小川さやか:2013年度業績一覧

書いたこと

・「第3章タンザニアにおける衣料品の消費行動に関する考察―中古衣料品と中国・東南アジア製衣料品の供給システムの違いに着目して」小島道一・福西隆弘編『国際リユースと発展途上国 調査研究報告書』アジア経済研究所,2013年4月 pp.36-61
・「地球ミュージアム紀行 スクマ族の小さな世界」『月刊みんぱく』37巻5号, 2013年5月 pp.14-15.
・「人間学のキーワード:インフォーマルセクター」『月刊みんぱく』2013年6月p.20.
・「インフォーマル経済」京都新聞「現代のことば」(2013/7/25夕刊)
・週刊読書人「上半期の収穫から」(2013年7月26日号)
・「現代消費文化を捉える人類学的視点の探求」『民博通信』141号pp.20-22.
・「科学技術と信頼」京都新聞「現代のことば」(2013/9/25夕刊)
・「書くことと民主主義」京都新聞「現代のことば」(2013/11/21夕刊)
・「インデックスを飼いならす」京都新聞「現代のことば」(2014/1/25夕刊)
・「騙し合い助け合う商売のしくみ」『季刊民族学』147号pp.49-66.
(その他:インタビュー、対談記事など)
・「小商い講座:アフリカ・タンザニア商人たちに学ぶ「路上で生き抜く知恵」」『Spectator』27号(小商い)
・「いま話したい人 小川さやか×原田祐馬」『Qonversations』http://qonversations.net/
・「世界へ関西スピリッツ:異郷で羽ばたく(5)」日本経済新聞(2014年1月11日朝刊)
・「巻頭対談:小川さやか×上田假奈代」『paper C』No.7. おおさか創造千島財団p.2-3.

話したこと

・(講演)「もう一つの使い捨て文化―アフリカの古着流通を事例に」生存学研究センター・公開セミナー『目の前のアフリカ(第1回)』於立命館大学、2013年5月17日
・(対談)「小川さやか×原田祐馬」インターネット雑誌『カンバセーションズ』2013年5月19日
・(講演)「つながりを考える―タンザニアの零細商人マチンガを事例に」野良人類学研究会『不確かさを生きる技法―コミュニティー難民という視座』於GURA、2013年5月24日
・(研究会発表)「ストリートの政治化と政治のストリート化」国立民族学博物館共同研究『交錯する態度の人類学』、高知大学、2013年5月26日
・(学会発表)「噂・ゴシップを通じたストリートの政治化―タンザニアの路上商人の組合化を事例に」日本文化人類学会第47研究大会、於 2013年6月8日
・(講演)「タンザニアのたくましき零細商人―不確実な時代を生き抜く知恵」於阪神シニアカレッジ、2013年6月27日
・(講演)「使い捨て文化を考える―アフリカにおける古着の流通を事例に」於大阪高齢者大学校、2013年7月12日
・(研究会発表)「タンザニアにおける古着と非正規衣料品の消費行動」共同研究『国際リユースと発展途上国』於アジア経済研究所、2013年7月24日
・(国際学会発表)“Trust in being Ujanja: The Business Practices and Creeds among Petty Traders in Tanzania” 17th The World Congress of International Union of Anthropology and Ethnology Session: G20 Trust in Super-diversity, Manchester University, 2013年8月6日
・(研究会発表)「中古品と非正規品の流通システムにおける盗みと贈与」国立民族学博物館共同研究『贈与論再考』、於国立民族学博物館、2013年9月29日
・(ディスカッサント)第10回日独先端科学シンポジウム:社会科学分野「Management of uncertainty – dynamics of change and problems of control」、於京都ブライトンホテル、2013年10月31日~11月4日
・(講演)「草の根のグローバル化のダイナミズム―東アフリカ商人の模造品交易を事例に」日本文化人類学会公開シンポジウム『現代人類学のフィールドワーク力』、於京都大学、2013年11月17日
・(講演)「使い捨て文化を考える ―中古品と非正規品の流通を事例に」白山人類学研究会2013年度第5回、於東洋大学、2013年11月18日
・(学会発表)「政治のストリート化とストリートの政治化―タンザニアのポピュラー音楽「ボンゴ・フレーバ」の消費をめぐって」日本ポピュラー音楽学会記念シンポジウム『エキゾティシズムとその向こうにあるもの――ポピュラー音楽の(非)嫡出子たち』於関西学院大学、2013年12月7日
・(取材)日経新聞、2013年12月11日
・(講演)「非正規品交易システムにみるインフォーマル経済のダイナミズム」シンポジウム21世紀10年代日本文化の軌道修正:過去の検証と将来への提言『商取引・藝術創作・海賊行為:社会制度の綻び目は文化創造のニッチとなるか?』、於国際日本文化研究センター、2013年12月14日
・(研究会発表)「タンザニアのポピュラー音楽における笑いとストリートの政治」国際言語文化研究所萌芽的プロジェクト研究『アフリカの社会と笑い』於立命館大学、2013年12月18日
・(対談)「小川さやか×上田假奈代」おおさか創造千島財団、於釜ヶ崎、2013年12月18日
・(講演)「Living for Todayの人類学」日本文化人類学会関東地区研究懇談会 於早稲田大学、2014年2月20日
・(コメンテーター)「文化労働と労働文化―その緊張関係を問う」於関西社会学会若手企画、2014年2月28日

学会等の活動

(所属学会)日本アフリカ学会、日本文化人類学会
(編集委員等)京都大学人文科学研究所紀要『コンタクト・ゾーン』編集委員
(主催研究会)国立民族学博物館共同研究『現代消費文化に関する人類学的研究』
(共同研究員)国立民族学博物館『贈与論再考』(代表:岸上伸啓)アジア経済研究所共同研究『国際リユースと発展途上国』(代表:小島道一)
(研究会の企画)生存学研究センター企画『目の前のアフリカ』

松原洋子:2013年度業績一覧

論文等

・松原洋子「優生学」、玉井真理子・松田純責任編集『シリーズ生命倫理学11 遺伝子と医療』丸善出版、125-142頁、2013年4月。
・松原洋子「科学研究費による科学史研究課題採択状況−1949年〜1971年を中心に」、『科学史研究』52: 134-143、2013年9月。(査読なし。)
・松原洋子「日本における新型出生前検査(NIPT)のガバナンス−−臨床研究開始まで」、『生存学研究センター報告』22: 69-85、2014年3月。(査読なし。)
・小門穂・吉田一史美・松原洋子『生殖をめぐる技術と倫理−−日本・ヨーロッパの視座から 生存学研究センター報告』22号、立命館大学生存学研究センター発行、2014年3月。

報告等

・松原洋子「日本の高等教育における電子書籍アクセシビリティの課題―テキストデータの利用を中心に」、科学社会学会第2回年次大会、2013年9月29日、東京大学本郷キャンパス。
・「大学薬学部のコアカリキュラムと薬害問題・倫理教育の展開」、「「薬害教育」に向けた多声的「薬害」概念の提起」(JSPS科研費:25285163)研究会、2013年8月27日、マッセ梅田ビル。
・「大学図書館のアクセシビリティ——テキストデータ提供を中心に」、マニフェスト評価機構デジタルアーカイブ研究所・R-GIRO研究プログラム「電子書籍普及に伴う読書アクセシビリティの総合的研究」合同研究会「図書館デジタル化をめぐって−−障害者差別解消法を受けて」、2014年3月10日、東洋大学大手町サテライト。

講演等

・松原洋子「出生前検査は誰のためのものか―技術の倫理を考える」、第3055回立命館土曜講座、2013年5月11日、立命館大学末川記念会館。
・松原洋子「電子書籍のアクセシビリティ——バリアフリーのためのイノベーション」、ラボカフェ シリーズ:科学技術イノベーション、第9回公共圏における科学・技術教育研究拠点(STiPS, 大阪大学・京都大学連携プログラム)主催、2013年11月22日、アートエリアビーワン。
・松原洋子「電子書籍のアクセシビリティ」、立命館大学R-GIRO/IRIS読書アクセシビリティ研修プログラム、R-GIRO研究プログラム「電子書籍普及に伴う読書アクセシビリティの総合的研究」(IRIS)企画、立命館大学衣笠キャンパス、2014年3月13日。
・「出生前検査 その課題は?」(コメント)、NHKR1ラジオ第一、夕方ニュース、夕方特集私も一言、2013年5月30日。
・「遠見卓見」(「日曜に考える 熱風の日本史 第12回「産めよ」「産ますな」国のため」コメント)、『日本経済新聞』朝刊14版13面、2013年11月17日。

プロジェクト等

・科学研究費補助金「金高等教育機関における障害者の読書アクセシビリティの向上:ICTによる図書館の活用」(基盤B、2013〜2015年)研究代表者
・立命館グローバル・イノベーション研究機構(R-GIRO)研究プログラム「電子書籍普及に伴う読書アクセシビリティの総合的研究」(2011〜2015年)代表者
・立命館大学生存学研究センター2013年度若手研究者研究力強化型プロジェクト「出生をめぐる倫理研究会」代表者
・人間科学研究所研究プロジェクト「読書障害学生支援における大学図書館の課題」代表者
・科学研究費補助金「視覚障害当事者の共同自炊型オンライン電子図書館を実現するための条件に関する研究」(基盤A,2012〜2015年、研究代表者石川准)研究分担者
・「「薬害教育」に向けた多声的「薬害」概念の提起」(基盤B、2013〜2015年、研究代表者山田富秋)研究協力者
・文部科学省私立大学戦略的研究基盤形成支援事業「インクルーシブ社会に向けた支援の<学=実>連環型研究」(立命館大学人間科学研究所)、「テーマ5 社会的包摂と支援に関する基礎的研究」研究参加者

委員等(学内)

・立命館大学人間科学研究所運営委員
・立命館大学生存学研究センター運営委員
・『立命館人間科学研究』(立命館大学人間科学研究所)編集委員
・『Core Ethics』(立命館大学大学院先端総合学術研究科発行)編集委員長
・Ars Vivendi Journal (生存学研究センター発行)編集委員

学会活動

日本科学史学会全体委員、日本科学史学会和文誌委員、日本生命倫理学会企画委員、『生物学史研究』編集委員、日本学術会議第22期連携会員(第一部史学)、日本科学史学会・日本生命倫理学会・日本科学史学会生物学史分科会・日本医史学会・日本医療保健社会学会・科学技術社会論学会・科学社会学会・国際公共経済学会会員

小泉義之:2013年度業績一覧

著書

・共著(市田良彦・王寺賢太・長原豊と):『債務共和国の終焉――わたしたちはいつから奴隷になったのか』(河出書房新社)228p

翻訳

・分担訳:『デカルト全書簡集 第二巻』(知泉書館)395p

論文

・「精神衛生の体制の精神史――一九六九年をめぐって」天田城介・角崎洋平・櫻井悟史編著『体制の歴史――時代の線を引きなおす』(洛北出版)pp. 205-262
・「モラリズムの蔓延」『現代思想』2013 vol. 41-7(2013年5月号)pp. 204-214
・「社会(科)学の啓蒙的な論調について」『福祉社会学研究』10号、pp. 82-99
・「戦時‐戦後体制を貫くもの――ハイデガー(「ヒューマニズム書簡」と「ブレーメン講演」)の場合」『Heidegger-Forum』vol. 7(印刷版)pp. 40-52
・「出来事(事象)としての人生――ドゥルーズ『意味の論理学』における」『哲学雑誌』第128巻第800号、pp. 56-74

その他

・評論:「観念論的、唯物論的、電子メール的」『現代思想』2014vo. 42-1(2014年1月号)pp. 37-39
・書評:「飲屋政談と薀蓄披露:市野川容孝・宇城輝人編『社会的なもののために』」『情況』2013年6月別冊、pp. 177-185
・書評:千葉雅也『動きすぎてはいけない――ジル・ドゥルーズと生成変化の哲学』(『文藝』2013年冬号)p. 380
・対談(小松美彦と):「生権力・生政治を超克するために――命の弁別問題から医療・福祉制度批判まで」小松美彦『生を肯定する――いのちの弁別にあらがうために』(青土社)
・特集巻頭言:「やはり嘘つきの舌は抜かれるべきである――デモクラシーは一度でも現われたか」『情況』2103年11-12月別冊

過去問題

過去の入試問題はこちら

 

http://www.ritsumei.ac.jp/gr/exam/question.html/

Core Ethics Vol.10

立命館大学大学院先端総合学術研究科
『Core Ethics』Vol.10 2014年

Core Ethics Vol.10 cover
目次 PDF<224KB>
奥付 PDF<55KB>
正誤表 PDF<KB>
English


論文

統合失調症の娘を抱える父親のライフストーリー
――個人の複雑な生の一端を捉えるために―― 
青木 秀光 p.1
PDF<486KB>

対立型コミュニケーションと服従的説得型コミュニケーションにおける通訳者の中立性の考察
飯田 奈美子 p.13
PDF<393KB>

わが国におけるHPVワクチン副反応続出の要因に関する研究
――HPVワクチン導入期のWHO, FDA, PMDA,厚生労働省の見解の検討――
岩谷 澄香 p.25
PDF<356KB>

M.コンデの『移り住む心たち』における「乳白化願望」とハイブリッド
大野 藍梨 p.37
PDF<405KB>

美術作品を享受する触覚の誕生
――英米におけるふたつの実践からの一考察――
鹿島 萌子 p.49
PDF<359KB>

ろう児のためのフリースクール「龍の子学園」開校前史
クァク・ジョンナン p.61
PDF<381KB>

重症心身障害児施設の黎明期
――島田療育園の創設と法制化―― 
窪田 好恵 p.73
PDF<448KB>

ヴェトナムハノイILセンター設立経緯と運営展望における諸問題
権藤 眞由美 p.85
PDF<484KB>

臨床試験計画への患者の関与
――脊髄損傷者への再生医療に着目して―― 
坂井 めぐみ p.97
PDF<439KB>

社会貢献としての病いの語り
――精神障害当事者による福祉教育の「場」に着目して――
栄 セツコ p.109
PDF<588KB>

障害の社会モデルは解放の思想か?
――精神障害のとらえがたさをめぐって―― 
白田 幸治 p.121
PDF<342KB>

日本における人工内耳(治療)の導入が聴覚障害教育に与えた影響
――1970年代から1990年代までの日本の状況――
田中 多賀子 p.131
PDF<418KB>

均衡理論における時間概念の非両立性について 
椿井 真也 p.143
PDF<389KB>

発話困難な重度身体障がい者における通訳者の「専門性」と「個別性」について
――天畠大輔の事例を通して――
天畠 大輔・黒田 宗矢 p.155
PDF<421KB>

京都過労死家族会と京都職対連運動 
中嶌 清美 p.167
PDF<473KB>

障害者施策の変遷と相談支援・1996年─2000年
萩原 浩史 p.179
PDF<400KB>

赤ちゃん人形を媒介した認知症高齢者とのコミュニケーション
――セッション場面における言動の分析――
畑野 相子 p.191
PDF<452KB>

大陸系中華学校による国際化・多文化化への試み
――横浜山手中華学校と神戸中華同文学校を事例に――
馬場 裕子 p.203
PDF<438KB>

客を取り込む社交のゲーム
――京都花街における女将の戦略から――
松田 有紀子 p.215
PDF<453KB>

明治期髙島屋貿易店の活動にみる百貨店としてのイメージ戦略の萌芽
山本 真紗子 p.227
PDF<643KB>


研究ノート

神谷美恵子の長島愛生園における実践からの一考察
――神谷美恵子の診療録から見えるもの――
田中 真美 p.239
PDF<362KB>

高橋晄正の薬効の科学的検証と『薬のひろば』の活動 
松枝 亜希子 p.251
PDF<402KB>

ろう研究会

院生代表者

  • クァク・ジョンナン

教員責任者

  • 立岩 真也

企画目的・実施計画

 本研究は、聞こえない・聞こえにくい子ども(ひと)の教育・言語・医療の議論・実践の変遷について、デフ・スタディーズ、障害学、社会言語学から考察することを目的とする。具体的には聴覚障害教育の分野で注目されている文献の精読を行いながら、互いの関心を共有するとともに、意見交換を通して問題意識を深めることを目指す。また、多様化した聴覚障害児者の教育・コミュニケーションの実施現場を調査し、現状の把握と分析に力を入れる。

活動内容

  • 第1回:打ち合わせ
    2013年4月16日(火)13:00-16:00、立命館大学衣笠キャンパス創思館416号
  • 第2回:博士論文構想発表会の検討会
    2013年7月16日(火)14:00-17:00、立命館大学衣笠キャンパス創思館416号
    題名:「日本の聴覚障害教育における人工内耳の受けとめ方の変遷」

  • 第3回:ろう大会に参加
    「第25会ろう教育を考える全国討論集会in長崎」に参加、2013年8月16日(金)-2013年8月18日(日)、長崎市、長崎大学文教キャンパス
  • 第4回:公開企画
    「聴覚障害に関わる研究を進める上での倫理と配慮のあり方」
    2013年12月23日(月)14時-17時、立命館大学衣笠キャンパス学而館201号
    講師: 甲斐更紗
  • 第5回:読書会
    大沼直紀(おおぬま・なおき)2012「人工内耳によって「ろう文化」はなくなるか?――ろう者の言語権・文化権と「音を聞く権利」を両立させる」、中邑賢龍(なかむら・けんりゅう)、福島智(ふくしま・さとし)編『バリアフリー・コンフリクト――争われる身体と共生のゆくえ』東京大学出版部、51-71
    2014年2月5日(水)13時-16時、学而館201号
  • 第6回:見学
    2014年3月7日(金)-2014年3月8日(土)、聞こえない・聞こえにくい老人のための「特別養護老人ホーム 淡路ふくろうの郷」に見学、兵庫県洲本市中川原町中川原28番地1

成果及び今後の課題

 今年度は、博士論文構想発表会の検討会、ろう大会に参加、聴覚障害者の施設への見学、講演会の開催、読書会などさまざまな活動を行った。そのなか、メンバー3名が博士論文構想発表を済ませた。今後は、研究発表や文献講読に集中し、博士論文執筆や学位請求論文の提出に力を注ぎたい。

構成メンバー

  • イム・ドクヨン
  • 権藤真由美
  • 田中多賀子
  • 番匠健一
  • 野島晃子
  • クァク・ジョンナン
映画を通じて問いなおす「記憶」の形成

院生代表者

  • 梁 説

教員責任者

  • 渡辺 公三

企画目的・実施計画

企画目的

 本企画の目的は、人々の<記憶>を映画(映像)として表出する作品を鑑賞することで、記憶の歴史の描かれ方、記憶の継承のされ方、記憶の変転の有り様を、文学、社会学、人類学といった領域横断的な知見から考察することを目的としている。
 映像作品の製作者は、人々の生活の中の政治・文化・宗教・差別といった数多くの要素が混然としている現実の諸相をありのまま映し出す作品を通して、人文科学がテーマとする<記憶>や<語り>といった概念の基底となる構造を表出しており、見る側の〈記憶〉についての思考を喚起させる。<記憶>という共時・通時を内在する概念について、映画という現代の事象表現から読み解こうとする本プロジェクトの試みは、「表象」理論と実践に挑むものであり、このことは本プロジェクトの意義としてある。また、公開研究会を前提としている点においては、個人では観賞困難な映画作品を広く一般に鑑賞する機会を提供するという点においても意義を備えている。

実施計画

 2013年度は、パレスチナとイスラエルにおける人々の〈記憶〉に着目し、パレスチナ人とユダヤ人二人の監督による共同作品『ルート181』を取り上げ、上映会とワークショップ及び上映に向けて事前勉強会を行う。事前勉強会では、パレスチナ/イスラエル史、アラブ系ユダヤ人に関する先行研究、『ルート181・パレスチナ‐イスラエル 旅の断章』 (季刊前夜別冊)の読書会を行う。また、年間を通じた<記憶>をめぐる研究は、構成メンバーの個々の研究テーマと重なるものであり、研究の成果は個別の研究に反映されるものである。

活動内容

連続映画上映企画「「大陸三部作」から見る日本帝国」の実施

日本帝国において絶大な人気を誇った李香蘭(山口淑子)は、後の自伝『李香蘭 私の半生』(1987)において大陸三部作を「日本の大陸政策を宣伝するプロパガンダ」であると評している。もっとも有名な「支那の夜(戦後版「蘇州夜曲」)」に加え、「白蘭の夜」「熱砂の誓い」を通してみることで、日本帝国におけるジェンダー秩序やモダニズムなどこれまで植民地研究のなかで議論されてきた論点をふまえつつ、日中関係の緊張が高まる現在の東アジアの磁場にひきつけつつ、それぞれの作品を議論する場として上映会を企画した。学内者のみならず、学外から李香蘭研究者も参加するなど、映画を通して見えてくる日本の帝国主義統治について活発な議論がなされた。

◇12月12日(木)16:30~
「白蘭の歌」上映会とディスカッション
◇12月13日(金)16:30~
「支那の夜 蘇州夜曲」上映会とディスカッション
◇12月14日(土)15:00~ 
15:30まで満州三部作制作の背景と日本の満州統治についてのレクチャー(番匠健一)
「熱砂の誓ひ」上映会とディスカッション

映画「ルート181」上映会&講演会と前夜祭企画「豊穣な記憶」上映会の実施

本企画は、映画(映像)を通じて、「記憶」という事象を再確認し、問い直すことを試みようとした企画である。院生自らが個々の研究課題に接近させながら問い直しをすることによって、記憶の形成、記憶の継承のされ方、記憶の変転の有り様を、文学、社会学、人類学といった領域横断的な知見から考察することを目指したPJであり、鑑賞作品として1947年11月29日、国連によるパレスチナ分割決議181で採択された国境線が、半世紀以上経った現在、どのような状況になっているかを人々の日常の語りを通して描いた「ルート181」を選んだ。
また、映画上映会を開催するにあたり、田浪亜央江氏を講師として招聘した。田浪氏はインパクションの編集委員を長く務め、「ミーダーン〈パレスチナ・対話のための広場〉」という団体において中心的に活動を展開する。パレスチナ、イスラエル両方に精通し、かつナショナリズムや植民地主義の視点からパレスチナ/イスラエルの状況を、日本とつなげて捉える視点の持ち主であり、本企画にとって有意義なレクチャーがもたらされ、ディスカッションならびに交流会の場で、初めて知ったパレスチナ―イスラエルの現実について、活発な議論が展開された。

◇2月7日(金)〈前夜祭〉 17:30~
『豊穣な記憶』上映会
◇2月8日(土) 11:00~18:00
『ルート181』上映会、田浪亜央江氏による講演と質疑応答
18:30~ 参加者による懇親会

連続上映企画「日本帝国と映画」の実施

12月に開催の大陸三部作で、日本帝国の満州国家建設に関するディスカッションが深まり、継続した研究会の要望があり本企画開催となった。今回は倉本知明氏(台湾文藻大学非常勤講師)、呂艶宏氏(龍谷大学社会学研究課博士課程)を招いて、上映会と映画に関連する研究発表を行った。

◇2014年2月10日 15:00~19:00
第1回 『暁の脱走』上映会と研究発表「田村泰次郎「春婦伝」」 
研究発表:「何が語られ、何が隠されたのか―「春婦伝」から「暁の脱走」へ―」
倉本知明(台湾文藻大学非常勤講師)
◇第2回 2014年2月18日 15:00~19:00
『サヨンの鐘』と研究発表「李香蘭の身体」
※発表を依頼していた呂艶宏氏が体調不良のため欠席。上映会後、参加者とのディスカッションを行った。

成果及び今後の課題

 「大陸三部作」から見る日本帝国」企画、「日本帝国と映画」企画では、当時の映画政策、時代背景、満州国における日本帝国主義というものに着目し、映画を通した歴史検証を行うことができた。また、当企画は立命館大学生存学研究センター若手研究者研究力強化型「植民地主義研究会」との共催であり、相互の研究連携を構築した。
 「ルート181」上映会では、インタビューという手法を通じて、人間の「記憶」構築のあり様を多角的に見てとることができた。また、講演会では「記憶」というものがいかに言語(土地の呼び名など)と結びついているのか、思索を深めることができた。生存学研究センターとの共催企画として、「“生きて存るを学ぶ”――この行為(試み)の中で、「記憶」はいかに位置づけられるのか」という問いに対しては、今後も継続的探究を行う。
普段の生活者の姿に触れることが少ないパレスチナ-イスラエルの人々の日常に触れる機会という意味でも、一般に上映を公開した意味は大きい。今後の課題としては、映画という表象をいかに個々の研究課題に接近させていくか、有効な方法をプロジェクト研究会を通じて見いだしていきたい。

構成メンバー

  • 梁説 先端総合学術研究科 共生領域 2010年度入学
  • 児嶋きよみ 先端総合学術研究科 共生領域 2011年度入学 
  • 大谷通高 先端総合学術研究科 公共領域 2005年度入学
  • 中井和夫 先端総合学術研究科 共生領域 2011年度入学
  • 濱本真男 先端総合学術研究科 生命領域 2009年度入学
地域社会学研究会

院生代表者

  • 安田 智博

教員責任者

  • 立岩 真也

企画目的・実施計画

 地縁組織と「まちの居場所」の共存の可能性を検証しつつ、過去の衝突の歴史を追う。その中から今後の地縁組織と他組織との共存方法を考察し、地域社会の今後を占う。

活動内容

・地域社会学に関するメンバーの発表(全5回)
・平本毅先生等の研究者を招いた(全2回)

成果及び今後の課題

成果:
小辻寿規,2013,「喫茶店がまちの居場所になるための要件−YAOMON(京都市)の事例より−」,『地域活性学会第5回研究大会(2013年度・高崎)論文集』.
小辻寿規,「まちの居場所におけるソーシャル・キャピタル生成構造の検討 ――京都市の事例から」,日本社会学理論学会 第8回大会(於成城大学).
小辻寿規,2013,「まちの居場所終了要因の研究」,日本社会学会第86回大会(於慶應義塾大学).
諸岡聖,2014,『地域活動の継続要因−若年層と中高年層のケーススタディーによる考察−』,修士学位請求論文.

今後の課題:
地縁組織と他組織との共存には、共通の目的を持つ必要性があることが明らかになった。しかしながら、このような事例はかなりまれである。そのため、この共存のメカニズムを今後は探ることとする。

構成メンバー

  • 安田智博
  • 小辻寿規
  • 諸岡聖
  • 中村亮太
  • 伊藤岳志
論理学研究会

院生代表者

  • 角田 あさな

教員責任者

  • 竹中 悠美

企画目的・実施計画

 本プロジェクト企画の趣旨は、研究に必要な基礎知識としての論理学を学ぼうとするものである。本研究会は2011年4月から継続して行っているものである。前年度に引き続き、本学文学部の伊勢俊彦先生を中心として、論理学の基礎文献の講読を行うことを目的とする。参加者の哲学的関心や知識欲に沿いつつ、異なるテーマの者でも可能な限り読みやすいテキストを選択して、論理学とはどのようなものか、その基本構造を各人が身につけていくことを目指す。
本プロジェクトの意義は、各々の研究の手助けとするために、論理学の基礎的な知識を得ることのできる場をつくることにある。
 研究会は月に2回を目処に、継続的に実施し、参加者が文献の要約などを適宜発表し、コメント、および補足を、伊勢先生あるいは、他の参加者から受けるというセミナー形式にて行う。テキストは青山拓央『分析哲学講義』ちくま新書(2012)を使用し、毎回1章を読み進めることとする。

活動内容

  • 第1回研究会
    日時:2013年9月9日(月)16:00-
    内容:青山拓央『分析哲学入門』
    「講義7 可能世界と形而上学」
    場所:創思館412
    報告担当者:角田 あさな
  • 第2回研究会
    日時:2014年2月12日(水)18:00-
    内容:青山拓央『分析哲学入門』
    「講義6 二つの自然と、意味の貨幣」
    場所:創思館312
    報告担当者:山田 由紀

成果及び今後の課題

 今年度はテキスト選択の効果もあり、前年度に比べると、参加者の積極的な議論が行われたといえるだろう。ただ今年度は残念ながら、実施計画では月2回を目処に継続的に研究会を行う予定であったものの、参加者の都合を合わせることが難しく、2回のみの開催となった。今後は、少人数の研究会であることを活かして、参加者の関心により近いテキストを選択し、個々人がより積極的に研究会に参加できるよう考えつつ、継続的に研究会を行っていくことが重要であると考えている。

構成メンバー

  • 角田あさな 表象領域・2009年度入学
  • 小西真理子 生命領域・2011年度入学(3年次編入)
  • 山田由紀 公共領域・2012年度入学
  • 山口隆太郎 表象領域・2013年度入学(3年次編入)
「震災をめぐる障害者・病者の生活問題」に関するプロジェクト

院生代表者

  • 有松 玲

教員責任者

  • 立岩 真也

企画目的・実施計画

 本研究会は、2011年度から「障害者」「病者」の視点から見た震災の支援体制の問題点を中心に調べ、また、被災した福島県の在宅難病者を京都に招き、震災後、長く続いた停電に対してどのような対策が必要なのかを語ってもらうシンポジウムを開いた。2012年度はさらに各々のメンバー関心を置くテーマを現地に赴き調査し、その成果を公表している。2013年度はそれらの調査・報告をもとにさらに研究をメンバー全体で共有し、個々のメンバーの関心を深化させ、そしてこれまでの調査・研究をまとめることを目的とする。
 また、震災により発生した津波による障害者の死亡率が健常者の2倍であったことを受け、その時、個々の障害者に何が起こったのか十分に調査せず、対策も十全に行わないままである。そのような中、風化という言葉が聞こえるようになってきた今、その風化を防ごうと各地で取り組みが行われている。災害弱者を研究の対象とする研究会として、そして個々のメンバーが一研究者として、何ができるのか、見つめ続け問い直すこともこの研究会の目的である。

活動内容

 研究会の活動として10月23日に、東北関東大震災障害者救援本部が制作した「逃げ遅れる人々 東日本大震災と障害者」DVDの上映会を行った。上映会を終えた後セミナーを開き、参加していただいた方々と理解を深めることを行った。質疑応答でも介助者の確保に対する不安や多くの傷病者が発生した際に優先度を選別するトリアージが合法とされた場合の優先順位の在り方など、活発な議論が行われた。
 また、研究会のメンバーである佐藤浩子氏が郡山に調査に行った。詳細は、佐藤氏が個別に報告書を出しているが、この調査自体が風化を防ぐことに役立つと考えている。

成果及び今後の課題

 しかし、反省点もある。研究会の開催等を呼びかける実務担当者である筆者の体調が安定せず、なかなか研究会の開催を呼び掛けられなかった。個人的なことではあるが、その結果として研究会が開催できなかったことは残念でならない。
 東日本大震災の記憶の風化という言葉が、報道等で言われている昨今、この研究会を細々とでも続けていくことは、まだ集められていない震災で犠牲になった障害者・病者の詳細な記録をありのまま残し、解析し、どうして犠牲が多くなってしまったのか、解析するという作業と同時に風化にいかに立ち向かうのか、ということについても非常に意味がある。そうしたことに関心がある人はもちろんのこと、関心が薄い人たちも集まり、考え続けることが、風化を防ぐために重要ではないだろうか。

構成メンバー

  • 有松 玲
  • イム・ドンヨク
  • 桐原 尚之
  • クァク・ジョンナン
  • 権藤 眞由美
  • 酒井 美和
  • 佐藤 浩子