にはフランス、アメリカの人類学に多い)の関係についてであり、詩的制作と人類学の関係について理論的に学びたいという声がメンバーからあがった。したがって、次年度ではそれ(人類学と詩的制作の理論)を主軸に研究会を進めたいと考えている。

構成メンバー

・福田浩久
・小田英里
・酒向渓一郎
・柴田惇朗

ゲーム・オブ・ソーシャルチェンジ研究会

院生代表者

  • SHIN Juhyung

教員責任者

  • 小川 さやか

企画目的・実施計画

 本研究プロジェクトでは、1)東アジアを中心にこられのゲーム研究を行い、2)シリアスボードゲームにおける国際ワークショップを行うことを目的とした。2月15日、16日のワークショップを企画した。

活動内容

 新型コロナウイルスの影響で2月15日、16日の予定であったワークショップを2月15日のワークショップに変更し実施した。海外の発表者3人と参加者2人はskypeを通じて参加した。ワークショップは英語と日本語で行われた。スケジュールは以下の通りである。

13:00-13:05 開始&挨拶
13:05-13:25 蘇さん「中国の市販品から見られるシリアスボードゲームの強み」
13:25-13:45 楊さん「ボードゲームとなるビデオゲーム–ボードゲームならではの特徴の活かし」
13:45-14:15 太田さん シリアスボードゲームJamに関する内容
14:15-15:05 アンさん 韓国におけるシリアスボードゲームとゲーミフィケーション
15:05-15:55 パクさん 英語教育のためのシリアスゲームの制作事例を中心に
15:55-16:45 チェさん 英語教育のゲーミフィケーション
16:45-17:25 ディスカッション
17:25-17:30 終了

成果及び今後の課題

 このワークショップを通じて、近年、東アジアでも教育への応用を目的とするアナログシリアスゲーム(シリアスボードゲーム)への関心が増え続いているなか、シリアスゲームの教育への活用、シリアスゲーム研究のなかどのように位置付けられるのかについて教育とゲームに対し似通った見方と共有している東アジアにおけるシリアスゲームの現状と課題について情報交換と議論ができた。

構成メンバー

・Liang Yuxi
・Yan Jiao
・Xu Ting
・忠岡経子
・SU Shuo
・Li Yijun
・SHIN Juhyung

国連人権理事会恣意的拘禁作業部会座長の招聘

院生代表者

  • 桐原 尚之

教員責任者

  • 立岩 真也

企画目的・実施計画

テーマ:精神障害者に対する恣意的拘禁の例を中心にした政府と同作業部会、NGOの効果的な連携
講 師:Seong-Phil Hong(国連人権理事会恣意的拘禁作業部会前座長)
日 時:2019年6月2日(火) 10時30分 ~ 12時30分
場 所:参議院議員会館地下1階・B109会議室

活動内容

 国連人権理事会恣意的拘禁作業部会、特別手続及び個人通報、訪問(Official country visit)の事例、能力開発(Capacity building)と技術的援助(Technical assistants)の事例、国連自由を剥奪された人の法廷における救済と手続きの権利についての基本原則とガイドライン(United Nations Basic Principles and Guidelines on Remedies and Procedures on the Right of Anyone Deprived of Their Liberty to Bring Proceedings Before a Court)の分析、日本の精神医療に対して恣意的拘禁を判断した勧告二例の分析に関する講演をおこなった。
参加人数:56人

  • 恣意的拘禁作業部会の勧告をめぐる政府、国連、市民社会の効果的連携
  • 日時:2019年6月3日(月) 10時30分~12時00分
    場所:参議院議員会館地下1階 B109会議室
    講師:
    Seong-Phil Hong(国連人権理事会恣意的拘禁作業部会前委員長)

成果及び今後の課題

 国連人権理事会恣意的拘禁作業部会は、次のような経緯で設立された特別な機能をもつ部会である。
旧人権委員会(仮名53か国)は、1985年以降、恣意的拘禁の拡がりに取り組んでいる。同委員会は1990年、差別防止・少数者保護小委員会に対し、この問題に関する詳細な調査を行い、そうした慣習を縮小させるための提言を同委員会に提出するよう要請した。
 また、1988年12月に国連総会が「あらゆる形態の抑留または拘禁の下にあるすべての者の保護のための諸原則」を採択した際、自由を剥奪されたすべての人が享受すべき保障に関し、懸念が表明された。
 1991年には旧人権委員会が決議1991/42で、恣意的拘禁作業部会を立ち上げた。
 2006年に国連総会が2006年4月3日の決議60/251で人権理事会を設置し、その後、同理事会が2006年11月13日の決定1/102で、旧人権委員会のすべてのマンデートを引き受ける旨を決定した。
 2016年9月30日、人権理事会の決議で33/30で恣意的拘禁作業部会のマンデートは3年間延長された。
 恣意的拘禁作業部会は、通常3回(4月、8月、11月)会議を開催する。各会議では25から40の意見が採択され、必要に応じて一般意見、国別報告、年次報告が採択される。

WGADは、特別手続き、救済機関および準司法機関としてそのマンデートを履行する目的でその性質と機能の確立を図る一方で、事実を調査する任務を果たし、個人の被害者に救済を与え、拘禁関連の国際規範に基づく諸判例の蓄積に努めている。
そのマンデートは、次の通り詳細に示すことができる。

(a)恣意的、または関係国際基準に矛盾する自由剥奪の事例を調査すること。
(b)各国政府や政府間組織、非政府組織からの情報を求め、受領し、関係する個人、その家族や代理人から情報を受理すること。
(c)恣意的拘禁が疑われる事例に関して知らされた情報に関し、当該事例を明確化し関係政府に知らせる緊急要請や連絡を関係政府に送付することで行為すること。
(d)各国で広がりを見せる恣意的自由剥奪の状況や、恣意的自由剥奪事例の背後にある理由について理解を深めるため、政府の招聘に基づき現地で任務を実施すること。
(e)加盟国が恣意的自由剥奪を予防し、そうした習慣から保護するのを支援し、将来の事例に関する検討を促進することを目的として、一般的な性質の問題に関する一般意見を形成すること。
(f)その活動、調査結果、結論および提言を示した年次報告を人権理事会に提出すること。
さらに、人権理事会は、同作業部会がそのマンデートを履行するにあたり、次の事項を行うよう奨励する。
(a)作業部会に提出された事例に懸念を示すあらゆる関係者と、特に適切な検討が行われるべき情報を提供する加盟国と、協力・対話を行いながら取り組むこと。
(b)人権理事会の他のメカニズム、他の国連所轄機関および条約機関と協調して取り組み、その協調においては、国連人権高等弁務官事務所の役割を念頭に置くこと、また、特に作業部会が受領する連絡の取り扱いや現地での林務に関し、これらのメカニズムとの重複を避けるために必要なすべての措置を講じること。
(c)裁量権、客観性および独立性を持って作業を行うこと。

意見
WGADは、自由剥奪が恣意的か否か判断するための基準を採択した(改訂ファクトシート第26号参照)。WGADは、個人からの申立ての検討について明確に定めたマンデートを持つ唯一の非条約メカニズムである。WGADの行為は、被害者が各地の救済手段をすべて行使したか否か、対象となっている加盟国が特定の条約の当事国であるか否かにかかわらず、世界各地の個人の請願権に基づくものである。
同作業部会は、恣意的拘禁の疑われる事例に関し、個人または非政府組織から寄せられた通報で提示される情報や、各国政府、政府間組織からの情報に基づき行為する。
連絡は関係政府に送付され、申立てに関するコメントおよび意見を事実および適用法の観点、また命じられた調査の進捗状況および結果の観点から、60日以内に作業部会に伝達する機会が与えられる。
政府から作業部会に送付された回答は、最終のコメントまたは意見用として情報源に送付される。この対立構造のため、WGADには準司法メカニズムの地位が認められる。

意見―類型
WGADは通例、次の5つの法的類型を参照しなければならない。
(a)人が刑の終了後も、または恩赦法が適用されるにもかかわらず、拘禁され続ける場合のように、自由剥奪を正当化する法的根拠を引合いに出すことが明らかに不可能である場合(第1類型)
(b)自由剥奪が、世界人権宣言の第7条、第13条から第14条および第18条から第21条、加盟国当事者に関しては、市民的および政治的権利に関する国際規約の第12条、第18条から第19条、第21条から第22条および第25条から第27条で保証された権利または自由の行使に起因する場合(第2類型)
(c)世界人権宣言および関係加盟国が承諾した関連国際文書に規定された公正な裁判を受ける権利に関する国際規範の全部または一部の不遵守が、自由剥奪に恣意的な性質を与えるほど重大である場合(第3類型)
(d)亡命希望者、移民または難民が行政的または司法的な審査または救済の可能性がないまま、長期間に渡る行政拘禁を受ける場合(第4類型)
(e)自由剥奪が、出生、国籍、種族的もしくは社会的出身、言語、宗教、経済状況、政治的その他の意見、性別、性的指向、障害または他の状態に基づく差別のため、国際法の違反となり、その違反が人間の平等の無視を図る、または無視となり得る場合(第5類型)

 本プロジェクトを受けて第199回通常国会参議院厚生労働委員会では、恣意的拘禁作業部会がリクエストしているカントリービジットの用意についての質疑がおこなわれた。それによると外務省は、オープンビジットなので受け入れる予定と答弁するも、準備に時間を要しているとして具体的な訪問の計画については返答をしなかった。

構成メンバー

・桐原尚之
・伊東香純
・戸田真里
・舘澤謙蔵
・高木美歩
・西田美紀

ボードゲーム研究

院生代表者

  • Yang Siyu

教員責任者

  • 千葉 雅也

企画目的・実施計画

【目的】
 ボードゲームはここ数年、重要性と認知度が目に見えて上がってきている。ボードゲームを用いた児童向けの授業は一部の国で提唱されているし、研究成果をボードゲームという形で民衆に伝えるように努力している学術機関もある。近年では、大規模のアナログゲームイベントの盛り上がりに伴い、日本国内の新作ボードゲームが海外からも注目され、国際的に知名度が高いゲームデザイナーも現れ始めている。一方、立命館大学先端総合学術研究科はゲーム研究センターにより、ゲーム研究が盛んになっているが、ビデオゲームに偏る傾向が見えて、ボードゲームに関する研究が少ない。本プロジェクトの目的は、社会にボードゲームの知識を還元することに努めて、ボードゲームのメカニズムに対する理解を深め、院生の視野を広げることである。
【計画】
 2019年6月から2020年2月にまでの間に、主に以下の2点について実施した。
①どのようなテーマ・遊び方によってボードゲームが受け入れやすいのかというプレイヤー側の受容度を確認するため、定期的にボードゲームカフェに訪問しフィールドワークを行った。メンバーに特定のテーマで選出したボードゲームを体験させて議論をした上、ボードゲームカフェのオーナーにインタビュー調査をしコメントを頂いた。
②年間活動のまとめとして、諸参加者が定例研究会の参加によって学んだボードゲームの知識について発表した。ゲームオブソーシャルチェンジ研究会のワークショップの場を借りて、報告会を開いた。また、シリアスゲームで学術を普及することに詳しい地球科学研究所の研究者太田和彦をコメンテーターとして招いた。

活動内容

【フィールドワーク】
第一回目
日程:2019年7月6日(土) 13:00~18:00
場所: comedy(京都)
テーマ:ボードゲームの初体験

第二回目
日程:2019年10月20日(日) 13:00~18:00
場所:Game Café ATTIC(京都)
テーマ:変わるキャラクター

第三回目
日程:2019年11月9日(土) 13:00~18:00
場所:Jelly Jelly Cafe(大阪)
テーマ:裏切りまでの協力

第四回目
日程:2019年12月22日(日) 13:00~18:00
場所:Brespi(京都)
テーマ:コミュニケーションなしの協力

【報告会】
開催日時:2020年2月15日(土) 13:00~18:30
発表者:
SU SHUO「中国の市販品から見られるシリアスボードゲームの強み」
YANG SIYU「ボードゲームとなるビデオゲーム――ボードゲームならではの特徴の活かし」
太田和彦「研究員は如何にして心配するのを止めてゲームジャムを始めることになったか」
場所:究論館1階プレゼンテーションルームA

成果及び今後の課題

 今年度のプロジェクト活動を通じ、最初の目的である参加者全員の視野を広げることを成功したが、ボードゲームから得た知識を参加者それぞれの現時点の研究テーマに直接結びつくことまでは行かなかった。一方、ボードゲームを体験すること、及びワークショップの発表会に参加することで、ボードゲームとデジタルゲームの関係、デジタルゲーム研究者から見る両者の特徴の比較などの新たな視点、考え方を得た。
 今後の課題としては、ボードゲームの体験、フィールドワークを展開するの同時に、アカデミック的な視点(読書会を開催するなど)からボードゲームに関する理論について探求してみたいと考えられる。現段階ではSebastian Deterdingの戦争ゲーム、ボードゲームの発展に関する文章「Living Room Wars: Remediation, Boardgames, and the Early History of Video Wargaming」を手に入れた。これからは読書会を通じ、この論文を含み、ボードゲームの理論、発展に関する資料をメンバーと共有したいと考えられる。

構成メンバー

・MOON Jhee
・LI Yijun
・SU Shuo
・XIE Jingyi
・YANG Siyu

表象文化論研究会

院生代表者

  • 西澤 忠志

教員責任者

  • 千葉 雅也

企画目的・実施計画

 本研究プロジェクトの目的は、人工知能による芸術作品が鑑賞者の感性に与えた影響を検討することを通じ、テクノロジーの進化にともなう芸術作品の展開を現在の我々はどのように解釈し得るのかを提示することである。
 本研究プロジェクトは3つの方法を通じて目的の達成を目指した。①読書会の実施による、参加者の人工知能に関する知識の習得、②個人発表による、習得した知識の応用と検討、③シンポジウムの実施による、成果の公表。
 本研究プロジェクトの意義は、人間が創作においてほとんど介在しない芸術作品、その中でも絵画だけでなく文学や音楽など幅広い創作活動をしている人工知能による芸術創作に着目し、これまでの美学によりそうした作品を解釈するのが可能なのかを論じることにより、今後の人工知能による創作の解釈可能性を指し示すことにある。

活動内容

1)基礎となる文献の講読
シンポジウムに向けて、人工知能と芸術、ヒューマニズムと芸術に関する論文、本を講読した。
・落合陽一『魔法の世紀』
・中ザワヒデキ「人工知能と美学と芸術――人工知能が真に鑑賞し創作し人間の美学と芸術が
変貌する」『人工知能』33巻6号
・篠原資明「展望 芸術の生成をめぐって」『岩波講座 哲学7 芸術/創造性の哲学』
・ボリス・グロイス,角尾宣信(訳)「芸術、技術、そしてヒューマニズム」『思想』1128号
・稲葉振一郎『AI時代の労働の哲学』
・谷口忠大『創発記号ロボティクス』

2)シンポジウムの開催
 2020年1月25日(土)に創思館カンファレンスルームでシンポジウム「AIの芸術制作と「人間性」――AIによって「人間」は変わるのか?」を開催した。
 講師に中ザワヒデキ(美術家、人工知能美学芸術研究会)、谷口忠大(立命館大学)、千葉雅也(立命館大学)を招聘した。第1部は中ザワ、谷口両先生による講演、第2部は千葉先生を加えたパネルディスカッションを開催した。本シンポジウムの目的は、AIと人間との関係性からより視点を広げ、AIを駆動する人間とそれを受容する人間の関係に注目することにより、駆動する人間と受容する人間における「人間性(ヒューマニティー)」というものがどのようなものであるのだろうかという点を問うことにあった。

  • AIの芸術制作と「人間性」――AIによって「人間」は変わるのか?
  • https://www.r-gscefs.jp/wp-content/uploads/2019/12/2019表象文化論1.jpg
    https://www.r-gscefs.jp/wp-content/uploads/2019/12/2019表象文化論2.jpg

    趣旨
     現在、AIが社会に取り入れられていく中で、AIと人間との関係をどう考えるのかが議論されている。その議論は、AIの進出により社会が効率化されるという楽観論から、人間の存在価値が低くなってしまうといった悲観論まで、数多くされている。
     こうした議論の中で見逃されているのが、AIを駆動させているのは結局のところ人間であるということである。なぜ、そうしたことを確認しなければならないのか。それは、それまでの議論がAIとそれを受容する人間との関係にのみに注目していたからである。
     そこでこのシンポジウムでは、AIと人間との関係性からより視点を広げ、AIを駆動する人間とそれを受容する人間の関係に注目する。
     それによって、どのような点を展望として示すことができるだろうか。それはおそらく、駆動する人間と受容する人間における「人間性(ヒューマニティー)」というものの変化という点にあるだろう。では、それをAIによるどのような制作によって提示することができるだろうか。それは、芸術制作にあるだろう。なぜか。それは芸術制作が、基本的に人間によるものであることが前提とされているからである。
     このシンポジウムでは、AIによる芸術制作が「人間性」というものを制作者や鑑賞者に再考をどのように促すものなのかを考えたい。

    日時:2020年1月25日(土)14:00~17:30(予定)
    会場:立命館大学 創思館 カンファレンスルーム

    【タイムテーブル】
    ●趣旨説明
    西澤忠志(立命館大学大学院)

    ●招聘講師の講演
    中ザワヒデキ(美術家 人工知能美学芸術研究会)「人工知能が真に鑑賞し創作し、人間の美学と芸術が変貌する」
    谷口忠大(立命館大学 情報理工学部教授)「記号創発ロボティクスによる人間と表象の理解」

    ●ディスカッション
    中ザワヒデキ
    谷口忠大
    司会・コメント 千葉雅也(立命館大学 先端総合学術研究科准教授)

成果及び今後の課題

 本シンポジウムでは以下の点における成果があった。
 1点目は、講師の招聘、会場整備などのシンポジウムまでの準備を、構成メンバーによって企画、実行したことである。これにより、シンポジウムまでの運営に関する技術を学ぶことができた。
 2点目は、シンポジウムを通して、AIによる芸術制作と人間による芸術制作とを分けるポイントとして、「身体性」という新たな観点を見出すことができたことである。
 しかし、以下の点において課題が残った。
 1点目は、当日の座談会の司会を千葉先生に任せたままであり、構成メンバーによる質問がシンポジウム中に出来なかったことである。これにより、シンポジウムの内容に関する成果は、先生方の力に頼ったものとなってしまった。受付などのシンポジウム内での事務作業に構成メンバーが忙殺されたことも原因の一つだが、それまでの講読会内での疑問点をシンポジウム内で質問する用意が出来なかったこと、招聘講師の講演を聞いた上での司会進行が出来なかったったことが原因として挙げることができるだろう。
 2点目は、当初予定していた「個人発表」が、構成メンバーのさまざまな事情により、実施することが出来なかったことである。特に秋学期以降は、学会発表、論文執筆に構成メンバーが追われたため、研究会での発表に時間を割くことが難しかった。そのため、構成メンバーの予定を計画段階で把握し、その上で研究会内での発表の有無を決める必要性があった。
 以上の課題を踏まえ、構成メンバーが自身の研究課題と絡めつつ、主体的に参加できるような環境づくりを行うことを、研究会運営において目指したい。

構成メンバー

・西澤忠志
・枝木妙子
・寺前晏治
・福田浩久
・森敬洋
・寺田拓矢